生きる LIVING Living

●「生きる LIVING Living」
2023 イギリス Film4,Number 9 Films and more. 103min.
監督:オリヴァー・ハーマナス 脚色:カズオ・イシグロ 原作:黒澤明「生きる」(共同脚本)橋本忍、小國英雄
出演:ビル・ナイ、エイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ、トム・バーク、
   エイドリアン・ローリング、ヒューバー・トバートン、オリバー・クリス他

生きる LIVING Living_e0040938_16065708.jpg

<評価:★★★★★★★★☆☆+α>
<感想>
今から11年前、食わず嫌いだった黒澤作品を一気に観た頃の初見だった本作の原作である
「生きる」。(当時の感想は下に貼っておきます)
このリメイクが、ビル・ナイの主演でハリウッドではなくイギリスにおいてカズオ・イシグロの
脚色で製作されたと聞き、劇場に足を運ぼうと思っているうちに上映が終わってしまった作品。

WOWOWでの放映も録画し忘れ、この度Amazonプライムビデオでやっと鑑賞出来た。
映画の出来としてはオリジナル(40分も長い)の方が良い映画であるのは、そもそも狙いが違うから
比較すべきではないだろう。(比較したくなる気持ちも分かるが)
ほぼ原作の骨格に乗っ取ったカズオ・イシグロのイングリッシュ・ヒューマニティは、その味わいを
持って上質な映画となっていたのは大きな評価としたい。

原作が持つ1950年代前半の、まだ終戦の匂いがあちらこちらにある時代に日本の風俗と人情を
上手く掬い上げ、一人の男の人生を静かに書き抜いた黒澤、橋本、小國の三人による完璧な脚本
さすがにカズオ・イシグロにもその骨格に手がつけようが無かったのだ。(黒澤プロ側から手を
つけないでほしいとのリクエストがあったのかも知れない)
そこで英国風にアレンジし、換骨奪胎を試みたのだ。彼もハナから黒澤作品に勝とうなどと思って
いたわけではなく、あのテイストを英国風に出せるとしたらどうするか、を考えたに違いない。

そうすると、どうしても英国風紳士の世界がついて回り、抗議に来る婦人たちもレディであって
決して菅井きんではないのだ。そうした世界観を日本で観る観客も心得ないと、本作の脚色家や
監督、ビル・ナイの狙いが違いところにいってしまうだろう。
ここでのウィリアムズ市民課長(ビル・ナイ)は、あくまでもイギリスの役所に勤める英国人で
あって、描き出される世界は黒澤作品より上品だし、お金持ちだ。そうした異世界を背景としても
役所で「ゾンビ」と若い女性にあだ名されて生きてきた小市民で事なかれ主義の役人が、不治の
病を得て、また眼の前の若い女性の人生に対する素朴な希望を見るにつけ、このままでは死ねない
と覚悟を決めたのは同じ心理だ。

陰影(逆光など)も含め光の使い方、スローズームの使い方、画角の取り方、またジャズをフューチャー
した音楽構成なども、モノクロだった黒澤作品にはないオリジナルなものを感じたし、
ビル・ナイと志村喬の間に通じるものも感じることが出来、これはこれで上質な作品に仕上がった
いえるだろう。志村喬とは異なるが、ビル・ナイの、脚色を理解した演技はさすがだ。彼は本作で
オスカーの主演男優賞ノミニーとなった。脚色もオスカーノミニーだった。

生きる LIVING Living_e0040938_16072832.jpg

<ストーリー>
黒澤明が1952年に監督し、キネマ旬報ベスト・テン1位に輝いた「生きる」を原作に、ノーベル賞
作家カズオ・イシグロが、舞台を第二次世界大戦後のイギリスに移して新たに脚本を書いたヒューマン・
ムービー。

1953年。第二次世界大戦後、いまだ復興途上のロンドン。公務員のウィリアムズ(ビル・ナイ)は、
今日も同じ列車の同じ車両で通勤する。
ピン・ストライプの背広に身を包み、山高帽を目深に被ったいわゆる“お堅い”英国紳士だ。役所の
市民課に勤める彼は、部下に煙たがられながら事務処理に追われる毎日。家では孤独を感じ、自分の
人生を空虚で無意味なものだと感じていた。

そんなある日、彼は医者から癌であることを宣告され、余命半年であることを知る――。
彼は歯車でしかなかった日々に別れを告げ、自分の人生を見つめ直し始める。手遅れになる前に充実
した人生を手に入れようと。仕事を放棄し、海辺のリゾートで酒を飲みバカ騒ぎをしてみるが、なんだか
しっくりこない。病魔は彼の身体を蝕んでいく……。

ロンドンに戻った彼は、かつて彼の下で働いていたマーガレット(エイミー・ルー・ウッド)に再会する。
今の彼女は社会で自分の力を試そうとバイタリティに溢れていた。そんな彼女に惹かれ、ささやかな
時間を過ごすうちに、彼はまるで啓示を受けたかのように新しい一歩を踏み出すことを決意。
その一歩は、やがて無関心だったまわりの人々をも変えることになる。(キネマ旬報)

<IMDb=★7.2>
<Metascore=81>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:96% Audience Score:91%>
<KINENOTE=76.6点>
<映画com=3.9/5>






by jazzyoba0083 | 2024-05-19 22:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)