2014年 07月 09日 ( 1 )

偽りなき者 JUGTEN

●「偽りなき者 JUGTEN」
2012 デンマーク Zentropa Entertainments.115min.
監督:トマス・ヴィンターベア
出演:マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、アニタ・ヴィタコプ、ラセ・フォーゲルストラム他
偽りなき者 JUGTEN_e0040938_17123428.jpg

<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
この年のオスカー外国映画賞にノミネートされたほか、カンヌではマッツが男優賞を
獲得するなど、各映画祭を賑わせた作品だ。実話っぽいけど完全にフィクション。だが
ノンフィクション以上に真実に迫る力を持つ創作で、暗いし、終わり方も好きじゃないけど、
見事な出来だ、と認めざるを得ない作品。また主演のマッツも見事。

いわゆる「冤罪」ものなのだが、原題が「狩り」であることの意味が深くストーリーに
埋め込まれている。冒頭の狩りのシーンとラストのシーンは、まさにこの作品の本質を
突いているものであろう。さらに、身に覚えのない罪で村八分に会い、人生が台無しに
なる男を描きつつ、観客たちがいつその立場に立たされるか分からない、と思わせると
同時に、逆にそういう人物を爪はじきにする側に立つ可能性も示唆しているのだ。

人格を否定され、人としての矜持を持てないところまで追い込まれたとき、人はどうすべき
なのか、つくづくと考えさせられる。
だが、突っ込みどころもある。幼稚園の園長や、その上部組織?の指導員みたいな人の
軽はずみな行動は、いくらなんでも短慮すぎないか?幼い園児の云うことだけを一方的に
取り上げ、主人公を罪人に仕立て上げた村人たちは、逆に園児が「うそだったの」と云っても
絶対に信じなくなってしまうだろう。普通は反論の機会を与えるとかなんとかするだろうに、と
感じた。しかし警察が釈放しても、いったん流れた噂は消せるものではない。特に閉鎖的な
田舎のコミュニティでは。それと友達の弁護士以外に弁護士に相談するとか思いつかなかった
のかな。

園児クララの後半での告白で、主人公の誤解は解けたのかと思わせる、1年後の描写。
この1年間に何があったのかは一切省かれている。町の人が反省して謝ったのか、
園長はどうしたのか、初期の段階で娘クララから「違うことをいってしまった」と打ち明けられた
にも関わらず、主人公の濡れ衣を晴らすことをしなかった母親はどうしたのか。
買い物に行ったスーパーで、お前には売らないと、ボコボコにした店員や店長はどうしたのか。
主人公の家に石を投げ込み、愛犬を惨殺した犯人はだれか。そのあたりも一切省かれている。
カタルシスのありようとしては、「え?」という感じなのだ。

そして、息子マルクスが晴れて狩猟に出られる年齢に達したお祝いの狩りの日、何者かに
狙撃される主人公。まだ事態は解決していなかったわけだ。冒頭鹿狩りをしていた主人公は
ラストで猟銃で鹿のように狙われる身となっていた。つまり「狩り」をする側とされる側は、
人間社会では容易に入れ替わる。無慈悲に、非合理に、ということ。それを云うために敢えて
あいまいな1年後を設定したということだろう。監督(脚本も)の狙いはさまざまなメタファーを
提示しながら構成されていて分かるのだが、やはり終わり方としては気分が良い映画とは
言えないのだ。

クリスマスの夜のミサに出かけた主人公だが、背広を着始めたとき、「こいつ見せつけのため
自殺するんじゃないか」と思ったが、教会の席に座り、嘘をついたクララの父であり親友である
男を凝視つづけ、讃美歌の途中で前の机を蹴るところは、主人公の悔しさ、無念が溢れて
見事なハイライトであった。マッツが全編いい演技。それと名前は知らないけど、デンマークの
俳優さんたちも、園児クララを始め、いい演技であった。暗い映画だけど、胸に響きます。
偽りなき者 JUGTEN_e0040938_1713043.jpg

<プロダクションノート&ストーリー>
「無実の罪を着せられた男の孤独な戦いを描くヒューマンドラマ。監督は、「光のほうへ」の
トマス・ヴィンターベア。出演は、「007/カジノ・ロワイヤル」のマッツ・ミケルセン、
「セレブレーション」のトマス・ボー・ラーセン。
2012年カンヌ国際映画祭で主演男優賞、エキュメニカル審査員賞、ヴァルカン賞を受賞。

離婚と失業の試練を乗り越え、幼稚園の教師という職に就いたルーカス(マッツ・ミケルセン)は、
ようやく穏やかな日常を取り戻した。しかしある日、親友テオ(トマス・ボー・ラーセン)の娘
クララ(アニカ・ヴィタコプ)の作り話によって、ルーカスは変質者の烙印を押されてしまう。

幼いクララの証言を、町の住人のみならず、親友だと思っていたテオまでもが信じて疑わな
かった。無実を証明できる手立てのないルーカスの言葉に、耳を貸す者はいない。
仕事も親友も信用も失ったルーカスは、小さな町ですっかり孤立してしまう。彼に向けられる
憎悪と敵意はエスカレートし、一人息子のマルクス(ラセ・フォーゲルストラム)にまで危害が
及ぶ。ルーカスは、無実の人間の誇りを失わないために、ひたすら耐え続ける生活を余儀
なくされる。クリスマス・イブ、追い詰められたルーカスはある決意を胸に、町の住人たちが
集う教会へ向かう……。」(Movie Walker)

クララはルーカスのことが本当はすごく好きで、まとわりつくほどだったのだが、ある日
ルーカスにビーズで作ったハートをプレゼントしようとし、唇にキスをしたのだが、ルーカスは
それをたしなめ、ハートはほかのお友達にあげなさい、唇にキスはしちゃいけないよ、と
注意するのだ。これが幼い恋心を傷つけてしまった。
たまたま家で兄とその友達がiPadでエロ映像を観ていて「おちんちんが木のようにピンピン」
という言葉を聴いてしまい、頭に残っていたその言葉を園長の前で、「ルーカスなんか嫌い。
おちんちんが・・・」と言ってしまうのだった。それを頭から信じてしまった園長は一人で大騒ぎ
を始め、ルーカス本人から何も聞かずに保護者会を開き、警察に連絡してしまう。
ルーカスは逮捕されるが、園児たちの証言が矛盾だらけで、証拠もないことから釈放される。
しかし、村人たちの「変態」を排除する雰囲気はピークに達していた。むしろ近親憎悪に近い
恐ろしさで、ルーカスを排除する。しかしルーカスは逃げることなく、いたぶられながらも
何とか事態を変えようと努力しては観るのだが。弁護士の友人はれんらくが取れなくなって
しまう。園内で仲良くなった彼女の口からも「変態じゃないわよね」と云われ、彼は彼女を
叩き出してしまう。彼に対する村人のイビリはエスカレートして行き・・・。

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2014-07-09 23:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)