幻滅 Illusions perdues

●「幻滅 Illusions perdues」
2022 フランス Gaumont and more. 149min.
監督:グザヴィエ・ジャノリ 原作:オノレ・ド・バルザック
出演:バンジャマン・ヴォアザン、セシル・ド・フランス、ヴァンサン・ラコスト、グザヴィエ・
   ドラン、サロメ・ドゥウエールズ、ジャンヌ・バリバール、ジェラール・ドパルデュー他

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<評価:★★★★★★★★☆☆+α>
<監督>
「フランスを代表する文豪、オノレ・ド・バルザックの『人間喜劇』の一編、「幻滅-メディア
戦記」を映画化。19世紀前半、詩人として成功を夢見る田舎の純朴な青年が、憧れのパリに出て
新聞記者となるが、次第に欲と虚飾と快楽にまみれていく姿を描く社会派人間ドラマ。

およそ200年前の物語とは思えないほど、フェイクニュースやステルスマーケティングが蔓延する
マスメディアとそれを取り巻く社会は、現代と酷似している。(中略)セザール賞にて作品賞、
最優秀助演男優賞、有望新人男優賞を含む最多7冠を獲得。」(キネマ旬報)

という映画なのだが、たいそう面白かった。バルザックの重厚な群像劇を時代考証や衣装も
正確に描きつつ、田舎の純朴な青年が都会に出て転落していくストーリーは今日的なタッチで
描かれ、舞台となる新聞の蒸気機関の登場を背景に起きた産業革命を受けて変革いくさまは、
明らかに現代のメディアの問題を提示(暗喩)となっている。

母方が貴族であったため、その名を頼りに貴族の夫人と恋に落ち、駆け落ちのようにパリに出た
田舎詩人のリュシアン。文才を武器に新聞業界に潜り込み、純朴さを失い、名誉と権力と金に
まみれた世界に落ちる。文学はどこへ。貴族の夫人をおいて、日本でいえば浅草出身の女優に恋を
して結婚。しかし彼女も結核に倒れる。貴族の名を王に認めさせる猟官運動も虚しく、純朴な田舎
詩人の若者は都会の欲望の渦の中で溺れていく。

ストーリーは分かりやすく、役者は揃い、顛末もお約束のようなもので、長い映画だが満足感は
ある。劇の成功のカギを握る「拍手、掛け声屋」の存在は面白かった。ああいう商売がいたんだ
なあ、現代の何かに通じるものを感じた。(クラッシック音楽でいうとベートーヴェン、ワグナー、
リストあたりが活躍した時代だ)
200年前のフランス、パリを衣装、セット、小道具など美術にも凝って描くのでフランス語との
親和性も高く、ストーリーの展開と相まって見ごたえのある一作に仕上がった。虚実入り交じる
世俗の中であがく青年とその周辺を描く演出の切れが良かったということだろう。

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<ストーリー>
19世紀前半。恐怖政治の時代が終わり、フランスは宮廷貴族が復活し、自由と享楽的な生活を
謳歌していた。文学を愛し、詩人として成功を夢見る田舎の純朴な青年リュシアン(バンジャマン・
ヴォワザン)は、憧れのパリに貴族の人妻ルイーズ(セシルド・フランス)と駆け落ち同然に
上京する。

だが、世間知らずで無作法な彼は、社交界で蔑まれ笑い者にされる。生活のためになんとか新聞
記者の仕事を手にしたリュシアンだったが、先輩格で世渡りのうまいエティエンヌ・ルストー
(ヴァンサン・ラコスト)に「金のためなら魂を売らないといけない」と言われる。
王政を支持する王党派に対抗するため、自由派の新聞の編集者は、広告主へのへつらいと、どぎつい
文体で論争を起こし、世間の注目を煽ることしか頭にない。

リュシアンはある大衆劇の擁護記事を頼まれるが、その芝居に出演していた十代の女優コラリー
(サロメ・ドゥワルス)の激情に惹かれるのだった。恥も外聞もなく金のために記事を書く仲間
たちに感化され、次第に当初の目的を忘れて欲と虚飾にまみれていくリュシアン。
そんな彼に作家のナタン(グザヴィエ・ドラン)は「嘘の記事や批評に価値なんてない。真実で
戦え」と忠告するが……。(キネマ旬報)

<IMDb=★7.4>
<Metascore=81>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:93% Audience Score:93%>
<KINENOTE=70.5点>
<映画com=3.6/5>




by jazzyoba0083 | 2024-05-30 23:20 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)