日本の夜と霧

●「日本の夜と霧」
1960 日本 松竹 107分
監督:大島渚、製作:池田富雄、脚本:大島渚、石堂淑朗、撮影:川又昴
出演:桑野みゆき、津川雅彦、小山明子、渡辺文雄、芥川比呂志ほか。

最近、こんなにイデオロギー臭い映画を観たことがなかった。あまりにも
直接的な共産党批判や礼賛、「破防法」や「安保体制」を巡る思想の
激突。これじゃ、4日で上映禁止、大島渚が松竹を飛び出すハズだ。

大島は京大で学生運動に深くかかわっていたことがあるので、自らの
総括として書いた、とも云われる。これで芸術祭に参加したんだから
大した度胸だ。

全編に流れる「若者よ~、体を鍛えておけぇ~」というコミンテルンの歌
ですか?
大学の寮に生活する学生運動家たち。それぞれのスタンスの思想を
抱えながら、体制に批判的である。その温度差がさまざまな軋轢を産む。
まず渡辺と桑野の結婚式のシーンからスタート。それが、思想をぶつけ
あい、イデオロギーで相手を罵倒する修羅場と化していく。
そんな中で、樺美智子死亡事件が起きる。そして、寮に警察のスパイと
いう男が忍び込み、捕らえられる。
口先ばかりでアジる男、カラ元気なだけの男、日和見の男、穏健派、
武闘派さまざま入り乱れて、ある意味青春が描かれていく。
「破防法が制定されてしまうと、また戦前に戻るような気がするのだが」と
のセリフは、破防法を別な言葉に入れ替えると今でも十分通用する。

津川や渡辺、小山らの俳優以外の学生役が、カミカミだったりするのだが
それが、変にリアリティをかもしだしていている。大島の狙いなんだろう。
それと昭和35年の時代の雰囲気を判っていないと、今の若い人には
理解が難しかろう。昔の大学生って、こんな感じでもあったのだよなあ。
それにしても、珍作ではある。川又昴の長回しの映像が独特の味付け
になっている。
この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
by jazzyoba0083 | 2006-08-28 23:13 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)