逆転のトライアングル Triangle of Sadness

●「逆転のトライアングル Triangle of Sadness」
2022 スウェーデン / ドイツ / フランス / イギリス Neon and more. 147min.
監督・脚本:リューベン・オストルンド
出演:チャールビ・ディーン、ハリス・ディキンソン、ウディ・ハレルソン、ズラッコ・ブリッチ、
   ヴィッキ・ベルリン、ドリー・デ・レオン、ヘンリク・ドルシン他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
オストルンド作品は初の鑑賞。カンヌ、狙ったでしょ、というひねくれた見方もできてしまう、
2年連続のパルムドール受賞作だ。昨年映画館に行きたくて見逃した作品。オスカーノミニー
だったから。
なかなか感想を書きづらいが、人間の汚さ、弱さ、あざとさ、偏見、などを赤裸々に若干の笑いを
含んで展開している。冒頭の男子モデルのシークエンス、続くヤヤとカールの食事代絡みの一悶着は
ヨットへのシークエンスの序章となる構成。男子モデルの「バレンシアガ」と「H&M」での顔の
作り方の差別化など、強烈な皮肉から入り、食事代を女が持つか男が持つか、の言い争いは表層的
なようでいて、観客は「あるよなあ、こういうこと」と没入モードに入り、不安定なヤヤとカールの
行方を心配する。ここまでが長い。

するとシークエンスはSNSのインフルエンサーでもあるモデルのヤヤが招待された富豪ばかりが乗る
豪華ヨット(クルーザー)に移る。デッキで富豪から高額チップをもぎ取ろうと彼らの奴隷となるのも
厭わない白人パーサー連中。一方、船内で客室やトイレ掃除を担当する有色人種のクルー。
エンジンルームとなると黒人たちだ。分かりやすい差別構造が示される。そしてもちろん見るべきは
乗客の富豪の俗物っぷり。ロシアの有機肥料メーカー夫妻、イギリスの武器製造業夫妻、
「雲の中~!ウリ」がやたらに耳に残る障害者の夫婦。単身で乗り込んできた富豪、全員老人だ。
若いのはヤヤとカールのみ。このシークエンスは謎の船長(ハレルソン)が低気圧が来るというのに
キャプテンズディナーを強行した晩餐会だ。ローリングとピッチングに揉まれてゲロのオンパレード。
特にロシアの富豪夫人のこれでもかのゲロまみれ模様。彼女は昼間のデッキでクルーに海で泳げ、と
かの無理難題を押し付けていた御仁で、そのバチでも当たったか。
皮肉は更に襲い、海賊が投げた手榴弾をデッキに出ていた製造業夫妻の足元に。夫人が拾い上げると
「お、これはウチの製品だ」と呟いた瞬間、ヨットの全景となり大爆発が映し出される。

シークエンスは爆発により沈没した船から脱出でき、島に流れ着いた数人のパートになる。
ここが「逆転」の光景だ。ヤヤとカールもいた。ここでは海で魚を獲り、火を起こせるアジア系の
トイレ係がキャプテンを主張。みな彼女に従うことになる。彼女だけは大型の救命艇で流れ着いて
いて、水と少しのお菓子を持っていたし、屋根までついている救命艇だったので夜露をしのいで
夜を過ごすことも出来た。ここで漂流者たちは自給自足の生活を始める。魚を獲ったり、野生のヤギ
を石で殴り殺して肉にしたり・・・。

観ているうちにここは地中海くらいだよなあ、そうするとひょっとすると、と思う観客は多いだろう。
救助はすぐに来るだろうし、島の裏側にはなにかありそうな予感がするだろう。
そうなんだな。「雲の中~」の障害者の元に黒人の物売りが来るのだ。彼女はすぐに自分の置かれた
状況を理解するも、障害故に会話を発することが出来ず、「雲の中~」しか言わないため、
物売りには気がおかしいやつとしか思ってもらえず、彼は去っていってしまう。
次にヤヤがトイレ係と島を探検していて、なんとエレベーターを発見する。そう、ここはリゾート
地だったんだ。 現実世界が戻ってくるとキャプテンの地位はなくなるトイレ係は大きな岩を抱え
ヤヤを殺そうとする。次のカットではカールが傷だらけで島の中を走っている。そこで映画は終わる。

点と点が線になって有機的に面を作り感想となるのだが、唐突で奇想天外な展開ぶりに観客は戸惑い
ながら、俗物っぷりを笑いつつ、一方で共感を抱きながら、サスペンスを味わいつつ、ラストは放り
出されて終わる。
好き嫌いが分かれそう。こういうテイストが好きな人は好きだろう。が、監督が自分の世界観を
一方的に示して、付いてくる人だけ付いてきてね、という「うっちゃり系」の作品に共感できない
観客は「う~ん」となるのだろう。分かりやすさと分かりにくさが同居している。
分かりやすいポイントで納得するとすれば、陳腐な上流階級の俗物っぷりを皮肉を込め笑い飛ばす!
という味わい方もあるかと。私はその点は面白く観た。全体として長いかなあ。
ヤヤを演じたチャールビ・ディーンはこの初出演の映画の後急病で他界したことは知らなかった。
遺作でもあったのだな。

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<ストーリー>
スウェーデンのリューベン・オストルンド監督が「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(17)に続き、
カンヌ国際映画祭史上3人目の2作品連続パルムドールを受賞した逆転劇。
2億5000 万ドルの豪華客船が沈没、乗り合わせた様々な立場の人々は、流れ着いた無人島でゼロ
からのサバイバルを繰り広げる。
ファッション業界の光と影、ルッキズムや現代階級社会の問題を驚くべき人間観察眼とブラック
ユーモアで痛烈に炙り出す監督の手腕が光る。

人気インフルエンサーのヤヤ(チャールビ・ディーン)と男性モデル・カール(ハリス・ディキンソン)
のカップルは、招待を受けて豪華客船の旅に出る。そこはロシアの大富豪、英国の武器商人、アル中の
船長(ウディ・ハレルソン)、高額チップのためならどんな観客の望みでも叶える客室乗務員など、
クセモノの巣窟だった。
しかし、ある夜、嵐に巻き込まれ船が難破する。そのまま海賊に襲われ、彼らは無人島に流れ着く。
食べ物も水もSNSもない極限状態で、ヒエラルキーの頂点に立ったのは、サバイバル能力抜群な船の
トイレ清掃婦(ドリー・デ・レオン)だった――。(キネマ旬報)

<IMDb=★7.3>
<Metascore=63>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:72% Audience Score:80%>
<KINENOTE=73.6点>
<映画com=3.4/5=Alltime Best>




by jazzyoba0083 | 2024-05-27 23:20 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)