エージェント・スミス Above Suspicion

●「エージェント・スミス Above Suspicion」
2019 アメリカ White Knight and more. 104min.
監督:フィリップ・ノイス
出演:エミリア・クラーク、ジャック・ヒューストン、ソフィー・ロウ、
   ジョニー・ロックスヴィル、ゾーラ・バーチ、ケヴィン・ダン他

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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
これが実話だとはラストに実在の人々の写真が出てきて始めて知った。
手堅いフィリップ・ノイスの演出によって「映画」の体裁としてはきちんと
していたが、何せ、出てくる人々がみんな「ビッチ」「アスホール」なので
物語としての面白さがない。役者が一生懸命に演技しようが、映画が一定
以上に面白くなることはない。

この後書くけど、Netflixで観たロン・ハワード監督、エイミー・アダムス、
グレン・クローズ主演の「ヒルビリー・エレジー」と内容がごちゃごちゃになる
が、後者のほうが社会的主張が明快で遥かに出来が良かった。そちらのブログも
宜しければお読みください。

さて、主人公エミリア・クラーク(この人、「ターミネーター 新機動/ジェネ
シス」でサラ・コナーを演っていた女優さんだった)は、手続き的には離婚した
前夫と2人の子ども、加えて友人夫婦2人でトレーラーハウスに暮らす貧乏
生活。町は鉱山が廃坑となり、商売といえば葬儀屋かクスリの売人くらい、という
極貧の集まりという状態。

映画開巻はエンディングへと繋がる映像なのだが、すでにこの世にいない主人公が
語りを担当し、自分の半生の顛末を語るというのは良い演出だった。
主人公スーザンは、極貧生活を抜け出る、町を出たい一心だったが、子どももいて
上手く行かない。そして自身もヤク中となってしまう。

そんな折りに、書類係から成り上がった上昇志向の強い若手の捜査官マーク・
パットナムが赴任してくる。地元の出身ではあるが味方がいないマークにとって
スーザンの身内が絡む麻薬取引の捜査で知り合ったスーザンは、有力な情報源
となった。まあその後前夫の弟がからんだ銀行強盗とか麻薬取引の捜査などが
あるのだが、スーザンはマーク捜査官に情報提供し、カネを貰う。そのうちに
お決まりのように肉体関係となる。スーザンはマークに相応しいのは自分だと
妄想して彼の妻を蹴落とそうとするが、妻も元ヤンなので上手く行かない。
いっぽうでスーザンはマークが摘発しようとしているヘロインの国際取引の
情報を、悪いやつに漏らしたりしていて、どっちについているのかさっぱり。

マークはやがて栄転し田舎の局から都会へ引っ越していったが、スーザンは
妊娠したと凄む一方、故郷の町では裏切り者としてボコボコにされる。
居所のなくなったスーザンはマークを町に呼び出して、車の運転中、口論から
土手下にクルマがコースアウト、そこでマークはスーザンの首の骨を折って
殺してしまう。罪の重さに耐えかねたマークは自首。10年の刑務所生活となった。
妻はこのことで酒に溺れ夫の出獄一年前に死亡。前夫や銀行強盗をした義弟、
スーザン以外の人々は事情はあれ、新しい生活に入っていけた。スーザンのみ
が林の奥で白骨死体となったのだった。(これが冒頭のシーン)

まともなやつが一人も出てこない映画。アメリカの現代社会の固定された貧困
を描こうとしただろうか。その割にはFBIと情報提供者の女性との男女のやり取り
にも重きが置かれ、原作では何をどう表現されたか分からないが、焦点がボケた
映画となってしまったのではないだろうか。何故私だけが・・・というスーザンの
慟哭が主眼とするならば、スーザンは何の努力もしないFBIに利用されたビッチだ
ったということだ。救いがない。これでは観ている人にシンパシーを抱いて貰うこと
は不可能だろう。クライム・サスペンスにしてはエンタメ要素が低すぎる。
それほど今のアメリカは救いがないということなのだろうか。

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<ストーリー>
スーザン・スミスは、地域一帯を支配する麻薬密売人キャッシュの女として、
裏社会で生きていた。だが、薬物所持の現場をFBIに押さえられ、罪を問わない
ことと引き換えに、FBIの情報提供者となることを捜査官のマーク・パットナム
から要請される。
一方のパットナムは、裕福な不動産開発業者の娘を妻に持っていたが、スミスの
誘惑に負け、関係を持ってしまう。
ベッドでパットナムに抱かれながらも、その脳裏ではある計画に思いを巡らすスミス。
男たちをその妖しい魅力で翻弄し、女の武器で操りながら仕掛けた復讐が、今幕を
開ける……。(キネマ旬報)

<IMDb=★5.6>
<Metacritic=48>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:29% Audience Score:47%>
<KINENOTE=57.9点>




by jazzyoba0083 | 2021-05-13 22:40 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)