2018年 03月 10日 ( 1 )

スモーク  Smoke (1995)

⚫「スモーク Smoke  (1995)」
1995 アメリカ・日本  Miramax 113min.
監督:ウェイン・ワン  原作・脚本:ポール・オースター
出演:ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート、ストッカード・チャニング、フォレスト・ウィテカー
   アシュレイ・ジャッド、ジャレッド・ハリス他
e0040938_17212684.jpg
<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
いやあ、驚いた。こんなところにこんな名作が。(私が知らなかっただけだけど)昨日のイタリアものに
続いての群像劇だったが、やはりアメリカが舞台となるとタッチが全く変わるので、それはそれで面白かった。
甲乙つけ難し。

とにかくポール・オースターの脚本が堪らなく愛おしい。それをウェイン・ワンが愛情たっぷりに描く。
いい映画を観たなあと心から思える作品と断じて言える。さらにハーヴェイ・カイテルを始めとする
タバコ屋に集まる男たちなどの俳優らが演じる人物描写が、これまた愛おしい。いままで何で気が付かったのか、
こんな素敵な映画。オスカーは獲ってないんだよね。ベルリンでは評価されたけど。大向うを唸らせるような
映画ではないが、素敵な映画ってこういうもんでしょ?という見本みたいな作品。是非機会があれば観てください。

で、どんな話かというと、オーギー・レン(ハーヴェイ・カイテル)が営む雑貨屋兼タバコ屋。そこでは、落語の
床屋や湯屋のように男が集まりいいたことを言っている。万引き少年もいたりして。そんなタバコ屋に小説家のポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)が今日も今日とてタバコを買い求めに来る。オーギーはもうずいぶん
長い間、店の外の交差点をカメラで定点観測していて、それをポールに見せるのだが、そこにはポールの、殺され
た最愛の妻の姿があった。妻の死以来なかなか筆が進まないポール。フラフラと外にでると車に惹かれそうになりそこをラシッドという青年に助けられる。
こうして物語が始まる。主要な人物のパートに別れて物語が綴られていくが、それぞれに相関関係があり、その
綾が面白くも考えさせられる。

本作の主題であり、また裏テーマである「嘘と本当」。つまり人は生きていく上で、臨むと望まざるとに関わらず
虚々実々の人生を歩まざるを得ないのだ。この映画では、嘘をついた時、気分を転換したい時、タバコに火を付ける
シーンが多い。その紫煙は人間の喜怒哀楽のメタファーのようである。

タバコ屋オーギー(と別れた妻)、彼らの娘ではないか、という18歳のフェリシティ(アシュレイ・ジャッド)と
いう娘(実際オーギーの娘かどうかは明らかにされない)そして、小説家ポール、彼を助けたラシッド少年と
隻腕の自動車修理工コール(フォレスト・ウィテカー=ラシッドの実父らしい)、それぞれの人生を垣間見ながら
観ている人は、伏線の気持ち良い回収とともに人生の実相についてさまざまなことを考えるだろう。
白眉は最後の(この映画の元となった「オーギー・レンのクリスマス」)話。ハーヴェイ・カイテル15分の独演だ。そしてその映像をエンデイングロールバックに持ってくるというお洒落さ。そこに流れるトム・ウェイツの歌。
更にエンディグで流れる名曲にしてこの映画のテーマのような「煙が目に染みる Smoke get in your eyes」。
冒頭からラストまで、良く練られた構成、達者な役者たちの温かさに満ちた演技、うーん、言葉でこの映画の
良さを説明するのは難しい。とにかく観ていただきたい。

開巻、ワールドトレードセンターが見えるNYの遠景から始まるのだが、この映画は9.11以前の作品。タバコ屋の
客の一人がいみじくも言う。「戦争が近い。敵はサダム・フセインあたりだろう」と。けだし慧眼であった。
とすると、今のギスギスしたアメリカになるちょっと前の、まだアメリカ社会の懐が今よりはまだ深かったこと
なども見えてこようというものだ。
e0040938_17213235.jpg
<ストーリー:結末まで書いてあります>
ニューヨーク、ブルックリンの街角の煙草屋に集う三人の男を巡るさまざまな物語を綴る、ユーモアと人情味
あふれる人間ドラマ。香港出身の監督ウェイン・ワン(「ジョイ・ラック・クラブ」)と現代アメリカ文学を
代表する小説家の一人ポール・オースターの協力から生まれた映画で、脚本はオースターの短編『オーギー・
レーンのクリスマス・ストーリー』(邦訳は新潮文庫『スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス』に所収)を
モチーフに彼自身が執筆。
日本の配給会社ユーロスペースと海外向け映画企画開発会社で「ハワーズ・エンド」などに参加しているNDFの
製作で、エクゼクティヴ・プロデューサーにミラマックス・フィルムズのボブ&ハーヴェイ・ウェインスタイン
(「プレタポルテ」)とNDFの井関惺、製作はユーロスペースの堀越謙三(「コシュ・バ・コシュ/恋はロープ
ウェイに乗って」)、黒岩久美、ピーター・ニューマン、グレッグ・ジョンソン。

オーギー・レン(ハーヴェイ・カイテル)はブルックリンの街角で煙草屋を営み、毎日欠かさず店の前の街を
写真に撮ることを趣味にしていた。その店の常連で作家のポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)は
数年前に妻を強盗の流れ弾で失って以来、仕事が手につかない。ぼんやりとして車にはねられそうになった
ポールはラシードと名乗る少年(ハロルド・ペリノー・ジュニア)に助けられ、彼は感謝の印に家に泊めてやる。

少年は数日で出ていったが、その数日後に少年の叔母が来た。彼の本名はトーマスで、行方不明で心配している
という。そのトーマスは子供の頃生き別れになった父サイラス(フォレスト・ウィテカー)のガソリン・スタンド
に行き、本名を隠して掃除のバイトをする。ポールを再訪したトーマスは、実は強盗現場で落ちていた六千ドルを
拾ったのでギャングに追われていると明かす。ポールはトーマスを家に置き、オーギーに頼んで店で使ってもらう。

トーマスはオーギー秘蔵の密輸キューバ葉巻を台無しにしてしまうが、例の六千ドルで弁償するというのでオーギー
も許す。オーギーの所には昔の恋人ルビー(ストッカード・チャニング)が来ていた。実は二人には娘(アシュレイ・ジャッド)がいて、18歳で麻薬に溺れていた。オーギーは娘を麻薬更生施設に入れる資金にしろと、例の
弁償の金をそっくりルビーに渡した。

ある晩、トーマスに盗んだ金を持ち逃げされたギャングがポールの家を襲う。外から様子を察したトーマスは姿を
消す。負傷したポールとオーギーは息子同然のトーマスの安否を気づかうが、彼は電話で無事を告げてきた。
二人はサイラスの所でバイト中のトーマスを訪問し、彼に親子の名乗りをさせる。

晩秋、ポールにニューヨーク・タイムズ紙がクリスマス向けの短編を依頼してきた。ネタがないと困るポールに、
オーギーは自分の14年前のクリスマスの体験を語って聞かせる。帰宅したポールは『オーギー・レーンのクリスマ
ス・ストーリー』の原稿に取りかかる。(Movie Walker)


<IMDb=★7.4>
<Rottentomatoes=Tomatometer:93% Audience Score:89% >




by jazzyoba0083 | 2018-03-10 23:15 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)