2008年 02月 03日
アメリカン・ギャングスター American Gangster
2007 アメリカ Universal Pictures,Imagine Entertainment 157min.
監督:リドリー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、ルビー・ディー他

この映画は、スタッフロールが出終わって会場が明るくなるまで席を立ってはいけません。
今年2本目のシネコン鑑賞は、この映画。さすが封切って数日なので、小屋はほぼ満員。
しかし、大作のワリには小屋が小さいな。
157分は長いが、長さはそう感じさせなかった。前半ややタルいところはあったが、全般的に
よく出来た脚本だと思う。実話に基づいている映画なので、真実味から迫るところはあるが
派手さははない。一人の黒人マフィアが成り上がり、没落するまでを描く。モデルになった
ギャングはまだ存命ではないか?本物はデンゼル・ワシントンほどいい男ではない。
頭のいい男であり、非情な男であったため、60年代後半でもこれだけの闇社会を作り上げる
ことが出来たのだろう。

リドリーの手腕は、普通。マーティン・スコセッシやブライアン・デ・パルマのように、ショットの
アングルやカットのメリハリ、などの技巧は余り感じさせない。普通だ。ラスト近くにアジト襲撃の
シーンでは手持ちに切り替わるのだが、揺れすぎ。時間が短いからいいけど。
でも、リドリーの主張するところは、技巧を感じさせないからこそ、伝わってくるのかもしれない。
長いストーリーを破綻なく纏め上げていた。ラッセル・クロウは、当時数少なかった良心派の
刑事を力み無く演じていた(離婚して、子供の親権を争そっているトラブルがあったり)。
デンゼルの悪役は、始めてみた。「ジョンQ」の時は最初からの悪役ではなかったと思うが、
どうも善人のイメージが強く、入り込めないところがあった。演技は悪くは無いのだが、笑顔が
どうしてもねえ、いい人づらだもんで。

好きなところは、デンゼルがラッセルの取調べを受けるところで、
デンゼルが「お前が明日死体になっているってのもあるんだぜ」と凄むと、ラッセル(刑事)が
「フランク、列に並べ。俺を殺したがっているヤツは列を作ってならんでるんだ」というところ、

それと、いよいよ追い詰められたデンゼルが日曜教会から出てくると、デンゼルのリムジン
に、ラッセルが背もたれして待っている、周りは警官とパトカーだらけ、というところ。バックに
アメイジング・グレースが流れているのもいい。

そして、スタッフロールが出終えたラストカット。みなさん、エンドロールは最後まで観なくちゃ
だめですよ。この映画で一番大事なシーン(カット)があるんだから!
60年代後半から70年代初頭のアメリカが舞台なのだが、この時期、アメリカの警察が
ここまで腐敗していたとは、ビックリ。それと、ラッセル演じた麻薬取締官は警察を辞めて
弁護士に転じるのだが、最初に弁護したのはデンゼル演じたフランク・ルーカスだ、という
のも、判ったようで判らない話ではありませんか?
1968年、ニューヨーク。黒人ギャングのボス、バンピーの右腕として仕えてきた
フランク・ルーカス(デンゼル)。彼はバンピー亡き後、ボスの座を引き継ぎ、自らの帝国を
築き上げようと決意。そして、東南アジアから純度100パーセントのヘロインを直接仕入れる
独自ルートを開拓し、それらを“ブルー・マジック”のブランド名で市場へ売りさばくことに
成功したことから、フランクは瞬く間に麻薬王として君臨していく。
一方、ニュージャージーの警察に所属する刑事リッチー・ロバーツ(ラッセル)。彼は、警官の
汚職がまかり通っていたこの時代に潔癖な仕事を貫いていたため、周囲から疎まれ孤立して
いた。また私生活では元妻と養育権で係争する傍ら、司法の道を目指している。

そんな彼はある時、検察官からエセックス郡麻薬捜査班のチーフに抜擢される。
やがて大衆に蔓延するブルー・マジックの捜査を進めるうち、フランクの存在に辿り着く
リッチーだが…。(By allcimema)
フランクは、手下を自分の親族で固め、いつも地味な格好をして目立つことを嫌った。
普段は品行方正な市民を装い、ボロがでないようにしていたのだ。彼のヘロインのルートは
ベトナムのアメリカ軍。戦死した兵士のお棺にヘロインを入れて密輸していた。これも
ベトナム戦争の終結で終わりを告げた。最後に軍用機に積んだ2000キロのヘロインが
リッチーたちの捜査の網にかかり、そこから足がついて、アジトがバレ、全員射殺されるか
逮捕された。
逮捕されたフランクにリッチーが要求したのは、彼がこれまでに抱き込んだ汚職警官を
一人残らず挙げることだった。取引に応じたフランクは次々に警官や刑事を指摘。
NY市警の実に多くの警官が、逮捕されたのだった。この事件をきっかけにリッチーは警察を
辞め、弁護士になった。最初の依頼人はなんとフランクだった。
フランクは15年の実刑判決を受け、今は刑期を終えて地球のどこかにいるはずだ。何を
しているのだろうか?親族もバラバラになり、射止めた美人のミス・ベネズエラの奥さんも
帰ってしまった。ケイマン島に隠しておいた稼いだ金も全て没収された。
ラストカットは何を意味するのだろうか??
尚この映画に関する詳しい情報は
こちらまで。
jazzyoba0083さまのレビューをお読みして、
>リドリーの主張するところは、技巧を感じさせないからこそ、伝わってくるのかもしれない。
そう、まさに仰るとおりです。スコセッシなんかと何が違うのだろうかとずっと考えていたら、これですね。「キングダム・オブ・へヴン」なんかもそうですし、「グラディエーター」と「ギャング・オブ・ニューヨーク」の違いはまさにこの点にありますね。
とてもすっきりしました。
また、遊びに参りますので、宜しくお願いします。

