2018年 05月 03日 ( 1 )

●「ハーフネルソン Half Nelson」
2006 アメリカ Hunting Lane Films and more. 106min.
監督・(共同)脚本:ライアン・フレック
出演:ライアン・ゴズリング、シャリーカ・エップス、アンソニー・マッキー、モニーク・ガブリエラ・カーネン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
映画のタイトルはその意味を知って鑑賞するか、観てから吟味するか、どうだろう?本作のように
意味が分からない系のタイトルは、知ってから観ると製作者の主張が理解が分かりやすいと思う。ただ、
観終わってその意味をしみじみと味わう、という手もないではない。

そんなことを考えながらこの映画を観終えた。本作の場合、私はタイトルの意味を深く考えずに観たから、
その意図する(であろう)ことに想いを致した時、それはそれで、しみじみとしてしまった。
最初から知っていたらそれはそれで面白かったと思う。

「ハーフネルソン」。言葉だけは知っていた。プロレスの技として。背後から片腕を回しとる技で、
両腕をバンザイさせるように回しとる技は「フルネルソン」という。つまり、「フルネルソン」は
片腕は自由に使える、あるいは片腕は後ろに回され使えなくなっている、という半分ほど不自由な
、思い通りには事が運ばない「人生」のメタファーとして使用されている。

「パターソン」「ムーンライト」系の製作アプローチかな。観客は、ダン(ゴズリング)という一人の
中学教師の「普段の暮らし」の観察者となり、彼の日々の暮らしから、色んな意味を汲み取る(汲み取れる
ものなら)という仕掛け。この手の映画が好きでない、という人には向かない好悪の別れやすい映画だ。

おそらく中学1年生の歴史を担当しているのだが、教えることが非常に難しいというか哲学的である。ダンは
それなりに頭がいいんだろう。「歴史とは何か。相反するもの」とか「弁証法」とか12、3歳に理解できる
のかよ、と思うような歴史感を教える。ただ、判り易いので生徒には人気がある。校長は気に入らない。
そしてバスケット部のコーチも熱心に務めている。しかし、彼はジャンキーだ。恋人とも別れ、独り身で
猫と自堕落な生活を続けている。生徒に正解の出し方を教えているのに、自分の人生の正解を見つけられない。
クスリに逃げる。教えることでアイデンティティをようやく保っている。友人も少なそうだ。
つまり、ダンの「ハーフネルソン」な暮らしを綴るのが本作、といえる。

そんなダンは女生徒ドレイに強く慕われる。ヤクの取引で兄は刑務所、親戚はヤクの取引きで生計を立てている
ような連中。自分を思うと、純粋なドレイを汚れた世界に引きずり込みたくないと、親戚と掛け合ったり
する。

ラストにはアッと言わされた。ダンがいるヤクのパーティー会場に、親戚の伯父に連れてこられたドレイが
ヤクを届けに来たのだ。顔を合わせる二人。何を思うのか。ヤクのメッセンジャーを拒否しなかった
ドレイの事情、ヤクを持って現れたドレイを、ダンはどう思ったのだろうか。何も言う資格のない自分。
次の日、彼は学校を無断で休む。(おそらくクビだろう) ドレイは学校が終わって昨夜のパーティー会場に
行って一人でいたダンを探し当てる。自分の嫌な部分を観られたドレイなのに、何を思ってダンを探しに
行ったのか。
お互いの中に何かが生まれたのかもしれないある種の温かさの余韻を残し映画は終わる。 
うーん、何が言いたいのだろう?と殆どの方は思うのではないか。完結しない結末、
後は観た人に考えてもらう。「ハーフネルソン」の状況の設定がなかなかユニークで好きだったし、なかでも
本作でオスカーの主演男優賞にノミネートされたゴズリングの演技が、「ハーフネルソン」を実に上手く
演技で表現出来ていた。本作はゴズリングの演技を観る映画、と言い切ってしまってもいいかもしれない。

「ある男の普段の生活を切り取って見せる」ことでオープンエンドを通じて、観客に「思い」を委ねる。
サンダンス映画祭が好きなタイプだ。コアな正解を何も受け取らなくてもそれはそれでいいと思う。
なんとなく伝わるものがある雰囲気を愉しめばそれでもいいと感じた。
ある種、脱力系ではあるが、長玉をタイトに使って終始手持ちで撮影した映像を含め、愛すべき作品だ。

2006年の製作なのだが、日本公開は去年。ゴズリング人気にあやかっての公開だったのか。
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<ストーリー>
「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリングが第79回アカデミー賞主演男優賞に初ノミネートされたドラマ。

ブルックリンにある中学校で黒人やヒスパニックの子どもたちに歴史を教えている教師ダン・デューン
(ライアン・ゴズリング)は、型にはまらない授業で生徒たちの信望を集めている。
しかしその一方で、自身はドラッグに溺れていた。ある日、学校のトイレの個室でドラッグを吸っている
ところを、女子生徒ドレイ(シャリーカ・エップス)に見つかる。彼女の兄は麻薬売買の罪で刑務所にいた。
近所には多数のドラッグディーラーがたむろするような劣悪な環境で母親と二人暮らしの彼女を、ダンは
何とか救おうとする。そんなダンと、彼の秘密を知るドレイの間に不思議な友情が芽生え始めるが……。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.2 >
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:90% Audience Score:83% >



by jazzyoba0083 | 2018-05-03 23:10 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)