ある人質 生還までの398日 Ser du månen, Daniel(Held for Ransom)

●「ある人質 生還までの398日 Ser du månen, Daniel(Held for Ransom)」
2021 デンマーク / スウェーデン / ノルウェー Toolbox Film 138min.
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ、アナス・W・ベアテルセン
原作:プク・ダムスゴー 『ISの人質 13カ月の拘束、そして生還』(光文社新書刊)
出演:エスベン・スメド、ソフィ・トルプ、アナス・W・ベアテルセン、トビー・ケベル他

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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
事実に基づいた長い映画だが、ずっと息が詰まる感じで、苦しかった。最後には解放
されるわけだが、ここには戦場と囚われたジャーナリストの側面だけではなく、
デンマークという「テロリストとは交渉しない」という国家と、息子を、弟をなんとか
したいと奔走する家族の思いが上手く描かれていて、ISが最後には殺られまくるという
ようなカタルシスではないが、彼らの狂気の信条が伝わってきて緊張を強いられた映画
だった。(見ごたえがあった、ということ)

将来を嘱望された体操選手のダニエルは足を痛めて引退し、趣味の写真で食っていこうと
覚悟、何気ない風景や街の光景を切り取る写真が好きだったのでそれをプロの写真家に
送り、助手に、と売り込みに行く。たまたま行った相手が戦場カメラマンを探していた
のが運の尽き、一旦アフリカのモガディシオへ行き、戦火の下に暮らす人、貧困の生活
の写真を撮る醍醐味を覚えたダニエルは、家族の心配をよそに、イスラム国が伸長し始めた
アフガニスタンへと入る。しかしたちまち捕虜になってしまう。
過酷な扱いと、いつ殺されるかわからない恐怖。母国はテロリストとは交渉しないという。

捕らえられたジャーナリストはイスラム国に取っては軍資金を獲得するための貴重な
金づるだ。身代金を要求し、大金を掴む。当然ダニエルの家族の元にも身代金要求が
来る。しかし国は動かない。ここで活躍してくれるのがアトゥーアという交渉人だった。
家族は要求があまりにも高額なので、集められるだけの金を提示したが、それが逆に
イスラム国を怒らせ、身代金の額は増えてしまった。家族は銀行へ融資を頼む、退職金を
前借りする、色んな手を使うが要求の金額は集まらない。そこで政府から止めてくれと
いわれた「身代金の公募」を始める。マスコミに取り上げえられ次第に多くの金が集まる
が、あと500万クローネが足りない。母は、勤め先の社長に直談判する。すると・・・。

イスラム国に捕らえられたジャーナリストは一箇所に集められ、国が身代金を払うと
そこから解放されていくという風になっていた。生活は過酷であるが、彼らの中には
ジャーナリストとしての友情が生まれる。みなそこに生きる希望を見出す。
だが、ある日、身代金のあての無い1人の男がアナの中で銃殺されてしまう。人質たち
は目を開いてみていろと言われる。

ついにダニエルを解放出来る身代金が集まり、ダニエルは故郷に戻ることが出来た。
しかし、捕虜の中でも一番信頼を寄せていたアメリカ人が、ネット中継される中で
処刑されてしまった。(日本人の二人が殺されたころのことだ。あの頃も言われたが
処刑人ジョン=ビートルズのジョンから来ている)が下手人だ。解放に力を貸した
アトゥーアとは交渉人を商売にしているのか、CIAなのか。とにかく彼の存在がなければ
ダニエルが助かることはなかっただろう。

イスラム国はやがてタリバンとも対立し、欧米の追討も激しくなりその勢いをそがれて
いく。今はアフガンとインド国境あたりで蠢いているらしい。

イスラム国の存在がどうだということを主張する映画ではないが、その恐怖は十分に
伝わる。「常識的理論」が通じない相手なのだ。それは今の「プーチンのロシア」に
通底するものだ。世界はそうした狂気に次第に覆われていないか。背筋が凍る思いだ。

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<ストーリー>
内戦中のシリアに渡り、イスラム過激派組織ISの人質となってしまった駆け出しの
デンマーク人写真家ダニエル・リューの奇跡の生還劇を、「ある愛の風景」「アフター
・ウェディング」のアナス・トマス・イェンセンが脚本を手掛け、「ミレニアム 
ドラゴン・タトゥーの女」のニールス・アルデン・オプレヴが監督を務めて映画化。

ダニエルが体験した地獄の人質生活と、同じく人質となった著名なアメリカ人ジャーナ
リスト、ジェームズ・フォーリーとの交流、そしてどんなに絶望的な状況でもダニエルの
生還を信じて救出に奔走する家族の必死の姿を臨場感あふれる筆致で描き出す。

主演は「幸せな男、ペア」のエスベン・スメド。
共演にトビー・ケベルと本作の共同監督も務めているアナス・W・ベアテルセン。

 怪我で体操選手の道を諦めた若者ダニエル・リューは、ずっと夢だった写真家になる
ことを決意し、やがて戦時下の日常を世界に伝えたいと内戦中のシリアに渡る。戦闘地域
には近づかないよう注意していた彼だったが、突然男たちに拉致されてしまう。

ダニエルが予定通りに帰国しなかったことで異変に気付いた家族は、人質救出の専門家
アートゥアに連絡を取る。彼が誘拐犯を突き止め接触を試みると、身代金として70万
ドルを要求される。しかし、デンマーク政府の方針は、テロリストとは一切交渉しないと
いうもので、家族は70万ドルという大金を自分たちだけで用意するしかダニエル救出の
道はなかったが…。(allcinema)

<IMDb=★76>
<Metacritic=69>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:100% Audience Score:78%>
<KINENOTE=77.9点>
<映画com=3.9/5>



by jazzyoba0083 | 2022-05-06 23:20 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)