カテゴリ:洋画=は行( 451 )

●「ホテル・ファデットへようこそ Bonne Pomme」
2017 フランス Thelma Films and more. 101min.
監督:フロランス・カンタン  脚本:フロランス(母)&アレクシ(息子)・カンタン
出演:ジェラール・ドパルデュー、カトリーヌ・ドヌーヴ、シャルタン・ラデスー、ゴチエ・バトゥー他

e0040938_14165435.jpg
<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>
フランス人という人種はこういう映画が好きなんだろうなあ。ちょっとコミカルな中編映画。人の言うこと
なんか聞きゃしないゴーイングマイウエィも極まったホテルの女主人バルバラ(ドヌーヴ)と、人が良すぎる自動車
修理工のジェラール(ドパルデュー)この二人の掛け合いを楽しむのが基本。とりまく家族や村人らもまともな人が
少ないかといってハリウッド風の味付けではないキャラクターが欧州味を付け加えている。

ドヌーヴは最近こうした中編に出演することが多いようだが、映画の評価としては高くないものばかり。まあ
自分がやりたいことだけやっているんだろう。このホテルの女主人、いかに浮気相手から手切れ代わりに充てがわれた
ホテルとはいえ、全然やる気がない。そこに嫁との折り合いが悪く、出自の悪い金を(修理を担当したやつが麻薬の
密売人で、使うクルマのチューンナップをしてやり、大金を貰っていた)持って、片田舎の修理工場を買収に来た
腕は良い修理工のジェラールがやってきた。バルバラのまるでクモの網に引っかかったように、客なのに調理はさせ
られるわ、清掃やしまいには結婚式まで取り仕切らせれ、これがまた上手くいってしまうのだ。

片や、ラリーに出場するため金をため店をジェラールに売ろうとしている男は恋人を置いてジェラールにチューン
ナップしてもらいレースに出かける。

ジェラールの義母も娘(ジェラールの嫁)が気に入らず、彼のもとに従業員とやってくる。やがて麻薬密輸の男が
捕まり、クルマのことで協力し大金を貰っているジェラールに警察の手が及んでくる。もとよりホテルなんて
やる気のないバルバラは、ジェラールとともに大型四駆でイタリア方面に逃避行に出かけるのだった・・・。

何人かの登場人物の人間模様をユーモアとウィットに富んだいかにもフレンチ映画らしい笑いのテイスト。
劇場未公開(だろうなあ)。人と人の絡みを人間喜劇として描かせるとフランス人は上手いなあと思う。
脚本家出身の監督らしい味付けである。
しかも堅苦しくなく。あまりにワガママ&身勝手なバルバラにジェラールが「いいかげんにしろよ!俺は出ていく!」
と怒りをバクハツさせるシーンがある。人として当然の感情だろうけど、ジェラールの人の良さは、それだけで
収まっちゃうのだ。バルバラを放っておけなくなってしまうんだな。映像やセリフには無いけど二人は結局惹かれ
あうようになったのだ。それまた人生なり!C'est la vie! と聞こえてきそうである。フランスを代表する名優二人の
熟練した演技に乾杯!だ。 原題の「美味しいリンゴ」とは何を指しているのだろうか?

e0040938_14170072.jpg
<ストーリー>
いずれも本国フランスだけでなく世界的にも活躍している国際派スター、ドパルデューとドヌーヴが顔合わせし、
いずれも高齢者ながら現在や未来を前向きに考える男女に扮したコメディ。ドヌーヴが演じる型破りなホテル
経営者にドパルデューが演じる男性は振り回されるが、いつしか2人が性別を超えた友情を築いていくのもまた
前向きでユニーク。
ユーモラスな展開の中、日本でいう“ベタ”なギャグも多いが、それもまたフランス流コメディ風。監督・共同脚本は
脚本家出身のF・カンタン。WOWOWの放送が日本初公開。

フランスの町ドルーで暮らす老男性ジェラールは妻との仲が冷めた上、妻の母親が営む自動車修理工場の雇われ
社長をするのにも飽き、自分の修理工場を持ちたいと望み、ルヴェルジョンという村で売りに出された修理工場を
買うかどうか考えようと現地へ。そこで“ファデット”というホテルに泊まるが、何事にもいい加減な女性主人
バルバラに押し切られ、しばらくそこに滞在する。一方、ジェラールの家族は彼が家出したと心配し……。
(WOWOW)

<IMDb=★5.2>
<Rotten Tomatoes=評価なし>




by jazzyoba0083 | 2018-12-11 18:00 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「プライベート・ライアン Saving Private Ryan」(名画再見シリーズ)
1998 アメリカ DreamWorks Pictures,Paramount Pictures (a Viacom company), Amblin Entertainment Production.170min
監督・(共同)製作:スティーブン・スピルバーグ  撮影監督:ヤヌス・カミンスキー
出演:トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、アダム・ゴールドバーグ
   ヴィン・ディーゼル、ジョヴァンニ・リビシ、ジェレミー・デイヴィス、ポール・ジアマッティ、マット・デイモン他

e0040938_21144683.jpg
<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
三度目か四度目の鑑賞。時々観たくなる作品だ。スピルバーグのシリアス作品群の中でも好きな一編だ。同時多発テロに
先立つ3年前に製作されたことに個人的にだが、何かすごく感慨を覚える。そして今回の鑑賞日が真珠湾攻撃から77年め。

戦記物が好きな私だが、本作ほど戦争の残虐さ、虚しさ、愚かしさ、多大な犠牲をスペクタキュラーな要素を入れて
作り上げた例をあまり知らない。映画界では、「プライベート・ライアンの冒頭20分」という、よく使われる言葉が
ある。それは戦争の苛烈さ、容赦の無さ、生命のやり取りの熾烈さを最大限に表現しているからだ。脚本を書き上げるに
際し、ロバート・ロダットとフランク・ダラボンは、本作がフィクションとしても、オマハビーチの惨劇は忠実に再現
しようと膨大な調査とインタビューを行ったに違いない。さらに使われた衣装、武器も史実に忠実に再現され、機関銃の
音は本物を使うなどこだわりを徹底している。スピルバーグとコンビを組むことが多いヤヌス・カミンスキーの手持ちの
カメラはレンズに血飛沫が飛んで着く様も、観客に臨場しているかのような錯覚を覚えさせる演出である。
なお、ストーリーは本作に近いモデルになったケースがあり、それがベースになっている。

ドイツ軍が敷設した上陸阻害の鉄の構造物以外遮蔽するもののないビーチに飛び込んだ米軍兵士は、トーチカのドイツ
軍の機関銃の餌食になる。飛び散る足や腕、はみ出す内蔵、弾丸がヘルメットに当たり助かった兵士、ヘルメットを
脱いでその痕跡を確認しようとしたところに頭に銃弾を食らう様、真っ赤に染まる海、など目を背けたくなる光景が
20分間続く。
だが、目を背けてはいけないのだ。これが戦争なのだ。なぜ上陸前に空軍がトーチカを叩いておかないのか、という
事を思うだろう。だが、史上最大の作戦にはこうした無茶な上陸命令もあったのだ。空軍はラストのラストに登場し、
皮肉を振りまくのだが。

そう、皮肉なのだ。四人兄弟のうち三人までが戦死、陸軍参謀総長マーシャルの直々の命令(ソール・サバイバル・
ポリシー)により、どこにいるとも分からない一人の二等兵を本国に還すために、中隊が命を賭して捜索にいく。
探し出す相手がライアン二等兵(プライベート・ライアン=マット・デイモン)である。戦争の皮肉な(不条理な)
一面の象徴である。

ドイツ軍も自分の命が懸かっているから必死だ。ライアンを探す途中での戦闘で一人のドイツ人が捕虜となった。
殺そう、という部下を制し捕虜に目隠しをしてその場を去らせる隊長ミラー大尉(トム・ハンクス)、捕虜も生きたい、
生き残りたいので必死。墓穴を掘りながら、「クソヒトラー」「アメリカ大好き」などとおべっかをつかう。
しかし、後の戦闘で、ミラー大尉に致命傷の銃撃を食らわすのは、その兵士だったのだ。

これには続きがあり、フランス領内でドイツ軍との戦いにおいてライアンを探すため独仏語が出来る兵士が通訳と
して同行する。彼は銃を本番で撃ったことすらない「通訳」。
しかし、最後の戦闘に巻き込まれ、何も出来ずに頭を抱えて泣いていたのだが、逃してやったあのドイツ兵が仲間や
ミラー大尉に発砲したところを見るに及び、戦闘が終わって捕虜となって両手を上げるそのドイツ兵が、
「やあ、アプム」と、またごますり顔で声を掛けると彼は有無を言わさず、そのトイツ兵を射殺する。観ている方は
溜飲を下げる構図だが、銃も撃てなかった男が人殺しが出来るようになってしまうのが戦争なのだとみるべきなのだ。

ライアンを見つけ、橋を爆破する最後の戦闘においても、冒頭と同様な戦闘が展開される。教会の鐘楼からスナイ
パーとしてドイツ兵を殺し続ける男は、一発一発、神に願いを込めて撃つ。兵たちはお互いに銃が使えなくなると
ナイフで、ヘルメットで殴り合い、取っ組み合って噛み付いて相手の指を食いちぎっても生きたい。人間の生への
執着は米軍が勝ちたい、ドイツ軍が勝ちたいという範疇を超え、「生きるか死ぬか」の戦いだ。戦争とはそうした
ものだ(ろう)。

ミラー大尉は田舎の高校の作文の先生。英雄でも何でも無い。アメリカのため、とかの威勢のいいことも口にしない。
おそらく、生き残って家族のもとに早く帰りたい、それだけのため目の前の敵を殺す、もう無私の世界、解脱の
世界にいたように感じた。多くの兵士がそうであったろう。 ミラー大尉が最期にライアンに「生きろ」と言い残す。
普通に生きたくても生きられなかった時代。冒頭とラストの年老いたライアンは、「私は正しく生きただろうか」
「皆さんの犠牲に値する人生を生きただろうか」と自問する。それは、どの戦争にせよ、犠牲になり平和の礎となった
かたがたに対し、国の差無く絶えず自問し続けなければならない問題だろう。
スピルバーグとしては、第二次世界大戦の大きな問題としての提示はこれで尽きた。彼はその後HBOのTVシリーズ
「バンド・オブ・ブラザーズ」「ザ・パシフィック」へと、より細かいテーマに挑んでいく。
素晴らしい戦記ものだと思うが、冒頭とエンディングの星条旗は不要に感じた。トム・ハンクスも油が乗り切った
一番いい時期の作品だったといえよう。
本作はオスカーを5部門で獲っているが、作品賞は「恋に落ちたシェイクスピア」に渡った。主演男優賞は
同じ第二次世界大戦を扱った「ライフ・イズ・ビューティフル」のロベルト・ベニーニに。
オスカーの好みを表した状況だったといえよう。

e0040938_21145807.jpg
<ストーリー:最後まで書かれています>
時は1944年。第2次世界大戦の真っ只中、米英連合軍はフランス・ノルマンディのオマハビーチでドイツ軍の
未曾有の銃撃を受け、多くの歩兵が命を落としていった。戦禍を切り抜けたミラー大尉(トム・ハンクス)に、
軍の最高首脳から「3人の兄を戦争で失った末っ子のジェームズ・ライアン2等兵を探し出し、故郷の母親の
元へ帰国させよ」という命令が下った。

ミラーは古参軍曹のホーヴァス(トム・サイズモア)、2等兵のレイベン(エドワード・バーンズ)、カパーゾ
(ヴィン・ディーゼル)、メリッシュ(アダム・ゴールドバーグ)、名狙撃手ジャクソン(バリー・ペッパー)、
衛生兵のウェード(ジョヴァンニ・リビジ)、ドイツ語が話せる実践経験ゼロのアパム(ジェレミー・デイヴィス)を
選び、落下傘の誤降下で行方の知れないライアンを敵地の前線へと探しに向かう。

彼らは廃墟の町で攻撃を受け、ひとり、ふたりと銃弾に倒れていく。なぜライアン1人のために8人が命を
かけなければならないのか? とレイベンが怒りを爆発させた時、ミラーはライアンを探し出し妻の元へ
帰ることが自分の任務だと淡々と語り、離れかけていた皆の心をまとめあげる。前線へ進むうちミラーたちは
空挺部隊に救われるが、その中にライアン2等兵がいたのだ。兄たちの死亡と帰国命令を知ったライアンは、
戦友を残して自分だけ帰国することはできないときっぱりと言い放つ。
ライアンの意思がミラーたちの心を捉え、共に踏みとどまりドイツ軍と一戦を交えることに。乏しい兵力、
装備という悪条件の中、仲間たちは次々と銃弾に倒れ、ミラーも爆撃を受け死んでしまう。ライアンに
「しっかり生きろ」と言い残して…。

時を経て年老いたライアンは、ミラーの墓地の前で彼の言い残した言葉を、再びかみしめるのだった。
(Movie Walker)

<IMDB=★8.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:93%  Audience Score:95%>
<KINENOTE=79.7点>




by jazzyoba0083 | 2018-12-08 23:50 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「パリへの逃避行 The Escape」
2017 イギリス Lorton Entertainment,Shoebox Films.112min.
監督・脚本:ドミニク・サヴェージ
出演:ジェマ・アタートン、ドミニク・クーパー、ジャリル・レスペール、フランシス・バーバー他

e0040938_15191158.jpg
<評価:★★★★☆☆☆☆☆☆>
<感想>
WOWOWの「W座」で鑑賞。日本劇場未公開作品。(だろうなあ) ナチュラルさを演出するために
監督は演者にストーリーの骨子だけを伝えてセリフはほぼアドリブだったという。夫婦の子供二人はロケに
使った家の本当の子供だそうだ。なかなか凝りましたね。

でも残念でした。邦題の、何とも突き放したような、おざなりな命名でも分かる通り、つまらない、よくある
子育てウツ主婦と、倦怠期夫婦の物語。成功した夫、3歳前後のやんちゃざかりの子供二人。子育てに疲れ
夫とはルーティンのセックス、自分は何をしているの?自分は誰?という迷い。黙り込む、子供に当たる、
何かを見つけにロンドンへ行く。そこでタペストリーに出会う。何かそういう方面の習い事をしたいと
明るくなる妻、しかし、それを心から理解しない夫、たまりかねてパリへ行く妻。美術館で独身だとウソを
つく妻子持ちにナンパされ一夜をともにするも、嫌悪感が襲う。母や夫や子供から「帰ってきて!」の
電話。分かるんだけど・・・。そして離婚。一人の生活・・・。こんだけです。夫婦の話し合い不足
夫だけが悪いのではない。この妻も大変なのはわかるが、わがままだ。

たった一箇所だけ、夫が「君は素晴らしい妻だよ、母だよ」と理解したようなセリフを吐くのだが、妻は
その前に一人の女性として、人間として認めてほしいんだよね。それは分かる。そんだけ。
「普遍的テーマ」を扱うと解説には書いてあるけど、普遍的にもほどがある。捻りとかケレンとか全く
ないどストレートなストーリーだもんなあ。いまさら映画で観なくても・・・。

いやあ、小山薫堂もコメントに苦労してましたなあ。いやはや、ヤバめの映画を続けて観てしまった。
やれやれ。
e0040938_15191879.jpg
<ストーリー>
夫や幼い子ども2人との生活に疲れたヒロインは、家出してパリに向かうが……。
2018年10月、第31回東京国際映画祭で上映された最新作を、WOWOWが早くも放送。

専業主婦であるヒロインは、成功したビジネスマンである夫やまだ幼い子ども2人と暮らすが、夫との間の
心のすれ違いや、子どもたちのしつけに疲れ果てた結果、芸術がある生活に憧れ、家出してフランスの
パリに向かうが……。
結婚生活をしたことがある女性の多くが思い当たりそうな苦悩をテーマにした、普遍性の高い女性ドラマだ。
等身大のヒロイン役を体当たりで演じたのは「007/慰めの報酬」でボンドガールに抜擢された美人女優
G・アータートン。ヒロインの夫役は「マンマ・ミーア!」シリーズのD・クーパー。(WOWOW)

<IMDb=★5.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:78% Audience Score:54%>

by jazzyoba0083 | 2018-12-06 23:00 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ハドソン河のモスコー Moscow on the Moscow」
1984 アメリカ Bavaria Film,Columbia Pictures Corporation,Delphi Premier Productions.115min.
監督・製作・(共同)脚本:ポール・マザースキー
出演:ロビン・ウィリアムズ、マリア・コンチータ・アロンゾ、クリーヴァント・デリックス、アレハンドロ・レイ他

e0040938_14180436.jpg
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
ポール・マザースキーといえば、私は「ハリーとトント」を忘れることが出来ない。とても印象的な映画だった。
本作はその10年後に製作されたものだが、マザースキーのいい趣味がいい感じで出ていた作品だと思う。
分かりやすいようでいて観念的な部分や暗喩的な部分もあるという味わい。

今ではソ連の文化をアメリカに比較してあれこれ描くことはできなくなったが、主張する根幹は全く不動だと
思う。またこれは今の時代にも十分通じるアイロニーだとも感じられる。
ロビン・ウィリアムズ(これがまたハマった役どころ!)はソ連のサーカス楽団のサックス吹きだ。彼は親友の
ピエロ役の男がアメリカ公演を機に亡命すると宣言、チキンなロビン(役名=ウラジミール・イワノフ)はその
勇気がない。だが、いざアメリカに行くと心が変わる。最終日、空港に行く途中のデパートでの買い物の最中、
亡命する。ピエロは残念なことにKGBに目をつけられていて帰国となってしまう。

さて、言葉も解らない行く場所も寝る場所も職業もないウラジミールは、デパートの店員家族に助けられ
亡命専門だというキューバ出身の弁護士に売り込みを受けたりして、次第にアメリカの社会に溶け込んでいく。
本場のサックスを聴けるのも嬉しかったが、ジャズクラブに出演するほどにはなれない。ホットドッグを
売ったり、ハイヤーの運転手をしたり、必死に生きていく様もなかなか上手く描かれている。

ソ連にはない自由を求め亡命したものの、次第にアメリカという国の自由のありようが分かってくると、その
嫌な面も見えてくる。残した家族のことなど故国が懐かしくなることもある。
しかし、デパートの売り子であったルチアとも親しくなり、友人も増え、言葉も分かってくるとやはりアメリカ
という国は嫌な面もたくさんあるけど、自由があることは何にも勝ると確信するようになる。

この間、ソ連とアメリカの文化や生活の違いがユーモアをもって描かれていく。FBIもKGBも割と「C調」に
描かれていたりして笑いを誘う。こうしてアイロニカルな側面を出しつつ、ユーモアとペーソスを加え
コメディタッチで描かれるのだが、全体として、マザースキーの描きたかったのはソ連を皮肉ることではなく
ウラジミールが亡命し必死に底辺の暮らしをしながらも、自由、ということの素晴らしさのみに満足する
有様によって、アメリカ人に対し、自由を粗末にしてはいけないんだ、ということを言っていると感じた。

この映画に出てくる配役はほぼ移民だ。裁判所で市民権が授けられるセレモニーもあり日本人も出てくる。
トランプにも観てもらいたい映画だ。彼らはどういう思いでこの国に来ているか、そして元からいる人は
自由と人権のありがたみをどのくらい評価できているだろうかということを。
本作の中でウラジミールと弁護士がダイナーで話しているときソ連から来た男と喧嘩しそうになる
シーンが有る。その時、市民権獲得の時に宣誓する言葉が誰からとなく上がる。それをダイナーにいる
移民たち(というか移民しかいない)が皆で言い続けるシーンはこの映画の象徴だろう。

先にも書いたようにロビン・ウィリアムズの、悲し嬉し顔、困り顔が実にいい。ロシア語も上手い。
そしてガールフレンドや弁護士、最期には自分も亡命しちゃうKGBまで、実に愛すべき人たちに
よって出来上がっている映画だ。国を捨て自由を求めたウラジミールの思い、再度噛み締めてみたい。
日本では当時のソ連に遠慮して劇場での公開を見送ったようだが、是非DVDやWOWOWなどでチャンスが
あればご覧頂きたい作品だ。

e0040938_14181177.jpg
<ストーリー>
ソ連が崩壊した現在、本作に描かれた文化ギャップの微妙なおかしみが、製作当時のまま無邪気に楽しめるかは
疑問だが、レーガン政権下、米ソ間が最も緊張していた時期に作られた作品としては相当に仮想敵国に対し
同情的なこの映画、むしろエスニックの混成地帯、ニューヨークの人情喜劇としての側面を大いに楽しむべき
(P・マザースキー監督の町のディテール描写は長けている)。サーカスの公演で、NYにやってきた楽団員が、
デパートの買い物の混雑に乗じて亡命を謀り成功。そこの警備員と親しくなり、しばらく彼の家に厄介になり、
仕事を探すが、凄腕の奏者が街頭で稼ぐ町。自慢のサックスもまるで通用せず、様々な職を転々、言葉も
不自由なものだから、自ずと孤独をかこつようになる。

しかし、根は陽気な彼、いつしか恋人もでき、自分に目標さえ持てれば、ここも住めば都と思い直す。随所に
ソ連での生活の回想が入り、トイレット・ペーパーを買う行列など余りにリアルなものだから、余計な気を
廻した配給会社が日本公開を差し止めたとか。だとすれば愚かな話だ。
予想されることだが、アクセントや言葉の違いのギャグが実に豊富で、ウィリアムスは実によく廻る舌で
期待通り応えてくれる。ペーソスもほどほどに、彼最高の芝居だろう。(allcinema)

<IMDB=★6.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:86% Audience Score:59%>
<KINENOTE:69.9点>






by jazzyoba0083 | 2018-12-04 23:15 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

ポルト Porto

●「ポルト Porto」
2016 ポルトガル・フランス・アメリカ・ポーランド Double Play Films (II) and more. 76min.
監督・(共同)脚本:ゲイブ・クリンガー 製作総指揮:ジム・ジャームッシュ
出演:アントン・イェルチン、リュシー・リュカ他

e0040938_15113100.jpg
<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
映像詩を観ているような1時間15分。ただ映像の構成上、時制が前後するので筋を理解するのに
時間を要した。ただ、ストーリーに何か難しさがある作品ではない。ポルトガルの港町ポルトを
舞台に、その街で会った一組の男女の「愛情のヒダ」のようなものを3つのブロックに分けて
描いていく。「ジェイク」「マティ」「ジェイクとマティ」というふうに。故にシーンも重複
する。
必然の出会いの結果の愛と捉えるジェイク、束縛されることを嫌い自由を求めるマティ。珍しく
ないシチュエーションだ。一度は強く惹かれ合った二人が、再び離れていく様子を、ポルトガルの
港町を背景に描いていく。具象的なテーマであるが観念的な構成となっている。雰囲気を楽しむ
タイプの映画。このあたりジャームッシュの影響があるかもしれない。「パターソン」の匂いがする。

短い作品なので、ざっと見ることも出来るが、短いシーンに重要な意味があったりするので、
油断は出来ない。

e0040938_15115297.jpg
<ストーリー>
ブラジル出身の新鋭ゲイブ・クリンガー監督が、ジム・ジャームッシュ製作総指揮の下、記念すべき
長編劇映画デビューを飾ったラブ・ストーリー。ポルトガル第2の都市ポルトを舞台に、アメリカ人の
青年とフランス人女性が繰り広げる儚くも情熱的な行きずりの恋の顛末をほろ苦くもロマンティックに
綴る。主演は2016年6月に惜しくも他界したアントン・イェルチン。共演にリュシー・リュカ。
 
ポルトガル北部の港湾都市ポルト。26歳のアメリカ人ジェイクは家族が住むリスボンを離れ、この地で
孤独な日々を送っていた。一方、32歳のフランス人留学生マティ。考古学を学ぶ彼女は、ソルボンヌの
大学で知り合ったポルトガル人の教授ジョアンとともにこの地にやって来た。恋人でもあるジョアンから
求婚されているマティだったが、何よりも自由を大切にしたいと考えていた。
そんな2人は夜のカフェで出会い、引っ越してきたばかりのマティの新居で一夜をともにするのだったが…。
(allcinema)

<IMDb=★6.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:48% Audience Score:46%>
<KINENOTE=62.9点>



by jazzyoba0083 | 2018-11-29 16:00 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

ポワゾン Original Sin

●「ポワゾン Original Sin」
2001 アメリカ Metro-Goldwyn-Mayer Pictures.116min.
監督:マイケル・クリストファー 原作:ウィリアム・アイリッシュ
出演:アントニオ・バンデラス、アンジェリーナ・ジョリー、ジョーン・プリングル、アリソン・マッキー、トーマス・ジェーン他

e0040938_11571034.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆-α
<感想>
同じ原作に基づいたトリュフォーの「暗くなるまでこの恋を」のリメイクとは、観終わってから気がついた。
原作のアイリッシュはヒッチコックやトリュフォーの原作に用いられたミステリ作家で、本作のオリジナルは
未見だが、おそらく原作はもう少しまともな感じがする。また「暗くなるまでこの恋を」の粗筋をネットで拾って
読んでみると、特にエンディングあたりで大きく異なり、「品を失った」感じが推察できる。

マイケル・クリストファー監督はその後、監督としては大成していないところをみると、この程度が限度だった
のだろう。しかし、褒めておかなくてはならない点もある。画作りだ。彼は二人のトレンド俳優を使って古い
オリジナルをスタイリッシュに仕上げたいと思ったに違いない。舞台となるキューバのシーン、構図が計算され
ローキーの深みのある映像は、ステディカム、ドリー、レール移動、クレーンなど多彩な手法を使って作り上げて
いて、それは美しい。そしてテレンス・ブランチャードの音楽もカリプソを中心にして、いい感じのまとめ方だった。

だが、映画は映像が綺麗で、音楽が良くてもいい映画にはならない。どんでん返しにつぐどんでん返しだが、
多くのレビュアーが書いているように、ラストでコメディになってしまった恨みがある。それとバンデラスが
いわゆる毒婦のアンジーに、全財産を投げ売って、殺人まで犯して入れあげるモチベーションが深掘り出来てい
ないので全体に薄っぺらい。さらに主役の二人に深みを感じないので、せっかくの原作が生きなかった点が
惜しい。トータルとして観られないものではないが、「映画の出来」としては低い評価にとどまらざるを得ない。

印象的なのはRotten Tomatoesでの批評家の採点が12%なのに対し、一般鑑賞者の採点が61点という乖離だ。
まあアンジーのヌードを拝めるという点はあるとしても、大衆が求める映画とクリティックスに耐えうるものは
往往ににして一致しない、ということだ。そんな映画はいくらでもある。
当時アンジーの入れ墨はどうやって消したのだろうか。まだ入れてなかったのかな。

e0040938_11571841.jpg
<ストーリー>
ウィリアム・アイリッシュの小説をアンジェリーナ・ジョリー主演で映像化したミステリー・ロマンス。
19世紀のキューバを舞台に、欲望と犯罪に彩られた男女の愛の駆け引きを官能的に描き出す。

19世紀後半キューバ。コーヒー輸出業で成功したルイスは、新聞の交際欄で妻を求めていた。愛の存在を
信じないルイスは、この地の富の象徴であり仕事を円滑に運ぶための手段になるアメリカ人女性を求め、
そんな彼の要求に、ある女性が応えた。アメリカからやってきたその女性はジュリアと名乗り、事前に
送られていた写真とはあまりにちがう、眩しいほどに美しい女。女を外見で選ぶ男かどうか試した、
と言うジュリアだが、ルイスもまた彼女を財産目当ての女かどうか試していた。彼は手紙では、自分は
平凡な勤め人だと書いていたのだ。かくして恋に落ちたふたりの情熱の日々が始まるが……。
(Movie Walker)

<IMDb=★6.0>
<Rotten Tomatoes=12% Audience Score:61%>
<KINENOTE=58.0%>



by jazzyoba0083 | 2018-11-26 22:50 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ボーダー・ライン:ソルジャーズ・デイ Sicario:Day of the Soldado」
2018 アメリカ Black Label Media,Thunder Road Pictures.122min.
監督:ステファノ・ソッリマ
出演:ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、イザベラ・モナー、ジェフリー・ドノヴァン、キャサリン・キーナー他

e0040938_14360436.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
前作はヴィルヌーブがメガフォンを取り、エミリー・ブラントという「観客側の戸惑い」を受け止める配役があり、
また出来も良かったため、オスカーに3部門でノミネートされた秀作であった。私も★8を献呈している。
ホントに2時間息つく暇のないくらいの徹底的な緊張感の持続であった。

さて、二作目になり、脚本家は変わらないが監督がステファノ・ソッリマに変わった。緊張感の途絶えない作品と
いうのは変わらないが、エミリー・ブラントのポジションに相当する配役が無く、徹底した殺戮と暴力と陰謀の
世界を描いただけの映画になってしまった感がある。映画の底が浅くなったというか。確かにキーになる若者は
一人いて、ラストシーンでは象徴的に使われているが、本作は主に、アメリカのメチャクチャ振り(トランプへの
当てつけか、と思うほどに)のみが目立つ作品となった。悪いやつも悪くないやつも殺してしまうという。特に
メキシコ警察は可愛そうだよ。映画の中にも出てくるけど、「交戦規定は?」と問うシーンがあるが、「そんなもの
クソだ」と気にする様子もない。この事態は下手をすると国家間の戦争になってしまうような状況なのに。

さらに、今回も主人公でありなおかつ、前作よりも役としての重みがあるベニチオ・デル・トロの、経緯が一言で
片付けられてしまっていて、彼の抱える闇が深さを感じないのだ。その辺りもう少し丁寧さが欲しかった。

ただ、銃撃やヘリを使った攻撃のオンパレードはスカッとすることはする。だが、本作が本来もっていなくては
ならない国境を挟んだ人間性のようなものはどこかへ行ってしまった。前作はトランプ政権対メキシコ政府という
構図の中で、アメリカのCIAやDEAがメチャクチャをやる様がトランプの影を引きずっていて考えさせられたが、
今回は破壊だけの映画になってしまってはいないか。ベネチオ・デル・トロは相変わらずいいし、映像のカラー
トーンも荒廃した味付けでいいし、音楽もいいので、もったいないことをしているな、という感じだ。

e0040938_14361228.jpg
<ストーリー>
アメリカとメキシコの国境地帯を舞台にした麻薬戦争の実情を描き、アカデミー賞3部門で候補になったサスペンス・
アクションの続編。CIAの特別捜査官と一匹狼の暗殺者のコンビが、麻薬カルテル間の内戦を引き起こそうと暗躍する。
前作に引き続き、暗殺者をベニチオ・デル・トロ、CIA捜査官をジョシュ・ブローリンが貫録たっぷりに演じる。

アメリカで市民15人の命が奪われる自爆テロが発生。犯人はメキシコ経由の不法入国者と睨んだ政府は、CIA特別
捜査官マット(ジョシュ・ブローリン)にある任務を命じる。それは、国境地帯で密入国ビジネスを仕切る麻薬
カルテルを混乱に陥れるというものだった。
マットは、カルテルに家族を殺された過去を持つ暗殺者アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に協力を要請。
麻薬王の娘イサベル(イザベラ・モナー)を誘拐し、カルテル間の内戦を誘発しようと企てる。だがその極秘作戦は、
敵の奇襲やアメリカ政府の無慈悲な方針変更によって想定外の事態を引き起こす。
そんななか、メキシコの地で孤立を余儀なくされたアレハンドロは、兵士としての任務か、一人の少女の運命か、
究極の選択を迫られる……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:63% Audience Score:65% >
<KINENOTE=77.7点>




by jazzyoba0083 | 2018-11-23 12:30 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「バルタザールどこへ行く AU HASARD BALTHAZAR」
1966 フランス・スウェーデン Argos Films and more.96min.
監督・脚本:ロベール・ブレッソン
出演:アンヌ・ヴィアゼムスキー、フィリップ・アスラン、ナタリー・ショワイヤー、ヴァルテル・グレーン他

e0040938_12043476.jpg
<感想:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ブレッソン作品に初めて触れた。「小学生でもわかりそうな物語」でもあり「相当の映画好きでも難解な
物語」でもあるような作品だ。バルタザールという東方三博士の一人の名前をつけられたロバを鏡のようにして
人間の業を描いていく。時々使われる、ロバの目のアップが印象的だ。

セリフが多くなく、「画を以て語らしむ」という監督の主義なんだろう。それだけ朴訥というか、ゴツゴツした
出来の映画だが、観た人に置いていく感情は多いのではないか。いかにも欧州映画らしい内容だ。一つ一つの
演技が何かのメタファーに通じているような映画は観ていて疲れる。ある程度のリテラシーがないと分からない
からだ。
たとえばなぜロバが使われたのか、ロバとバイクとクルマという3つの「乗り物」が、時代のメタファーなのか、
遺産が入ってくるもものすぐに死んでしまうアルノルドという男は何のメタファーか、バルタザールを終始
可愛がるマリーと、幼馴染のボーイフレンド、ジャックと不良ジェラルド、ジェラルドに暴行され自殺するマリー、
そのことで憤死してしまうマリーの父、そして最後にはジェラルドらの密輸品運びに使われ、税関の銃撃の
流れ弾に辺り、羊の群れの中で死んでいくバルタザール。羊の群れは絶対に何かの暗喩だ。

全体にキリスト教の倫理というか考え方が流れているのだな、という感じは受ける。ややもすると聖書の
どこかの節を切り取って映像化したような印象で、国際的に非常に高い評価の映画だが、私にはその良さは
あまり伝わって来なかった。画を以て語らしむということは美しい映像、ということではない。説明的な映画が
多い昨今、こうした観念的、形而上的な映画は、最近は作られなくなった。特にネオリアリスモやヌーベルバーグ、
カイエ・デュ・シネマのような欧州の映画は私としては「過去遺産」となっているような印象を受けるのだが。

e0040938_12043900.jpg
<ストーリー:結末まで書かれています>
 ピレネーのある農場の息子ジャック(W・グレェン)と教師の娘マリー(A・ヴィアゼムスキー)は、ある日
一匹の生れたばかりのロバを拾って来て、バルタザールと名付けた。

それから十年の歳月が流れ、いまや牧場をまかされている教師とマリーのもとへ、バルタザールがやって来た。
久しぶりの再会に喜んだマリーは、その日からバルタザールに夢中になってしまった。これに嫉妬したパン屋の
息子ジェラール(F・ラフアルジュ)を長とする不良グループは、ことあるごとに、バルタザールに残酷な
仕打ちを加えるのだった。
その頃、マリーの父親と牧場王との間に訴訟問題がもち上り、十年ぶりにジャックが戻って来た。しかし、
マリーの心は、ジャックから離れていた。訴訟はこじれ、バルタザールはジェラールの家へ譲渡された。

バルタザールの身を案じて訪れて来たマリーは、ジェラールに誘惑されてしまった。その現場をバルタザールは
じっとみつめていた。その日から、マリーは彼等の仲間に入り、バルタザールから遠のいて行ってしまった。
もめていた訴訟に、マリーの父親は、敗れたが、ジャックは問題の善処を約束、マリーに求婚した。
心動かされたマリーは、すぐにジェラールたちに話をつけに行ったが、仲間四人に暴行されてしまった。
その日から、マリーの姿は村から消え、父親は落胆のあまり、死んでしまった。

一方バルタザールは、ジェラールの密輸の手仕いをさせられていた。しかし、ピレネー山中で税関員に
みつかりバルタザールは逃げおくれ、数発の弾丸をうけてしまった。翌湖、ピレネーの山かげを朝日が染める
ころ、心やさしい羊の群の中に身を横たえ、バルタザールは静かに息をひきとるのだった。(Movei Walker)

<IMDb=★7.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:100% Audience Score:86%>
<KINENOTE=70.8点>



by jazzyoba0083 | 2018-11-21 22:50 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ブルーム・オブ・イエスタディ Die Blumen von gestern(The Bloom of Yesterday)
2016 ドイツ・オーストリア Dor Film-West Produktionsgesellschaft and more. 126min.
監督・脚本:クリス・クラウス
出演:ラース・アイディンガー、アデル・エネル、ヤン・ヨーゼフ・リーファース、ハンハー・ヘルシュプルンク他

e0040938_11184863.jpg
<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
見る前、ないし観た後に、日本人にはかなり解説を必要とする映画じゃないか。基本ナチズムを取り上げた
作品だが、「ナチズム」が「性」の関わり合いをベースに、脚本も書いたクリス・クラウスの独特の視線で描かれる。
一般受けはしない映画だ。底辺に「ナチズム」と「性」があり、その上に乗って、とても精神がまともでない(まともで
無くなってしまった経過はあるのだが)男女の「恋愛」というより「お互いが補完しあうような愛情」が築かれ、
結果として、ホロコーストの犠牲者と被害者の「赦し」が見えてくる、そんな映画と捉えていいのだろうか、
私はそう感じた。

描かれる世界と状況が複雑なので、観終えてのカタルシスは一応提示されるが、とても疲れた。

設定は祖父にナチスの大佐を持つトトというドイツ人のホロコースト研究家。彼が祖父に取材した書籍の評価は高いが
家族からは総スカンを食っている。そんな彼は2年前から「アウシュビッツ会議」の開催に向けて頑張ってきた。
家庭には妻と養子の黒人の女の子がいる。(なぜ養子をとっているのかは、あとで明かされる。つまり彼はインポであり
妻が他人の男と寝るのは公認なのだ。妻がそれを好んでいるとは思えない。でインポになった経緯を洞察すれば
究極には自分はナチスの末裔であること、更に若い頃ネオナチに関係していたことが、罪滅ぼし的にホロコーストの
研究家として求道者的な存在に自らを置き、それが性的なポテンシャルを壊していたらしい)

ところが会議のもう一方のリーダー、バルタザール(ロバではない。←分かる人には分かるww)という男。こいつは
絵に描いたような俗物で性的にも鬱屈している。バルタザールとトトは会議の考え方で大喧嘩し、(男性器の名称が
飛び交うような)トトはバルタザールに大怪我を負わしてしまう。更に主催者の研究所の教授が突然死してしまう。

そんなところにフランスからやってきたザジという若い女性の研修生。彼女の祖母はホロコーストの犠牲者で
トトが迎えに行ったベンツに乗らないとか、教授の愛犬を窓からほっぽり出すとか、全編予測のつかない行動を取る
自傷の常連者でもある心病みの女。エキセントリックで「あー言えば、こう言う」タイプの攻撃的戦闘的な女性だ。

このトトとザジの会話はまるで噛み合わない。それが少しくユーモラスだったりする。ホロコーストの話題というより
「セックス」に関する話題が多いが、ふたりとも何を考えているのか分からないようなすれ違いというか、噛み合わ
ないことばかり。このあたり、観ていてイライラしてくる人もいるだろう。

やがてトトとザジの祖父母は同じラトビアの学校で机を並べていた仲、ということがわかり、二人でラトビアの
リガへと飛ぶ。そこで次第に二人の会話が噛み合い始める。加害者と被害者、それぞれの闇を理解できるようになり
それが二人の愛情へと繋がっていく。そしてついに二人は体を重ねる。(インポが治ったというのはメタファーっぽい)
トトは妻の元に帰り、ザジはフランスに帰っていった。

「アウシュビッツ会議」は「ベンツ」がスポンサーになって開かれる見通しとなったが、二人は会議から離脱した。
そして5年後。舞台はNYとなる。クリスマスで賑わう店で偶然ザジを見かけるトト。そこには可愛らしい子供が。
今はインド人の女性と暮らしているのと。子供は3歳よ、というが、横で観ていたトトの養女が指摘する。
「あの子、女の子よ。5歳だわ」と。そうだ、あの子はトトの子だ。ホロコーストの被害者と加害者の子だ。
つまり「赦し」の象徴ということでいいのだろうか。その子の名前に秘密があった。そんな余韻を持って映画は
終わる。ザジが連れていたトトとの子が「The Bloom of Yesterday」つまり「昨日の華」ということか。

ラスト30分ですべてが解消出来るタイプの映画だが、最初のシーンから細かい伏線とメタファーが固まっている
ような作品でもある。脚本としてはよく出来ているが、疲れるし読み解くのに苦労する手の映画は私個人の好み
ではない。

先のナチスの台頭あるいはホロコーストの発生は、当時のドイツにおける「性」の抑圧の反動に要因の一部にある、
と云われ、70年代になると、性の開放こそ「反ファシズム」に結びつくというムーブメントもあった。
そんな背景を思ってみるとわかりは早いのかも知れない。また、テンションの高いところで、「ナチズム」や
「ホロコースト」を描くことで、ややもすれば「陰鬱一辺倒」になりがちな作品に魅力を与えようとした監督の
目論見があったのかもしれない。
e0040938_11185711.jpg
<IMDB=★6.8>
<Rotten Tomatoes:評価なし>
<KINENOTE=69.7点>



by jazzyoba0083 | 2018-11-20 23:00 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

ヴェノム Venom

●「ヴェノム Venom」
2018 アメリカ Columbia Pictures. 112min.
監督:ルーベン・フライシャー
出演:トム・ハーディー、ミシェル・ウィリアムズ、リズ・アーメッド、スコット・ヘイズ、リード・スコット他

e0040938_17512605.jpg
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
「スパイダーマン」の敵役として、前から存在し、サム・ライミ版の「スパイダーマン」にも登場していた
「ヴェノム」が、新しい座組と構想で、スピンオフされた。本国での評論家の酷評をよそにヒットしていて、
日本でも客の入りはいい。マーベルが全面に出たものというより、ソニーピクチャーエンタテインメントが
主導権を持って製作したようだ。なのでマーベルはin association withというポジションになっている。

ヴィラン(悪役)ものなのだが、バットマンにもスパイダーマンにも裏側はあるわけで、それを確認したくて
観に行ってみた。日曜のシネコンは意外と若い人、特に高校生くらいの女性が目立っていた。それほどグロくない
ということは分かっていて来ているようだった。

さて、長い長いエンドクレジット以外は私は面白くみた。評論家が何をして低い評価を与えているのか
知らないが、(もともと描かれているヴェノム登場とは異なるストーリーだが、相棒?がエディ・ブロックと
いうのは同じ)
私が面白いな、と感じたのは、ストーリーが単純で分かりやすいということ、ヴェノムというキャラクターが
悪役といいながら、ユーモアもあり、結局は正義の味方っぽくなってしまう様子が好ましく感じたからだ。
これこそ「コミック」の面白さではないのか。画面はCGだらけでそれがエンドクレジットの長さになって
しまうわけだが、お約束のカーチェイス、高所でのアクションも十分に楽しめる。エディ・ブロックと恋人の
関係とか、人間と異性体の共生を目論む財団のボスのプロットなどに予定調和の匂いを感じてしまうところも
ないではないが、ヴェノムのユニークなキャラクターがそれを打ち消してくれている、と感じた。
「憎めない悪いやつ」という感じだ。

財団が回収した異性体が宇宙船の事故で地球へ。(実は異性体が地球を乗っ取ろうしてわざと捕まって
いたのだが)3つは財団が回収、だが1つは行方不明となる。サンフランシスコのビデオジャーナリスト
エディは、この財団がなにやら胡散臭い実験を繰り返し、金儲けをしているらしいと睨む。ホームレスの
失踪事件にも関係しているらしい。そこで恋人で財団の弁護士をしているアンのPCから無断で財団の
情報を盗み、それをベースにボスにインタビューを申し込む。ボスに話を聞くことは出来たが、痛い核心を
つかれたボスは激怒。これでエディは仕事と恋人を失ってしまう。

しかし、ある日財団の女性博士がエディと接触、あなたの指摘していることは真実よ、と告白、彼女の
クルマに隠れてエディは財団のラボに潜入する。そこには異性体との共生の人体実験に使われている
ホームレスの姿が。なかには街で新聞を売っていたエディの知り合いの女性もいた。消化器でガラスを割り
彼女を助けようとしたエディだったが、彼女はエディに襲いかかり、異性体はこのときエディに入り込む。
「ヴェノム」の誕生だ。この異性体は人間と共生すると宿主の性格を反映するようだ。その辺も面白さに
繋がっている。

その後はエディとその中にいる異性体(あるいはもうひとりのエディ)とが繰り広げるユーモアも含んだ
「ヴェノム」の活躍が展開される。街の雑貨店に押し入る強盗の下りとか、異性体が入り込んだエディは
とにかく「生きているもの」しか食べられなくなるとか、面白いシークエンスもあり、
また「4000キロヘルツあたりの音」と「火」には絶対に弱い、という「ヴェノム」の冷酷で残酷ではない
弱点も早々にわかり、話に面白さを加えていた。さらに、ネタバレだが、恋人も異性体と合体する。これは
彼女の意志で。続編があるとすると、その辺りも描かれるのだろうか。

トム・ハーディはSPEと3本の契約を済ませているいう情報もあり、続編やら、スパイダーマンとのコラボ
された作品など作られてくるのだろう。恒例エンドクレジットあとの第一の予告にはカーネイジの登場が
予告されている。このことは「ヴェノム+スパイダーマンVSカーネイジ」という映画になるのだろうか。
とにかく魅力的なキャラクターが登場してくれたな、と私としては嬉しい。ラストシークエンスに犬を散歩
させるスタン・リーさんの姿も拝める。セリフもある。(RIP)
さて、もはや私は次作の「ヴェノム」が楽しみだ。
e0040938_17513596.jpg
<ストーリー>
マーベル・コミックスでスパイダーマンの宿敵として人気を博すヴィラン(悪役)の“ヴェノム”を主人公に
描く痛快アンチ・ヒーロー・アクション。ひょんなことから凶悪なエイリアン“ヴェノム”に寄生されて
しまった男が、その残忍性に振り回されながらも、次第に複雑な共生関係を築き、人類の危機に立ち
向かっていく姿を、ユーモアを織り交ぜつつ迫力のアクション満載に描き出す。
主演は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」「ダンケルク」のトム・ハーディ、
共演にミシェル・ウィリアムズ、リズ・アーメッド。
監督は「ゾンビランド」「L.A. ギャング ストーリー」のルーベン・フライシャー。

 正義感溢れるジャーナリストのエディ・ブロックは、危険な人体実験が行われているという“ライフ財団”
への執拗な取材がアダとなり、仕事も恋人も失ってしまう。その後、協力者を得て財団内部への侵入に
成功したエディだったが、そこではトップのカールトン・ドレイクによって“シンビオート”なる地球外生命体を
人間に寄生させる恐るべき実験が行われていた。
そして被験者の一人と接触してしまったエディは、シンビオートの一体に寄生されてしまうのだった。
やがてエディの身体を乗っ取ったシンビオートはエディの意志にお構いなしに、圧倒的なパワーと残忍さを兼ね
備えた怪物“ヴェノム”へと姿を変えるのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:29% Audience Score:86%>
<KINENOTE=75.9%>






by jazzyoba0083 | 2018-11-18 17:10 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)