リチャード・ニクソン暗殺を企てた男

●「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」
  The Assassination of Richard Nixon
2004 アメリカ セネターインターナショナル 107分
監督:ニルス・ミュラー
出演:ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ドン・チードルほか

74年に実際に起こった事件をヒントに作られた。 気が小さいというか
自己をまっとうに主張できない男が、社会的に追い詰められていき、
遂には、旅客機を乗っ取ってホワイトハウスに突っ込むしかない、と
信じ切ってしまうまでを、ある種、社会病理学的に描いていく。
「タクシードライバー」のソフト版って感じもする。
一見ごく普通のセールスマンが、次第に狂気を孕んでいく様子を
ドキュメンタリータッチで重ねていく。

映画は、主人公のサム・ビックが、大好きなクラッシック音楽の、中でも
好きな指揮者、レナード・バーンスタインに宛てた手紙を語る形で
進んでいく。1973年、サムは別居をした妻マリー(ワッツ)と3人の子供
との生活を取り戻すため、オフィスの事務機器を扱う店のセールスマン
の職を得た。一生懸命頑張るサムだが、口下手で不器用なサムは、
上手く商売を運べず、いつも上司から、罵られている。
小器用にウソをつくことが、上手い商売のコツでもあるのだが、
ウソが嫌いで、真面目に、平等に暮すことがなによりの信条である
サムにとって、欺瞞に溢れた身の回りが、次第に我慢が出来なくなる。

サムは親友の黒人ボニーと移動タイヤ屋を経営することが夢だった。
銀行に行き、自ら描いたバスの画を見せて融資を懇願するサムだった
が、審査に時間がかかるといわれる。
しかし、約束の日になっても銀行からはナシのつぶて。
その代わりにポストに入っていたのは、マリーとの離婚決定通知書だった。

サラリーマンとして上司を怒らせたサムは、会社をクビになり、かつ融資は
出ず、家族には逃げられ、さらにタイヤ屋を始めることを前提に注文して
あった500本ものタイヤが宙に浮き、詐欺とみなされるが、兄が
なんとか救う。そして兄からも絶縁される。何も良いことがないサム。

テレビでは、ニクソンがおよそ実現しないようなこと、そしてウソと
明らかにわかるような奇麗事を並べていた。サムは次第に、悪いのは
この国の指導者であるニクソンが、と確信していく。そのためには
ニクソンを暗殺するしかないと。

そして、一人で航空機を乗っ取ってホワイトハウスへ自爆特攻を計画
する。
いるよなあ、こういう不器用な人。ただ、実行できない、あるいはしては
いけない自制心が勝っているから、事件にならないだけで、皆が
やりたい放題だったら、この世の中やっていけないですわね。
(最近の子供殺しなんかみてると、そうしたタガが外れて来たような
背筋の寒さを感じるのですが)
タケシの暴力描写にも通じる思想だろうか。
自分の胸に手を当てて考えてみると、誰の心にも「サム」はいる訳で。

ラストのサムの狂気は、殆ど精神病の領域で、少々おぞましかったけど、
ショーン・ペンが、「ミスティック・リバー」で見せたアカデミー賞演技が
ここでも光っている。「キングコング」で注目されたナオミ・ワッツも良い
キャスティングだと思いました。
レナード・バーンスタインへの手紙、というのも本当にあったことなので
しょうか?物語の運びとしてはユニークだったけど、このこと自体が
すでに病気っぽい感じがします。
尚、この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
Tracked from **Sweet縲ays*.. at 2006-08-15 07:21
タイトル : 『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』
リチャード・ニクソン暗殺を企てた男 CAST:ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ドン・チードル 1974年。妻と別居中のサム・ビック(ショーン・ペン)は、事務家具店の販売員として働いていた。しかしその内経営者に嫌気が差し、妻や子供ともうまくいかないサムは、しだいに当時の指導者であるニクソン大統領や権力者に反感を抱くようになる・・・・ 1974年2月にワシントンのボルチモア空港で実際起きたハイジャック未遂事件を元に描いた作品。 この大それた野望を抱いてしまった男サム・ビッグは...... more
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2008-06-30 20:48
タイトル : リチャード・ニクソン暗殺を企てた男
 『あまりにも孤独で、あまりにもナイーブなテロリスト。』  コチラの「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」は、Kaz.さんのご紹介で観させていただきましたぁ〜♪  ショーン・ペンがど〜んと映ってるジャケットを見て、気にはなっていたんですが、てっきり暗殺その....... more
Tracked from Yuhiの読書日記+α at 2008-07-13 12:53
タイトル : リチャード・ニクソン暗殺を企てた男
飛行機を乗っ取り、ホワイトハウスに突っ込んで、ニクソン大統領の暗殺を企てるに至った男の姿を追うドキュメンタリータッチのヒューマン・サスペンス。監督はニルス・ミュラー、キャストはショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ドン・チードル、ジャック・トンプソン。 <あらすじ> 1973年、サム・ビックは1年前に別居した妻マリーと3人の子供を取り戻すため、事務機具のセールスマンという定職に就いた。だが不器用なサムは成績を上げられず、上司のやり方にも不満を感じていた。ある日、裁判所からマリーとの一方的な婚姻解消通知が届...... more
Tracked from Patsaks at 2009-12-15 15:03
タイトル : リチャード・ニクソン暗殺を企てた男
リチャード・ニクソン暗殺を企てた男は、1974年にサミュエル・ビックが実際に起した事件を基に作られた。ちなみにリチャード・ニクソンは、当時のアメリカ大統領。 アカデミー俳優ショーン・ペンが演じる主人公のサム・ビックは、ナオミ・ワッツ演じる妻のマリーとは別居中で、男がいて離婚調停を申請している最中。 しかし、どちらかといえば恵まれた環境で育っている。 兄が経営するタイヤショップでセールスしていたが、兄の考える経営と自分の考える経営手法があわずに店を辞め、インテリアショップのセールスマンにな...... more
by jazzyoba0083 | 2006-08-12 18:30 | 洋画=ら~わ行 | Trackback(4) | Comments(0)