2018年 09月 15日 ( 1 )

エル Elle

●「エル Elle」
2016 フランス France 2 Cinéma and more. 131min.
監督:ポール・ヴァーホーヴェン  原作:フィリップ・ディジャン『エル ELLE』(早川書房刊)
出演:イザベル・ユペール、ロラン・ラフィット、アンヌ・コンシニ、シャルル・ベルリング、ヴィルジニー・エフィラ
   ジュディット・マーレ、クリスチャン・ベルケル、ジョナ・ブロケ、ヴィマーラ・ポンス他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
昨年の公開時には世間を賑わした作品。癖、アクの強い作品を作らせたら天下一品のヴァンホーヴェン監督。
確かに予期せぬセリフ、予期せぬ展開、予期できる犯人(苦笑)と、見て面白い映画ではあるが、二度三度見る
名作か、と言われると、う~む、と言わざるを得ない。「視覚効果イノチ」だったヴァンホーヴェン、「ブラック
ブック」あたりを観ても、最近は人間のむき出しの本性、みたいなものをストレートに描こうという方向に転換
したのかな、という気がしている。血が出る痛さの表現は相変わらずだけど。

ヴァンホーヴェン監督は、「氷の微笑」「ロボコップ」「トータル・リコール」「スターシップ・トゥルーパーズ」
「インビジブル」などは観ていて、なおかつ、「映画秘宝」の町山&柳下コンビのサカナになることの多い人で、
史上最低映画とも言われる「ショー・ガール」も手がけるなど、何かとその作品に話題が多い人だ。

本作は原作があるとは言え、基本的に「人間から理性のタガを外してしまうとどういうことになるのか」という
命題を追い求めているような気がしている。本作では「セックス」に関する「理性のタガ」を外し、フランス映画に
仕立てると、ヴァンホーヴェンはこんな映画を作りますよ、という感じだ。主演のイザベル・ユペールの熱演が
ヴァンホーヴェンの作品につきまとう「B級臭」を消す効果を生み、またソフトフォーカスっぽい紗がかかった
ような手持ちカメラの映像の上手さと相俟って、原作の面白さ(未読だけど)加味され、観ている分にはなかなか
面白い作品となったのではないかと思う。だが、私の「いい映画」範疇からはやや外れている。

台本を読んだアメリカの女優から総スカンをくらい、ユペールが演じることになったのだが、やはりこの映画は
フランスを舞台にしてフランス人が演じて正解だったのだ。観はじめてしばらくして、原作が「その女アレックス」
のピエール・ルメートルかと思った。そんな雰囲気を持つ作品だ。ルメートルの方がずいぶんと出来はいいけど。

この映画を一人で支えているといってもいい、ユペール、この時63歳。びっくりだな。衰えぬ肢体。その年令で
レイプされ胸を出し、卑猥なセリフを物ともしない。大量殺人者の娘にして今はコンピュータゲームの会社の共同
経営者、(大量殺人者の娘という)出自からして「父性に対する屈折した視線」、それは男全般に及ぶ。また
親全般に及ぶ。
あまり理屈を掘り下げてしまうとこの映画は面白くなくなるのかもしれない。とにかく「性に対する理性、自律、
躊躇、恥の概念など一切とっぱらってしまうと、人間こんなになるのか」という表現のオンパレード。
その「むき出しっぷり」に驚きつつ愉しめばいい作品だ。もう出ている人間の不倫などという言葉が軽く感じる
ほどの、やりたい放題。ひたすら「ヤリたいだけ」。エイヤといってしまえば「変態」たちの生態をナマナマしく
描いたという、ある意味、ある面、ヴァンホーヴェンの面目躍如の映画であろう。
だいたいレイプされた後に、寿司?の出前に電話するかね。「ホリデー巻き」って。冒頭のこの辺りで、
「変態サスペンス」の香りプンプンだ。

イザベル・ユペール、本作でオスカーの主演女優賞にノミネートされたが、それはとても納得できるが、受賞は
出来なかったのは、やはり「ヤリたいばっかりの映画」ではイカンともし難かったのだろう。この作品に「意義」
や「意味」を見出したい評論家受けし、一般客からは「いまひとつやな」と評価されるのはよく理解できる。
ストーリーなんかはどうでもいいようなもんだ。が、「穿った見方」をしたい人にはそれなりの答えは出てくる
のだろう。でも個人的にはこの映画あまり深掘りしないほうが面白いと思う。とにかく「理性のない世界とは」だ。
この「変態ワールド」をキチンと演じ切ったイザベルは、やっぱり凄いと言わざるを得ない。

でもこうした「みんな、なに気取ってんだよ!」というヴァンホーヴェンの作風、嫌いではない。新作が出て
きたら観に行くだろうな、きっと。
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<ストーリー>
第74回ゴールデン・グローブ賞で主演女優賞と外国語映画賞をダブル受賞した、ポール・ヴァーホーヴェン
監督によるエロティックなサスペンス・スリラー。イザベル・ユペールが会社社長のヒロインを演じ、
ある事件をきっかけにその恐ろしい本性が明らかになり、周囲を巻き込んでいくさまがつづられる。

新鋭ゲーム会社の社長ミシェルは、1人暮らしの瀟洒な自宅にいたところ、覆面の男の襲撃を受ける。
その後も、差出人不明の嫌がらせメールが届き、留守中に何者かが侵入した形跡が見つかるなど、
不審な出来事が続く。自分の生活リズムを把握しているかのような犯行に、周囲に疑惑の目を向ける
ミシェル。父親にまつわる過去の衝撃的な事件から、警察との関わりを避ける彼女は、自ら犯人を探し始める。
だが、次第に明らかになっていくのは、事件の真相よりも恐ろしいミシェルの本性だった……。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:91% Audience Score:72%>
<KINENOTE=73.2点>




by jazzyoba0083 | 2018-09-15 23:20 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)