セルピコ Serpico

●「セルピコ Serpico」
1973 アメリカ Artists Entertainments Complex, Inc.and more. 130min.
監督:シドニー・ルメット 脚本:ウォルド・ソルト、ノーマン・ウェクスラー
出演:アル・パチーノ、ジョン・ランドルフ、ジャック・キーホー、ビフ・マクガイア他

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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
いきなり脇道から入ってしまい恐縮だが、この名画がオスカーをひとつも獲れなかったのは
なんでだろう、と1973年のアカデミー賞各部門にノミネートされている映画を調べてみた。
これがすごい作品ばかりで、これは運が悪かったとしかいいようがない。
シドニー・ルメットもアル・パチーノも。脚本のウォルド・ソルト(「真夜中のカーボーイ」
を書いた)もだ。

因みにどんな作品が各部門にいるか、というと「スティング」「アメリカン・グラフィティ」、
「ラストタンゴ・イン・パリ」「さらば冬のかもめ」「ペイパー・ムーン」「追憶」
「エクソシスト」「ウィークエンド・ラブ」「セイブ・ザ・タイガー」「パピヨン」と、
これではちょっと「セルピコ」も可愛そうな感じ。
しかし、この時期って名画の宝庫なんだなあ、骨のある映画がたくさん作られていたんだなあ、
CG頼みや旧作のリメイクでお茶を濁そうとかいう根性が無かった映画作りの良き時代だったん
だなあ、とつくづく思うのだ。

閑話休題。その「セルピコ」。実話だ。セルピコとは実在したヒスパニック系のNY警察の
警官(刑事)。正義感の強さから警官になり刑事になったものの、市警に蔓延る不正を許せず
妥協もせず、組織内では孤立し結局在職当時には思いを貫き通した一人の孤独な男の話だ。
いまからもう40年以上も前の映画だが、当時のNY市警はひどい腐敗ぶりだったのだなと。
この手の筋(警察組織の腐敗ぶり)は何本かの映画に描かれて来ていて、定番のようになって
いるが、そもそもは「セルピコ」を以て嚆矢とするのではないか。上から下まで本当に腐って
いる様子が描かれる。

新人で配属された分署で、賭博の胴元から毎月なにがしかの金をもらう同僚たち。どうせ
賭博の金じゃないか、賄賂とは違う小遣いみたいなものだと、警官らの意識は極めて低い。
セルピコは絶対金を受け取らず、組織内で変わり者として孤立していく。
当然監察室という警察の警察みたいな組織があり、セルピコも告発するのだが、腐敗は
上部まで浸透していて、監察の動きも鈍い。信頼する上司から、必ず摘発するといわれて
待ちに待つが、結局なにも起こらない。

希望通り刑事になり、ヒッピーのような格好をして覚醒剤売人の摘発に乗り出すのだが、
売人の部屋に突入しようとしてドアに手を挟まれ、そこを顔を撃たれてしまう。
二人の同僚はすぐそばにいたにも関わらず、手を出そうとしない。買収されていた訳
ではなく、度胸が無かったのだ。周囲の腐敗ぶり、根性の無さ加減をあぶり出すことにより
ルメットはセルピコの孤独を嫌というほど描き出す。それに応える若きアル・パチーノの
演技が素晴らしい。新人からベテラン刑事への時間の変遷をセルピコが着ている服で表現
してみせるのもルメットのカッコいい手法だ。

冒頭、救急搬送されてくるセルピコが何故そうなったのかが、ラストで明かされる作劇も
上手い。顔を撃たれたセルピコだが、幸運にも弾は脳を傷つけず、決定的な障害は残らな
かった。憧れの金バッチを署長から贈呈されるセルピコだが、あれほど欲しかった金バッチ
を突っ返すのだった。そして警官を辞め、障害年金を貰ってスイスで誰も連絡が取れない
隠遁生活をしているという字幕で終わる。
何と孤独感の強い映画だろう。結局セルピコの告発で一応の摘発は進んだが、根っこまで
綺麗になったか、といえば、答えはノーであろう。そんな警察にセルピコは未練はなく、
金バッチどころか制服さえ脱ぐ決意をしたのだ。

セルピコの動きだけが描かれる一本調子の映画であり、もう一捻りもふた捻りも欲しかった
とする評価が多いが、私は一本道で描かれたからこそ、フランク・セルピコの孤独が浮き
立ったのではないか、ルメットの主張が色濃く出たのではないか、と思う次第だ。

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<ストーリー:結末まで書かれています>
1971年2月、ニューヨーク市警の警官フランク・セルピコ(アル・パチーノ)が重傷を負って
グリーンポイント病院に担ぎこまれた。
地区総監グリーン(ジョン・ランドルフ)は早速彼の病室に24時間の警戒態勢をを引かせた。

これより11年前、セルピコは希望と使命感に燃えて警察学校を卒業した。82分署に配属され、
はりきって勤務についたが理想と現実のギャップはみるまに彼の内部で広がっていった。
潔癖なセルピコには日常茶飯事として行なわれていた同僚たちの収賄、さぼりなどが耐えが
たいものに感じられた。
犯罪情報課勤務に変わって、彼は向上心の満足と息ぬきをかねてニューヨーク大学へ勉強に
行くようになり、そこで会ったレズリー(コーネリア・シャープ)というバレー・ダンサーと
知り合い、やがて同棲するようになった。
私服刑事になるための訓練を受け始めた彼は、ブレア(トニー・ロバーツ)というプリンス
トン大学出の同僚と仲良くなった。訓練が終わると、2人は私服刑事として、セルピコは
93分署に、ブレアはニューヨーク市長の調査部に配属されることになった。
ブレアにいわせるとこれは2人の性格にピッタリの配属だということになる。セルピコは町に、
そしてブレアは政治に大きな関心を寄せていた。

配属された最初の日、セルピコは何者かにワイロの分け前を渡された。ブレアに相談し、
調査部長に報告したが、部長はただ忘れてしまえと忠告するだけだった。それと同じく
して私生活の面でもレズリーを失った。
失意のセルピコは再びマクレインに会い、ブロンクスの第7地区に勤務を変えてもらうが、
ここの事態はさらに酷いものだった。前の分署で顔見知りだったキーオ(ジャック・キホー)
という男が、セルピコに、ここの分け前は今まででも最高だと耳打ちした。彼が受け持た
されたのは、ルベルという同僚とワイロ回収の仕事だったが、どうしても金をうけとろうと
しないセルピコの立場は徐々に孤立せざるを得なかった。
ブレアとセルピコは、市長の右腕として働いていたバーマンに実情を訴えたが、この夏には
暴動がおこる公算があり、市長としても警察と対決するわけにはいかないという理由でとり
あげてもらえなかった。
セルピコは窮地に立たされ新しい恋人ローリー(バーバラ・イーダ・ヤング)とも衝突、喧嘩
別れしてしまった。地区中から異端者扱いされている彼は、第8分署に転任することになったが、
彼を相棒として引き受けてくれる者は誰一人としていなかった。

そんな彼に手を差し伸べたのは、警視のロンバートただ1人だった。ブレアやロンバートの
応援で、ついに意を決したセルピコが汚職の実態をニューヨーク・タイムスにぶちまけた。
このニュースでニューヨーク中が蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
しかしセルピコはデラニー総監によって、市で最も危険なブルックリンの麻薬地帯に転勤を命じ
られてしまう。
ある日、数人の同僚とともに麻薬犯逮捕に出勤した彼は、同僚から故意に助けを受けられず、
重傷を負う。命がけでなぜあんなことをしたのかというグリーンの問いに、セルピコは答えた。
自分自身のためだった、と。
その後、彼は市警の汚職の実情を証言したのち退職し、今は傷痍年金を受け、スイスに住んで
いる。(Movie Walker)

<IMDb=★7.7>
<Metacritic=87=Must See>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:90% Audience Score:88%>
<KINENOTE=76.2点>



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Tracked from 象のロケット at 2019-11-14 12:51
タイトル : セルピコ
セルピコは、ニューヨーク市警察の麻薬課に勤める刑事が警察内部の腐敗に立ち向かう…。 社会派刑事ドラマ。... more
by jazzyoba0083 | 2019-11-05 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback(1) | Comments(0)