蝉しぐれ

●「蝉しぐれ」
2005 日本 東宝 蝉しぐれ製作委員会(電通、テレビ朝日ほか) 131分
監督:黒土三男 原作:藤沢周平
出演:市川染五郎、木村佳乃、ふかわりょう、今田耕治、原田美枝子、緒方拳
    小倉久寛、根元りつ子、大滝秀治、大地康雄、利重剛、山下徹大他。
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藤沢周平原作には「たそがれ清兵衛」ほか、佳作がたくさんあるので、
楽しみにして観ました。長い映画だけに覚悟がいたけれど。
まず、ファーストカット?に「製作 M木T夫」(D通社長)の文字が1つ。
いきなりどっちらけ。それは大D通の社長さんで、この映画の製作資金の
多くを出しているのは判りますが、あまりにもあからさまで、アラブの王様じゃ
ないんだから、勘弁してよ、って感じです。映画好きなら、もう少し控えめでも
良かったんじゃないのかなあ。

この手の日本映画は賛否分かれるところでしょう。「北の零年」もそうだった
けど、傑作とみるか、偉大なる駄作と見るか。
映画好きには、酷評されているようですね。黒土監督、まだまだ山田洋次や
黒澤になり得ず、もう少しがんばりましょう、って感じで。

で、私は、というと、第一に長い。大作をアダプトするには2時間少々は
短すぎという人がいるが、それならこの脚本が下手だ。
第二、黒土監督は15年来、藤沢作品を映画化したかったそうだが、チカラ
入りすぎで、たそがれ~や、そのほかの作品に負けてはならじ、とアングルと
季節描写に力点を置きすぎているので、肝心のストーリーが負けている。
「リバーランズ・スルー・イット」を見習いなさい。ワンカットワンカットの画が
全部、一幅の日本画になっている、と言われたかったのだろうか、
それはそれは画としては大変奇麗ですよ、日本の四季は良く描かれて
いますよ。それが目的化しちゃまずいでしょ。それで時間とっちゃまずいでしょ。

監督が肩にチカラが入りすぎちゃいました、って典型の仕上がりじゃない
かな。シーンも山あり海あり、草原あり、川あり、肥沃な稲田あり、それに
四季がからんで、もう、写真集でも出したら?って感じ。それに、ふかわと
今田耕治のキャスティングはどうなんだろうか。染五郎と木村だけでも
現代が出ちゃうのに、せっかく日本の自然を200年くらいさかのぼって
描いているのなら、別のキャスティングもあったのではないかなあ。
加えて、ラスト。木村佳乃のセリフは「いわずもがな」のモノが多すぎで、
更に過去の振り返りシーンも出しすぎ。親父さんの遺骸を押すのを
泣きながら手伝うシーンだけで十分でしょう。こうやって映画が長くなっちゃう
んだよな。


東北の小藩。牧平四郎(染五郎)は、下級武士の跡取り。しかし、
父(緒方)が、望まぬ跡目争い騒動に巻き込まれ、理不尽にも切腹させ
られる。長じて、父を死に追いやった主席家老から、親父の地位に復権
させてもらう。敵側が恩を売ったのだ。
平四郎には幼馴染でお互いに淡い恋心を通わせていた近所のおふくが
いた。しかし、ある日おふくは江戸表に出ることになり、やがて殿様の
側室となり、男の子を産む。しかし、政敵に追いやられるように国許に
戻され、殿様の別邸「欅御殿」に幽閉状態となる。
平四郎は、敵と見る主席家老から、おふく(木村)の子どもをさらって来い
と命ぜられる。「今の地位に戻した恩を忘れてはいまいな」と。意を決した
平四郎は、欅御殿に赴き、正面からおふくに会い事情を説明し、一旦
子どもを懇意の藤兵衛にあずけ、父側の家老で今は権力から離れている
青山に全てを訴えることにする。
幼馴染のふかわと今田耕治が応援をすることになるのだが。
欅御殿を囲む主席家老の手勢。主席家老はこうなることを予想し、
皆殺しを狙っていたのだった。多勢を向こうに回して、家中の刀を集めて
座敷に林のように突き立てて応戦する。あやかしの剣を使う敵にも勝つ
ことができる。おふくの子どもを無事味方の家老のもとに届けられた
のだった。そして数年が経過。

藩内は、平四郎側に落ち着いたようで、おふくの子が跡目を継ぐことが
決まり、おふくは髪を落として尼になろうと決心、一目だけでも、平四郎に
会いたいと手紙を出す。そして、事件以来久しぶりに会う二人。
初めてお互いの想いを確認したのだった。

さんざん腐しましたが、「駄作」とは言い切れないと思いますよ。
私も日本映画には厳しい注文を付けたいので、このコメントになりましたが、
観てソンとは思いませんから。
尚、この映画の詳しい情報は

こちら
まで。
Tracked from 楽蜻庵別館 at 2006-10-13 10:05
タイトル : <蝉しぐれ> 
2005年 日本 132分 監督 黒土三男 脚本 黒土三男 撮影 釘宮慎治 音楽 岩代太郎 出演 牧文四郎:市川染五郎(7代目)    ふく:木村佳乃    牧助左衛門:緒形拳    里村左内:加藤武    小和田逸平:ふかわりょう    島崎与之助:今田耕司    文四郎(子供時代):石田卓也    ふく(子供時代):佐津川愛美... more
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2008-05-17 18:31
タイトル : 蝉しぐれ
 時は江戸時代−  15歳の牧 文四郎(石田)は、東北の下級武士の父親の助左衛門(緒形)を尊敬し、剣術と学問に明け暮れていました。  隣家に住む幼馴染のふく(佐津川)に淡い恋心を抱いていた文四郎でしたが、ふくもまた優しく頼れる兄のような存在の文四郎に憧れて...... more
Commented by みのり(楽蜻庵別館) at 2006-10-13 10:19 x
TBありがとうございます。 とても美しい映像でしたが、jazzyoba0083さんのおっしゃるように、景色の美しさや四季の移り変わりに気がとられ、わたしなどは肝心の物語より風景の美しさに目がいってしまいました。
「リバーランズ・スルー・イット」も風景素晴らしかったですね。 好きな映画の一つです。 ブラピもカワイかったし…。
by jazzyoba0083 | 2006-10-07 17:30 | 邦画・新作 | Trackback(2) | Comments(1)