理想郷 As Bestas

●「理想郷 As Bestas」
2022 フランス・スペイン Arcadia Motion Pictures=Caballo Films=Le Pacte. 138min
監督・(共同)脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン
出演:ドゥニ・メノーシェ、マリナ・フォイス、ルイス・サエラ、ディエゴ・アニード他

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<評価:★★★★★★★★☆☆+α>
<感想>
監督で脚本も手掛けたドゥニ・メノーシェは、書き上げるのに6年をかけたという。共同
脚本にしたのも独善が入らずに好ましかった。黒澤作品も橋本忍とか小国英雄が入る方が話が
面白くなると思う。

良く出来たストーリーと外連味はないがしっかりした画作り。そして主演の夫婦を演じた
役者の迫力。いい映画の要素が揃った。実話がベースという。しかし、その後の顛末が
サスペンスとなっていて、ただの移住者と地元民とのいざこざから何かを抽出する単純化を
防いだ。
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フランスとスペインは歴史的に仲が良かったとは言いづらいのに、この夫婦はフランスでの
暮らしを捨てて、何も無いので若い人がどんどん出ていってしまうド田舎に移住してくる。
頑迷な田舎者は、よそ者を受け入れない。更に、貧乏な村に風力発電設置に対する補償金の
話が持ち上がり、住民は賛成するが、移住してきた「フランス野郎」のアントワーヌとオルガ
夫妻は反対する。これがまた住民の反感を買う。トマト栽培の井戸にバッテリーを投入され
1年がかりで育てたトマトが全滅するなど、嫌がらせはエスカレート。警察も一応対応するが
熱心ではない。

そしてある日夫アントワーヌが行方不明になる。一番鋭く対立していた兄弟に殺されたのだ。
この土地では男は野生馬を素手で捉え刻印を付ける。その腕力で窒息させられたのだ。
そこまでやるか、と観ている人は思うだろう。アントワーヌは嫌がらせが続くので常に
ビデオカメラを回していて、殺される時も木の根の元に回したカメラを置いておいたのだった。

残された妻オルガは夫の捜索を諦めない。フランスで暮らす一人娘は帰っこいというが、オルガ
は夫と人生を共にした、共にすると誓ったこの土地を離れる気持ちはさらさら無い。幸い近所に
オルガに助力してくれる夫婦がいて、助けられていた。夫の失踪からだいぶ時間が経ち、オルガ
や娘はあの兄弟がやったに違いないと確信しているが証拠がない。のうのうと暮らす兄弟。

夫の捜索を諦めない妻はついに枯れ葉の下からカメラを見つける。取り出したSDカードに全てが
写っているはずだった。が、時間が経ちすぎていて警察でも再生できなかった。(多くの観客は
ここで事件が大回転するかとおもうだろうが、外したのは上手い)。
そこでオルガは兄弟の家に行き、ハッタリをかます。母親に、兄弟は刑務所い行くよ、私と同じ
一人になるんだ。どうする?と。

数日後夫の遺体が発見される。警察が農作業中のオルガの元を訪ね、発見を知らせ、オルガは
警察車両に乗って遺体との対面に向かう。窓からは兄弟の母の姿が見えた。オルガの顔には
少しだけ笑顔が。
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という大まかな筋書き。最後の解決?の部分がいまひとつはっきりしゃっきりとせず、観客に
投げかける形となっている点が私にはいささかもどかしかった。カメラの発見で終わっても
良かったかな。映像の再生の可否はいわないでも。

この映画の良かったのはアントワーヌとオルガの移民夫婦だけではなく、酒場に屯す頑迷で
排外的な村人、夫婦を助ける男らが、極めて自然な演技で、まるでそこで彼らを観ているかの
ような錯覚さえ覚えた。開巻のスペインの男らが野生馬の首を締めて大人しくさせる光景が
伏線になっていたのも、いい感じ。太陽が出ない暗い映画(スペイン映画では珍しい)で、
カタルシスも十分とはいいづらいし、観終わってすがすがしくなるような作品ではないが、
誰もが持つ人間の本質に迫った力作といえるだろう。見ごたえは十分の骨太作品であった。

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<ストーリー>
2022年第35回東京国際映画祭3冠、第37回ゴヤ賞9冠、第48回セザール賞最優秀外国映画賞など
様々な映画賞を獲得した、実際の事件に基づく心理スリラー。
都会を離れスペイン山岳地帯の村に引っ越してきたフランス人夫婦だったが、村人は二人を歓迎せず
……。
主人公夫婦の夫を主軸にした心理スリラーの第1部と、妻を主軸にしたラブストーリーの第2部の2部
構成。

都会を離れて田舎で過ごすスローライフに夢を抱くフランス人夫婦アントワーヌとオルガは、
スペイン・ガリシア地方の山岳地帯にある小さな村に移住。自然に囲まれた理想の土地と出会った
はずだった。

しかしこの村は慢性的な貧困問題を抱えていた。隣人のシャンとロレンソ兄弟は新しく村にやってきた
フランス人夫婦をあからさまに歓迎しないどころか、嫌がらせをするように。
夫婦が大事に育てていた農作物をダメにするなど、兄弟の攻撃は嫌がらせの範疇を超えるほどエスカ
レートする。
そんな中、村の金銭的利益となる風力発電プロジェクトをめぐり、村人と夫婦の意見が対立。亀裂は
さらに大きくなっていき……。(キネマ旬報)

<IMDb=★7.5>
<Metascore=85>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 98% Audience Score:87%>
<KINENOTE=73.8点>
<映画com=3.5/5>



by jazzyoba0083 | 2024-05-08 23:10 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)