ムーンライズ・キングダム Moonrise Kingdom

●「ムーンライズ・キングダム Moonrise Kingdom」
2012 アメリカ Indian Paintbrush and more. 94min.
監督・(共同)脚本:ウェス・アンダーソン 共同脚本:ロマン・コッポラ
出演:ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ティルダ・スウィントン
   フランシス・マクドーマンド、ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード他

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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
「グランド・ブタペスト・ホテル」で一段とその名が一般的に知れ渡ったウェス・アンダーソン。
超クセのある作品を作る作家性の極めて高い監督で、それが好悪を分ける。私も最近の作品は
あまりにも観念的過ぎてついていけないのが現状だ。だが「グランド~」は面白く見たし、おそらく
この近辺の作品なら、と不思議な魅力のあるウェスの世界は分からないけど嫌いではない(不思議な
感覚だ)「グランド~」の前に作られた本作を観てみた。

子どもの世界をウェス流に描く童話のような(いつものことだけど)作品で、これに居並ぶ名優が
大人社会のカウンター観念の存在として登場、弁証法のような感じで作品は進んでいく。
ウェスの映画はいつもそうだが、何を言わんとしているのだろうか、と考えさせられながらの
鑑賞となる(私は)。本作は子どもも一人の人間としての尊厳と、それを自分たちの理論で良かれと
思って結果的に拘束してしまう大人たち。あたかも子どもと大人の戦争のような風情を感じさせた。

脚本にロマン・コッポラが入ったことがウェス味を薄めて分かりやすくなったかな、とうい感じもした。
ラストのブルース・ウィルスの行動なんかは、分かり易すぎて最近のうっちゃり系ウェスワールド
らしくないとも思えたのだった。

全体として12歳の男の子と女の子の分かっているのかいないのか分からない、でもひたむきな
純情を、ボーイスカウトの世界を舞台に、子どもらに関係する親、里親、福祉局、警察などが
入り乱れて、かき回し、それに仲間のボーイスカウトが子ども世界の微妙な心境を加味して面白い。

この頃のウェスの世界は私にはフィットする。大人にも通じる純粋な愛とは何か、ということ、
子どもの考えることを子どもの立場、目線に立って考えることがいかに大切かということを
個人的には汲み取ったがどうだろう。

相変わらずの色彩、画角にこだわった固定画の世界、シンメトリックな画、平行移動のドリー。
アップ、ズーム、ロングのリズムの良い切り替え、音楽のツボ、誰だかわからない進行役の登場と、
今も変わらぬウェスの世界はここでも健在。しかも映画が始まってからエンドロールの最後の最後まで
手を抜かない映画の世界も。冒頭と最後に使われるブリテン「青少年のための管弦楽入門」の使い方も
構成上上手いなあと思う。この映画のメタファーそのものな感じだ。
少女スージーの終始変わらぬ考え方と彼女を演じたカーラ・ヘイワードがとっても蠱惑的で良かった。

『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』(実写短編)でやっとオスカーを獲ったウェスだが、
短編くらいでないとなかなかその世界は理解出来ないのかもしれない。
独特のタッチで観念的ではあるが、本作は割と分かりやすく消化(昇華)できたかな、という感じ。
なんとなくいい映画だなあ、という感じ方でいいと思う。

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<ストーリー>
1965年、アメリカのニューイングランド沖に浮かぶニューペンザンス島。12歳のスージー・
ビショップ(カーラ・ヘイワード)は、厳格でお堅い父ウォルト(ビル・マーレイ)と、口うるさくい
つもせわしない母ローラ(フランシス・マクドーマンド)、そして3人の幼い弟たちと海沿いの大きな
屋敷で暮らしていた。趣味は本を読んで自分だけの世界に浸ることと双眼鏡での観察。

ある日、スージーはその双眼鏡で母とシャープ警部(ブルース・ウィリス)の密会を目撃する。
同じ頃、ウォード隊長(エドワード・ノートン)率いるボーイスカウトのキャンプ地では、隊員の
一人が置き手紙を残して姿を消す事件が起きていた……。

1年前、ボーイスカウトの活動で劇を観に行ったサム・シャカスキー(ジャレッド・ギルマン)と、
カラス役で出演していたスージーはわずかな言葉を交わしただけで惹かれ合い文通を開始。
1年にわたる手紙のやりとりを通して密かに駆け落ちの計画を練っていた。
草原で落ち合った二人は“3.25海里 潮流口”を目指し愛の逃避行に出る。手つかずの自然が残った
その美しい入江を“ムーンライズ・キングダム”と名付けた二人は、海に飛び込み、絵を描き、本を
読み、夢を語り合い、ダンスを踊り、初めてのキスをする。

翌朝、二人がいなくなったことに気付いた大人たちは右往左往。娘を誘惑したとウォード隊長に
食って掛かるビショップ夫妻だったが、ボーイスカウトの少年たちによって二人は見つかり、
離ればなれにされてしまう。だがサムの両親は里親で「変わり者のサムはもう引き受けられない」と
言い、福祉局(ティルダ・スウィントン)の説明によると、問題児のサムは少年収容所に戻される
可能性が高いという。

長年トレーラーハウスで孤独な生活を送ってきたシャープ警部は、身寄りのないサムを預かり、
男同士で愛について語りあう。そしてスージーも自分の思いを初めて母親に打ち明ける。
サムをのけ者にしていたボーイスカウトのメンバーたちも同情するようになり、ウォード隊長に
内緒で二人の駆け落ちを手助けすることに。
やがてスージーとサムは、小さなボートを漕いで島からの脱出を図るのだが……。(キネマ旬報)

<IMDb=★7.8>
<Metascore=84>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:93% Audience Score:86%>
<KINENOTE=73.5点>
<映画com=3.7/5>



by jazzyoba0083 | 2024-05-02 22:40 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)