2018年 05月 02日 ( 1 )

●「シャイアン Cheyenne Autumn」
1964 アメリカ Warner bros. 160min.
監督:ジョン・フォード  原作:マリ・サンドス
出演:リチャード・ウィドマーク、キャロル・ベイカー、ジェームズ・スチュワート
   アーサー・ケネディ、エドワード・G・ロビンソン、カール・マルデン、サル・ミネオ
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
西部劇が嫌いなのではないが、いや、作品によっては好きなものもあるのだが、特に映画史に
残る名監督として知られるジョン・フォードについて言えば、数作しか観ていない。
「真昼の決闘」や「帰らざる河」などは好んで観ているのに、なぜかジョン・フォードに
関してはそんな状況だ。映画好きとして食わず嫌いはイカンだろうということで、この度
NHKBSが放送してくれた西部劇名作を鑑賞したわけだが、本作もその中の一つ。

西部劇の中でも、負の側面を持つ作品だ。ジョン・フォードがどういうスタンスを
持って西部劇を演出してきたか、詳しいことは知らないのだが、本作を観た映画ファンの
ブログなどを観ると、「駅馬車」などでインディアンを悪者に仕立て上げてきた
ジョン・フォードの、インディアンに対する「贖罪の意識」が強く出ていると言う人が多い。
これがフォードの西部劇として最終作となるわけで、彼にそうした意識が出ていたとしても
不思議ではない。原作の選び方、脚本の方向性など、これから書くように彼の考えに思いを
致す場合、彼が描いた先住民に対する「贖罪」と言って良いのだろう。

確かに、西部開拓史を語る上で、アメリカという国が先住民にしてきたことはアメリカの
最大級の暗い歴史であり、その後、「ソルジャー・ブルー」などという作品も出てきて、
一層明らかになるようにアメリカ全体に先住民に対する「負い目」があるのは確かな
ところだ。未開の土地に文明国が入植すれば必ず起こる事態であり、そのコントロールに
於いてアメリカは大きな過ちを犯してしまったのは歴史に明らかである。
ハワイ併合、米西戦争などこの時期のアメリカの植民地主義は多くの過ちを生んだ。

先住民(インディアン)から故郷を取り上げ「居留地」に押し込める法律は19世紀初頭
には成立し、先住民部族は白人に追われる立場となった。本作も、時代は下るがシャイアン
族が故郷であるイエローストーンを追われ、居留地に来たものの、暮らしづらい環境に、
ついに故郷に帰ることにした事に端を発する。居留地の白人女性教師が、後にシャイアン族
の追討にやってくる騎兵隊大尉アーチャー(リチャード・ウィドマーク)に求婚される
デボラ(キャロル・ベイカー)である。

映画から、シャイアン族を始め、先住民たちが白人に約束をことごとく破られ、土地を
騙し取られ、故郷を追われた悲哀が伝わる。先住民に理解を示すアーチャー大尉らの
引き止めも功を奏さず、シャイアンは故郷に帰る道を歩む。年寄りや赤子、病人を含む
貧しい一行の前には気が遠くなるような距離があり、寒さと飢えが立ちはだかる。
追跡してくる騎兵隊との銃撃戦も起きた。白人側の被害は今で言う「フェイクニュース」
のように、犠牲者が水増しされて都会に伝わり、政府の耳に入り、先住民たちは
野蛮で凶悪であるというイメージが白人たちの間に固定化されていった。

ついに部族は二手に別れ、デボラらがいるグループは騎兵隊の砦に保護されることになった。
しかし、そこの隊長は、口では優しいことを言うが、司令部から、先住民を居留地に
帰せ、という命令を受けると、寒い時期に彼らをまた気の遠くなるような距離を歩いて
戻れ、というのだった。気高い先住民たちは、あくまでも故郷に戻ることを主張し、
砦から脱出しようとして騎兵隊と戦闘が起きる。

アーチャー大尉は、ワシントンまで出かけ内務長官にシャイアンの惨状を直訴する。
理解ある内務長官は西部の地までアーチャーとやってきたのだった。そして騎兵隊に
囲まれて大砲を打ち込まれていたシャイアンを救い出したのだ。

本作で白人はアーチャーとデボラ、内務長官以外は、先住民に対し無理解、非情な存在と
して描かれる。ドッジ・シティのシークエンスは取って付けたような塩梅で、評価が
分かれる演出だろうが、ワイアット・アープ(ジェームズ・スチュワート)とドク・ホリディ
のコンビとて、ポーカーにうつつを抜かす白人として描かれ、白人側の無理解を
強調するシークエンスとして観ることが出来る。時間が長すぎな感じはするが。
これらはすなわち、原作はあるものの、ジョン・フォードのこの映画の制作時点での
先住民に対するスタンスととらえて良いのではないか。
(※ジョン・フォードが35歳前後にワイアット・アープが亡くなっており、アープは
フォードの西部劇製作に少なからぬ影響を与えたようだ。そんな時代の人なのだと
いうことに改めて驚いた)

先住民の悲哀を描く映画は数あるが、本作はオーソドックスながらも、骨太な演出で
シャイアンの人々と彼らを取り囲む白人たちを描けていてなかなかの良作といえよう。
ただ、最初のうちは70ミリシネマスコープが捉える大西部の美しい情景は見どころの
一つだったが、下の写真にもあるようにラストの先住民と騎兵隊との対峙のシークエンスは
合成丸わかりで、残念だった。
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<ストーリー>
故郷イエローストーンから、荒涼たるインディアン居留地に移されたシャイアン族は、
病気と飢えのため約3分の2が死んでいった。酋長達は相談の上、生き残った同胞を
つれて故郷に帰ることにした。一行の中には、子供達に読み書きを教えているデボラ
(キャロル・ベイカー)という白人の娘が加わっていた。

脱出の報に合衆国警備隊は追跡を開始。その中には、デボラを妻にと望んでいる
アーチャー大尉(リチャード・ウィドマーク)がいた。シャイアンに同情をよせながらも、
任務のため非情な追跡をせねばならなかったのだ。
酋長達の努力にもかかわらず、仲間割れが原因でついに戦いは始められた。ニュースは
誇大宣伝され内務長官は鎮圧しなければ、自分の政治的生命も危ないと悟った。

ダッジ・シティでは市民軍が結成され、隊長には名保安官ワイアット・アープ
(ジェームズ・スチュアート)が選出された。アープの努力にもかかわらず、両軍は
大混乱をおこす始末。

やがて冬になり、寒さと飢えがシャイアンを苦しめた。アーチャー大尉とデボラの説得で、
酋長の1人は降伏したが、白人達の苛酷な態度に再び戦う決心をした。
洞窟に身を隠したシャイアン達に、合衆国陸軍は大砲で攻撃した。もはや時間の問題と
思われた時、騎馬隊が現れ、その先頭にいたのは内務長官とアーチャー大尉であった。
シャイアンの生命を救うため、政治的生命を捨ててやってきたのだ。

うららかな春の日、シャイアン達がアーチャー大尉の部隊に護られてイエローストーンに
到着した。愛しながらも、シャイアンを苦しめたアーチャー大尉を許すことができなかった
デボラは、初めて彼と喜こびをわかちあった。(Movie Walker)

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:70% Audience Score:46% >



by jazzyoba0083 | 2018-05-02 12:21 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)