こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」
2018 日本 松竹・製作委員会(アミューズ他) 120分
監督:前田哲 脚本:橋本裕志 
原作:渡辺一史・著『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(文春文庫刊)
出演:大泉洋、高畑充希、三浦春馬、萩原聖人、渡辺真起子、綾戸智恵、竜雷太、佐藤浩市他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
今風にいうなら「普通に面白かった」。確かに障害に負けない心根とか、周りのボラの素晴らしさ、
(畢竟、鹿野さんの人間性に依るものであることになるのだろう)などは、驚くとともに、自分は
どうなんだ、健常者として鹿野ボラのような事に手を出せるだろうか、という自問に繋がる構成
にはなっていた。
作中、高畑充希の「鹿野ボラをなめるなよ」と病院関係者にタンカを切る所あたりはこの映画の
白眉となるのだろう。

鹿野靖明というASLを罹患した実在の人物のドキュメンタリー本を映画化しだのだが、当然脚色
もあっただろう。
大泉洋の演じた鹿野さんは、実際はどうだか知らないのだが、「わがままで実はデリケートな
人物像」を上手く表現していたのではと感じた。また高畑充希も良かった。周囲の三浦を初め
萩原らも悪くない。しかし、今ひとつピリッとしなかったのは何故だろうか。

終始鹿野さんの話の一本調子で、サイドストーリー、特にボランティアの悩みが薄いのではと
思うのだ、(描かれてはいるけど)人工呼吸器を付けてからというもの、24時間体制で
つきっきりとならなくてはならない。並大抵の角度では出来ない。その辺りをもう少し掘り
下げた描き方が出来ていたらもっと深みのある作品になっていたのではないかと思うのだ。
(そういうシーンもあったけど弱い感じを受けた)

大泉演じる鹿野さんの憎めないワガママと決死の思い、ユーモラスな口ぶりというのは本当に
そうだったのだろうな。鹿野さんがボラの美咲ちゃんに恋してしまい、結局振られるのだが、
鹿野さんはある程度予想していたのだろう。その後鹿野さんは、くっつくのか分かれるのか
うだうだしている美咲ちゃん(高畑充希)と田中くん(三浦春馬)をくっつける役割を担う
ことになる。彼流のおせっかいに巻き込まれる二人も鹿野さんの企みにまんまと引っかかる。
でも鹿野さんを憎めない。
遠くない死を覚悟していると思われる鹿野さんの放つアドバイスは深くボラにも観ている人の
心にもささるだろう。

鹿野さんが亡くなって物語が転回したところはものすごいあっさりだったけど、これはこれで
ありな演出だっただろう。結局美咲ちゃんと田中くんは結婚し、美咲ちゃんは望み通り教育大に
再チャレンジし、見事合格し教師の資格をとった。一度は医学生を辞めようとしていた田中くん
も医師になり、過疎地の医療に精を出している7年後の話となる。

鹿野さんがエロビデオを観る話、気管切開して声帯を失っても特殊な方法で言葉を取り戻した事。
あれは自分の本来持っていた声が戻ってくるのだろうか。その辺りは良かったと思う。

話としては面白かったが、一本調子だったのだが残念。鹿野さんのエピソードを少し削って
ボラの悩みを増やしたら、なんだかお笑い映画みたいな(本作がまったくそれになってしま
ったとは言わないが)テイストにもう少しシリアスさを加味できたのではなかと、思って
しまうのだ。それにしてもエンディングテーマのポルノグラフィティといい、アミューズの
影の濃い作品だったな。とはいえ、こうした映画が製作される意義は認めたいと思う。

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<ストーリー>
重度の筋ジストロフィーのために人の助けなしでは生きられないにも関わらず、自ら大勢の
ボランティアを集めて長年にわたって自立生活を続けた札幌在住の鹿野靖明さんと、彼の
もとに集ったボランティアたちとの交流を綴った渡辺一史の傑作ノンフィクションを
「探偵はBARにいる」「恋は雨上がりのように」の大泉洋主演で実写映画化した
ヒューマン・コメディ。
普通の障害者ならば遠慮してしまいそうなことでもずけずけと要求するワガママぶりで周囲を
振り回しながらも、自由と夢のために必死に生きる主人公と、その傍若無人な態度に反発しな
がらも少しずつ障害者の自立の意味を学び成長していく新米ボランティアの交流をユーモラスな
タッチで綴る。共演は高畑充希、三浦春馬。監督は「陽気なギャングが地球を回す」
「ブタがいた教室」の前田哲。

 北海道札幌市。34歳の鹿野靖明は幼い頃から難病の筋ジストロフィーを患い、今では体で
動かせるのは首と手だけ。24時間体制の介助が必要な体にもかかわらず医師の反対を押し切り、
病院ではなく市内のケア付き住宅で、大勢のボラ(ボランティア)に囲まれながらの自立生活を送っ
ていた。ボラたちはワガママ放題の鹿野に振り回されることもしばしばだったが、誰もが彼の
人間的な魅力の虜になっていた。
医大生の田中もそんなボラの一人。そんな中、田中の恋人・美咲がたまたま鹿野宅を訪れたところ、
いきなりボラとして手伝いをさせられるハメに。しかし、鹿野のわがまま過ぎる振る舞いに、
たちまち衝突してしまう美咲だったが…

<KINENOTE=77.2点>




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北海道・札幌。 鹿野靖明は幼い頃から難病の筋ジストロフィーを患い、車いす生活をしている。 介助なしでは生きられないのに病院を飛び出し、ボランティアたちと自立生活を送っていた。 夜中に突然「バナナ食べたい」と言い出すワガママな彼に、医大生ボランティアの青年・田中は振り回されっぱなし。 更に鹿野は、彼の恋人・美咲に一目ぼれしてしまう…。 ヒューマンドラマ。... more
by jazzyoba0083 | 2019-11-04 23:20 | 邦画・新作 | Trackback(2) | Comments(0)