コート・スティーリング Caught Stealing

●「コート・スティーリング Caught Stealing」
2025 アメリカ Protozoa Pictures. Columbia Pictures(presents). 107min.
監督:ダーレン・アロノフスキー 原作・脚本:チャーリー・ヒューストン
出演:オースティン・バトラー、レジーナ・キング、ゾーイ・クラヴィッツ、マット・スミス、
   リーブ・シュレイバー、ヴィンセント・ドノフリオ、ベニート・A・マルティネス・オカシオ他

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<評価:★★★★★★★★☆☆+α>
<感想>
日本のフライヤーのタグライン「マフィアもネコもバッチ来い!」がどのようなものなのか、あまり重く
なさそうで本国の評価や、日本での評価も高いので、シネコンに出かけた。今年一発目。
ハズレは観たくないなと。

最近の3時間になんなんとする映画群にあって、2時間にも満たない上映時間だったが、なかなかな快作、
いや「怪作」だった。高校生でメジャーリーグのドラフト有望と言われていた男が交通事故をきっかけに
次々と我が身と関係者にとんでもなく強烈な不幸が降りかかるという不条理譚であるのだが、後半は
彼の再生譚に繋がっていくという話。

絶望の縁に投げやられ将来も夢もない形で終わる本当の不条理劇ではない。ラストにはニヤリとする
カタルシス(ありがちだけど)も用意されている。再生譚の方は、典型的なものだが、前半に降りかかる
不条理は、彼の心理を覗き見るには上手く構成されている。ええ、そんな人まで簡単に死んじゃうの?と
いう。

前半の肝になるのが、ユダヤ教の中でも正統派の(黒い服に帽子と三つ編みしたもみあげ)殺し屋2人。
容赦ない殺人は犯す一方で、安息日にはクルマの運転もせず、家族との夕食は大事にするという
アンビバレントな存在で、私にはガザでジェノサイドを繰り広げるネタニヤフを想起させた。2人の
方がよっぽど人間的ではあるのだけれど、その乖離が今の宗教を語っていると思えたのだ。

この映画は主人公ハンク(オースティン・バトラー)=サンフランシスコ・ジャイアンツ=友人から
預かった猫のバド(パンク風同居人から預かった猫)という構図があると思う。そして1998年という
時代設定の妙味がある。

SFジャイアンツ(私が一番好きなメジャー球団だが)は映画では振るわない数年を経て今シーズンは
ワイルドカードを争う位置にいる。バリー・ボンズを擁しているものの、4番だけではいかんともしがたい。
そんな足掻く球団と、悪いことばかり続くハンクは重なる。友人を乗せてのドライブ(クルマのカラーは
クロとオレンジのジャイアンツカラーだったと思う)の時、道にいた牛を避けようとして電柱に激突。
自分は膝に大怪我、親友は死んでしまった。これでプロの道は絶たれた。彼はその後、このシーンの悪夢
ばかり見る。もう終わったことなのに過去に縛られ未来が開けない。彼女はいるのだが、今ひとつ展望に
欠け、愛想をつかされることもある。

しかし、猫を預かったことからとんでもない犯罪に巻き込まれ、大きな不幸に見舞われる。そうした
時間の中で追い込まれたハンクは、決断し、そして人生のハンドルを大きく切るのだ。ギャングから
蹴飛ばされて腎臓が一つ無くなるような暴力でも、あまり怒らない人の良い??ハンク。いや人がいいの
ではなく、怒る意味さえ失っているようであった。
その過程は分かりやすいくらい分かりやすい。含んだ意味をもたせるのが好きなダーレン・アロノフスキー
にしては明解なカタルシス提示であった。細かい説明は端折られるところもあるが不用意な意味がついて
しまうよりは余程よい。そうした中でのハンクのバットは彼の意思のメタファーとして有効であった。
終わった、と思って席を絶たないほうが良い映画の典型。ハンクのお母さんにはびっっくりだ。(ノン
クレジット)主人公を務めるオースティン・バトラーがハマっている。
"Caught Stealing"とは野球用語で「盗塁失敗」ということであるが、これがなかなか含蓄があるのだ。

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<ストーリー>
ダーレン・アロノフスキーがオースティン・バトラー主演で贈るクライム・アクション。
1998年、ニューヨーク。恋人イヴォンヌと平穏な生活を送るバーテンダーのハンクは、隣人から猫の
世話を頼まれたことをきっかけに、マフィアが絡む思わぬ大事件に巻き込まれていく。

1998年、ニューヨーク。かつてはメジャーリーグのドラフト候補になるほど将来を期待されながら、
運命のいたずらによって夢破れたハンク(オースティン・バトラー)は、バーテンダーとして働きながら、
恋人イヴォンヌ(ゾーイ・クラヴィッツ)と平穏な生活を送っていた。

そんなある日、ハンクは変わり者の隣人ラス(マット・スミス)から突然、ネコの世話を頼まれる。
親切心で引き受けたところ、なぜか街中のマフィアたちが代わる代わる彼の家へ殴り込み、暴力に
任せて脅迫してくる悪夢の日々に悩まされることに。
やがてハンクは、自分が裏社会の大金絡みの事件に巻き込まれたことを知る。警察に助けを求めな
がら逃げ続けてるハンクだったが、ついにその身に大きな悲劇が降りかかる。
理不尽な人生に堪忍袋の緒が切れたハンクは、一念発起。自分を巻き込んだ隣人やマフィアたちへの
リベンジを決意する……。(キネマ旬報)

<IMDb=★6.9>
<Metascore=65>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:85% Popcornmeter:83%>
<KINENOTE=77.1点>
<映画com=3.7/5>



by jazzyoba0083 | 2026-01-14 16:10 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)