カテゴリ:洋画=あ行( 392 )

●「ウォーキング・ウィズ・エネミー/ナチスになりすました男 Walking with the Enemy」
2018 アメリカ・カナダ・ルーマニア・ハンガリー Liberty Studios  113min.
監督・原案・(共同)製作:マーク・シュミット
出演:ジョナス・アームストロング、ハンナ・トイントン、ベン・キングスレー、サイモン・ダットン他
e0040938_17512099.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆-α>
<感想>
NHKは8月15日に「ノモンハン事件」についての特集を組んだ。民放はTBSがニュース23で筑紫哲也の時代
から継続している綾瀬はるかによる「戦争を聞く」シリーズを放送している。他はどうだ。戦争を知らない
世代が殆どとなった日本で、メディアの役割は大きいのだが、悲しいかな、日本のテレビメディアに、戦争の
悲惨さや愚かさの継承を期待するのは虚しくなっている。
こうした折、WOWOWが毎年終戦記念日前後に洋邦取り混ぜながら、先の戦争にまつわる映画を連続上映する
意味は大きい。

本作もその一連のひとつであり、実話に基づいた話である興味も手伝って、鑑賞した。ハンガリーが舞台の
大戦ものを見るのは恐らく初めてで、一つ勉強をさせてもらった思いだ。こうした事実を知るということは、
映画が面白いかそうでないかはひとまず置いておいて、とても貴重な、特に遠く離れた日本人にとって貴重な
追体験となる。(物語がちょっと松原千畝に似ている点があることも共感できるのではないか)
話は少しそれるがドレスデンが英国空軍による必要以上な空爆で破壊された事実も、映画で知った。日本も
アメリカによる東京空襲や、終戦間近の無差別じゅうたん爆撃のことなどを映画にして世界に知らしめれば
いいのにと強く思う。

ハンガリーはナチスドイツの圧力のもと、第二次世界大戦時には枢軸国側にあった。またナチスのシンパ、
別働隊たる「矢十字党」という国内のファシストたちも存在した。ハンガリーの悲劇はアイヒマンが
ハンガリーに駐在し徹底的なユダヤ人狩りを指揮したため、アウシュビッツでの犠牲者はハンガリー系
ユダヤ人が一番多かったという事実。そうした歴史的事実の中で、多数の同胞ユダヤ人を地下や教会に匿い、
スイス領事館の協力を得て、ユダヤ人にスイスの保護下にある証明書を乱発し、さらに殺したナチス将校の
衣装を着てナチスになりすまし、連行されるユダヤ人を決死で救い出す男がいた。彼は映画ではエレクと
名付けられているが、ピンチャス・ローゼンバウムという実在の人物と彼の仲間たちであった。

その行動は大胆というより無謀。ナチの将校たちのパーティーに潜入、すると談笑するうちに上官の名前を
聞かれたりするわけだ。当然のことながら。ウソも次第に通じなくなってくる。その辺りの緊張感はなかなか
良かった。(すれすれの緊張感が演出されるとさらに映画としては確固たるものになったと思うのだが)
話としてはスイスとのからみ、枢軸国ながら戦火を免れていたハンガリーが連合国側特にソ連に通じようと
する動きがバレてドイツ軍の国内侵攻を許してしまう事態、首相親子を中心としてなんとか枢軸国から
抜けようとする動きなども興味深く観ることが出来た。
またハンガリー人ながらドイツに同調するファシスト「矢十字党」の動きも良くわかった。

ナチスドイツが劣勢になりソ連赤軍がハンガリーにもやってくると、ナチ親衛隊に化けたエレクたちは
ソ連軍に狙われるという事態になるわけだ。そんな中でも彼らは同胞を救うことを止めない。
そして悲劇的な最期が待ち受ける。エレクの最期がなんともやりきれないのだが、その辺りの演出、もう少し
丁寧に出来なかったかなあ。

事実がどう脚色されているか知る由もないが、全体の事実は非常に重く受け止めた。だが、作劇としてはどうも
薄っぺらいと云うか、ベン・キングズレー以外の芝居が平坦(悪くいうと下手)なので、インパクトが今ひとつ
なのだ。そこが残念だった。こまかい戦闘描写など丁寧に描いてはいたが、せっかくの素材がもったいないことを
したなあという感じ。それと主人公たちは英語で話していたがハンガリーの庶民が英語で話すわけはないので、
その辺りもアレレ??という感じだった。
e0040938_17520569.jpg
<ストーリー>
1944年。ドイツと同盟を結んでいるハンガリーは戦禍を免れていたものの、戦況は連合国側に傾き、国民を
守るためハンガリーの執政ホルティ(ベン・キングズレー)は連合国との講和を模索する。しかしその動きを
察知したドイツはブダペストに侵攻、アイヒマンの指揮の下、ユダヤ人一掃作戦を開始した。

ナチスの思惑を読んだ青年エレク(ジョナス・アームストロング)は収監されていた労働収容所から抜け出し、
ナチスに移動させられ散り散りになった家族や仲間の捜索を決意。愛するハンナも彼に協力。ナチス将校の制服を
入手したエレクはナチスになりすまし、ドイツ軍の活動を阻止するためある一手に出る。(Movie Walker)

<IMDb=★6.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:46% Audience Score:59%>



by jazzyoba0083 | 2018-08-14 22:40 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

エヴァの匂い Eva

●「エヴァの匂い Eva」
1962 フランス Paris Film Productions,Interopa Film. 117min.
監督:ジョセフ・ロージー 音楽:ミシェル・ルグラン 衣装:ピエール・カルダン
出演:ジャンヌ・モロー、スタンリー・ベイカー、ヴィルナ・リージ、リザ・ガストーニ他
e0040938_12100839.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
WOWOWのフランス映画特集のおかげで、普段は観ないようなフランス映画を観ている。先日のトリュフォーの
「突然炎のごとく」に続きジャンヌ・モロー主演ものを鑑賞。ジャンヌ・モローのフィルモグラフィー的に言えば
「突然~」の翌年の作品である。それにしても、ジャンヌ・モローという女優さんは一流の監督にとって魅力のある
女優だったのだなあ。ルイ・マルを初め、トリュフォー、ロジェ・ヴァディムなどなど。
私個人としては、そう美人でもないし、特に演技が上手いわけでもないし、ジャズ好きとして観た「死刑台のエレベーター」
での存在感以外は琴線に触れる女優ではなかった。「死刑台~」でも「本作」でもそうだが、「雰囲気」を上手く
出せる人なんだな。そういう点が女優として評価の対象になるのなら、優れた女優ということも出来るのかも知れない。

そうした面でこの映画を観てみる。話は難しいものではない。新進気鋭の炭鉱夫出身の作家ティヴィアン(ベイカー)を
手玉に取る「悪女」を演じているのがモローのエヴァである。本作はイギリスの推理小説家の原作があるので、その
テイストを監督なりに演出しているのだろう。後半、実はティヴィアンが書いた小説は実は兄が書いたもの
(というか兄の語ったものを書き上げた)のであり、すべて本人の作、というのはウソであった、というあたりから
やっと話が動き出す感じだ。
映画化もされヒットして富も名声も手に入れたテヴィアンだったが、次作を作れる訳もなく、かなり精神的に追い詰め
られていたという背景がある。そうした中でのエヴァの登場であった。

もう、全編エヴァがティヴィアンを振り回しまくる。それはモローの「悪女」という存在が浮き上がってくるという
より、個人的にはティヴィアンの「ヘタレぶり」が痛々しいくらいに描かれていたという印象。エヴァは男性に束縛され
たくない自由人として、男に寄生するというタイプの女であり、もろに手玉にとってやろうという意志は感じられ
なかった。とにかく「自由人」としての生き方。他人の恋愛や結婚は興味がない。
私が感じたのは、エヴァは「猫」だ。ツンデレの。しかも性格としては冷たく孤高であり人を信用せず、懐かない。
ティヴィアンは許嫁さえほっぽりだして、エヴァを追い、捨てられ、許嫁に自殺され、破滅の道へと進む。

こうした描かれ方を観ていると、一律的にモローを「悪女」を好演した、と言い切ってしまうのはどうなのかな。
本作のモローは「悪女」ではなく、(結果論としてそうであっても)エヴァの生き方を生きていただけのことで。
自分に寄ってきた男を自分のスタイルに取り込んで面白がっているという。エヴァの目的が最終的に金でないことは
口では「金が好き」とはいうが、ティヴィアンが投げつけた金の束や貴金属は受け取っていない。
それより、エヴァの生き方をクローズアップさせていたのはディヴィアンの自信のない男の生きざまだ。その投影と
してエヴァが悪く見えているだけのことではないのか。エヴァがティヴィアンを身勝手を言って振り回していること
は確かだが、美しい許嫁がいるティヴィアンが確固たる愛情をもっていれば、なんてこと無い話。
まあエヴァにそれだけの魅力があったから、そういう事になったわけだが、蠱惑的な行動はさすがであるが、女性と
しての魅力は許嫁のヴィルナ・リージのほうがよっぽど良い女性と思ったけど。リージのほうが若いし。

嘘で固めた自信の無い男が「ちょいと小悪魔的な」女性に心を奪われた、というだけの話だったんじゃないかという
印象を受けて観終えた。エヴァ自身は自分が悪いことをしている「悪女」であるという自覚なんて微塵もなかった
のではないか。「金」と「贅沢」が好きな女であり、男を破滅させてやろうなどという野心は感じない。むしろ
男は自滅していくのだ。それが「悪女」というものだよ、という定義をされる方は私とは意見を異にするということ
だろう。

ジャズ好きとしてはビリー・ホリディの音楽は印象的ではあったが、これは監督とモローがふたりともビリー・
ホリディが大好きだったということに尽きるし、音楽が当時欧州映画でジャズが好まれたという背景があったからで
あり、それほど、なぜ「柳よ泣いておくれ」をエヴァが好むのかは隠れたメタファーかも知れないが、よくわからない
選曲であった。

やはり私には昔のフランス映画は「難しい」。それにしても開巻のベネチアのパーンの映像、ガタガタだったけど
(その他のパーンの映像もスムーズでない)、狙いだったのか、カメラマンが単に下手だったのか。

<ストーリー>
雨にけむるヴェニス。一隻のゴンドラが静かに水の上をすべる。そのゴンドラから過ぎゆく景色を眺めている
ひとりの女。エヴァ(ジャンヌ・モロー)--それがこの女の名前。彼女の住む家はどこともきまっていない。
また夫がいるかどうか誰もしらない。ただわかっているのは、幾人もの男がこの女のために身を滅していったと
いうことだけ。

ティヴィアン・ジョーンズ(スタンリー・ベイカー)もそのひとり。彼は処女作が大当りをとり、一挙に富も
名声も獲得した新進作家だった。そして、あとはフランチェスカ(ヴィルナ・リージ)と結婚するばかり。

ある雨の降る夜だった。ティヴィアンの別荘にずぶぬれになった男と女が迷いこんできた。エヴァと彼女の客
だった。それがティヴィアンとエヴァとの最初の出会いだった。
が、その夜以来、ティヴィアンの脳裡にはエヴァの面影がやきついて離れなかった。ある夜、彼はローマの
ナイト・クラブで黒人の踊りを放心したように眺めているエヴァに会った。その時を契機とし彼はエヴァの
肉体におぼれていった。

ある週末、彼はエヴァをヴェニスへ誘った。が、彼女は拒絶していた。このことからティヴィアンは
フランチェスカとの婚約にふみきった。そのレセプションの席上、エヴァからの電話が鳴った。
「ヴェニスへ行きましょう、今すぐ……」。ティヴィアンはすべてを捨てヴェニスへ走った。酒とエヴァとの
愛欲の日々。そんな関係におぼれたティヴィアンは口走った。小説は自分が書いたのではないことを……。
ティヴィアンはフランチェスカのもとに帰った。二人の結婚式はゴンドラの上で行われた。が、エヴァから
また呪わしい電話がかかってきた。ある夜、エヴァがティヴィアンの別荘へやってきた。そのくせ彼に
指一本ふれさせないエヴァだった。その光景をみたフランチェスカは絶望のあまり自殺した。

二年たった。いまは乞食同然のティヴィアン。が、彼はいまだにエヴァの面影を求めている。今日も
ヴェニスは雨にけむり、ゴンドラが漂っている。(Movie Walker)

<IMDb=★6.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:64% Audience Score:58% >




by jazzyoba0083 | 2018-08-12 16:00 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「オーシャンズ8 Ocean's Eight」
2018 アメリカ Warner Bros.Pictures. 110min.
監督・原案・(共同)脚本:ゲイリー・ロス  (共同)製作:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ミンディ・カリング、サラ・ポールソン、
   アウクワフィナ、リアーナ、ヘレナ・ボナム=カーター他
e0040938_16453100.png
<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
このシリーズは好きで、11からずっと観てきた。毎回豪華スターがずらりと並び、痛快な盗みのテクニックを
披露してくれる楽しさを堪能してきた。「オーシャンズ13」から11年経ち、拵えもガラリと変わり、主人公は
全員女性。監督もソダーバーグから「ハンガー・ゲーム」のゲイリー・ロスに変わった。だが、ソダーバーグが
プロデューサーに入っていることから、全体の雰囲気は前作までのものを残している。華麗で大胆、計算された
盗み。全体におしゃれ。

本作では、昨今のハリウッドの政治的な潮流も製作側の頭にあったのか、主人公チームが全員女性で、男性を
ギャフンと言わせる構造だ。前作までの流れとしてはジョージ・クルーニーが演じていたダニー・オーシャンの
妹デビー(サンドラ・ブロック)が今回も、兄貴並のリーダーシップを取ること。作中、どうやらダニーは
墓の中らしいのだが、実際はどうなのかは分からない。墓石にには死亡年が2018としてあったっけど。
(どうでもいいけど、サンドラ・ブロックってだんだんマイケル・ジャクソン顔になってきたんだけど、大丈夫
かな)

現実の世界ではシリーズで活躍していたバーニー・マックが難病で2008年に急死したため、ソダーバーグは
もう「オーシャンズ」シリーズは作らないと宣言していた。が、今回別形態を取りリブートしたわけだ。

【ネタバレしていきますのでご注意ください】
で、前作のようにメンバーには豪華スターがずらりと並び、盗むものはお金ではなく宝石と、女性主人公方向に
嗜好を振っている。ともかく、盗んだ宝石をバラバラにして売りさばく役まで老婦人たちだから徹底している。
元カレの罠で刑務所にぶちこまれていたダニーの妹デビーが出所した。真面目に地味に暮らします、とか
言っちゃて。その足で早速万引きや窃盗をして身の回りのものを揃え、友人ルー(ケイト・ブランシェット)と
会い、さっそく大仕事の計画を練る。

目標にしたのは、カルチエの持つ1億5000万ドルのダイヤモンドのネックレス。これがNYのメトロポリタン
美術館で開催される世界最大のファッションイベント、「メットガラ」に招待されたハリウッド女優の
ダフネ・クルーガー(アン・ハサウェイ)が身につけるのだが、これをいだだこうというものだ。

ダニーとルーはさっそく仲間を集める。仲間にはハイテクの専門家も当然必要だし、警戒されずに女優に
近づける人物もいる。一方、盗んだネックレスを3Dプリンターにかけてジルコニアの偽物を作り、当座
ばれないようにするためには宝石を加工する技術を持った人物も必要だ。彼女が本物のネックレスに
飾られているダイヤをバラバラにして、チームの参加者7人で分けるというのが報酬だった。

こうしてチームによる「全世界監視のイベントの中での超高級宝飾の窃盗計画」がスタートしたのだ。
それぞれの役割はしっかりと描かれているのだが、デビーが刑務所にぶちこんだ元カレに復讐をする
ことも加味されたため、事態が若干ややこしくなり、強奪は成功するのだが、元カレも御用となる
筋書きが並行して進むので、その辺りはしっかり筋を追うことが大事になる。

とにかくその華麗で計算された(でもよく考えるとツッコミどころもあるのだけれど)盗みの手口と、
デビーの元カレに対する復讐というカタルシスも加えて、観終わって、ちょっと筋が分かりづらい部分も
あるが、「面白かったね」と席を立つことは出来るだろう。だがちょっと小ぢんまりかなあ
それと、8とあるのに窃盗を始めるのは7人。結局、誰かさんも最初から(結果論ではあるけど)仲間
だった、というオチなんだね。

さらにオーシャンズシリーズの醍醐味であるオールスターキャストも大いに楽しめる。オスカー女優がずらり。
サンドラの気の強さ、ブランシェットの落ち着き、冷静、ヘレナ・ボナム=カーターのとぼけた味わい、
音楽界からはリアーナがハイテクの天才として、警備網やメンバーの連絡を司る。
加えて、アン・ハサウェイである。あまりの完璧さに、アメリカでは逆にアンいじめのハシュタグが出来る
くらいで、その理由が美しすぎる、ボディが完璧すぎる、歌が上手すぎる、目が大きすぎるとかだら、まあ
やっかみだな。完璧な美人も楽ではないということだ。このネットの時代。

女性大活躍のこの作品、肩の力を抜いて楽しみに行ったらいいんじゃないでしょうか。楽しめます。
女優たちのファッションも見ものだし、カメラワークや編集もなかなか凝っている。
この映画の中で一番可愛そうなのは「CARTIER」でしょう。間違いなく。
それにしてもダニー(クルーニー)は本当に死んじゃったのなあ。この続編が出来るとすると、その
あたりの謎も明らかになってきそうだ。
e0040938_16395139.jpg
<ストーリー>
5年の刑期を終え、晴れて刑務所を出所したデビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)。
かつて“オーシャンズ”を率いたダニー・オーシャンを兄に持つ、生粋の強盗ファミリーの一員だ。

出所早々、刑務所の中で考え抜いたプランを実行に移すべく、右腕のルー・ミラー(ケイト・ブランシェット)と
共に、個性豊かな犯罪のプロたちに声を掛け、“オーシャンズ”を新結成する。
集まったのは、いずれも一流の才能を持ちながら、冴えない生活を送るハッカーやスリ師、盗品ディーラー、
ファッションデザイナー、宝飾デザイナーといった面々。彼女たちのターゲットは、世界最大のファッションの
祭典“メットガラ”でハリウッド女優ダフネ・クルーガー(アン・ハサウェイ)が身に着ける1億5000万ドルの宝石。

しかしその前には、網の目のように張り巡らされた防犯カメラに加え、屈強な男たちという世界一厳しい
セキュリティが立ちはだかる。たった1秒の狂いが命取りになる。しかも、この祭典は世界中に生配信される予定と
なっていた。世界中が見守る前で宝石を盗み取るという前代未聞かつ型破りな犯罪。
果たしてその計画は成功するのか……?そして、その裏に隠された更なるデビーの思惑とは……?
(Movie Walker)

<IMDb=★6.4>
<Rotten Tomatoes=Tomotometer:67% Audience Score:47%>




by jazzyoba0083 | 2018-08-10 11:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「ウィンド・リバー Wind River」
2017 アメリカ Acacia Filmed Entertainment. 107min.
監督・脚本:テイラー・シェリダン
出演:ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン、ジョン・バーンサル、グレアム・グリーン、ケルシー・アスビル他
e0040938_17033090.jpg
<評価:★★★★★★★★☆☆+α>
<感想>
映画好きの間ですこぶる評判がいいので、昨日都心の「ネットで予約が取れない」映画館に行ったら、なんと
初回の上映は満員札止め。諦めて本日、クルマで40分以上も離れたシネコンに行ってきた。入ってましたね。

ジェレミー・レナー、このところの作品では「ハート・ロッカー」に次ぐいい演技。しかし、これ本国でも
極めて少ない映画館での上映でスタートし、あっという間にスマッシュヒットになったという。日本でも
例えば愛知県で言えば、県内で4スクリーンくらいでしか上映していないから、観たくても遠方まで出かけ
なくてはならないので大変。観たい人はたくさんいるだろうに。

で、どこか良かったか。アメリカのシリアスな現実を突きつけられた衝撃、ということかな。とにかくトランプに
見せたい。(トランプが直接の原因ではないけど) そして思ったのはこの映画、本国での捉えられ方とその他の
国では相当の開きがあるだろうな、ということだ。黒人問題もそうだけど、自分の身の回りの事件として肌感覚で
理解できたら、もう少し、映画の理解も感想や感動も違ったものになっただろう。まあ、これは根源的なことなので
嘆いてもしょうが無いと思う。故に観終わった後、アメリカ先住民が置かれてきた歴史を勉強し、感想を自分の
手で肉厚にする作業が必要だろう。

まず、タイトルの「ウィンド・リバー」という名前。これはアメリカは北西部、ワイオミング州にある先住民
居留地の名称。(山の上なので冬は非常に低温になる)主人公のコリー・ランバートは連邦職員として
合衆国魚類野生動物局のハンターを努めている。
増え過ぎたり獣害をもたらすオオカミやコヨーテやピューマなどを公的に射殺する権利を持っている。
奥さんは先住民。子供が二人いた。今は離婚している。その離婚の理由も悲しい。

コリーがパトロールの雪の山で、若い女性の遺体を発見する。先住民の娘だ。裸足。額に大きなキズがある。
コリーは警察ではないので、まず居留地警察(先住民)署長に連絡する。検視の結果、どうやら死因は極寒の
空気を吸って肺胞から出血し、それで窒息したものということで、レイプはされていたが、殺人でないと
いうことに。居留地は連邦管理下にあるので、殺人事件が起きると連邦捜査局(FBI)が乗り出す。
乗り出すものの殺人事件ではないので、後述するジェーン捜査官は上司に適当なことを報告し(これが
とやかく言われないところも居留地での事件の実態を物語っていると思うのだが)、捜査を続ける。
一方でレイプは州法により罰せられる犯罪なので、連邦監督下の居留地で起きた事件には州警察は手を
出せない。捜査がすくんでしまっている真空地帯のようなエリアがアメリカにはあるのだという事実。
(これでは警察官の数の少なさと相俟って、殺人があって行方不明があっても遺体も出てこないという
事実はよく分かる)
シェリダン監督は2012年にニューヨーク・タイムズに、この「ウィンド・リバー居留地」で異常にレイプや
女性の行方不明事件が多発するという記事を読んで、興味を持ち、自分で調べて脚本にしたという。

因みにこのウィンド・リバー居留地は九州ほどの広さがあるのに、警察官は6人しかいないという。

そこでやって来たのが、極寒の地にベガスの支局からレンタカーでたった一人でやってきた薄着の女性捜査官
ジェーン・バナー(オルセン)だった。殺された娘はどこからか、かなりの距離を歩いて逃げてきて、冷気を
吸いすぎて死亡したが、直接の死因は殺人でないにしても、死に至る原因を作ったことを考えると殺人と
同義であった。遺体はコリーの娘でやはり雪山で無残な遺体で発見されたエミリーの親友のナタリーだった。
だからコリーは遺体をみてすぐに身元は分かった。しかし、殺人事件でないとなると、FBIの所管では
無くなってしまう。そこでジェーンは支局にはいい加減な報告をしておいて、コリーの力を借りて二人で
ナタリーを殺したのは誰かの捜査を始めた・・・。

捜査の過程で犯人は割れ、どうやらコリーの娘を毒牙の掛けたのも同一グループらしいところまでいく。
最期の詰めでジェーンは撃たれて重症を負う。

私たちは、この捜査の過程で浮かび上がってくる、先住民居留地の闇を思い知ることになる。150年以上も
前から、このような荒野に押し込められ、開拓民の犠牲になってきた先住民たちの現状は、アメリカの大きな
闇の一部であり、白人たちの一部には、未だに先住民を見下している風土が残っている。それが故のこの映画で
描かれているレイプ殺人事件だ。 
本作の最大の山場である犯人グループの巣窟ではないかという工事現場の仮設住宅での銃撃戦は、その動機も
描き方も近年の映画で観たことがない衝撃的なものであった。(ある意味カタルシスでもあるのだが) 
町山智浩氏が「この映画は西部劇」と言った意味合いがこの辺りにあるのだろう。全員武装し、相手が警察で
あろうが、FBIであろうが、身を護る為なら発砲を厭わない。この銃撃戦の中でハンター、コリーのライフルの
威力が炸裂するわけだが、これは、殺された娘やナタリーの復讐の銃弾のような気がしてならなかった。 
こうした無法地帯に先住民は暮らさざるを得ない状況が続いているわけだ。

シェリダン監督はインタビューでこう語る「世の中には語られるべき物語というのがある。映画は 皆が知らない
世界を鏡に映し出しそこで何が起きてるのか人々に考えさせることができる。うまくいけば変化も起こせるはず。
それもエンタメを通じてね」(本作の公式Twitterより転載)

事件は一応解決するが、アメリカの先住民の問題はなんら解決していない。最期に字幕で解説されるが、居留地に
おいては犯罪率や失業率も高い、10代の自殺率が高い、などなど。映画の冒頭で牧羊を狙うオオカミを射殺する
コリーの姿があるが、こんな痩せた土地では大掛かりな農作業もままならず、牧羊にたよるくらいしかない状況が
見えていた。アメリカはアメリカンドリームの国ではあるが、その深いところには黒人問題や移民問題、帰還兵士の
PDSDの問題そしてこの先住民問題など、まだまだ深い闇は到るところにある。それをこうして映画にしてみせる、
それがまた上質な映画となり、みんなが見る、知る、こうした風土もある。我が国ではどうだろう?

配役のジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン(アベンジャーズのお仲間だけど)、いいキャスティングだと
思った。映画を覆う雪とモノトーンな色調。手持ちのカメラ。冷たさが伝わってくるような画作りも良かったと
思う。

※本ブログを書くにあたり一部TBSラジオ「たまむずび」内にて町山智浩氏が本作を解説されいる箇所を参考・引用
させて頂いています。
e0040938_17035972.jpg
<ストーリー>
第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞に輝いた、新鋭テイラー・シェリダン監督によるクライム・
サスペンス。アメリカ中西部・ワイオミング州のネイティブアメリカンの保留地で起きた少女の殺人事件を追う
新米女性捜査官の目を通し、現代のアメリカに渦巻く闇をも浮かび上がらせる。
捜査に協力する白人のハンターをジェレミー・レナーが演じる。

厳寒の大自然に囲まれた、雪深いアメリカ中西部ワイオミング州にあるネイティブアメリカンの保留地“ウインド・
リバー”で、突如女性の死体が発見される。FBIから単身派遣された新人捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・
オルセン)は、遺体の第一発見者で地元のベテランハンターであるコリー・ランバート(ジェレミー・レナー)に
協力を求めるが、不安定な気候と慣れない雪山の厳しい条件により捜査は難航する。隔離されたこの地では多くが
未解決事件となる現状を思い知るも、不審な死の糸口を掴んだコリーと共に謎を追うが、思いもよらなかった
結末が待ち受けていた。

<IMDb=★7.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:87% Audience Score:90% >




by jazzyoba0083 | 2018-07-31 12:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「オペレーション・クロマイト Operation Chromite」
2016 韓国 Taewon Entertainment 110min.
監督・(共同)脚本:イ・ジェハン
出演:イ・ジョンジェ、イ・ボムス、リーアム・ニーソン、チン・セヨン、パク・チョルミン、キム・ヒジン他
e0040938_10244165.jpg
<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
奇しくも、本ブログを書いている7月27日は、朝鮮戦争の休戦協定が締結され、戦争が「休戦状態」に入った
記念すべき日だ。その日にこのブログを書いているのも何か因縁を感じてしまう。

さて、朝鮮戦争を舞台にしたこの手の韓国映画(そもそも韓国映画は殆ど見ないのだが)は、基本、「愛国主義」的
な側面を持つもので、本作もその範疇にある。「オペレーション・クロマイト」とは「仁川上陸作戦」の軍事コード名
であり、私たちは後者としてその一部を知るのみであるが、その背後に、本作で描かれるような実話があったとは
寡聞にして知らなかった。

映画が面白い面白くない以前の問題として、この事実のありように見入ってしまた。知られているように、ソ連と
中国の後押しを受けた北朝鮮軍は、侵攻開始わずか1ヶ月で、南側の殆どを制圧、南の軍は釜山周辺に追い込まれた。
ここあたりまでは割と知られた史実である。この後にマッカーサーによる国連軍の起死回生のインチョン上陸作戦が
起動するわけだが、その裏にあった韓国軍諜報部隊の決死の活動を描くのが本作だ。

隊長チャン・ハスクを中心とする部隊は、人民軍に潜入し、韓国側に情報を送っていたのだが、インチョン上陸に
際して絶対に取り除かなればならない機雷の敷設地図が手に入らない。ハスクに命じられたのは、この地図の奪取
であり、連合国艦隊の目印となるインチョン港入り口の小島の灯台に灯を入れて、連合国艦隊を誘導することで
あった。これに対抗するのが人民軍のリム・ゲジンである。

ハスクの部隊は、人民軍を欺き、少数の味方の手を借りて、結局自分も含め全員死亡という中で、マッカーサーを
して「成功は5000分の1」と言わしめた、ギャンブル的作戦を成功に導いたのだった。

映画はおそらく人民軍のリムなどは創造されたキャラクターだと思うが、作戦の概要については大きくハズレていない
はず。朝鮮戦争を描いた作品を見る時はいつも思うのだが、大国の思惑に振り回され、民族を分断された国民の悲劇だ。
歴史的に北に中国とソ連、南に日本という強国に囲まれ、「高麗」として強くなれない環境で、結局現在も分断された
状態は続いている。
豊臣秀吉の時代から、落ち度のない韓半島に侵略を続けた日本は、今の韓国の頑なな態度にイラつくが、当人たちに
してみれば、長い歴史の中で受けてきた所業からすれば、簡単に「未来志向」といわれて、ハイそうですか、とは
なりづらいのではないか。一方、北朝鮮は共産中国とソ連の南進の橋頭堡・あるいは自由主義の防御線とされ、彼らの
思惑からそう簡単に南北が手をつなぎ、あまつさえ自由陣営に行ってしまうことなどとうてい看過できないのだ。

本作で描かれるのはとにかく、自分の愛する人たちを守りたいと思う軍人の思いのみ。日本はといえば朝鮮戦争の
特需で景気は上向きとなり、高度成長のキッカケを作っていっくのだから皮肉なものだ。

インチョン上陸作戦はマッカーサーのいわば起死回生を狙った博打であったわけだが、ここで描かれる決死の男らの
努力もあって結果的に成功、またたくまにソウルを奪還したわけだが、戦争は膠着し、やがて中国人民義勇軍の
本格的介入により、マッカーサーは原爆の使用を進言し、ついには更迭されてしまうのだ。

繰り返すが、映画としての出来は大味と言わざるを得ないが、演出されたとは言え、分断された民族の悲劇を追体験
するためには私としてはそこそこ面白くみることが出来た。本国では熱狂を持って迎えられたことは想像に難くない。
e0040938_10250049.jpg
<ストーリー>
1950年、朝鮮戦争時の朝鮮半島。北朝鮮は南へと侵攻しソウルを陥落させ、1カ月ほどで朝鮮半島の大部分を支配下に
収めた。事態を重く見た連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー(リーアム・ニーソン)は、戦局を打開するため
仁川への上陸作戦を計画するが、周囲からは不可能だと猛反対を受ける。作戦が成功するかは、北朝鮮軍に潜入した
諜報部隊のチャン・ハスク大尉(イ・ジョンジェ)に懸っていた。
チャンと部隊の精鋭たちは正体がバレれば即座に処刑されることが確実な極限の状況で、マッカーサー率いる連合軍艦隊を
仁川上陸へと導く命懸けの作戦行動を開始する。(Movie walker)

<IMDb=★6.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:33% Audience Score:50% >



by jazzyoba0083 | 2018-07-26 16:00 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

渦 Maelström (2000)

●「渦 Maelström (2000)」
2000 カナダ Max Films Productions,SODEC,Téléfilm Canada. 84min.
監督・脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:マリ=ジョゼ・クローズ、ジャン=ニコラ・ヴェロー、ステファニー・モーゲンスターン他
e0040938_11134518.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
「ブレードランナー2049」や「メッセージ」で一躍その存在が普遍的になったカナダの監督ドゥニ・
ヴィルヌーヴ。彼の作品は、これまでも「ボーダーライン」「複製された男」「プリズナーズ」を
観ている。具象的な作品と、観念的抽象的な作品、それぞれに旨味を出せる監督だと思うのだが、
彼の長編二作目、メジャーデビュー作としての「渦」は、ヴィルヌーヴ監督の思想の原典(原点)と
言える作品ではないか。それにしても読み解くのに苦労するタイプの映画だ。

観念的な作品は、メタファーだらけだったり、表現が抽象的だったりするので、読み解くのに苦労
する。一体何を言いたいのだろう、と。本作も、冒頭、身を削がれて殺される大きなグロテスクな
魚の喋りから始まるのにまず度肝を抜かれる。
物語は、大女優の娘で、25歳にしてチェーンブティックのオーナーであるビビアンという女性の
破滅と再生の話。カットインしてフェイドアウトしていく物語の構成だ。

冒頭の魚がナレーションを務めていくのだが、この映画全体を通してキーになっている映像が「水」
「海」だ。ビビアンが最初に登場するのは彼女の堕胎シーン。水子になって流れる世の中に
現れそこねた命が吸引パイプの中を液体となって通っていく。「海」に関連して登場する魚市場だったり
レストランだったり、イメージだったりのさまざまな「魚たち」、時々挿入される泡だった水のカット、
ビビアンが安寧を求められるという(魚がそういう)シャワーはお風呂のシーン、コーヒーの表面の
アップ、ビビアンがひき逃げで殺してしまう魚卸市場の中年の男、ひき逃げされたクルマを洗う洗車機の
泡と水、さらにそのクルマを自ら運転し海に捨てて脱出を試みる、ひき逃げの被害者の息子は潜水
ダイバーを仕事としている(これはなにかのメタファーくさい)、などなど、事あるごとに「水」がキー
映像として使われいる。

ビビアンと水の関係とはなにか。まだ若いビビアンの定まらない心のかたちのメタファーなのかどうか。

彼女は自分が轢き殺した男の葬儀に行き、その息子と話したばかりに、その男に好かれてしまう。殺した
男の息子から好かれるとは! 遺灰を持って故郷に引き上げる彼を飛行機に乗る手前で引き止めるビビアン。
「私にはまだあなたと寝るという忘れ物がある」と。その飛行機は彼を乗せずに飛び立ち、途中で墜落する。
彼は、ビビアンは天使だという。が、彼女は実は自分があなたのお父さんをひき逃げして殺した、と告白する。
しかし、二人の愛情はもはや揺るぎのないものになっていたのだった。

二人は息子の故郷へ帰り、その途中の船の上から遺灰を散骨したのだった。

観念的な物語の中にも、具体的な事象を埋め込み、たとえば、ビビアンとその殺した男の息子が、見知らぬ
男に「人を殺した」「親を殺した女に恋をしてしまった」と相談をするのだが、それが同じ男であったり。

薀蓄を語るグロテスクな死の直前の魚のいる場所はどこだろう。ラスト、「人間というやつは」と言いかけた
ところでこの魚は頭を切り落とされてしまう。そこでエンドだ。
「ビビアンの破滅と再生」といってしまうのは容易いのだが、若きヴィルヌーヴがこれで何を言いたかったのか、
ビビアンの観念的心象風景なのだろうか。原題は映画にも出てくるノルウエーの海の「大きな渦」のことらしい。

ヴィルヌーヴ33歳のときの作品。若さの勢い、尖った表現、向こう見ずな挑戦のような制作姿勢を感じる。
最近の新しい2作はこうした彼の原点ぽい観念性への回帰みたいな雰囲気を感じる。
e0040938_11140012.jpg
<ストーリー>
中絶手術をしたばかりのビビアン(マリ・ジョゼ・クローズ)は、大女優の娘に生まれ、25歳の若さにして
ブティックのオーナー。
しかし経営状態は思わしくなく、絶望を紛らわすために親友クレール(ステファニー・モーゲンスターン)
から慰めを受け、クラブに繰り出し酒をあおる。そして深夜、彼女は誤って、ある男をひき逃げしてしまう。

ビビアンは事故をひた隠すが不安に苛まれ、男との刹那的な関係で気を紛らわそうとするが、混乱は消えない。
やがて彼女は、自分が殺した男が年老いた魚の卸売り業者だと知る。せめてもの償いをしようと男の死体が
安置された場所に出掛けるが、そこで彼の息子であるエヴィアン(ジャン・ニコラス・ヴェロー)と運命的な
出会いを果たす。まもなく二人は恋におち、共にノルウェーの海に死んだ男の遺灰を撒くのだった。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:80% Audience Score:79%>




by jazzyoba0083 | 2018-07-18 23:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「踊る大紐育 On the Town」(名画再見シリーズ)
1949 アメリカ Metro-Goldwyn-Mayer 98min.
監督:スタンリー・ドーネン&ジーン・ケリー 製作:アーサー・フリード 作曲:レナード・バーンスタイン
出演:ジョーン・ケリー、フランク・シナトラ、ジュールズ・マンシン、フェラ・エレン、ベティ・ギャレット、
   アン・ミラー他
e0040938_15334018.jpg
<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
毎月第二木曜に開催されている市の映像鑑賞会はこのところ、懐かしいミュージカルシリーズの上映が続く。
本作も何度も観てDVDも持っている作品だが、大画面で観たくて足を運んだ。

1940年代から60年代のMGMミュージカルは大好きで、特に本作と「雨に唄えば」は個人的に双璧を
成している。まさにMGM黄金期の不滅の傑作と言える。
オリジナルはブロードウェイミュージカルの「On the Town」である。そしてオリジナルの音楽を
手がけたのは、これで世に出たといえるレナード・バーンスタイン。しかし映画の方ではバーンスタインの
音楽は5曲に留まり、残りはMGMミュージカルには欠かせないロジャー・イーデンスが書いている。
故にオスカーにノミネートされたのはイーデンスである。そんなこともあったけど、冒頭の「ニューヨーク・
ニューヨーク」はミュージカル界に残る佳曲である。これから始まる24時間のドラマの幕開けに相応しい
ワクワクドキドキ感に満ちた愉しさが溢れている。

作品はケリー、シナトラ、マンシンの三人の水兵が半舷上陸で、24時間の休暇を与えられ、市内見学に
行きたい、というシナトラが残りの二人に解き付され、ガールハントに出かけるという、ボーイミーツ
ガールものということが出来る。ストーリーとしては他愛の無いものだし、ラストあたりの海軍バンザイも
戦争が終わってまだ4年しか経っていないんだなあ、と思わせる愛国精神ぶり丸出しだ。

ケリーが一目惚れしてしまうのが、ミス地下鉄のヴェラ・エレン。シナトラはといえば、タクシーの女性
運転手ベティ・ギャレットに一目惚れされ、自宅に引っ張り込まれてシナトラもメロメロになる。
一方、博物館で三枚目担当のマンシンが原人に似ている、ということから彼に興味を抱いた人類学者アン・
ミラーに追いかけられる形で恋に落ちる。こうして3組3様の短いながらも楽しく波乱に満ちた24時間の
恋愛が描かれる。エンパイヤステートビルで待ち合わせ、というのは、その後ケイリー・グラント、
デボラ・カーの「めぐり逢い」そのリメイクのトム・ハンクスとメグ・ライアンの「めぐり逢えたら」でも
使われていましたっけね。

さて、他愛のないストーリーだが、ダンスと歌の素晴らしいコラボレーションこそ本作の見所。そして
ニューヨーク市内を使ったカーチェイスなどロケとスタジオでの撮影のメリハリも宜しい。
ジーン・ケリーのダンスは弟子筋のスタンリー・ドーネンも振付師・ダンサー出身ということもあり
よく乗っているし、名手アン・ミラーもダイナミックなダンスを見せる。ダンスシーン全体の演出がいい。
懐古趣味、といわば言え。「明るく楽しい」映画のエンターテインメントの素晴らしさがここにはある。
テクニカラーもまた美しい。これからも何回か観るのだろう。
e0040938_15341039.jpg
<ストーリー>
24時間の休暇をもらった3人の水兵ゲイビイ(ジーン・ケリイ)チップ(フランク・シナトラ)オジイ
(ジュールス・マンシュイン)は紐育見物としゃれたが、ゲイビイはポスターの女アイヴィ(ヴエラ=
エレン)に惚れ込み、ポスターの示す通り博物館に出かけた。館の教授クレア(アン・ミラア)はオジイに
大変な思召し、チップはタクシーの女運ちゃんブランヒルド(ベティ・ガアレット)から熱を上げられた。

やっとシンフォニー・ホールでアイヴィをみつけたゲイビイが、嬉しがったのも束の間、たちまち女は
消えてしまった。が、彼女は踊子の身を恥じてコニイ・アイランドの舞台に逃げていたのだ。見世物小屋
ではブランヒルドを車持ち逃げ犯人と思いこんで追って来た警官隊が6人と衝突、大騒ぎになるが、
クレアの機智と警官の粋を利かした計らいで、すべてはうまくおさまった。翌朝、帰営する3人の水兵に、
女3人は熱い接吻を贈って別れを惜しんだ。(Movie Walker)

<IMDb=★7.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:96% Audience Score:83%>



by jazzyoba0083 | 2018-07-12 11:40 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

アフターマス Aftermath

●「アフターマス Aftermath」
2017 アメリカ Emmett/Furla/Oasis Films (EFO Films),Hat and Cat Productions and more.94min.
監督:エリオット・レスター
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、スクート・マクネイリー、マギー・グレイス、グレン・モーシャワー他
e0040938_11170314.jpg
<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>
久しぶりで不満のたくさん残る映画を観てしまった。まあ短かったからまだましだったが。こういう映画の
脚本を書くのは誰だ、と見てみれば、ハビエル・グヨン。作家として名は売れてないけど、スティーブン・セガールの
娘、藤谷文子を妻としている男だ。豆知識だけど。ww

ストーリーには一瞬気を惹かれる。主人公ローマン(シュワルツェネッガー)の最愛の妻と娘、しかも初孫がお腹に
いる娘が乗った飛行機が、どうやら管制ミスで空中衝突を起こし、全員死亡、という米国航空機史に残る大事故で
死亡してしまう。彼は口数は少ないが真面目で腕のいい建築現場の監督だった。当然茫然自失。

一方、管制官のジェイコブは、たまたま当時管制塔に電話の修理が入っていたことで管制に気が散り、しかも夜勤で
一人での管制だったため、気がついた時は遅かったのだ。自分のせいだと己を激しく責める。家の壁には殺人者、と
いう落書きがたくさん書かれてしまう。

ローマンは、誰も謝罪に来ないことに静かな怒りを燃やす。一方ジェイコブは会社の勧めもあり、管制官を止め、
名前を変えて、他の街で生活を始めていた。精神状態も次第に元に戻りつつ合った。
我慢が押さえられないローマンは、ジェイコブの居場所を突き止め、たまたまその日、ジェイコブと妻と幼い
息子が来ていたところへ表れ、ドアを開けるや、ジェイコブの首をナイフで切り裂き、殺してしまう。

裁判の結果15年の懲役を食らうが、諸般の情状を加味され、割と早くに仮釈放となる。それを待っていたのは
眼の前で父を殺されたジェイコブの息子であった。出所して最初に訪れるであろう妻と娘の墓地で待ち構え、
銃を突きつける。彼とて理不尽な理由で父を亡くし、いわばローマンと立場は同じだったのだ。結局、息子は
「殺せ」というローマンの言葉を聞かず銃を仕舞い去っていく。そしてローマンもどこかへ去っていく。

というようなお話だ。一見、なかなか筋が通っていそうな感じもあるのだが、まずジェイコブという取切り
テロップが画面にかかり、ここからはジェイコブの話だよ、という説明になるのだが、それではほかにローマンとか
他の区切りがあるのか、というとそうでない。この演出は何?それと、当然開かれた事故の裁判でジェイコブは
どういう立場になったのか。自由に過ごしているといことは、彼に罪はなかった、ということか。それなら
なぜローマンは彼を殺す意味があるのだろう。殺すなら航空会社の幹部か、パイロットではないのか。加えて
今どき管制ミストは言え、コンピュータがコントロールする大型旅客機で空中衝突などあり得るのだろうか。
そのあたりの背景が一切省かれるので、内容に深みが感じられない。シュワルツェネッガーがナイフを持って
迫る画はまるでターミネータだ。
ちなみにタイトルの「アフターマス」とは「後遺症」という意味。なるほど。

最愛の家族を事故で失ったローマンも悲劇だが、彼に夫を父を殺されたジェイコブ一家に同情が行き、映画
して散漫になってしまった恨みが残る。シュワルツェネッガーも作品を選ばないと最近さっぱりのニコラス・
ケイジみたいになっちゃうよ。
e0040938_11171341.jpg
<ストーリー>
実際の航空機事故とその後に発生した事件をなぞり、「ターミネーター」シリーズのアーノルド・
シュワルツェネッガーが事故の真相に迫る男を演じる人間ドラマ。妻と娘を飛行機の衝突事故で失ったローマンは、
一人の航空管制官が事故に関わっていることを知る。
出演は、「アルゴ」のスクート・マクネイリー、「96時間」シリーズのマギー・グレイス、ドラマ『24』シリーズの
グレン・モーシャワー。
監督は、「ブリッツ」のエリオット・レスター。

建設現場の現場監督ローマン・メルニック(アーノルド・シュワルツェネッガー)の妻ナディヤと身重の娘オレーナは
、数か月ぶりにオハイオ州コロンバスに帰ることになっていた。ローマンは待ちきれず、空港に花束を持って迎えに
行くが、妻と娘が乗っているはずのAX112便は到着する様子はなく、ローマンは別室に案内される。
そこで空港の管理会社から聞かされたのは、家族が乗った飛行機が空中で衝突事故を起こしたというものだった。

飛行機の残骸が残る、生存者のない事故現場を訪れたローマンは娘の遺体を発見し、彼女を抱きかかえて声にならない
悲しみに暮れる。表面的な補償のみの心無い対応をする航空会社に、謝罪を求めるローマンは憤る。納得のいかない
ローマンは事故の責任を追究し、一人の航空管制官(スクート・マクネイリー)が関わっていることを知る。
ローマンは謝罪をしてもらいたいという一心で、彼の居所を突き止めようとする……。(Movie Walker)

<IMDb=★5.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer :41% Audience Score:25%>



by jazzyoba0083 | 2018-07-10 22:55 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「オンリー・ザ・ブレイブ Only the Brave」
2017 アメリカ Black Label Media,Conde Nast Entertainment,Di Bonaventura Pictures. 134min.
監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:ジョシュ・ブローリン、マイルズ・テラー、ジェフ・ブリッジス、ジェームズ・バッジ・デール、ジェニファー・コネリー他
e0040938_14541193.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
公開されて暫く経つ映画だが、アメリカでの評判がすこぶるいいので、何がいいのか、確認の意味も含め、
もう一日一回小さい小屋での上映となったシネコンに出かけた。もう上映終了が近いのだろう。客も5人位。

さて、これはいかにもアメリカ人が好みそうな、家族や友情を大切にする素晴らしい仲間に恵まれた勇気
ある男たちの話で、しかも事実がベースにあるため、エンディングあたりでは私も胸が熱くなった。
それほど、「ど直球」の感動英雄映画だ。さらにアメリカの山火事は時々日本でもその規模がニュースになる
ほど、桁が違う火災で、これもアメリカならでは。そうした本国の様々な事情がこの映画に高評価を与えている
のだろう。実に良心的な映画だ。子供と観たいくらいの映画。悪い人が一人も出てこないというところも、
心底ひねくれた人物も出てこないところも、ちょっと出来過ぎじゃないか?と思えるくらいの(人によっては
気持ち悪いと思うくらいクリーンなレベル)★は8に届かないかなあ、という感じだった。

更に、こうした英雄譚に付き物の彼らを悩みながらも支える妻や家族、そして恋人。森林消防隊の奴らがまた
若く純情で良いやつばっかりなので、ラストはほんとに心に沁みる。

アリゾナ州の消防には森林消防隊と建物消防隊がある。このうち森林消防隊でも、優れた専門技術を持つ精鋭
部隊をホットショットと呼ぶ。彼らは勇気とプロ意識に裏付けられた怖いもの知らずの面々だ。
映画ではエリック・マーシュ(ジョシュ・ブローリン)を隊長とする部隊が、プレスコット市の市長と、
防災部長の理解を得た上、審査を経て、ホットショットに昇格するストーリーが前半。
ホットショットの仕事は主に、火災を食い止める防火帯を確保することで、そのために木を切り倒したり、
ブッシュを狩ったり、敢えて一帯を早めに燃やして延焼を食い止めるというハードで地味な仕事だ。常に
風や気温を読んで火がどちらへ流れるかを瞬時に判断し無くてはならない。

こうした中、2013年6月、ヤーネルヒルというところで落雷による火災が発生。最初はボヤくらいだと思われて
いたが、出動したマーシュらの部隊は、あっという間に広がった火災に囲まれ逃げ道を失ってしまう。
彼らは訓練どおり、火の通り過ぎるまで人一人が入って伏せて使う耐火テントに隠れたが、テントが耐えうる
時間を超えて火災が滞在したため、そこにいた19人全員が殉職してしまった。

ただ一人、天候を読むため別の場所にいて他の部隊のクルマに助けられたブレンダン(マイルズ・テラー=
「セッション」でシゴカれるドラマーを演じた)のみ助かった。彼がこの映画の狂言回し的な存在となる。
(部隊メンバーの人間的な部分を一手に引き受けている形)男の仕事現場と家族や子ども、仕事上の悩みなどを
マーシュにぶつけながら、仲間に助けてもらいながら、男として成長していく途中で、悲劇に見舞われる。
「自分が死ねば良かったんだ」と言いたくもなる。
しかし隊長マシューの妻アマンダ(ジェニファー・コネリー)が自分も悲しみのどん底なのに、叱咤激励して
くれるのだった。

「風とともに去りぬ」では実際に家を燃やしていた映画も、今や本物そっくりの火災をCGで合成することが
出来る。これが映画に迫力を与えていて、緊張感もよく出ていた。
惜しむらくは、先程書いたように、全員いいやつで、悪い人が出てこない英雄映画なので、気持ちの良さが
ストレート過ぎてしまう恨みがある。マシュー夫妻と、ブレンダン夫妻にプライベートでの焦点が当たるが、
特にブレンダン夫妻の妻の気持ちに深く迫る、などがあるとと、★が半分くらい増えたと思う。
e0040938_14560695.jpg
<ストーリー>
 全米中に衝撃と悲しみをもたらした2013年の悲劇の実話を「ノーカントリー」「ヘイル、シーザー!」の
ジョシュ・ブローリン主演で映画化した実録スペクタクル・ドラマ。
2013年にアリゾナ州で発生した大規模森林火災に立ち向かう森林消防の精鋭部隊“ホットショット”の男たち
20人の絆と運命を描く。
共演はマイルズ・テラー、ジェフ・ブリッジス、ジェニファー・コネリー。
監督は「トロン:レガシー」「オブリビオン」のジョセフ・コシンスキー。

 アリゾナ州プレスコット市の森林消防隊員を率いるマーシュは、過酷な任務に耐えられるよう、日々隊員
たちを厳しく鍛え上げていた。ある日その森林消防隊に、薬物中毒の過去があり、おまけに窃盗罪で保護
観察中の若者マクドナウが入隊を希望する。“娘が生まれたのを機に心を入れ替えたい”という彼を、
マーシュは周囲の反対を押し切り採用する。
そしてマクドナウはその言葉通り、過酷な訓練に必死で食らいつき、次第に他の隊員たちの信頼を勝ち
取っていく。そんな中、現場での裁量権を持つべく、地方自治体の消防隊としては前例のない、特別な精鋭
チームにのみ与えられる“ホットショット”の認定を受けようと考えるマーシュだったが…。
(allcinema)

<IMDb=★7.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:87% Audience Score:91%>



by jazzyoba0083 | 2018-07-08 11:30 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「エリザのために Bacalaureat」
2016 ルーマニア・フランス・ベルギー Why Not Productions,Wild Bunch,Canal+,Ciné+ and more. 128min.
監督・製作・脚本:クリスティアン・ムンジウ
出演:アドリアン・ティティエー、マリア・ドラグシ、ヴラド・イヴァノフ他
e0040938_15304250.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
「わたしは、ダニエルブレイク」がパルム・ドールを獲った2016年のカンヌで監督賞を獲った作品。
この年は豊作だった。ルーマニア出身のムンジウ監督の三作目。すべて自分でプロデュースし脚本を書く。
彼のカンヌ三連覇となる作品だ。賞が獲れてしまうのか、賞を狙って作るのかは分からない。
故にムンジウ色というものが強く主張されているのだろうな、と想像は出来る。青空のない世界、な感じ。

さて、本作を観て、改めてルーマニアという国についてWikipediaを眺めてみた。1989年のチャウシェスク
政権の瓦解により民主化され、現在はEU、NATOのメンバーでロシアの喉元にあってガッツリ西側の国になって
いるんだな。ウクライナなどと並んでロシアにしてみれば煙たい存在なのだろう。
民主化後も経済改革を中心とした国勢は回復途上で、そのような環境のある一面を描いたのが本作だ。
重く暗い映画である。
日本人がこの国について深く知る機会はほぼない状況下、本作を観てこれがルーマニアの全部と判断するのは
危険だろうが、国の大まかな捉え方としては参考になるだろう。

そこで本作である。主人公は警察病院の医師。娘の家庭教師だった女性と愛人関係がある。妻は意に沿わず、
図書館事務員として勤務している病的な感じの女性である。夫妻の間は愛人の存在が示すように、冷めている。
医師と妻の一人娘がエリザ。医師夫妻はかつて国に絶望して国外に出て、民主化後に帰ってきたものの、
自分たちが思い描いていた国情にはなっていなかった。そこで医師は娘をこの国に置いていても幸せにはなれ
ないと、幼い頃から英才教育を与え、(その経過として家庭教師を雇っていてそれが今の愛人になっている)
イギリス留学をさせようとしていた。
娘はかなりの優等生になっていて、夫妻の娘に掛ける希望は大きかった。娘には自動車学校の先生のボーイ
フレンドがいるが、医師は彼の存在をあまり好ましく思っていない。娘も彼氏と別れてイギリスに行くことに
躊躇もある。

そんな状況下で事件は起こる。愛人宅に寄るため、娘を学校の手前で下ろす。少し長い距離を歩くことに
なった娘エリザは学校の手前で暴漢に襲われる。幸い強姦は未遂で手に怪我をしただけで済んだが、
心に負った傷は小さくなかった。
時期が悪く、留学奨学生になるために好成績が必要とされる学校の最終試験に不安が・・・。

そこで父親である医師は、警察病院の医師である地位を利用し、警察署長から副市長、試験監督官とコネを
たどり、不慮の事件にあった娘の試験の結果に手心を加えてくれるように奔走する。
すると「最後の問題の最後の文章の単語3つに横線を入れる」と、それがエリザであることのサインとなり
試験に手心が加えられるところまで漕ぎ着けた。

一方娘を襲った犯人捜査にも署長を督励し、懸命となり、ボーイフレンドを疑ったり、娘可愛さは分かるが
やりすぎの空回りが目立つようになっていく。自分が何をしているかについて娘への愛情で目が曇って
しまっている。それに気が付かない。
そして娘に試験に際してのズルの仕方を教える。娘は父を蔑むことはあからさまにはせず、聞いていたが、
実際の試験ではその手は使わなかった・・・。娘は親が心配するよりずっと大人だし、頭も良い。
試験の結果も犯人のその後も明らかにされず映画は終わる。

父が娘を思う気持ちは良いだろう。当たり前だ。なんとか自分の出来ることはしてやりたい。そうだろう。
そして動く父。ルーマニアがコネ社会なのかどうかは知らないが、父のコネを伝ってズルをすることが受け
入れられる社会なのだということが描かれている。それは、自分や妻がかつて唾棄していた国の有様だった
のではないか?自分が普段から不平を言い、この国から出したいと娘に願っているその状況に加担している
行為をしてしまっているわけだ。つまり天に唾するということ。ムンジウの告発はそこにこそ、ある。
いや、ムンジウは告発をしているわけではない。自分の生まれた国の人々が陥っている愚行を観客の前に
提示し、「放置」する。芋づる式に登場する不正の連鎖に対する「突き放した」というか「放置」した
目線。自分が施して貰ったのは不正ではなく温情だ、という自らに対する思い込ませ。それがかつて国を
ダメにしてきたのに。娘が父に投げかける言葉に観客の思いが共振するだろう。このあたりどうやら
ムンジウの真骨頂らしい。

映画の冒頭で家に石が投げ込まれ窓が割れるシーンがある。そして次いで自家用車のフロントガラスに
投石されているシーン。誰がやったのか?そして盛んに登場する野良犬の存在とその吠え声。
それらはムンジウが描こうとしているルーマニアの現在に対するメタファーに他ならない。

いかにもカンヌ好みの観念的主張を含んだ作品。心に重くのしかかる暗い映画で、作中の出来事はすべて
回収されない、という特異な終わり方。しかし、それでイライラするかと言うと、その前にため息が出て
しまうという・・・。そんな映画が好みという方はご覧になると面白いだろう。
e0040938_15330396.jpg
<ストーリー>
ルーマニアの小さな町に暮らす医師ロメオ(アドリアン・ティティエニ)には、愛人がおり、家庭は決して
うまくいっているとはいえない。ある朝、イギリス留学を控える娘エリザ(マリア・ドラグシ)が、
登校途中に暴漢に襲われてしまう。大事には至らなかったが、彼女の動揺は大きく、留学を決める
最終試験に影響を及ぼしそうだ。
ロメオは娘の留学をかなえるため、警察署長や副市長、試験監督とツテを頼り、ある条件と交換に試験に
温情を与えてもらおうと奔走する。
だが当の娘には反発され、ロメオには検事官の捜査が迫ってくるのだった……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:95% Audience Score:83% >





by jazzyoba0083 | 2018-06-25 23:30 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)