007/ロシアより愛をこめて(007/危機一発) From Russia With Love

●「007/ロシアより愛をこめて(007/危機一発) From Russia With Love」
1964 イギリス Eon Productions  115min.
監督:テレンス・ヤング 原作:イアン・フレミング=「007 ロシアから愛をこめて」
出演:ショーン・コネリー、ダニエラ・ビアンキ、ロバート・ショウ、ペドロ・アルメンダリス他

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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
前作のヒットを受けて立て続けに撮られた2本。アメリカでは1964年の12月に、続く
「ゴールドフィンガー」も公開され同じ年に2本が上映された。本作公開当時、日本では
「007 危機一発」とされていたが、「危機一髪」が本来の文字であって、誤解を
呼ぶという指摘が敎育関係者や一部マスコミからあったという騒動の顛末は当時少年だった
私にも映画は観ていなかったもののリアルタイムでよく覚えている。
(邦題はユナイト映画宣伝部にいた水野晴郎が考えたものという)

72年のリバイバル上映に際し「ロシアより愛をこめて」という原題に近いものに変更された。
本作はライフルマークの銃身のむこうにシルエットの007が登場し銃を放つと赤い血と思わ
れるものが画面上から流れてくるというロゴ映像の続き「プレタイトル・シークエンス」が
挟まれ、タイトルソングに載せた凝ったタイトルが登場するというその後のスタイルが
出来上がったとされる。そのタイトルバックは踊る女体に活字が映し出されるというもの。

主題歌はもちろんマット・モンロー歌唱に依る「From Russia With Love」。この歌は
007シリーズの中でもシャーリー・バッシー「Goldfinger」、ナンシー・シナトラ「You Only
Live Twice」、ポール・マッカートニー「Live And Let Die」などと並び名曲揃いの007
主題歌の中でも、もっとも有名な曲であり、日本の洋楽ヒットチャートをも席巻した。

前作の大ヒットで本作もヒットが約束されていたようなものだが、東京五輪の年のゴールデン
ウィークに公開され、前作の4倍の興行収入を挙げたのだった。

しかし、私としては前作ののんびりしたボンドが好きかなあ。当時の東西冷戦をより
色濃く反映した内容でリアリティの面から言えばマンガ的な要素が減ってよりスパイ映画と
して大人な充実したものに仕上がった、全体のレベルが上ったというのが批評家の総論的な
ものだろう。個人的には男の夢の部分がたくさんあったほうが良いなと思うのでそういう
意味では前作が好きなのだ。
(本作をシリーズ最高傑作に挙げる人も多いようだ)

また次作「ゴールドフィンガー」に向けて次第に洗練されてくるアクションやプロットの展開
だが、本作に於いても楽しいツッコミどころは前作ほどではないにせよ満載である。
相変わらず敵味方ともに素敵なスキだらけ、であります。(爆)
但し、列車、ヘリコプター、湖のボートの追跡という多面的な展開は、今のボンドシリーズの
デフォルトとなって繋がっていて凄みが演出できていて堪能出来る部分だ。
主題歌の付け方は前作より洗練され、哀愁を帯びた曲のさまざまな展開は上手いなあと思う。
舞台はイスタンブールとベネチア。これらのロケーションも、前作のジャマイカに引き続き
活かしきっていてお見事。ストーリーは前作も本作もなにげなく複雑だったりする。

ロシアのエージェントとなる「タチアナ・ロマノヴァ。ターニャと呼んで!」(爆)と称する
女性が前作のウルスラ・アンドレスよりもジェームズの任務にたくさんコミットしていて重要な
存在となる。扮するダニエラ・ビアンキはこれが映画デビューとなるのだが、ボンドガールと
いうには少し地味な存在ではあるものの悪党には見えずなかなか知的な良い味を出していた。
しかし、彼女の話す英語はイタリア訛りが酷く、映画では別の女優の吹き替えだったとは
今回知った次第だ。

さらに、ソ連の秘密情報機関スメルシュの女性局長にしてスペクターに寝返ったクレッブ大佐。
おばあちゃんだが、毒刃付きの仕込み靴を履きホテルのメイドに化けてボンドから暗号解読機を
盗み出そうとする。本作では007シリーズでは肝となる女性陣の存在として、この二人が
重要なものになっている。(Mの秘書、マネーペニー女史は健在である)

また本作からスペクターの親玉ブロフェルドがペルシャ猫を膝に乗せて登場する。エンド
クレジットでも「?」となっていてオシャレだ。そしてボンドの一番の敵となるのが、
オリエント急行の中で味方として登場するマッチョマンがグラント(ロバート・ショウ)である。
クレッブ大佐が彼をスペクターの訓練基地でその腹をメリケンサックをつけて殴るものの
びくともせず、採用を決定するシーンはヌルくて好きだった。
クレッブ絡みのヌルいシーンと言えば、ホテルのメイドに化けてボンドが宿泊するホテルに
登場し、毒刃の付いた仕込み靴でボンドを襲う格闘シーンもなかなか笑えた。
ただのメイドのおばあちゃんに見えきってしまうというのもいいなあ。
そうだ、毒刃といえば、スペクターの本部でボンド殺害を一度しっぱいしたNo.3クレッブと
No.5がブロフェルドから叱責されるシーンでのNo.5の最期も笑っちゃいけないシーン
なのだが、笑わせていただきました。こういうのが初期ボンドシリーズの好きなところだ。

注目のガジェットは自動車電話と手順を間違うと毒ガスが出るアタッシュケース。この
アタッシュケースという薄型ビジネス鞄は日本でも爆発的に流行したなあ。スパイの
アイコンみたいに扱われていたっけ。

エンドロールではボンドが次作「ゴールドフィンガー」で再び登場!と冒頭にクレジット
され、客を引っ張るのだった。これも今ではMARVELやDC映画では当たり前となる。

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<ストーリー>
国際的秘密結社の首脳部は英情報部のボンド(ショーン・コネリー)への復讐(007は
殺しの番号)のため、またソ連情報部の最新暗号解読機を手に入れるため、ソ連情報部の
殺人機関の課長だったクレッブ(ロッテ・レーニヤ)が秘かに首脳部に転向したのを聞いて、
それを知らぬソ連の下級職員を利用、実行する手筈が整った。

英情報部長Mのもとにトルコ支局長ケリム(ペドロ・アルメンダリス)から、ロマノワ
(ダニエラ・ビアンキ)というソ連情報部の娘がボンドの写真を見て一目惚れしたので
彼に会わせてくれ、もしロンドンに連れて逃げてくれたらソ連の暗号解読機を盗み出すと
いって来たが、どうかという電報を受け、ボンドも話がうますぎるとは思ったが、
イスタンブールへ飛んだ。ロマノワも現われた。そして解読機も呆気ないばかりに盗み出
せた。彼女は飛行機での脱出を拒み、急行列車を望んだ。ケリムが護衛を買って出た。

その夜、ケリムはソ連情報部の刺客に襲われて死んだ。彼女に聞いてもそのことは何も知ら
なかった。次の駅でMから派遣されたグランド(ロバート・ショウ)が乗り込んだ。
彼はその夜ロマノワを睡眠薬で眠らせ、ボンドを襲った。彼は、秘密結社の第一級暗殺者だ
ったのだ。だが、ボンドの勝利に終った。列車が急停車した。グラント出迎えのトラックが
線路上にわざと止っていたのだ。ボンドはロマノワを連れてそのトラックを奪い、快速艇を
奪ってベニスへ。

部屋へ入って来た掃除婦をみてロマノワは驚いた。クレッブだったのだ。彼女はボンドに
拳銃をつきつけた。
だが、ロマノワはクレッブの言うことを聞くふりをして、彼女を殺した。ロマノワはボンドの
腕に抱かれた。(キネマ旬報)

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<IMDb=★7.4>
<Metacritic=84>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:95% Audience Score:84%>
<KINENOTE=73.6点>
<映画com=3.8/5>





by jazzyoba0083 | 2021-01-10 22:15 | 洋画=さ行 | Trackback(1) | Comments(0)