●「グレイテスト・ショーマン The Greatest Showman」
2017 アメリカ 20th Century Fox,Chernin Entertainment,TSG Entertainment. 105min.
監督:マイケル・グレイシー
出演:ヒュー・ジャックマン、ザック・エフロン、ミッシェル・ウィリアムズ、レベッカ・ファーガソン
   ゼンデイヤ、キアラ・セトル他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
「地上最大のショウ」(The Greatest Show on Earth)という宣伝文句を付けて、「サーカス」を
大衆娯楽として定着させた、日本で言うと江戸末期から明治初期にかけてのアメリカの興行師
P・T・バーナムの物語。(同名の映画は1952年、セシル・デミル監督、チャールトン・ヘストン主演で
製作され、その年のオスカー作品賞他を獲っている)だが、調べてみると本作ではバーナムの人生が大胆に
翻案されていて、映画として起承転結に則ったサクセスストーリ&娯楽作として仕上げている。

日本での触れ込みは、「ラ・ラ・ランド」のチームが手がけたとしているが、スタッフの中で同じなのは
楽曲を手掛けたベンジ・パセックとジャスティン・ポールだけで、監督もプロデューサーも異なる。
なので、楽曲を比較することはいいが、映画全体を比較することは意味がないと思う。

実際のバーナムも見世物小屋からサーカスへと発展させた興行師だが、作品を通して気分的に引っかかりを
持ってしまったのだった。それは矮人や全身毛だらけの男や、髭の生えたデブの女性歌手など、人と違うことは
決して引け目ではなく、人間はそれぞれ異なっていて当たり前、いや違っていることを武器にしよう、社会は
それを受け入れる世界観を持つことこそ大切、とする主張は分かるけど、バーナムのやっていることは所詮
見世物小屋なんだよなあ、ということ。

現代でのアメリカの風潮に対する「寛容の精神」に対する警告とも受け取れるが、サーカスの団員らが作品中で、
自分に自信を持ち、仲間を家族として受け入れて活き活きと人生にぶつかる様は立派と思うけれど、彼らを
見る目が100%、尊敬の念ではなく、やはり怖いもの見たさ、奇異なもの見たさが自分のどこかにあるのでは
ないか、思うと、素直に喜べない自分もいるのだ。
またバーナムのパートナー、カーライル(エフロン)の、空中ブランコの名人である黒人女性との(あの時代とは
言え)障害の多い恋での苦労に対しても、これまで幾千と描かれてきた同様のシチュエーション以上に、自分への
問いかけが色濃く残ってしまったのだった。まるでリトマス試験紙にさらされているように。
ということは自分の中に、「非寛容」な部分が残っているということか。それがどうも居心地の悪さとなって
残ってしまった感が拭えない。それはもしかしたらRotten Tomatoesで、一般より批評家受けが悪い評価に
現れているのかもしれない。もちろんバーナムの史実とはかなり離れた「居心地良すぎる」物語に眉根をひそま
せる評論家も多いのだろうけど。

バーナム自身が、団員たちは所詮見世物で二流、一流の芸術に憧れ欧州からジェニー・リンドをアメリカに迎えて
興業を打ったことで団員たちと自分に距離を置いてみているシークエンスもあるので観ている方は余計に追い
打ちを掛けられるのかもしれない。
それなら団員たちを普通の空中サーカスや猛獣使い、ピエロなどでまとめ、その中での恋愛譚や技術譚に
仕上げれば良かったか、というと、それなら1952年の映画と変わりなく、「今」それを作る意味が失われる
だろう。そのあたりはプロデュースサイドの悩みでもあった想像する。

一方で「ショウほど素敵な商売はない」の楽曲を彷彿とさせ、「ラ・ラ・ランド」のジャジーなテイストとは
違った雰囲気を持つ楽曲たちの出来はいいし、現代的な踊りも見事である。
またストーリーも、バーナムの少年時代、幼馴染のお金持ちのお嬢さんを妻とし貧乏に堪えつつ
二人の娘とともに、見世物小屋を作る、そしてサーカスでの成功、そこからジェニー・リンドの興業と
夫婦の危機、結びは劇場の火災からテント小屋での再スタートと家族の再生、起承転結を教科書通りにまとめ上げ、
お子様でも分かりやすい展開と主張を絡めて105分という適切な時間内に収めたところはお見事である。

本来1952年のデミル監督作品のようにスペクタクルで表現されれば、底抜けの娯楽作として出来上がった
のかもしれないが、社会性を取り込んだため、それがある種の居心地の悪さを表出させてしまったとしたら
作品としてどこかチグハグな感じを残した、と評する人もいるだろう。
片や19世紀の時代性と現代的ポップな楽曲との落差は、本作を今の映画として位置づける大きな役割を担い、
作品表現の重要なファクターとなっている。それはそれで成功していると思う。

文句なしのエンターテインメント、と言い切れない部分に個人的にマイナス面が残るミュージカルであった。
(映画のTIPSとしては、ゼンデイヤの空中ブランコは吹き替えなし。冒頭の20世紀フォックスの古いロゴは
1958年の「長く熱い夏」から4Kデジタルで抜き出したもの。最後に出てくるサーカスの象の名前は
「ジャンボ」といい、バーナムが名付けた実在の名前。大きなものを「ジャンボ」というきっかけに。
ジェニー・リンドはメンデルスゾーンとかショパンと同時代の人。スゥエーデンではお札に描かれるほどの著名人)
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<ストーリー>
19世紀半ばのアメリカ、P.T.バーナム(ヒュー・ジャックマン)は幼なじみの妻チャリティ(ミシェル・
ウィリアムズ)を幸せにしようと挑戦と失敗を繰り返してきたが、オンリーワンの個性を持つ人々を集めた
ショーをヒットさせ、成功をつかむ。
しかし、バーナムの型破りなショーには根強い反対派も多く、裕福になっても社会に認めてもらえない状況に
頭を悩ませていた。

そんななか、若き相棒フィリップ(ザック・エフロン)の協力により、イギリスのヴィクトリア女王に謁見する
チャンスを得る。バーナムはレティ(キアラ・セトル)たちパフォーマーを連れて女王に謁見し、そこで美貌の
オペラ歌手ジェニー・リンド(レベッカ・ファーガソン)と出会う。彼女のアメリカ公演を成功させれば、一流の
プロモーターとして世間から一目置かれる存在になると考えたバーナムは、ジェニーのアメリカ・ツアーに
全精力を注ぎ込むため、団長の座をフィリップに譲る。
フィリップは一座の花形アン(ゼンデイヤ)との障害の多い恋に悩みながらも、ショーを成功させようと奮闘する。
しかし、彼らの行く手には、これまで築き上げてきたものをすべて失うかもしれない波乱が待ち受けていた……。
(Movie Walker)

<IMDb=8.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:55% Audience Score:89% >




by jazzyoba0083 | 2018-02-18 11:30 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)