苦い涙 Peter Von Kant

●「苦い涙 Peter Von Kant」
2022 フランス FOZ and more. 85min.
監督・脚本:フランソワ・オゾン 
出演:ドゥニ・メノーシェ、イザベル・アジャーニ、ハリル・ガルビア、ハンナ・シグラ、
   ステファン・クレポン、アマン・トオーディアール他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
私がこのブログで使う、いわゆる「カンヌ」「ベルリン」系の作品。作家性が強く観念的だ。
批評家受けはいいが、一般大衆受けは難しいタイプの作品。
本作は「フランソワ・オゾン監督が、ドイツの鬼才ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの
『ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972)』を現代風にアレンジ。アパルトマンの一室を
舞台に、若く美しい青年に翻弄される映画監督の愛のドラマを風刺やユーモアを交えて
描き出す。」というもの。

映画の90%は監督の部屋で展開していく。戯曲がベースだけに会話が主体となる舞台劇を観て
いるようで、俳優によるセリフ扱いや演出がものを言う作品。
ドイツが舞台だが会話はフランス語。

ドイツの著名映画監督ピーター・フォン・カントの愛情と人間性をあぶり出したもので、やや
極端に動くピーターの心情はやや芝居がかり大げさではあるが、それ故に観念性の中に具象
訴えられているのではないか、とも感じた。
ゲイであるピーターは恋人に振られたばかり。そこに自分を今の地位に押上げてくれた恩人の
女優、シドニーが旅の途中で出会ったというアミールと名乗るアラブ系?の美青年を連れてくる。
ピーターはもう一目惚れ。分かりやすく彼に入れあげ、彼を主役とする映画を作りヒットし彼は
一躍注目の人となる。そうすると当然、アミールに自我の主張が生まれ、支配したいピーターと
ぶつかるようになる。そうこうしてアミールはピーターの元を離れていく。

焼けになるピーターを心配するシドニーと母親。そんな彼女らを自制心を失ったピーターは罵倒
する。ここが映画のハイライトの一つ。心ではピーターの独立を理解したつもりでも、彼からの
電話を待ち焦がれる。ラストではアミールから電話がかかってきて、そっちへ行っていいか、と
聞いてくるが、ピーターは断り電話を切る。彼は苦笑いしながら涙を流す。これが邦題の所以だろう。
「別れても好きな人~」という日本の歌謡曲が頭に鳴ったのだ。

普通は女性の立場で描かれる世界を男性目線で描いたあたりがジェンダーフリーの今日らしい。
1972年の原作は未見だが、性別は入れ替えられている。また原作でアミールに相当する女性を
演じたハンナ・シグラが本作ではピーターの母親として登場しているのは何かの皮肉か。

この映画にいかにもドイツ人らしい書生のような(監督の心酔者をやとっているらしい)カールと
いう男性が、監督に何を言われても平然として命令に従う姿が描かれるが、ピーターがアミールの
去ったのち、カールに優しくしようとすると、彼はピーターの顔につばを掛けて出ていく。
ここが映画のハイライトの一つでもある。映画に登場する3人。ピーター、アミール、カール。
「人とのつながりを求めて苦悩する姿」とは原作に対する批評であるが、本作でもそれが当たっている
といえるだろう。単館上映系の映画だったのだろう、サブスクあたりで見つけたら観てみると良いかも。

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<ストーリー>
助手のカール(ステファン・クレポン)をしもべのように扱いながら、事務所も兼ねたアパルトマンで
暮らす著名な映画監督ピーター・フォン・カント(ドゥニ・メノーシェ)。
恋人と別れて激しく落ち込んでいたある日、3年ぶりに親友で大女優のシドニー(イザベル・アジャーニ)
がアミール(ハリル・ガルビア)という青年を連れてやって来る。
艶やかな美しさのアミールに、一目で恋に落ちるピーター。彼はアミールに才能を見出し、自分の
アパルトマンに住まわせ、彼が映画の世界で活躍できるように手助けをするのだが……。
(キネマ旬報)

<IMDb=★6.3>
<Metascore=63>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 77% Audience Score:53%>
<KINENOTE=67.7点>
<映画com=3.6/5>



by jazzyoba0083 | 2024-05-22 22:30 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)