カテゴリ:洋画=な行( 73 )

●「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男 Free State of Jones」
2016 アメリカ Bluegrass Films and more. 140 min.
監督・脚本:ゲイリー・ロス
出演:マシュー・マコノヒー、ググ・ンバータ=ロー、マハーシャラ・アリ、ケリー・ラッセル

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
日本でいうと、ペリーが浦賀に現れた10年ほど後、アメリカでは1861から65年まで
アメリカ唯一の国内戦争である「南北戦争」が起きた。これはリンカーンの登場により
南部7州が権益を守るために「アメリカ連合国」として独立を宣言し、これに対し北部
13州からなる軍隊と全面戦争となった事件だ。歴史の教科書でも名高い。

だが、この背景に、南部に北軍とも南軍とも距離をおいた「自由州」を作ろうとした
男がいたとは初めて知った。実話の史劇が好きな私としては、本国では制作費すら
回収できなかった不作となった本作ではあるが、面白く観させて貰った。

主人公は南軍の脱走兵ニュートン・ナイト(マシュー・マコノヒー)である。彼は
「金持ちの戦争を貧乏人がさせられる」ことに戦いの意義を見いだせず、また幼い
甥が戦死したりしていくなかで、軍を脱走。同様に逃走していた黒人奴隷たちと
ある種のコンミューンを形成し、原始共産制のような共同体を作っていった。その
彼の半生を描くものだ。

「南北戦争」が北軍の優勢に進む中、南軍からも逃亡者も増え、農民から食料や
物資を強制的に調達していく南軍から離反していく白人も多くなり、ナイトの
コンミューンは大きく膨れ上がっていく。ついにはミシシッピ州の三分の一を
支配するまでの勢力となる・・・。そして戦争は終わり、黒人にも参政権が
与えられるようになるのだが。

こうした歴史の流れの中で、クレオールのレイチェルという女性、本妻セリーナ、
集団の最初から仲間だった黒人奴隷モーゼズ(マハーシャラ・アリ)とその家族の
逸話などが語られ、また集団を率いるナイトの立場などが綴られて行く。

歴史家によれば、実在のニュートン・ナイトは毀誉褒貶のある人物らしく、最後は
州の連邦保安官代理を務めていたらしい。この映画はナイトの大枠の事実はベースに
してあるものの、相当な脚色が入っていそうだ。

その1つがナイトが活躍していた頃から85年ほど後のミシシッピ州のある裁判の
話がパラで進む構成。(裁判自体は実在と思う)それは、ナイトの孫が白人女性と
結婚したのだが、州の法律で有色人種と白人の結婚は禁じられていて、孫は逮捕され
裁判となったのだ。
その血の割合は八分の一に過ぎないが、それでもミシシッピでは有色人種となって
しまうのだ。彼が罪を逃れるためには離婚して州を離れ無くてはならない。
決定的だったのはナイトがクレオールの娘レイチェルの子どもだと自分の家の
聖書に宣誓したものが見つかったことだ。これにより、離婚を選ばなかった孫は
投獄され5年の懲役を受けた。映画は85年たってもナイトらが血と汗で掴みとった
はずだった「神の子としての自由」は、実現していないということ。作品はナイト
自身の晩年に触れずむしろ、孫の裁判の行方を押し出して終わっていく。たんなる
人物譚で終わらせなかった監督の演出は好きだった。

その裁判がラストに向かって同時進行する。つまり、奴隷解放され黒人参政権が
認められても、南部諸州ではKKKなどの妨害を始め、法律が朝令暮改であったり、
連邦法が無視されたり、これは現代にも繋がることなのだが、根本的な黒人差別は
解消されていない、真の自由はアメリカにはあるのか、という問いを提示するための
演出であるのだ。
夢の国アメリカ、その背後には暗黒の歴史が脈々と続いているのだ。
そしてそれらを告発するような映画もたくさん作られるところがまたアメリカの良さ
でもある。

オスカー男優二人、マコノヒーとアリの演技は安定的であり、安心して観ていられる。
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<ストーリー>
19世紀のアメリカで、リンカーン大統領よりも早く奴隷解放を実現するなど、真の自由を求めて戦った実在の人物、ニュートン・ナイトをマシュー・マコノヒーが演じる歴史ドラマ。南北戦争に疑問を抱き、500人の奴隷と農民たちを率いて100万人の南部軍に反旗を翻す姿が描かれる。監督は『シービスケット』のゲイリー・ロス。

1862年、南北戦争の最中、南軍の衛生兵ニュートン・ナイト(マシュー・マコノヒー)は、奴隷を20人以上所有する農園の長男は兵役を免除されるという新法に憤る。甥ダニエル目の前で戦死すると、ニュートンは遺体を家族に渡すため軍を脱走する故郷ミシシッピ州ジョーンズ郡では、物資を徴収する南軍が女たちを苦しめていた。幼い娘を抱えた母親を脅す騎兵隊追い払ったニュートンは将校に目をつけられ、妻セリーナ(ケリー・ラッセル)と赤ん坊を置いて逃げることに。
ニュートンは、酒場の女主人サリーの手引きで“沼”に向かう。イーキンズ家の使用人レイチェ
ル(ググ・ンバーター=ロー)の案内で沼の奥の湿原に入ると、そこは逃亡奴隷たちの
隠れ場所だった。モーゼス(マハーシャラ・アリ)が傷を治療してくれ、ニュートンは
逃亡奴隷たちと心を通わせる。
反撃を決意したニュートンは銃を手配し、脱走を繰り返したためにつけられたという
モーゼスの鉄の首輪を外す。その大きな音を聞いて駆け付けた捜索隊を迎え撃ちにすると、
黒人を助けるために白人を撃ったニュートンに逃亡奴隷たちは驚く。

1863年、沼の自由反乱軍には逃亡奴隷や脱走兵、元南軍のウィルやジャスパーも加わって
いた。南軍に資産を奪われた村人たちも集まり、黒人と白人が平等な村が生まれた。
ジョーンズ郡の自由民と名乗り、騎兵隊から物資を奪い返す反乱軍に、南軍は農場を焼き
払うという手で降伏を求める。ニュートンは拒否するが、農場を守ろうと降伏した父親ら
4人が見せしめに吊るされる。怒りで一つになった反乱軍は南軍を攻撃し、1864 年に
エリスビルの司令部を占拠、さらに隣接する3つの郡を奪う。
北軍に援助を断られたニュートンは、北部にも南部にも属さないジョーンズ自由州の設立を
宣言する。1865年、南北戦争は終結するが、新たな戦いが始まった……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:46% Audience Score:63% >



by jazzyoba0083 | 2018-03-21 23:15 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

●「ナイスガイズ! The Nice Guys」
2016 アメリカ Misty Mountains,Bloom and more. 116min.
監督・(共同)脚本:シェーン・ブラック
出演:ラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリング、アンガーリー・ライス、マット・ボマー
   キム・ベイシンガー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
面白い! 前知識無しで観たのだが、作品中のエピソードの「あり得なさ」加減のアイデアや
描写が工夫されていて、画面から目が離せない。細かいギャグも散りばめられ、それに乗って
オスカー俳優の二人が見せる、バディもの、という仕立てだ。

時代設定は1970年代。タイトルロゴや音楽・衣装もバッチリ70年代している。現代から
見れば既に分かっている過去を描くアイデアだ。当時カリフォルニアを中心に自動車の排ガス
規制は厳しさを増し、「マスキー法」という法律も出来てくる。そうした時代背景を上手く
利用しスモッグに霞んだLAを舞台に、二人のポンコツ探偵が活躍するのだ。

主役の二人はもちろん安定した演技なのだが、ゴズリングの娘ホリーを演じた
アンガーリー・ライスが大人びた演技でなかなか良かった。彼女、最近作ではニコール・
キッドマン主演の「ビガイルド」に出演するなど、これからが楽しみな女優さんだ。
彼女がこの本作でもキーになっている。(賢いという点でね)

開巻、道路の下に建つある家の中。夜である。家人の不在をいいことに、一人の少年が
エロ雑誌のグラビアを眺め悦に入っている。と、そこに上の道路からクルマが突入し家の
中を通過し、庭で大破する。少年が駆けつけると、中には全裸の瀕死の女性が一人・・・。
「私に乗りたい?」と言って絶命する。少年が観ていたのは彼女のグラビアだったに違い
ないのだ。
このシーンだけでも「あり得なさ加減」は相当なものだけど、この事故が起きる直前、
少年がエロ本を眺めている背後の窓にクルマが道路から落下してくる小さい映像が
写っている。すべからく、そういう細かさのある映画だ。そうした丁寧さがきちんとした
面白さに繋がっている。

ポンコツ探偵二人のうち、ギャグ担当はゴズリングなのだが、彼のカラダを張った
「あり得なさ爆発」のギャグの出来もいい。例えば、ドアガラスを手にハンカチを巻いて
割って鍵を中からあけようとするも、ガラスで手首を切り、出血多量で救急車を呼ぶハメ
になった、とか、高層ビルでのアクションで悪いやつと二人で落下するも、自分はプールへ、
悪党はプールサイドでグシャグシャになる、とか。仕掛けがよくできていて笑えるわ、
痛快だわ。また自動車排気ガスの規制を巡る陰謀のネタあかしでは、告発映画の上映に
まつわる老女の証言なども良く出来ていたと感じた。

やっていることは下卑ていて粗野だけど、映画としての面白さのツボをちゃんと押さえて
あるので、面白いわけだ。手を抜いていない、ということだね。
最初にも書いたが、今を知っているから面白い70年代ギャグ、排ガス規制を厳しくして
アメリカの車メーカーを潰すわけにはいかないのだ、とするキム・ベイシンガー扮する
司法省の偉いさん。そう、実際はその後、ビッグスリーはいずれも国からの資本を注入される
ほどに弱まるわけだ。そしてゴズリングが「5年後には日本製の電気自動車で溢れているさ」
とご託宣を述べるのだが、それはプリウス旋風の事であることが僕らは既に知っているから、
ニヤリと出来る仕掛けだ。

全体として、まとまりがよく、吹っ切れているし、アクションもいい。そして演者たちの
役どころを抑えた演技も良い。(個人的には)まったく死角に入っていた作品だったが
十分に楽しませて貰った。
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<ストーリー>
ラッセル・クロウとライアン・ゴズリングが演じる凸凹コンビが、少女失踪事件の捜査を
機に巨大な陰謀に巻き込まれていく様を描くサスペンス・アクション。『スパイダーマン:
ホームカミング』にも出演する新鋭アンガーリー・ライスがヒロイン役を務めるほか、
キム・ベイシンガーやマット・ボマーらが脇を固める。

1970年代、ロサンゼルス。13歳の娘ホリーを抱えるシングルファーザーのマーチ
(ライアン・ゴズリング)は、酒を飲んでばかりの情けない私立探偵だった。
ある日、示談屋のヒーリー(ラッセル・クロウ)に強引に相棒にさせられ、彼と一緒に
失踪した少女を探す羽目に。車の運転もこなすホリーを加え少女を捜索するうちに、
ある映画に関する連続不審死事件、さらに国家を揺るがすような巨大な陰謀に行き当たり、
次々に殺し屋が現れ狙われていく。(Movie Walker)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:92% Audience Score:78% >




by jazzyoba0083 | 2018-03-11 15:30 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

「人間の値打ち Il capitale umano(Human Capital)」
2013 イタリア Indiana Production Company,Motorino Amaranto. 109min.
監督:パオロ・ヴィルズィ
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ファブリッツィオ・ベンティヴォリオ、ヴァレリア・ゴリノ、
   ファブリツィオ・ジフーニ、ルイジ・ロ・カーショ、ジョヴァンニ・アンサルド、マティルデ・ジョリ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆+α>
<感想>
面白かった!ロバート・アルトマンとかポール・ハギスが作りそうな、ある出来事が伏線となり様々な人間の心の
中身を剥ぎ取って見せて行き、一点に収束していく群像劇。それぞれの登場人物にまつわるプロットが上手く
出来ていて、重なる部分をきちんと見せて関連性を認識させるという丁寧な作り方も良かった。内容がいかにも
イタリア的で、アメリカ映画が描く俗物像とは少しシニカルに、アイロニカルに表現されている感じだった。

人間の実相はこんな感じ、という、嫌な言い方をすれば「あからさまな身も蓋もない」表現で、金銭にまつわる、
見栄にまつわる、嘘にまつわる、愛憎にまつわる「嫌な面」をたっぷりと見せてくれる。まさに欲望と打算である。
映画は3人にハイライトを当てつつ進み、最終章で全てを回収する仕組みとなっている。

原題Human Capital とは死亡保険金を算出するときなどに使われる経済用語で、「人的資本」と訳される。
このタイトルが絶妙だ。ラストに最初に出演者の誰かに撥ねられて死んだ男の補償金についての説明が
淡々となされるのだが、彼の残りの人生や社会的地位や労働によって得べき金額などを合算し出す金額が
示される。死んだ男は顔さえ映らない。だが金持ち連中は、そのことよりも我が身可愛さであたふたとする。
この死んだ男は何かのメタファーなのだろう。邦題の「人間の値打ち」も良く付けたと思う。このタイトルも
アイロニカルだ。

いわば「人間のいやらしさ」を浮かび上がらせた作品。その描き方が一流で見事。だが、きちんとカタルシスを
置くことも忘れてはいない。が、金持ち、そこそこ、貧乏というそれぞれの居場所において彼らが取る行動に
いろんなことを考えさせられる。自分の嫌な部分に手を突っ込まれるような「素敵な」映画だった。
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<ストーリー>
イタリア・アカデミー賞で作品賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞など7冠に輝いたミステリー。クリスマス
イヴ前夜、イタリア・ミラノ郊外で一件のひき逃げ事故が起こる。この事故をきっかけに、経済格差のある3つの
家庭に隠された秘密が浮かび上がる。

イタリア・ミラノ郊外。町で小さな不動産屋を営むディーノ(ファブリツィオ・ベンティボリオ)は娘のセレーナ
(マティルデ・ジョリ)、後妻で心療内科医のロベルタ(ヴァレリア・ゴリノ)と暮らしている。

ある日、ディーノは富豪のボーイフレンドの家に遊びに出かける娘を送り届ける。そして、屋敷の主人である
ジョヴァンニ・ベルナスキ(ファブリツィオ・ジフーニ)に近づき、ベルナスキが手がける投資ファンドへの
参加をほのめかす。出資金額は総資産の20%以下が出資の条件であるにも関わらず、一攫千金を目論んだディーノ
は銀行から70万ユーロもの大金を借り、ファンドに参加する。

ベルナスキの妻カルラ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)は何不自由ない生活を送っているが、夫からは
アクセサリーのように扱われ、自分の居場所を見出せず空虚な日々を送っていた。
ある日、カルラは町にある唯一の劇場が老朽化のため取り壊されそうになっているのを知ると、再建のための
出資を夫に頼み、劇作家や評論家を巻き込んで自ら運営委員会を立ち上げる。

金持ちの子女が集まる高校に通うセレーナは、ボーイフレンドはいるが、本当の愛とは何かはまだ知らずにいた。
そんなある日、継母ロベルタの勤務先で不思議な少年と出会う。それから半年後のクリスマスイヴ前夜。
一件のひき逃げ事故が起こる。それをきっかけに、ディーノ、カルラ、セレーナの思惑と欲望が明らかになって
いく。(Movie Walker)

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:82% Audience Score:77% >




by jazzyoba0083 | 2018-03-09 23:03 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

⚫「ノッティングヒルの恋人 Notting Hill」(再見)
1999 アメリカ Polygram Filmed Entertainment,Working Title Films and more. 123min.
監督:ロジャー・ミッシェル 製作総指揮・脚本:リチャード・カーティス
出演:ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント、リス・アイファンズ、ジーナ・マッキー、ティム・マキナニー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
11年ぶりの鑑賞。その時のブログは下にリンクを張っておきますが、感想としてはあまり変わりがない。
凄いストーリーではないのにすごく「居心地の良い」作品。ほのぼのとする、というか心が暖かくなると
いうか。初見も冬だったが、寒い季節に見たくなるような映画なのだろう。

やはり脚本が良いのだと思う。リチャード・カーティスというイギリスの(生まれはニュー・ジーランド)
脚本家、監督は、「ラブ・アクチュアリー」、「フォー・ウェディング」「アバウト・タイム」「ブリジット・
ジョーンズ」シリーズ、「Mr.ビーン」シリーズなどを手がけている。それぞれ観ているが、イギリスの風味を
上手く活かした手堅い作品を創っている。ヒュー・グラントとも数作共にしており、彼の使い所のツボを心得て
いる感じだ。そこに当時勢い最高潮の典型的なアメリカ生まれのハリウッド女優ジュリア・ロバーツを
女優という役柄で放り込む。周りをシュアな演技をするイギリスの俳優たちで固め、舞台も全てロンドンだ。
こうしたシチュエーション(ドラマの設定)とロケーション、イギリス流ヒューモアとウィットそして
配役の妙が、「逆シンデレラの王道的」ストーリーを、観る人に心地よいものにしていると感じる。

この映画を観ていると、「一目惚れ」「住む世界の、価値観の違い」などを感じる。ロンドンにやってきた
ハリウッドの人気女優はロンドンの旅行書専門店を訪れるのだが、その店主(ヒュー・グラント)に
一目惚れ。作品の経過と共に分かるのだが、彼女が置かれた不自由な生活の反動もあったのだろう。
権謀術数渦巻くハリウッド生活で心が荒んでしまった女優にとって、ロンドンの普通な心地よい男性は
心に空いた穴にすっぽりハマったのだろう。

そして気はいいが、ハリソン・フォード似の男に女房を寝取られた、結構チキンな男。住む世界も、持っている
物差しも全然違う女性に恋し、傷つき、悩む。一方の女優も、男を好きになるのだが、周囲の事情がなかかなか
彼女を好きにさせず、その状況が男を傷つけ、また自身をも傷つけてしまう。

初デートが妹の誕生祝いをする友人宅のディナーで、男はそこで結構自分のことを女優に教えるのだが、彼女は
ラストまで、ハリウッド女優としか分からない(観ている人は)。ということは、この映画はどちらかというと
男性側の目線の映画である、といえるのだろう。

男女の抱える落差からお互いが悩む、ぞれぞれの心境に観客はシンパシーを感じつつ、もどかしさを感じたり
共感を覚えたりしていく仕組みだ。さらに、男を取り巻く家族や友人たちが、サイドストーリーを展開しつつ
男を支え、あるいは男に愛情が如何にあるべきかを教え、それがまた心を暖かくしているのだ。ラストには
ちゃんと彼らの幸せも示唆されているところがニクい。

女優は2度めの男のとのすれ違いの後に、オスカーを獲るという設定だが、ジュリア・ロバーツ自身も翌年の
作品「エリン・ブロコビッチ」で主演女優賞を獲得する。
個人的にはあまり得意でない女優さんだが、所見のときも書いたが、本作ではいい味が出ている。キャスティングの
妙、ということかもしれない。イケメン、ヒュー・グラントは彼の持ち味はこうでしょ、という良い側面が
出ている。両者とも年齢を重ね、それぞれベテラン中のベテランになっているが、主役を張るというより、
主役級が集まる映画のメンバー的ポジションとなっている。

女優は、最初のデートの時、老いた女優の惨めさを切々とみんなに披露するのだが、それが現実となりつつある
ジュリア自身、今、どう思うのだろうか。

本作で触れておかなければならないのは音楽だろう。主題歌でありエンディングで効果的に使われる"She"。
冒頭は作者自身でもあるシャルル・アズナブール、ラストはエルビス・コステロが歌い上げる。
また男の心を表現する手段として、ビージーズ「傷心の日々」のアル・グリーンバージョン、などなど
いい曲がいいタイミングで(別の言葉で言うと「ベタな感じで」)効果的に使われている。

また映像の構成としてみた場合、屋内と屋外、アップとロングのリズムがいい。またドローンが無かった時代に
俯瞰のズームバックをどうやって撮ったんだろう?というショットなど、画の方もなかなか魅せた。

ジュリアの役どころが女優なので、デミ・ムーアやパトリック・スウェイジ、メグ・ライアンなどが実名で
出てくるところもニヤリポイント。

ところで、この映画を観た方はみなさん気がつくと思うけど、ヒュー・グラントのアパートの玄関に置かれた
振り袖女性の等身大パネル。誰でしょう?ネットを調べてみると、当時の富士フィルムの「お正月を写そう!」
の宣伝でカメラ屋さんの店頭に置かれたパネルらしく、女性はスティーヴン・セガールの娘さん、藤谷文子さん
らしいですね。それにつけてもこの映画では、サボイホテルのなかなかセンスの良いフロントマンのおじさんの
頬にキスをする「タキヤマ」なる日本人らしき人物も描かれていますが、脚本家は何を意図して日本を
入れ込んだのか、マーケティングなのか、そのあたりはよくわからなかったですね。
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<ストーリー:結末まで触れています>
アナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)はハリウッドの大女優。そんな彼女がロンドンのノッティングヒルに
ある書店に足を運ぶ。店主のウィリアム(ヒュー・グラント)は突然のことにびっくり。さらに彼は買物の
帰りに偶然アナとぶつかり、ジュースをかけてしまう。慌てた彼は服を乾かすよう申し出て、アナを家に招く。

何とか彼女を送り出して間もなく、彼女が戻って来てウィリアムにキスをして立ち去る。夢のような時が
過ぎて数日後、ウィリアムに電話があったとルームメイトのスパイク(リス・エヴァンス)から聞かされる。
早速アナが宿泊しているホテルに向かい、雑誌記者と偽り部屋に入る。ウィリアムは妹の誕生日パーティーに
アナを誘い、彼女も誘いに応じる。その後もデートを重ねる二人。

ところがある晩二人がアナの部屋に行くと、有名俳優の恋人が彼女の帰りを待ち構えていた。彼氏の存在に
ショックを受けたウィリアム。そして半年後。マスコミのほとぼりが冷めるまで家に置いて欲しいとアナが
突然やって来る。だがそれも同居人スパイクが口を滑らせたことでマスコミが殺到。アナは二度と会わないと
言い残し、雑踏の中へ消える。
一年後。アナの撮影現場を訪れたウィリアムは気持ちを伝えられない。彼女が店に来てもつれない態度を
取ってしまう。それを見かねた友人たちは一丸となってウィリアムをホテルに送り届ける。記者会見場に
もぐりこんだ彼は、再び記者になりすまし彼女に告白。アナもプロポーズに応え、会場は結婚会見に早代わり。
二人はロンドンでゆったりと時を過ごすのだった。

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:83% Audience Score:79% >





by jazzyoba0083 | 2018-02-15 22:55 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

●「ニューヨーク・ザ・ギャング・シティ Rob the Mob」
2014 アメリカ RTM Film Inc,The Exchange. 104min.
監督:レイモンド・デ・フェリッタ
出演:マイケル・ピット、ニナ・アリアンダ、レイ・ロマノ、グリフィン・ダン、アンディ・ガルシア他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
キャステングが地味だからか、日本では劇場未公開のビデオスルー作品。WOWOWの「ジャパン・プレミア」で
鑑賞した。実話に基づく話。現代版「ボニー&クライド」のようなお話だ。

ニューヨークのマフィア、ジョン・ゴッティの裁判でガンビーノファミリーが壊滅したというマフィア史上でも
大きな事件の中にあった、頭がいいんだか悪いんだか、向こう見ずなのか勇気があるのかよく分からない若い
男女の、マフィアを「強請る」というなかなか迫力のあるというか、痛快というか、そういうストーリー。

冒頭、花屋を襲って、店主のおばあちゃんにショットガンで反撃され捕まるところからスタート。数年後出所した
トミー、待っていた恋人ロージーは借金取り立ての電話オペレーターに就職し堅気な暮らしを夢見ていた。
トミーも一旦はロージーの会社に勤めてみるがなかなか上手くいかない。

トミーにはNYで花屋をやっていた父がマフィアにみかじめ料を払って庇護を受けていたばかりにそのとばっちりで
殺されてしまい、その花屋を弟と母が切り盛りしていて、10年以上も帰ってない負い目があった。
不義理に対し何とか報いたいという気持ちがあったのだ。
作品の中で時々現れる父親が暴力を振るわれた時の幼いころのフラッシュバック。その中に現れる記憶に残って
いるゴッティファミリーの面々。
映画の中でははっきりは語られないがトミーは父親の復讐のために裁判の傍聴に通い、証言の中で出て来る酒場に
行って当時の犯人を探していたのだな。

町中でチンピラたちがトランプ賭博をしている現場の酒場にショットガンを持って乗り込み、現金やら身につけて
いる貴金属を巻き上げるということを繰り返していた。(マフィアの掟で酒場には銃を持ち込めないという
弱点を付いた)
ロージーも初めは反対するが、次第にコンビで悪事を働くようになった。二人の夢は金を貯めたら足を洗い
フロリダに行って花屋をやることだった。ある日ある程度集めた金を、久しぶりに実家の花屋を訪れ、弟と
母に不在を詫び、金を受け取ってくれ、というが、母は一番苦しいときに不在だったトミーを許してくれない。

ある日強盗に入った酒場である人物から奪った財布の中に、マフィア(ガンビーノファミリー)の組織図が
入っていた。ボスは、ビッグ・アル(ガルシア)であった。当然、組織図のメモを奪還し、二人を殺せと市内の
ファミリーに指示が飛んだ。ゴッティ裁判でFBIが証拠として喉から手が出るほど欲しかったものだ。

カップルの強盗は街でも話題となり新聞の取材を実名で受けたりして、馬鹿なの?と思うような点にマフィアが
だまっているわけがない。ラストに繋がるノーテンキさは命取りとなっていく。

FBIは二人の存在に気づき盗聴を続けていた。しかし、組織図を盗まれた男が検察におそらく保護プログラムの
制度を受けたんだろう、寝返ってしまい、ボス、アルは静かに逮捕されていく。
これで良かろうと、金を持ってマイアミに向かおうとした二人のクルマの前後が不審なクルマに挟まれる。
激しく打ち込まれる銃弾・・・・。

そんなストーリーだったような。

アンディ・ガルシアは自分では何も手をくださず命令を出すのみ。逮捕も粛々と。この結局はツメの甘い
カップルの悲劇ではあるが、純愛で結ばれていたことは、観終わった後に救いを残すのだった。
まあ、マフィアを相手によくやったよなあ。父親の復讐は一応は遂げられたわけだし。淡々と綴られる物語で
起伏が少ないかなあという感じだったが平均点以上の出来ではあると感じた。
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<ストーリー>
1980年代後半から90年代初頭にかけてニューヨークのマフィア、ガンビーノ・ファミリーのボス、ゴッティが
数々の裁判で証言をして大反響を呼んだが、その一方、若い男女の犯罪者カップルがマフィアのアジトを連続して
襲ったという異常事態を再現。
時にシリアスに、時にコミカルにという振れ幅が面白い。ドラマ「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」の
M・ピット、「オーシャンズ」シリーズのA・ガルシアらが顔合わせし、1990年代NYをリアルに再現したのも
見どころだ。WOWOWの放送が日本初公開。

1991年のNYで強盗事件を起こした恋人同士、トミーとロージー。18カ月後、懲役を終えたトミーはロージーと
再出発したいと望んでいたが、マフィアのボス、ゴッティの裁判を傍聴したトミーは、ゴッティがマフィアの
拠点である店を幾つか明かしたことに気付き、ロージーを運転手役に、銃を手にそれらの店に強盗として押し入り、
金品を強奪する。だが、ある店がFBIにマークされていたことからカップルの運命は大きく変わる。(WOWOW)

<IMDb=★6.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:84% Audience Score:56% >



by jazzyoba0083 | 2017-12-12 22:40 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

●「ノクターナル・アニマルズ Nocturnal Animals」
2015 アメリカ Focus Features,Fade to Black Productions. 116min.
監督・脚本・(共同)製作:トム・フォード
出演:エイミー・アダムス、ジェイク・ジェレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン
   アイラ・フィッシャー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想:結末まで完璧に書いてありますのでご注意ください>
この映画のフライヤーを観ると映画鑑賞のヒントが隠されている。まずタグラインが「20年前に別れた夫から
送られてきた小説。それは愛なのか、復讐なのか」。
そして、裏面の解説に「『理解する』のではなく、視覚を通して感覚が刺激される。観たら最後、心のざわめきを
抑えることができない」。

まさにその通りの内容だ。ラストの衝撃的とも言えるオープンエンド。さあ、観ている人はどうとらえるのか。
愛なのか、復讐なのか。女性側の主人公スーザン(エイミー・アダムズ)が経営するギャラリーに掛けてある
現代アートに「アルファベットで"REVENGE"」と書かれたものがある。本人は忘れていたが、スーザン自身が
買い付けてきたものだ。それもまた物語のある方向性を示した暗喩のようである。作画を通して分かりやすいのは
スーザンのメイク。最初は目の周り真っ黒のセレブメイク、過去とラストはナチュラルメイク。それは
スーザンが自らの周囲に建てた虚飾の壁の暗喩であろう。そのナチュラルメイクのスーザンにラスト、訪れるものは
何か。やはり復讐なのか。

送られてきた前夫の小説の物語が現在と過去のスーザンとエドワード(ジェイク・ジェレンホール)の現実と
ないまぜになって独特の世界を形成していく。現在と物語の接点が次第に曖昧になっていき・・・。

映画の半分くらいは、それぞれが抱える「凄まじい孤独」を感じて観ていた。それは小説の中の警部補
(マイケル・シャノン=本作でオスカー助演男優賞ノミニー)にも、犯人たちにも当てはまるのではないか、と。
映画を観終えてそれはそれで正しいとは思ったが、それよりもっと大きな「人を思う心」全般の裏側から見た
「怖さ」でもあるのだろうか、と考えた。そう、フライヤーの説明のよう。
この映画は結論を得るものではない、感覚を愉しめばいいのだ、とは分かっていても、何かしらの意味を
求めたがる私だった。
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ブルジョアに育ち、コロンビア大学で美術史を専攻していたスーザンと小説家を目指していたエドワードは
大学時代、お互いに惹かれていた間柄。2年ほど結婚して別れたのだが、(親の「身分が釣り合わない」という
反対意見も強くあった)、母親の言うとおり、親の金もあったのだろう大きな画廊を経営するセレブの
女性となっていた。精神的に弱い(彼女は弱いんじゃなくて繊細だと母親に説明していたが、やはり不満では
あったようだ)今では、イケメンの会社経営者(浮気バリバリ)と冷えた夫婦生活を続けていた。

ある日、19年前に別れたエドワードから、自分への献辞が付いた小説「ノクターナル・アニマルズ(夜の
野獣たち)」が送られてきた。その内容は、ロードレイジにやられた娘と妻を乗せた男トニー(ジェイクの
二役)一家の厄災と復讐の話だった。
妻と娘はレイプの挙句全裸死体で発見される。トニーは別に拉致され荒野に置き去りにされていたのだった。
そこから地元のやさぐれた警部補ボビーの協力を得て、犯人に凄まじい復讐を遂げていくという話だった。
最後は主犯を射殺するのだが、トニーも主犯の男から鉄棒で目を殴られ、片目が潰れた感じ。荒野に出ていくと
トニーは持っていた銃で自らの命を断ったのだった。最愛の妻と娘を殺され、犯人を殺し、跡に何が残る、と
でも言うように。

あんなに繊細なエドワードにこんなバイオレンスが書けるなんて、と驚くスーザン。寝ずに読み、読むと
眠れなくなる、という精神的に不安定になってしまった。そして、スーザンに会いたいとメールが来た。
本当は愛していたエドワード。厚化粧を落として、約束のレストランに着席するスーザンの顔には素直な
笑顔が浮かんでいた。彼女はあの小説から「弱い自分は死んだ。今や強い自分と合ってくれ、まだ愛して
いるんだ」というメッセージを受けたのだろうか。しかしエドワードは姿を表さなかった。あのバイオレンス
小説は、やはりスーザンに当てた復讐の書であったのだろうか。待ち続けるスーザンの表情が強張っていく・・。
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トム・フォードという監督はもともとデザイナーであるので、衣装を含め生活感の薄いスーザンの現在の生活、
そしてギャラリー、また小説の中では泥臭い作画、「虚飾に生きる女」と「リアリティに生きる男」の
対比であろう。計算された画角、効果的に流れるクラシック系の音楽。小説の世界と現実の世界の境目が
なくなってくる混沌とした面白さ。LA、NY、テキサスという3つの舞台をそれぞれのエピソードの背景に据えた
ところもなかなか考えてあり映画に厚みを付けていた。
そしてエイミー・アダムズを始め、何を考えているのか奥の深い演技を魅せるジェイク・ジェレンホール、
オスカーノミニーのマイケル・シャノン、小説の中の主犯レイを演じたアーロン・テイラー=ジョンソン
(ゴールデン・グローブ助演男優賞受賞)らの素晴らしい共演を得てスタイリッシュかつファッショナブルな
上質なミステリが出来上がった。日本での公開が遅れたのはなんでだろうか。

久々に緊張しつつ思考するサスペンスを味あわせて頂いた。ストーリー自体は難しくはないが、含むものは
相当の思考を要求される作品であろう。(観る人によっは、だけど)
オープニング、デザイナー出身監督の美的な映像を想像していたのだが、見事に裏切られた。掴みはOK。
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<ストーリー>
 映画監督デビュー作「シングルマン」で高い評価を受けたカリスマ・デザイナー、トム・フォードが、
オースティン・ライトのベストセラー・ミステリーを実力派キャストの豪華共演で映画化したサスペンス・
ドラマ。
20年前に別れた夫から突然小説が送られてきたことに戸惑いながらも、その衝撃的な内容に惹きつけられて
いくヒロインの不安と葛藤を、過去と現在に加え劇中小説の物語も巧みに織り交ぜ、美しくかつスリリングに
描き出す。
主演は「メッセージ」のエイミー・アダムスと「ナイトクローラー」のジェイク・ギレンホール。
共演にマイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン。

 アート・ディーラーとして成功を収めながらも夫との結婚生活は冷え切り、満たされない日々を送る
スーザン。ある日そんな彼女のもとに、20年前に離婚した元夫エドワードから彼の著作『夜の獣たち
(ノクターナル・アニマルズ)』が送られてくる。作品が彼女に捧げられていることに困惑しつつも、
早速読み始めたスーザン。そこに綴られていたのは、車で移動中の家族が暴漢グループの襲撃に遭い、
妻と娘が殺され、夫は刑事と共に犯人たちを追い詰めていくという壮絶な復讐の物語だった。
そのあまりに暴力的な内容と完成度の高さに衝撃を受けながらも、これを彼女に捧げたエドワードの
意図をはかりかねるスーザンだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:73% Audience Score:72%>



by jazzyoba0083 | 2017-11-07 11:35 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

●「日本のいちばん長い日」(1967年・岡本喜八版)
1967 日本 東宝映画 157分
監督:岡本喜八  脚本:橋本忍 音楽:佐藤勝
出演:笠智衆、三船敏郎、山村聡、志村喬、黒沢年男、中丸忠雄、高橋悦史、宮口精二、戸浦六宏、
   小杉義男、井上孝雄、田崎潤、天本英世、久保明、藤木悠、加東大介、伊藤雄之助、松本幸四郎他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
岡本版は複数回の鑑賞となる。毎度のことながらすごい迫力だ。一昨年、原田版を観てこれはこれで
いい出来だな、という感想を持ち、機会があればまた岡本版も観てみたいな、と思っていた。
WOWOWでは終戦記念日あたりにこの手の映画を毎年何本か放送するのだが、今年はこれが含まれて
いたので録画して鑑賞した。

原田版の人物に焦点を当てたものと違い、時系列的なイベントを丁寧に追い、長い映画にはなったが
主に軍部の馬鹿さ加減が良く出ていたと感じた。当時の政治家の無能ぶりや、軍部の狂気は、定説に
なっているが、引くべきタイミングを逸して、広島、長崎を許した当時の日本の主導者のどうしようも
なさが、事実の中から浮かび上がって来る。

岡本は、「独立愚連隊」などの戦争ものでも分かる通り、先の大戦の体験から独特の戦争感を持ち、
アイロニカルに斬ったものを作っていたが、本作では半藤一利の原作に橋本忍の脚本を得て、
狂気に正面から向き合った作品となった。特に黒沢年男を中心に描かれる「本土決戦組」の狂気を
時間を追って丹念に描き、またカットのスピードやアングル、ズームの工夫など作画にもアイデアを
注入し、二時間半の8月14日から15日にかけてを一気に見せる。現状に至るまでの戦局は冒頭から
20分間くらいかけてナレーションで説明される。そしてタイトルというアイデアである。
さらに岡本版の優れているのは、狂気を描きつつも、映画というエンターテインメントに仕上がっている、
という点。しかつめらしく見終わるのではなく、面白かった、という気分を持てる点である。
東宝映画のオールスターが次から次へとたくさん出てくるが、個人的には歴史の流れとして整理されて
いるのか、ごちゃごちゃ感と言うものは全くなかった。ただ横浜警備隊長天本英世の絶叫が何言って
いるのか聞き取り辛かったが。

半藤一利が描いた陸軍省の実戦を知らない若手参謀の、一体開戦からいままで何を見てきたのか、
と頭を抱えたくなるような馬鹿さ加減には本当に今更呆れる。挙げ句の果てが「運を天に任せるのだ」と
いう、国民に取っては絶望的な精神論。これは横浜警備隊長の天本英世、(鈴木貫太郎首相を襲う)
終戦を知りつつ、部下に出撃を命ずる厚木航空隊の田崎潤や、伊藤雄之助らにも一貫として描かれる
精神論である。阿南陸相の自害も、まさに武士道の精神論そのもの。青年たちの本土決戦論を
「純粋なる愛国精神」などと、この期に及んで口にする首脳部がいた不幸を思う。ここまで狂気が
進むと「冷静な現状分析」などは出来なくなるのだろうか。

戦争という狂気に国ごと引きずり込まれると、こういう風になるのだなあ、と改めて感じる。
最近の世界を見ていても、非寛容で嘘をつき、精神論をぶち上げるという、トランプにせよ、欧州の
右翼にせよ、日本の右派にせよ、70年経っても、いや70年たって忘れたのか、同じような気配を
感じるのだ。マスコミが黙るというのも同じような流れだ。

本作を見ながらWikipediaで「宮中事件」を読んでいると、ほぼ同じ流れが書かれている、というか
こっちが半藤一利の著作をフォローしたんじゃないか、と思うほどだ。敢えてモノクロにしたトーンが
ドキュメント性をクローズアップさせて迫力にさらにチカラを加えていた。

おそらくこの岡本版、何年後かにはまた観るのだと思う。終戦に向けた日本の動きのスタンダードと
なり得たのだろう。
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<ストーリー>
大宅壮一名義(実際の著者は当時編集者だった半藤一利)で当時の政治家宮内省関係、元軍人や
民間人から収録した実話を編集した同名原作(文芸春秋社刊)を、「上意討ち -拝領妻始末-」の
橋本忍が脚色し、「殺人狂時代」の岡本喜八が監督した終戦秘話。撮影は「喜劇 駅前競馬」の村井博。

戦局が次第に不利になってきた日本に無条件降伏を求める米、英、中のポツダム宣言が、海外放送で
傍受されたのは昭和二十年七月二十六日午前六時である。直ちに翌二十七日、鈴木総理大臣官邸で
緊急閣議が開かれた。
その後、八月六日広島に原爆が投下され、八日にはソ連が参戦、日本の敗北は決定的な様相を呈して
いたのであった。第一回御前会議において天皇陛下が戦争終結を望まれ八月十日、政府は天皇の大権に
変更がないことを条件にポツダム宣言を受諾する旨、中立国のスイス、スウェーデンの日本公使に
通知した。
十二日、連合国側からの回答があったが、天皇の地位に関しての条項にSubject toとあるのが
隷属か制限の意味かで、政府首脳の間に大論争が行なわれ、阿南陸相はこの文章ではポツダム宣言は
受諾出来ないと反対した。
しかし、八月十四日の特別御前会議で、天皇は終戦を決意され、ここに正式にポツダム宣言受諾が
決ったのであった。この間、終戦反対派の陸軍青年将校はクーデター計画を練っていたが、阿南陸相は
御聖断が下った上は、それに従うべきであると悟した。
一方、終戦処理のために十四日午後一時、閣議が開かれ、陛下の終戦詔書を宮内省で録音し八月十五日
正午、全国にラジオ放送することが決った。午後十一時五十分、天皇陛下の録音は宮内省二階の
御政務室で行われた。

同じ頃、クーデター計画を押し進めている畑中少佐は近衛師団長森中将を説得していた。一方厚木
三〇二航空隊の司令小薗海軍大佐は徹底抗戦を部下に命令し、また東京警備軍横浜警備隊長佐々木大尉も
一個大隊を動かして首相や重臣を襲って降伏を阻止しようと計画していた。
降伏に反対するグループは、バラバラに動いていた。そんな騒ぎの中で八月十五日午前零時、房総沖の
敵機動部隊に攻撃を加えた中野少将は、少しも終戦を知らなかった。

その頃、畑中少佐は蹶起に反対した森師団長を殺害、玉音放送を中止すべく、その録音盤を奪おうと
捜索を開始し、宮城の占領と東京放送の占拠を企てたのである。しかし東部軍司令官田中大将は、
このクーデターの鎮圧にあたり、畑中の意図を挫いたのであった。
玉音放送の録音盤は徳川侍従の手によって皇后官事務官の軽金庫に納められていた。午前四時半、
佐々木大尉の率いる一隊は首相官邸、平沼枢密院議長邸を襲って放火し、五時半には阿南陸相が遺書を
残して壮烈な自刃を遂げるなど、終戦を迎えた日本は、歴史の転換に伴う数々の出来事の渦中にあった
のである。
そして、日本の敗戦を告げる玉音放送の予告が電波に乗ったのは、八月十五日午前七時二十一分のこと
であった。(Movie Walker)




by jazzyoba0083 | 2017-08-18 23:30 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

●「2001年宇宙の旅 2001:A Space Odyssey」
1968 アメリカ・イギリス Metor-Goldwyn-Mayer 139min.
監督・製作・(共同)脚本:スタンリー・キューブリック 原作・(共同)脚本:アーサー・C・クラーク
出演:ケア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルヴェスター、ダニエル・リクター他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
このブログに記載がない、ということは10年近く前に観たっきり、ということだろう。今更ながらの
本作である。正月の暇に飽かせての鑑賞。もうほとんど評価の言葉がないほど、いろいろと言われて
いるので、まったく個人的な感想を書かせて頂く。

原題を見ると、「ある宇宙の叙事詩」ということなので、それを分かって観ると、後半のスターゲート、
スターチャイルドも意味は判然としないが、まあそういうことだろう、と納得は出来る。
ところでスターゲート、スターチャイルドって映画にその言葉、出てきましたっけ?
私はスターゲートの光景になるまでの、未来予見が素晴らしく、未だに追いつけてないと思う、
その先進的な宇宙の様を描いた映像にただただ感嘆しながらみていた。スジはどうでもいいかな。

クラッシックの名曲に乗せて描かれる未来の世界がとにかく魅力的だ。
旅客船のシートの座席にあるモニター、カラーのテレビ電話(液晶みたいな端末)、回る宇宙
ステーション内の光景、そしてその後の宇宙船のモデルになった各宇宙の構造物の美しさ、その
動き。全く古くない宇宙服、本来宇宙には空気がないので、音が無い。そこに流れるリヒャルト・
シュトラウスやヨハン・シュトラウスの音楽に絡めた雰囲気も素晴らしい。
搭載コンピュータHAL9000の反乱も含め、アポロ11号の月着陸の一年前にこれが作られたことを
考える時、唸らざるを得ないのは万人の共通するところだろう。

アーサー・C・クラークの原作には、モノリスのオチとか映画では難解といわれていることがちゃんと
描かれているのだが、映画では全く説明がない。形而上的、哲学的な映像表現をキューブリックは
してみたかったのだと思う。クラークは「本作を一回観ただけで分かった、と言われたらこの映画は
失敗だ」といったとおり、難解でいいのだ。モノリスに神を感じるのか、スターチャイルドに
輪廻転生を感じるのか、それは観た人それぞれであり、この映画のが持つ形而上的世界の目的である
のだろう。百家争鳴ウエルカム、それこそこの映画の目指す所、ということだのだろう。
映画好きの踏み絵みたいになるのは致し方あるまい。駄作と断じることも含めてである。

何年かに一度観たくなる映画であることは間違いない。
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<ストーリー>
公開当時は賛否両論を呼んだものの、今や映画史上のベストテンに必ず入る、殿堂入りの名作SF。
人類の夜明けから月面、そして木星への旅を通し、謎の石版“モノリス”と知的生命体の接触を描く。
一応のストーリーはあるが、映画はその物語性を放棄し、徹底した映像体験で構築されている。

猿人の眼前に屹立するモノリス、それに触れた猿人が骨を武器として用い他の猿人を打ち殺し、
空高く放り投げられた骨は一瞬にして宇宙船へと変わる--その、史上最も時空を超えたジャンプ・
カットを後に、舞台は宇宙へ移行する。『美しき青きドナウ』や『ツァラトゥストラはかく語りき』と
いったクラシックをBGMに、悠々と描き出される未来のイメージ。
そして、木星探査船ディスカバリー号での淡々とした日常業務。やがてコンピュータHAL9000に
異変が起こり、ボウマン船長は光り渦巻くスターゲイトをくぐり抜けスター・チャイルドとして転生する……。
訳知り顔で、作品の根底に眠る意味を解く必要はない。座して体験せよ、そういうフィルムなのだ。
(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=16912#1こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-01-04 23:20 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

●「ニック・オブ・タイム Nick of Time」
1995 アメリカ Paramount Pictures.89min.
監督・製作:ジョン・バダム
出演:ジョニー・デップ、クリストファー・ウォーケン、チャールズ・S・ダットン、マーシャ・メイソン、
ピーター・ストラウス他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

タイトルは「際どい時」「ぎりぎり間に合う」というほどの意味らしい。短い時間でお手軽に楽しめる
サスペンスであるが、なにせ全編強引な展開が否めず、厳密なリアリティは求めないけど、こんなこと
起き得ないだろうに、と思ってしまうストーリーは、事件がほぼリアルタイムに進行するという面白さの
評価を打ち消してしまう。

確かに娘が人質になれば、その父親はなんでもしそうなものだけど、デップ演じるeverday-manの会計士
ワトソン氏、拳銃を押し付けられて、知事の演説会場へ追いやれるのだが、様々なシーンで助けを呼ぶ
タイミングはあったんじゃないか? 知事の警備全体がグル、というのもちょっと考えにくい。
靴磨きの傷痍軍人の大活躍は設定としては面白いのだが、スーパーマン過ぎるのではないか?
ワトソン氏の幼い娘をバンの中で監視している女性が、拳銃で子供を殺せるようなキャラクターじゃない
感じを受けた。
クリストファー・ウォーケンの私設ボディガードではない、おそらくLAPDであろう警官が自分の生命まで
掛けて知事を暗殺させようとする動機は一体どのあたりにあったのだろうか?もし知事をガードしていた男
たちが私設部隊だとしたら、現職知事をガードするLAPDの警備や公安の警察はどこにいたのだろうか?
加えて、ラスボスが生き残るというエンディングはテレビの連ドラじゃあるまいし、本作の展開であるなら
頂けない。
細かいところをいうと、ホテルに向かうワトソン氏が乗ったタクシーに、ウォーケンの運転するバンが
ぶつかるのだが、タクシーは凹みを気にするでもなく走行する。アメリカの交通事故ってそんな
ものなのかなあ。

リアルタイムで進行する緊張感は良いのだが、上記のように鑑賞中、「どこか大雑把な」「締りの悪さ」
「詰めが甘いわりには強引な」感じを受けていた。

「シザーハンズ」から5年経過した頃のジョニデ、これから様々なキャラクターで銀幕の大スターへと
駆け上がるわけだが、「ギルバート・グレイプ」「妹の恋人」などに見られるむしろ素朴な彼の味わいを
鑑賞できる点でファン受けは良いかもしれない。
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<ストーリー:結末まで触れています>
LA、正午。妻を亡くした税理士のジーン・ワトソン(ジョニー・デップ)は、幼い一人娘リン
(コートニー・チェイス)を連れ、新天地にやって来た。駅に降り立った彼らは、警察を装った男
スミス(クリストファー・ウォーケン)とパートナーの女、ジョーンズ(ローマ・マーフィア)に
拉致され、「午後1時30分までにある人物を殺せ。失敗すれば娘の命はない」と脅迫される。

拳銃と標的の写真を渡されたワトソンは、指定されたホテルに着くが、標的はなんと女性州知事の
グラント(マーシャ・メイソン)だった。彼女は再選を目指して遊説中で、このホテルで演説会が
予定されていた。ワトソンはなんとかこの事実を誰かに知らせようと試みるが、スミスとその仲間
たちの監視の目が光っていて不可能だった。
厳重な警備の中、銃を持っているにも関わらず、ワトソンはあっさり会場に通された。警備主任も
スミスとグルだったのだ。ワトソンは知事直属の女性スタッフ、クリスタ(グロリア・ルーベン)に
事情を打ち明け、選挙参謀を務める知事の夫ブレンダン(ピーター・ストラウス)、そして後援者
らしい謎の男(G・D・スプラドリン)に会う。だが、そこへ突如、スミスが現れ、クリスタを
射殺した。なんと、妻の政策方針を快く思わないブレンダンも一味に加担していたのだ。

八方塞がりとなったワトソンは、ホテルの靴磨き職人ヒューイ(チャールズ・S・ダットン)の
協力を得て、敵の監視をくぐり抜け、知事に直接会って状況を話すが、信じてくれたかどうかは
分からない。そして、演説が行われる午後1時30分がやって来た。スミスをはじめ一味が配置について
銃を構えた。
ワトソンはそこではじめて、自分は囮に使われただけだとを悟る。ワトソンは意を決し、グラントではなく
スミスに向かって発砲、混乱の中、娘のもとへ走る。グラントは撃たれたが、防弾チョッキを着たボディ
ガードのおかげで無事だった。ワトソンはヒューイの助けを借りて、バンに閉じ込められていたリンを救い、
スミスとジョーンズを倒した。事件後、黒幕だった謎の男はホテルから去っていった。(Movie Walker)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=28699こちらまで。



by jazzyoba0083 | 2016-10-20 22:35 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

●「ナイトクローラー Nightcrawler 」
2014 アメリカ Bold Films,Sierra/Affinity,Nightcrawler.118min.
監督・脚本:ダン・ギルロイ
出演:ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド、ビル・パクストン、アン・キューザック他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

面白かった。いい脚本である。それと主役の演技が主題と良くフィットしていて緊張感を持った
ままエンディングまで見続けた。ハッピーエンドではないし、ラストシーンにカタルシスを・・と
思うと肩透かしを食うが、これはこう終わる方が絶対意味を持つし、良かったと思う。
こそ泥だった主人公が、動画のパパラッチのようなニュースハンターになり、次第に軌道を
大きく外れ、所謂「外道」に転落しつつも、ラストではテレビ局の女性報道番組ディレクターも
巻き込んで、成功者として終わっていく。しかし、観た人は誰でも、彼がこのまま無事に済むとは
思わないであろう。

タイトルが謳うように、主人公ルイス(ギレンホール)が活動するのは夜ばかりである。血を見る
事件や事故にたかるハイエナのようだ。体重を10キロ近く落として撮影に望んだギレンホールの
鬼気迫る顔つきが実に不気味である。サイコキラーの顔立ちと言ってもいいくらい。
フリーでビデオカメラを持ち警察無線を傍受して警察より先に事件事故現場に乗り込み、不法侵入や
遺体に触れるなどは当たり前で、カネになるなら衝撃シーンを創りだしてしまう、ジャーナリスト
とはとても呼べない輩の顛末が描かれるのだが、彼(ら)を増長させる元となっているのは
視聴率競争にうつつを抜かすテレビ局の姿勢があるのだ。コンプライアンスの敷居が低く、
特ダネを売買するところ、血まみれになった遺体を部分的なモザイクを掛けて、キャスターに
「これから流す映像には衝撃的シーンを含みます。ご覧になるかは各自の判断で」というコメントを
「護符」というか「言い訳」にして流してしまう、そういうテレビ局の存在があるのだ。

ルイスがたまたま売り込み始めた局のディレクター、ニーナはルイスよりかなり年上の女性で
あるが、2年契約。自分が担当した番組の視聴率が生命線であり、ルイスへの要求は過激になり
、またルイスの局に対する要求も過激になっていく。当初はルイスとの間に一線を画していた
ニーナも、まるで悪魔に魅入られたかのように、ジャーナリストとしての魂を売る女性に
成り果ててしまうのだった。この二人のありようは実際にいるんじゃないか、と思わせる
だけに不気味であるし、考えさせられてしまう。

ルイスの現場への執着、金に対する執着は、誰よりも早く現場に着きたいということから
始まり、より衝撃的なシーンを現場でアレンジ(遺体を動かしたり)してしまうようになり
遂には事件を作り上げて、そのシーンを待ち構えて写すまでに過激になりまたそれに麻痺して
行く。違法な行為であることを分かっていてやるからたちが悪い。

このルイスという男、冒頭のシーンではフェンスの金網を切り取って業者にキロ幾らで売る
ようなこそ泥であったが、報道現場でカメラを回すようになってからを見ると、口にする
人生哲学や報道倫理、またテレビ局との交渉術など、頭がいいんだなあ、と分かる。PC関係
にも強そうだし、これをちゃんとした道に使えばそれなりに成功しだだろうになあ、とも。
ただ、ルイスがやるように報道シーンにおいて、カメラをあれだけトラックショットだけ
撮っていては売り物にはならんなあ。(脚本は書かれるにあたり、こういう職業の人達に
相当取材を重ねたんだろうな、と分かるほどディテールには拘ってはいる)
映画は脚本(そして俳優)だなあ、ということがよく分かる秀作。
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<ストーリー>
「ブロークバック・マウンテン」「エンド・オブ・ウォッチ」のジェイク・ギレンホールが、
刺激的なスクープ映像を求めるあまりモラルのタガが外れていくフリーランスのニュース・
カメラマン役で鬼気迫る怪演を披露し、高い評価を受けたピカレスク・サスペンス・ドラマ。
共演はビル・パクストン、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド。監督は「トゥー・フォー・ザ・マネー」
「ボーン・レガシー」などの脚本を手がけ、本作が監督デビューのダン・ギルロイ。

 ロサンゼルスに暮らす孤独な中年男ルイス・ブルーム。野心はあるものの定職にも就かず、
コソ泥をしてはその日暮らしのしがない日々。そんなある日、偶然遭遇した事故現場で、ビデオ
カメラ片手に夢中で撮影する男たちを目撃する。彼らはニュース映像専門のパパラッチ、
通称“ナイトクローラー”。事件、事故の現場にいち早く駆けつけ、誰よりもショッキングな映像を
カメラに収め、それをテレビ局に高く売りつけるのを生業とする連中だ。そんなことが商売になると
知り、さっそくビデオカメラと無線傍受器を手に入れると、見よう見まねでナイトクローラーとしての
活動を開始するルイスだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=350931#1こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2016-08-31 22:50 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)