アメリカン・ギャングスター American Gangster

●「アメリカン・ギャングスター American Gangster」
2007 アメリカ Universal Pictures,Imagine Entertainment 157min.
監督:リドリー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、ルビー・ディー他
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この映画は、スタッフロールが出終わって会場が明るくなるまで席を立ってはいけません。

今年2本目のシネコン鑑賞は、この映画。さすが封切って数日なので、小屋はほぼ満員。
しかし、大作のワリには小屋が小さいな。
157分は長いが、長さはそう感じさせなかった。前半ややタルいところはあったが、全般的に
よく出来た脚本だと思う。実話に基づいている映画なので、真実味から迫るところはあるが
派手さははない。一人の黒人マフィアが成り上がり、没落するまでを描く。モデルになった
ギャングはまだ存命ではないか?本物はデンゼル・ワシントンほどいい男ではない。
頭のいい男であり、非情な男であったため、60年代後半でもこれだけの闇社会を作り上げる
ことが出来たのだろう。
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リドリーの手腕は、普通。マーティン・スコセッシやブライアン・デ・パルマのように、ショットの
アングルやカットのメリハリ、などの技巧は余り感じさせない。普通だ。ラスト近くにアジト襲撃の
シーンでは手持ちに切り替わるのだが、揺れすぎ。時間が短いからいいけど。
でも、リドリーの主張するところは、技巧を感じさせないからこそ、伝わってくるのかもしれない。
長いストーリーを破綻なく纏め上げていた。ラッセル・クロウは、当時数少なかった良心派の
刑事を力み無く演じていた(離婚して、子供の親権を争そっているトラブルがあったり)。
デンゼルの悪役は、始めてみた。「ジョンQ」の時は最初からの悪役ではなかったと思うが、
どうも善人のイメージが強く、入り込めないところがあった。演技は悪くは無いのだが、笑顔が
どうしてもねえ、いい人づらだもんで。
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好きなところは、デンゼルがラッセルの取調べを受けるところで、
デンゼルが「お前が明日死体になっているってのもあるんだぜ」と凄むと、ラッセル(刑事)が
「フランク、列に並べ。俺を殺したがっているヤツは列を作ってならんでるんだ」というところ、
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それと、いよいよ追い詰められたデンゼルが日曜教会から出てくると、デンゼルのリムジン
に、ラッセルが背もたれして待っている、周りは警官とパトカーだらけ、というところ。バックに
アメイジング・グレースが流れているのもいい。
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そして、スタッフロールが出終えたラストカット。みなさん、エンドロールは最後まで観なくちゃ
だめですよ。この映画で一番大事なシーン(カット)があるんだから!

60年代後半から70年代初頭のアメリカが舞台なのだが、この時期、アメリカの警察が
ここまで腐敗していたとは、ビックリ。それと、ラッセル演じた麻薬取締官は警察を辞めて
弁護士に転じるのだが、最初に弁護したのはデンゼル演じたフランク・ルーカスだ、という
のも、判ったようで判らない話ではありませんか?

 1968年、ニューヨーク。黒人ギャングのボス、バンピーの右腕として仕えてきた
フランク・ルーカス(デンゼル)。彼はバンピー亡き後、ボスの座を引き継ぎ、自らの帝国を
築き上げようと決意。そして、東南アジアから純度100パーセントのヘロインを直接仕入れる
独自ルートを開拓し、それらを“ブルー・マジック”のブランド名で市場へ売りさばくことに
成功したことから、フランクは瞬く間に麻薬王として君臨していく。
一方、ニュージャージーの警察に所属する刑事リッチー・ロバーツ(ラッセル)。彼は、警官の
汚職がまかり通っていたこの時代に潔癖な仕事を貫いていたため、周囲から疎まれ孤立して
いた。また私生活では元妻と養育権で係争する傍ら、司法の道を目指している。
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そんな彼はある時、検察官からエセックス郡麻薬捜査班のチーフに抜擢される。
やがて大衆に蔓延するブルー・マジックの捜査を進めるうち、フランクの存在に辿り着く
リッチーだが…。(By allcimema)

フランクは、手下を自分の親族で固め、いつも地味な格好をして目立つことを嫌った。
普段は品行方正な市民を装い、ボロがでないようにしていたのだ。彼のヘロインのルートは
ベトナムのアメリカ軍。戦死した兵士のお棺にヘロインを入れて密輸していた。これも
ベトナム戦争の終結で終わりを告げた。最後に軍用機に積んだ2000キロのヘロインが
リッチーたちの捜査の網にかかり、そこから足がついて、アジトがバレ、全員射殺されるか
逮捕された。
逮捕されたフランクにリッチーが要求したのは、彼がこれまでに抱き込んだ汚職警官を
一人残らず挙げることだった。取引に応じたフランクは次々に警官や刑事を指摘。
NY市警の実に多くの警官が、逮捕されたのだった。この事件をきっかけにリッチーは警察を
辞め、弁護士になった。最初の依頼人はなんとフランクだった。
フランクは15年の実刑判決を受け、今は刑期を終えて地球のどこかにいるはずだ。何を
しているのだろうか?親族もバラバラになり、射止めた美人のミス・ベネズエラの奥さんも
帰ってしまった。ケイマン島に隠しておいた稼いだ金も全て没収された。
ラストカットは何を意味するのだろうか??
尚この映画に関する詳しい情報は

こちら
まで。
Commented by turtoone at 2008-02-10 18:12
こんにちはコメント有難うございました。

jazzyoba0083さまのレビューをお読みして、
>リドリーの主張するところは、技巧を感じさせないからこそ、伝わってくるのかもしれない。

そう、まさに仰るとおりです。スコセッシなんかと何が違うのだろうかとずっと考えていたら、これですね。「キングダム・オブ・へヴン」なんかもそうですし、「グラディエーター」と「ギャング・オブ・ニューヨーク」の違いはまさにこの点にありますね。

とてもすっきりしました。

また、遊びに参りますので、宜しくお願いします。

by jazzyoba0083 | 2008-02-03 16:35 | 洋画=あ行 | Trackback(43) | Comments(1)