The Son 息子 The Son

●「The Son 息子 The Son」
2022 イギリス・フランス 123min.
監督・原作戯曲・(共同)脚本:フロリアン・ゼレール
出演:ヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーン、ヴァネッサ・カービー、ゼン・マクグラス、
   アンソニー・ホプキンス他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ピーター(ヒュー・ジャックマン)はNYの敏腕弁護士で、大統領候補のキャンペーンスタッフに
選ばれることがほぼ確実、そうすると将来ホワイトハウスの高官も視野に入る。再婚のベスとの
間に生まれたばかりの赤ん坊がいる。日々多忙で家には不在がちではあるが、離婚の原因が自分が
家族のことより仕事を選んでいると思わたからで、再婚の妻と子どもには気を使っていた。

そんなピーターの元に前妻ケイト(ローラ・ダーン)がやってきた。高校生の息子のことだという。
行っているものと思っていた学校にずっと行っていなかった、私を嫌っている。父親が必要だと。
ピーターは息子ニコラスと会って話し合う。話せば分かる状態だが、何せ不安定な精神状態で、
ニコラスは繊細。両親の離婚で相当傷ついている。

そこでピーターはベスの許しを得て、ニコラスを自分の家に連れてきて、転校させ父親が側にいる
ことでニコラスを安定させようとした。しかし、ニコラスはやはり学校にいっていなかった。
しかもナイフでの自傷行為も繰り返す。彼はそれをすると心が落ち着くという。なんとか息子を
理解しようとするピーターだが、どうしても、エスタブリッシュメントの考えが抜けない。
良い大学へ、良い職業へという考えが悪気がなく染み付いている。
ニコラスは一時は父親とベスとダンスを踊り笑顔になるまでになったかと思ったが、それは
作られた笑顔だった。ニコラスは何を考えているのか、ピーターと母であるケイトは苦悩する。
そして精神科のセラピストに相談する。何日かの様子見の時間を経て、ニコラスは病気だから
入院して治療すべきだという医師と、ニコラスが泣いて謝り、もうまともになるから、こんな
ところにいたら本当に気が狂ってしまうと泣いて叫ぶのでほだされるピーターとケイト。
一旦は入院を決めるが、すぐに退院措置を取り、ニコラスとの話し合いで母のもとに戻ることに
なった。
本当にまともに戻ったかに見えたニコラス。両親を前にして、これまでを謝り、感謝したのだ。
しかし・・・。
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こんなストーリーなのだが、ラストの悲劇は想像が付く。このままでは終わらないだろうなと。
ニコラスの精神状態が簡単に元に戻るわけがなく、相当に心理状態が複雑に混乱しているのを
両親は見破ることが出来なかった。ピーターは大統領候補選出選挙スタッフを諦めて、ニコラス
との時間を大事にしようとしたのだが。
ピーターの父親が大邸宅に住むアンソニー・ホプキンス。エスタブリッシュメントの圧力
感じさせる。母親も実力のあるビジネスパーソンで、結局大人の事情をこどもがもろに被って
心の安定を失ってしまったのだ。が、二人にはそれが見えてこない。それが悲劇だった。
確かにニコラスは分かりづらい人格ではある。医者は止めたのに。(でも息子の泣きつきに
両親の心が揺らぐのは理解できる)

映画全体としてみると、言いたいことは分かるような気がするけど、ニコラスの心理が本当に
両親の離婚だけで傷ついているのか、繊細な性格による受験によるプレッシャーか、離婚後に
暮らし始めた母との衝突か、父や祖父が辿ってきたエスタブリッシュメントへの圧力か、それら
が複合的にニコラスの自己認識を喪失させ、自分は一体誰なのか、という同一性を失ってしま
ったのか、そのあたりが判然としなかった。結局、ラストはどうとでも取れる結末で、
「自分はダメな人間なんだ、この世にいる価値はないんだ」と幼いながらも総括してしまった
感じ。それらのプレッシャーや孤立を与える原因の要素となっている両親や学校、友人たちの
ことなどがはっきりわからないから隔靴掻痒の感想となってしまった。
ヒュー・ジャックマンやローラ・ダーン、ヴァネッサ・カービーの戸惑いがぐいっと伝わって
こないのが残念だった。幼かったニコラスが両親と海に遊びに行き、泳げないところを父親に
ほぼ無理矢理に泳がされ、結局泳げるのだが、「お前はで出来るんだ」と声をかけるところに
ニコラスがずっと引きずってきたトラウマがあるように感じた。

タイトル通り息子ニコラスに焦点が当たってはいるが、本作ではピーター自身も息子であり、
再婚相手との間に出来た赤ちゃんも息子だ。そこらの多重構造は薄々は伝わってくる。

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<ストーリー>
「ファーザー」のフロリアン・ゼレールが、自作戯曲『Le Fils 息子』を映画化。
妻子と幸せに暮らす弁護士ピーターの元に、前妻との間の息子ニコラスが、一緒に暮らしたいと
現れる。ピーターは17歳のニコラスを家庭に受け入れ、同居が始まるが……。

高名な政治家からも信頼される敏腕弁護士のピーターは、再婚した妻ベスと生まれたばかりの
子どもと充実した日々を送っていた。
そんな時、前妻ケイトと同居する17歳の息子ニコラスから、“父さんといたい”と懇願される。
ニコラスは心に病を抱え、絶望の淵にいたのだ。初めは戸惑っていたベスも同意し、間もなく
ニコラスを加えた新生活が始まる。

ところが、ニコラスが転校したはずの高校に登校していないことが明らかになり、父と息子は
激しく言い争う。なぜ、人生と向き合わないのか? 父の問いに息子が出した答えとは……?
(キネマ旬報)

<IMDb=★6.4>
<Metascore=45>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:29% Audience Score:59%>
<KINENOTE=74.5点>
<映画com=3.7/5>




by jazzyoba0083 | 2024-05-11 22:50 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)