2020年 06月 11日
張込み
それにしても、レビューを拝読し、そのあまりの素晴らしさに唸りました。この映画の本質を全て語り尽くされていて、何度も読み返しました。
刑事映画には、夏の暑さがよく似合いますね。
黒澤明監督の「野良犬」の冒頭で、三船敏郎扮する刑事が、バスの中で拳銃を掏られるのは、太陽がギラギラと照り付ける日でしたね。
この野村芳太郎監督の「張込み」でも、暑さが重要なポイントになっているように思います。
警視庁の大木実扮する、柚木刑事と、宮口精二扮する、下岡刑事が、鹿児島行きの夜行列車に横浜駅で飛び乗ります。
三等車は満員で、新聞紙を敷いて、通路に座るしかない。
人いきれと、うだるような暑さが、画面からリアルに伝わってきましたね。
到着した佐賀市でも、この二人の刑事は、汗まみれになりながら、高峰秀子扮する、強盗殺人犯の昔の恋人の張込みを続けるんですね。
高峰秀子が差す日傘。旅館の女将がごちそうするスイカ。これらの小道具が、実に印象的でしたね。
この映画は、ロケ撮影が多い作品で、後半の追跡劇や温泉宿のシーンでも、真夏の光が画面を支配していましたね。
この「張込み」は、松本清張原作、橋本忍脚本、野村芳太郎監督のトリオによる第1作目の作品で、代表作はもちろん「砂の器」ですが、その作品に匹敵する程の出来栄えの作品だと思いますね。
出演者の顔ぶれは地味だし、謎解きや派手な見せ場もありません。
だが、恋人と別れた後、金に細かい年上の銀行員と結婚し、生気を失ったかのような日常を送っていた主婦が、一瞬、命を燃やすように輝くんですね。
高峰秀子が、ほとんどセリフのない演技で、この女性の変貌を見事に見せてくれましたね。
そして、映画が終わった後も、画面の向こう側で、刑事や女たちの暮らしが続いているような、そんな現実感がありましたね。
いつもご覧いただきありがとうございます。レビューを褒められたのは初めてかも知れません。(苦笑)やはり名作は名レビューを呼ぶということでしょうか(苦笑)。
野村監督は当時の列車や旅情・風俗を上手く作品の中に取り入れますね。砂の器でも、列車の窓から飛んでいくちぎれた紙が印象的でした。この時期の清張原作野村組の作品は好きなものが多いです。




