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●「ファースト・マン First Man」
2018 アメリカ Universal Pictures,Dreamworks Pictures and more. 141min.
監督:デイミアン・チャゼル 原作:ジェイムズ・R・ハンセン『ファーストマン』 
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ他
出演:ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ、ジェイソン・クラーク、カイル・チャンドラー、コリー・ストール他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
宇宙モノは実話からSFまで幅広く好きだから、私としては当然シネコンへ。しかも監督がチャゼル、主演が
ライアン・ゴズリングと来ては観ずにはいられない。

しかし、2時間20分、観終えて感じたことは、フライヤーも予告編も見ていたのだが、想像したものと違った。
この映画は、いわゆる英雄譚でも月への大冒険譚でもない。人類で初めて月に降り立ったニール・アームストロング
という人は、どういう人で、何故この人が月へ最初に行ったのか、という面にスポットを当てた人間ドラマだ。
だから宇宙ものとしては比較的地味だし、華々しくないし、むしろ暗いかもしれない。
時間配分としてはアポロ11号の月面着陸より、それ以前のことに多くの時間を費やしている。

情報によれば、とにかくアームストロングという人は、謹厳実直真面目、自己顕示欲もなく冷静沈着、肝が
座っている男で、しかも寡黙。映画でもゴズリングのセリフは多くないと言うか少ないというか、殆ど無いと
いってもいいほどだ。
それ故、これまで何度も映画化の話はあったが、ニールという人物が地味すぎで話にならず、また月面着陸の
後も多くを語ろうとせず、今日まで来ていたという。チャゼル監督はそれをそのとおりになぞり、一連のニール
絡みの事柄にマスコミは登場せず、月面着陸後のパレードや大統領との会見も描かれない。だいたい月面で
星条旗を立てるシーンすら無い。ヒューストン司令部の喜びのシーンや歓声も、テレビに釘付けになる国民の
姿もない。繰り返し発生する緊張、それに対する冷静な対応のニールの姿が繰り返される。

アップを多用し、ニールの目線での表現が多い。16ミリフィルムと70ミリフィルムを使い分け、さらにIMAX
カメラも投入、VFXやCGはほとんど使わず、ミニュチュアを作り、背景に必要なものは大きなLED画面に当時の
映像を映し出して合成したというほど、とことん当時の映像にこだわった。音楽もテルミンを使用したりとにかく
拘っている。
「映画にならない」ニールの物語をどう映画に仕立てたのか、その当たりのチャゼルの工夫がこの映画の見所。
普通の宇宙モノを期待していくと裏切られるかもしれないが、この映画の主旨はニールという人物が主で、月面
着陸は従なのだ。だから冒頭テストパイロットでのあわやの着陸に続き描かれるのは難病の娘の死である。

宇宙開発に対しソ連に遅れを取っていたアメリカの焦りは有名な話で、これまでも多くの映画に描かれて来た。
そうした事実を踏まえ、ジェミニ時代、アポロ計画の初期には悲劇的な事故も少なからぬ起きた。胆力を見込まれた
ニール・アームストロングは難しいプロジェクトに投入され、トラブルが次々と起きるが、そのたびに冷静で
周囲の信頼は厚く、当然のごとく月面着陸でも船長に指名される。ニールも当然のごとく受け入れる。

一方、二人の子供がいる良き父でもあったが、仕事の話は家ではしない。月面着陸が決っても子供に説明も
せず、妻に怒られる始末。夫婦の会話は多くはない。妻は夫のそういう性格を知っているので多くは
語らないが、不満は溜まっていた。(妻を演じたクレア・フォイが良かった。映画では描かれないが、夫婦は
38年も連れ添った挙げ句に離婚している)

そして、月面でクレーターに投げ入れたのは地球から持ってきた亡くなった娘カレンのブレスレットだった。
このワンシーンで、ニールという人間が決して冷静冷徹感情を動かさない心だけの人物ではないことを
描ききったと言えよう。(この映画を監修したニールの息子さんはこのことが実際にあったかどうかは
わからないという。チャゼル監督も事実として挿入した話題ではない、と話している)

アップの画面が多くて疲れたが、宇宙モノの新たな描き方をした作品として評価は高くていいと思う。

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<ストーリー>
NASAによる月面着陸計画に人生をささげた宇宙飛行士、ニール・アームストロングの実話を『ラ・ラ・
ランド』のデイミアン・チャゼル監督が映画化した人間ドラマ。『ラ・ラ・ランド』でもチャゼル監督と
タッグを組み、ゴールデン・グローブ賞主演男優賞を受賞したライアン・ゴズリングがアームストロングを
演じる。

1961年、幼い娘カレンを病気で亡くした空軍のテストパイロット、ニール・アームストロング(ライアン・
ゴズリング)は、悲しみから逃げるように、NASAのジェミニ計画の宇宙飛行士に応募する。

1962年、宇宙飛行士に選ばれたニールは、妻ジャネット(クレア・フォイ)と長男を伴ってヒューストンへ。
有人宇宙センターでの訓練と講義を受けることに。指揮官のディーク・スレイトンは、世界の宇宙計画を
リードするソ連すら到達していない“月”を目指すと宣言。月に到達する小型船と帰還のための母船の
ドッキングを実証するジェミニ計画が成功すれば、月面に着陸するアポロ計画へと移行することが決まる。

やがて、ハードな訓練を乗り越え、絆を結ぶ飛行士たち。その中には、エリオット・シー(パトリック・
フュジット)やエド・ホワイト(ジェイソン・クラーク)がいた。そんなある日、ソ連が人類初の船外活動に
成功。またしても先を越されてしまう。

1966年、ニールは、ジェミニ8号の船長として史上初のドッキングを命じられる。代わりにその任務から
外されたエリオットが、訓練機の墜落事故で死亡。友の無念を胸に、デイヴ・スコット(クリストファー・
アボット)と2人、ジェミニ8号で飛び立ったニールは、アジェナ目標機とのドッキングに成功。ジェミニの
回転が止まらなくなる事故に遭遇しながらも、冷静な判断で危機を脱する。

こうして、アポロ計画へと移行し、パイロットにはエドが選ばれる。だが1967年、アポロの内部電源テスト中に
火災が発生。エドと2人の乗組員が死亡する事故に。アポロ計画が世間の非難を浴びていた1969年、月に着陸
するアポロ11号の船長にニールが任命される。乗組員は、バズ・オルドリン(コリー・ストール)と、
マイク・コリンズ(ルーカス・ハース)の2人。家族と別れたニールたち3人は、ついに未知の世界へと飛び
立つ……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:87% Audience Score:66% >
<KINENOTE=74.9点>



by jazzyoba0083 | 2019-02-11 11:45 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ブルースチール Blue Steel」
1990 アメリカ Lightning Pictures (presents) 102min.
監督・(共同)脚本:キャスリン・ビグロー
出演:ジェイミー・リー・カーティス、ロン・シルヴァー、クランシー・ブラウン、ルイーズ・フレッチャー他

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<評価:★★★★★★☆☆☆☆+α>
<感想>
「ハート・ロッカー」等で最近ブレイクしたキャスリン・ビグロー監督の初期の作品。一応(苦笑)
プロデューサーにオリバー・ストーンの名前が見える。今から30年前、ビグローも30代、あれも
やりたい、これも入れたい、と欲張ったな。そこそこ観られるの作品であるのだが、出来の悪い
ブライアン・デ・パルマのB級映画の匂いがプンプンする。プロットとプロットの結びつきに強引さが
目立ち(たとえば主人公と犯人の出会いとか、犯人と分かってからの主人公や犯人の行動などなど)、
粗っぽいなあ、と思って見ていた。ロン・シルヴァー演じるサイコパスは気持ち悪くてなかなか良かった
のだが、どこか一本筋が通ってなさそうで、そのあたりがいまいち。
主人公の女性警官メーガン・ターナー(ジェイミー・リー・カーティス)は雰囲気はいいのだけれど、
プロットの弱さに引きずられて上手いことキャラクターが出せず、損をしていた感じだった。
(個人的に彼女は「トゥルーライズ」でジェット機を操縦していたシュワちゃんの奥さん役が
とても印象的だった)

Rotten Tomatoesの批評家連の評価は高めだが、私は一般鑑賞者の評価の方が当たっているのではないか
と思う。またIMDbの★も妥当だと思う。

ひとつ思うのは後年、ビグローが賞を獲るような映画と描き方の根っこが繋がっているな、と感じる雰囲気
は持っている。美人だが、男がなるもの、という相場の警官になる主人公の目に映るサイコパスとDVの父親、
そして自分が警官になったことで射殺される親友や相棒の殺人課の刑事(手錠でハンドルに繋いじゃだめ
でしょ。しかもそうして追った相手がただのホームレスで、その間に相棒はサイコパスに銃を突きつけ
られるという・・)など、取り囲む男どもに対する不信や狂気など、ビグローがずっと持ちづづけている
テーマじゃないかと思う。最近の「デトロイト」の黒人をいたぶる白人の若い警官もそうした狂気を内在
しているし。本作では、それを「銃」という形で具象化しようとしたのではないか。
まあ、出来はいまいちだったがビグロー監督を勉強する上では良かったと思う。

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<ストーリー>
ニューヨーク・ポリス・アカデミーを卒業し、生涯の夢だった警官になったメーガン・ターナー
(ジェイミー・リー・カーティス)は、パトロールの第1夜にスーパーマーケットの押し入り強盗を目撃し、
彼女は犯人を射殺する。ところが現場から犯人の銃が発見されず、はっきりとした証言も得られなかった
ことにより、メーガンは停職処分をうけてしまう。実はその銃は、現場に居合わせた株のエグゼクティヴ、
ユージン・ハント(ロン・シルヴァー)が盗んでいたのだった。

彼は銃を放つメーガンの姿に魅せられ、その銃の薬莢に彼女の名を彫り込み、深夜無差別殺人を展開させる。
殺人課のニック刑事(クランシー・ブラウン)の監視のもと、混乱の日々を過ごすメーガンは、ある雨の日
ユージンと出会う。ユージンの正体を知らないメーガンはやがて彼と激しい恋におちるが、ある夜ユージン
から自分が犯人であることを告白されたメーガンは、彼を逮捕することを決意する。
しかし強力な弁護士がつき、確実な証拠もつかめないままメーガンが手をこまねいているうちに、ユージンは
彼女の親友のトレーシー(エリザベス・ペーニャ)を射殺し、ニックも彼の銃弾に倒れた。
そしてひとりユージンに立ち向かう決意をしたメーガンは、凄まじい逃走と追跡の果てに、命からがら
ユージンを射殺するのだった。(Movie Walker)

<IMDb=★5.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:71% Audience Score:36%>
<KINENOTE=63.6点>



by jazzyoba0083 | 2019-02-04 23:05 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ピースメーカー The Peacemaker」
1997 アメリカ DreamWorks SKG 124min.
監督:ミミ・レダー
出演:ニコール・キッドマン、ジョージ・クルーニー、マーセル・ユーレス、アレクサンダー・バルエフ他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
もう20年以上も前の作品になるのだなあ。(記念すべきドリームワークスの第1作)作らた当時はまだ9.11の
前で、作品のNYのシーンにはWTCのツインタワーも見えている。本作が作られた時期を考えて、これを今見ると、
またいろいろと考えさせられた。
1997年には既に収束していたボスニア紛争はチェコやユーゴスラビアの解体を招き、東ヨーロッパが不幸の
どん底にいたころだ。そうした状況を背景に、大国の横暴、身勝手がいかに小国の幸せを踏みにじるか、と
いう今もなんら変わらないテーマを思い出していた。ただ、このボスニア紛争を始めとする当時の東欧の混乱は
日本人にはいささか難しく、その辺りがこのアクション映画の面白さのマイナスに働いてしまったのではないか。

スタートという米ロの核軍縮の約束事で廃棄されるはずのロシアの核弾頭が盗まれるという大筋は分かりやすい
のに、背景が複雑なので、一体誰の何がどうなっているのか、が見えづらくなってしまったウラミが残った。

まだVFXも今ほど洗練されていな中、カーチェイスを始めとしてなかなか頑張っていたと思うし、特に今は
世界遺産となったウィーンの町中でのカーチェイスは貴重なのではないか。ニコール・キッドマン、キレイだけど、
この後のほうが更に妖艶になった。クルーニーももう少し年齢が行った時代のほうが作品に厚みを感じるが、
この映画は、ふたりとも若い魅力はそれなりに魅せてくれていたと思う。アメリカでの評価は低いが興収は良かった
ようで、アクション娯楽作としてはそこそこ面白い(話は複雑っぽく大味な感じもするが)と感じた。
ピースメーカーという言葉が皮肉に聞こえたら、この映画の狙いの一つは達成したと思って良いのでは?

ミミ・レダーはテレビ畑、「ER」で育ち、初めてメジャーな映画を撮った。まずまず手堅く纏めたと思う。この
あと「ディープインパクト」「ペイフォワード」と佳作をたて続けに撮ったあとはまたテレビに戻ってしまって
いるが、もうお年もお年、本格的にスクリーンに戻ることはないのだろうか。

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<ストーリー>
消えた核の行方を巡り、世界的な規模で展開するハイテク・サスペンスアクション。
監督のスティーヴン・スピルバーグ、パラマウント映画やタッチストーン・ピクチャーズ出身のプロデューサーの
ジェフリー・カッツェンバーグ、ゲフィン・レコードの代表であるデイヴィッド・ゲフィンの3人が共同で
設立して話題を呼んだエンターテイメントの総合会社、ドリームワークスKSG社(3人のイニシャル)の
第1回映画作品。
監督にはTVドラマ『ER 緊急救命室』の女性監督ミミ・レダーが抜擢され、劇場用長編映画のデビューを飾った。
米国のジャーナリスト、アンドリューとレスリーのコクバーン夫妻の旧ソ連における核燃料物質の密輸に関する取材に
基づき、「クリムゾン・タイド」のマイケル・シーファーが脚本を執筆。

ロシアから解体される予定の核弾頭10発が盗み出され、そのうちの1発は爆発した。核爆発を確認したアメリカは、
ケリー博士(ニコール・キッドマン)ら専門家を召集、国際テロ専門のデヴォー大佐(ジョージ・クルーニー)は
ウィーンで輸送に使ったトラックの足取りを掴む。目的地は謎の暗号「44E」。

その頃、ボスニアで外交官のデューサン(マーセル・ユース)が国連に派遣されることが決定した。一方、監視衛星で
トラックを捉えた大佐は核弾頭8発の回収に成功する。残りの1発はデューサンの手に渡り、外交官の荷物として無審査で
ニューヨークに持ち込まれた。博士は暗号「44E」が国連ビルのあるマンハッタン44丁目のことであることを解明する。
放射能探知機を便りにその行方を追う大佐と博士は、ついにデューサンを発見。デューサンは自殺し、危機は回避された。

<IMDb=★5.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:39% Audience Score:39%>
<KINENOTE=65.8点>




by jazzyoba0083 | 2019-02-02 23:30 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ヒトラーに屈しなかった国王 The King's Choice」
2017 ノルウェー Paradox. 136min.
監督:エリック・ポッペ
出演:イェスパー・クリステンセン、アンドレス・バースモ・クリスティアンセン、カール・マルコヴィクス、カタリーナ・シュットラー他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<監督>
昨年映画館に見に行くつもりが機を失ってしまい見られなかった作品。この度WOWOWが放映してくれたので
録画して鑑賞した。個人的にノルウェーという国をよく知らない。ビートルズの曲と村上春樹の小説、ノーベル賞
冬季スポーツのノルディックくらだろうか。その国の第二次世界大戦時にこうした秘話があったことを知り得たことが、
まずこの映画を観たことの収穫。スカンジナビア半島の帽子のように北極海に面した横に細長い国である。首都は
オスロ。

映画の冒頭で説明されるが、ノルウェーは長らくデンマークとスウェーデンの属国状態であったが、20世紀の初頭
独立の機運が盛り上がり、国民投票で君主制が選ばれ、議会は投票の結果デンマークのカール王子(デンマーク国王
フレデリク8世とその妃でスウェーデン=ノルウェー国王カール15世の娘であるロヴィーサの次男。兄はデンマーク王
クリスチャン10世。)を国王に選出し、カール王子はホーコン7世として、オスロに入り、ノルウェーは立憲君主国で
主権国家となった。この映画はホーコン7世の治世の1940年4月、突然侵攻してきたナチスドイツとの戦いの物語で
ある。4月9日から3日間を描く。

当時、破竹の勢いであったヒトラー率いる第三帝国は、版図を急激に広げつつ有り、ドイツの周辺国に次々に侵攻して
いった。ノルウェーも例外ではなかった。本作では、オスロ駐在のドイツ大使がヒトラー直々の命令で国王に謁見し、
ナチスが認めた人物を首相に据えて、無血的に国を明け渡せと主張してきたのに対し、断れば、軍事侵攻を招き
(既に始まっていた)国民に犠牲を強いる、しかし、主権国家として、国民に信を問わない政体はありえないと考える
国王は、王宮から北へ北へと逃げる道すがら、悩みに悩む。息子の皇太子は国民の苦難を看過できないとして軍に
入ると主張する。 国王は謁見にやってきたドイツ大使に対し、国民の信を得ていない人物を首相に任じることはで
出来ない、とドイツの交渉を断ってしまう。悩んだ末に、国王は国民に艱難を舐めさせることになっても主権国家
たる挟持を捨ててはならない、と思ったのだ。その後ホーコン7世と皇太子はロンドンに亡命し、対独抗戦を励まし
続ける。当のノルウェーはドイツの本格的な侵攻に3日間で降伏した。皇太子の家族(ホーコン7世の孫たち)は
アメリカに避難していた。ドイツの敗戦とともに、家族はロンドンに集合し、オスロへと戻ってきたのだった。

本作では以上のような経緯をホーコン7世、駐オスロドイツ大使ブロイアーとその妻、皇太子、そして前線の
まだ少年のような兵士セーベルの目を通して描いていく。原題になる通り、「国王の選択」は、自分をノルウェーの
国王に選んでくれた国民を捨てる訳にはいかない、やすやすとヒトラーにくれてやることはしない、という決断は
身を捩るような苦しい決断だったに違いない。しかし、主権国家としてのノルウェーを決して売らないという決意は
末端の兵士やドイツ大使にも伝わる力強さを持っていたのだった。国民から愛される国王であり、国民を心から愛した
国王の決断だったのだ。物語を3日間という短い時間に押し込めたことにより、より映画から伝わるメッセージが
濃く感じられたのだった。画面がいささか単調だったかなあ。

この映画の中には今の世の中でも通じるセリフがたくさん出てくる。ということは、原題が第二次世界大戦前夜の
ような状況になっている、ということではないか、そう思ってこの映画を見る時、本作がただの歴史伝記映画では
ない、と思えてくるのだった。

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<ストーリー>
第二次世界大戦当時、ナチス・ドイツに抵抗し、国の運命を左右する決断を下したノルウェー国王の3日間を描いた
ドラマ。1940年4月、ナチス・ドイツ軍がノルウェーに侵攻。降伏を拒否したノルウェー国王ホーコン7世は、
首都オスロを離れるが……。

1940年4月9日、ナチス・ドイツ軍がノルウェーの首都オスロに侵攻。これに応戦するノルウェー軍だったが、
圧倒的な軍事力によって、主要都市が相次いで占領されてしまう。ドイツ軍は降伏を求めてくるが、ノルウェー
政府はその要求を拒否。
ノルウェー国王のホーコン7世(イェスパー・クリステンセン)は、政府閣僚と共にオスロを離れる。
だが、ドイツ公使は再び降伏を要求し、ノルウェー政府に国王との謁見の場を設けるよう求めてくる。
翌日、ドイツ公使と対峙した国王は、ナチスに従うか、国を離れて抵抗を続けるか、国の運命を左右する選択を
迫られる……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:84% Audiece Score:81%>
<KINENOTE=70.3点>




by jazzyoba0083 | 2019-01-30 23:15 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯 Pat Garrett and Billy The Kid」
1973 (2005) アメリカ MGM 115min
監督:サム・ペキンパー 音楽:ボブ・ディラン
出演:ジェームズ・コバーン、クリス・クリストファーソン、ジェイソン・ロバーズ、ジャック・イーラム、ボブ・ディラン他

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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
昨年から折を見つけては観ているペキンパー作品。NHKBSで本作をちょっと前に放送していたのだが、録画ミスして
しまい、今回ようやく観ることが出来た。ペキンパーのフィルモグラフィーでいうと中盤あたりだが、やや勢いは衰えて
いく時期に当たる。デビュー作から名作「ワイルドバンチ」など、ペキンパーのバックボーンには西部劇がある。
それは、男が人生を見つめる映画を作る場合、彼として一番ドラマにしやすい背景となるからではないか、と勝手に推測
している。西部劇によらず、映画の舞台設定に師と仰ぐドン・シーゲルの影響も見られるのでは、と勝手に想像している。

さて、多くの方が、ペキンパーにしては地味だ、と評される通り、確かにストーリの流れは静かだ。眠くなる人もいる
だろう。「ワイルドバンチ」や「わらの犬」「ゲッタウェイ」などに見られるような目も離せない展開、ではない。
だが、映画には、西部時代末期に生きる男らの「世情の定まらない中、何を見出して生きればいいのか」「虚無感」
「諦観」などが静かな中にも生き生きと観てとることができるのではないか。

冒頭、パット・ギャレットが闇討ちに会うシーンがキッドらの銃撃(遊びだが)シーンとカットバックを上手く使い
ながら、構成されていくさまは、流石に唸る仕掛けだ。見終わって、パットにより殺害されるキッドなのだが、
因果応報、自分も背中を撃たれ最期となる。やりきれない西部の世界観が見事に表現されている。この映画はここに
エッセンスが詰まっていると言っても過言ではないだろう。

映画は、大枠で史実に忠実に進む。チザムも実在の人物。彼に用心棒として雇われていたキッドが、映画では今度は
チザムによって保安官に指名されるパットに追われる身となるのだが、パットとキッドはもともとは親友なのだ。
そしてもともとふたりとも無頼者なのだ。パットはキッドに国外(メキシコ)に行って欲しいのだが、脱獄以降
行方不明のキッドはメキシコに行く気配がない。だが、キッドはメキシコに向かっていたのだ。だが、国境近くで
目撃したチザムの手下のやりかたに激怒したキッドは、チザムの砦に戻ってきてしまう。そこで仕事として追って
きたパットと出くわしてしまうのだった。

日本で言えば明治20年過ぎ頃か、まだまだ西部ではこんな無法なことが繰り広げられていたのだ。そこに生きる
男の哀愁のようなものが、寂しさが、ボブ・ディランの歌とともに綴られていく。ボブ・ディラン、俳優としても
いい味が出ていたと思う。役の設定がよかったんだろう。

地味めでは確かにあるが、銃撃シーンや、血しぶきが飛び散るシーン、暴力シーンはあるわけで、それらが映画に
一層の荒廃さを加味する効果を出している。邦題ではキッドに目が行くが、原題はパットのほうが先であり、
描く世界はパットとキッドの二人のものなのだ。

ジェームズ・コバーンが圧倒的に渋くて良い。クリス・クリストファーソンはもともとカントリー歌手でこの映画の
共演がきっかけとなり同じカントリー歌手のリタ・クーリッジと結婚することになるのだが、ペキンパーのお気に
入で、甘いマスクが「キッド」に合っていたのだろう。伝説の世界では「義賊」として人気が高いキッドだが、
コバーンの渋さに対応する甘さの存在として、有りなキャスティングだったと思う。そして飄々としたボブ・ディラン。
まるで、そこにいて映画の中の歌を歌っているかのようなポジションだ。全体としてコバーンの映画、とみるのが
正解だろう。

108分が長く感じるかもしれないが、ペキンパーの作品として欠くことが出来ない映画であることは確かだろう。

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<ストーリー:結末まで書かれています>
ようやくフロンティアが終わろうとするニュー・メキシコを舞台に、21歳の若さで死んだ希代の無法者ビリー・ザ・
キッドと、彼を追うパット・ギャレットの対決を描く。

無法者の楽園、ニュー・メキシコ・テリトリーのフォート・サムナーでビリー・ザ・キッド(クリス・クリスト
ファーソン)は、仲間たちと陽気な日々を送っていた。ある日、バット・ギャレット(ジェームズ・コバーン)が
ひょっこり現われ、これからシェリフになると告げた。彼は、1匹狼でみんなから煙ったがられていた無法者だが、
大分年下のビリーと不思議に気があった。さらにギャレットは、親友ビリーに土地の有力者たちの意向を伝え、
「5日以内にここを去れ」と警告した。

しかし、ビリーが彼の警告を無視したのでギャレットはビリーを逮捕し留置所にぶち込んだ。縛り首が8日後に迫り、
ギャレットが所用で町をでていた時、ビリーは拳銃を手に入れ、留守を預かるジェリフ代理2人を射ち殺して、
群衆の見守る中を悠然と町から出て行った。町に戻ったギャレットは、アラモサ・ビルを新たな代理に命じて後を
追った。

ギャレットは彼がメキシコへ逃げる事を祈った。しかし、ビリーはフォート・サムナーに戻って、友人や住民から
大歓迎されていた。見知らぬ男バートに挑戦され、彼やその仲間を射殺した。その時ビリーに加勢した若者エイリアス
(ボブ・ディラン)と友達になり、また美しい娘マリア(リタ・クーリッジ)を知った。ここは居心地がよかった。

一方、ギャレットはゆっくりビリーを追っていた。ベイコスでは無法者のブラック・ハリスからビリーに関する
情報を掴もうとして老保安官ベイカーと夫人(カティ・フラドー)を使いベイカーを死なせてしまう。
山中でキャンプをしている時、ウォーレス知事(ジェイソン・ロバーズ)から任命されたシェリフ代理ポー
(ジョン・ベック)に出合ったが、肌が合わず、レミュエル(チル・ウィルス)の店で別行動をとることにした。

その頃、ビリーは友人たちにメキシコに行くよう説得されていたが仲仲腰を上げなかった。しかし、故郷のメキシコに
帰る老パコから、身の安全のため国境を越えるようすすめられ、ついに無法者の楽園を去る決心をした。ビリーは
その途中、パコとその家族がチザムの部下たちに襲われている所に行き合い、暴漢どもを射殺したが、パコは、間も
なく息を引き取った。

ビリーは、弱い者いじめをするチザムや、ウォーレスに激しい怒りを覚え、再びフォート・サムナーに舞い戻った。
ギャレットはポーやシェリフのキップ・マッキニー(リチャード・ジャッケル)に出合い、フォート・サムナーに
向かった。彼らがマックスウェルの家に到着した時、その奥の部屋ではビリーとマリアがベットを共にしていた。
その夜、ビリーはギャレットの1弾のために、21歳の生涯を終えた。翌朝ギャレットは静かにフォート・サムナーに
立った。人々は黙って見守っていたが、彼らの気持ちを代表するかのように幼い男の子がギャレットに石を投げつけた。
ギャレットはふり返らなかった。(Movie Walker)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:85% Audience Score:83%>
<kINENOTE=68.6点>




by jazzyoba0083 | 2019-01-08 23:10 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ビヨンド・ザ・スピード Le Fidèle 」
2017 ベルギー・フランス・オランダ Savage Film ,Stone Angels. 131min.
監督・(共同)脚本:ミィヒャエル・R・ロスカム
出演:マティアス・スーナールツ、アデル・エグザルコプロス、エリック・ドゥ・ステルク他

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<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>
スーナールツってプーチンに似てるな。今後プーチンの映画が出来るとするとキャスティングされるかも。ww
カーレースに生きがいを見出しているビビと、根っからのワルしかも、仲間とつるまないとワルも出来ないジジ。
畢竟、せっかくのいい人生をワルに引きずられてメチャクチャにされた挙げ句、ガンに侵され不幸な人生の終焉を
迎えてしまうビビ。ジジもビビを愛するようになって悪の道から足を洗おうとするのだが、最後の仕事と誘われた
ヤマが失敗に終わり、塀の中の人に。将来二人で住もうと夢見ていたブエノスアイレスへ、ジジを逃がそうと悪に
金を積み、自分の命はさておいて、ジジを脱獄させようとするビビだったが、ジジは「自分ひとりで行っても
意味がない。愛するビビと行くから価値がある」と言って断固、脱獄を拒否。ここが一番マトモなセリフだった
かな。

とにかく130分は長すぎ。特にご都合主義的にビビがガンに侵させれからはグダグダの展開で、じっと画面を
見つめているのも苦痛だった。せっかく女性がカーレーサーといういいキャラクター設定、しかも男性側も
悪党一味の腕のいいドライバーなのだからそれを活かしてもっと短く仕上げればよかったものを。
冒頭で描かれるジジの少年時代、悪さをして犬に追いかけられるというのが生涯のトラウマとなって描かれる
のだが、このエピソードももったいない使い方をされていた。仮釈放中に街で犬に噛まれそうになり蹴ったの
噛み付いたので、ジジ、逃げちゃいかんわな。畢竟、ジジは頭が悪いんだわ。 結構激しいセックスシーンもあり
結局馬鹿な女と男のグダグダな話が出来上がってしまった、という・・・。残念。
日本劇場未公開(だよなあ)。WOWOW「ジャパン・プレミア」で鑑賞。

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<ストーリー>
ある女性レーサーが愛した男性は、実はプロの強盗で……。
「アデル、ブルーは熱い色」のA・エグザルコプロスが主演した、ロマンスの要素もたっぷりなクライム
サスペンス。

女性レーサーのビビは、車の貿易の仕事をしているという魅力的な男性ジジから誘われ、彼と恋人同士になる。
しかしジジの正体は仲間たちと組んで仕事をする、プロの強盗だった。それを知ったビビは動揺するが、ジジは
次の仕事を最後に強盗業から足を洗って彼女と結婚すると約束。
ジジと仲間たちは現金輸送車を襲って大金を奪うことに成功するが、ジジの親友が重傷を負った上に、ジジは
警察に捕まって刑務所に入れられてしまい……。(WOWOW)

<IMDb=★6.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:33% Audience Score:45%>





by jazzyoba0083 | 2019-01-07 22:55 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

パワー・ゲーム Paranoia

●「パワー・ゲーム Paranoia」
2013 アメリカ Relativity Media,Reliance Entertainment,Demarest Films.106min.
監督:ロバート・ルケティック   原作:ジョセフ・フィンダー 「侵入社員」
出演:リアム・ヘムズワース、ハリソン・フォード、ゲイリー・オールドマン、アンバー・ハード、リチャード・ドレイファス他

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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
親の世代に美味しいところを持っていかれ、今の若者は損をしているという不遇の青年が野心に燃えて、悪事に
巻き込まれ再生していく、という青春の蹉跌と身の丈の成功を描いた作品。名優が出ている割には全体としていま
ひとつピリッとしたところのない映画だった。
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青年アダム(リアム)は、業界№2の携帯会社に勤めるも、なかなか上に這い上がれないIT技術者だ。社長(オール
ドマン)へのプレゼンでも、ついかっとなり社長と喧嘩してしまい、チームの仲間を巻き添えにして全員にクビに
なってしまう始末。
家には肺気胸を患う父がいる。母は7歳の時無くなっていて、35年の警備員生活をリタイアしたワガママ親父との
二人暮らし。4万ドルもの莫大な医療費にも困っている。自分は会社に入って6年も立つのに一度の昇給もない。
俺はオヤジのようにならない、成り上がってやる!と野心と不満が充満してる状況だった。

そんななかで会社をクビになり、法人カードがまだ使えることをいいことに、仲間と超高級クラブで豪遊する。
これが元の会社にバレて、(そりゃばれるわな=この辺詰め甘い)、クビにした社長が、裁判にされたくなかった
ら、社長が元いた携帯会社に採用され潜入し、新世代携帯の秘密をスパイしろ、と迫られる。
しかたなく、伝説の経営者ジャック・ゴダード(ハリソン・フォード)が経営する会社にうまく取り入り、幹部と
して採用される。(アメリカってそんなもんか?)新しい会社の女性と親密になり、彼女のハンドバックやPC
から秘密を盗み、元の会社へとデータを送った。アダムは新会社の社長から大いに気に入られ、高級マンションや
高級車をあてがわれる。

しかし、核になる実機の見本が手に入らず、元いた会社の社長からは、時間がないと脅される。そこで無人に
なった新会社に夜間忍び込み、恋仲になった女性の指紋を採取してセンサーを突破、しかし、警戒網にバレて
捕まってしまう。新社長は、全てお見通しでアダムを採用していたのだ。さらに元いた社長とアダムの、
秘密を盗むメールをすべて記録していた。

だが一方で新会社でも、技術者が不審死したりしていて、FBIが内定していたヤバイ会社でもあったのだ。
アダムは接触してきたFBIに仲間とともに司法取引をし、スパイ行為を指示したゲイリー・オールドマンと
諸々のハリソン・フォードの悪事を一気に暴き、二人は逮捕されていった。まあ、ラスボスはハリソン・フォード
だったというわけかな。かつて二人は共同経営者として苦労をともにしていたのだが、ハリソンが
ゲイリーを追い出したような形になったらしい。それから二人の確執は始まったのだ。

野心満々のアダムはまんまと二人に利用されてしまったわけだが、二人の逮捕の後、ブルックリンの対岸に
事務所を構え、かつての仲間たちと地道な事業を立ち上げたのだった。一時は情報の抜き出しに利用した
ガールフレンドも、彼を赦し一緒に働くようになるという、最後はアダムのまともな家業への再生を暗示
して終わる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
IT界を二分する企業のボスにその野心をいいように使われたアダム、彼には当然それ故のスキがあった
のだが、全体にITの世界を描きながら、「え、そんなことあり?」とか「脇が甘すぎじゃね?」とかいう
点が少なからずあり、映画全体の脇の甘さ、詰めの甘さに繋がってしまっていた。どなたかも書いていた
ように、IT企業のボスって、スティーヴ・ジョブスも、ゲイツもオタクだし、オールドマンやフォードの
ような重厚な印象を持っていないんだな。その当たりのキャスティングはどうだったんだろう?

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<ストーリー>
急成長を遂げるIT企業、ワイアット社のCEOワイアット(ゲイリー・オールドマン)は、宿敵のゴダード
(ハリソン・フォード)率いるアイコン社が開発している新製品の情報を入手しようと目論む。その手段
とは、野心家の若手社員アダム(リアム・ヘムズワース)の弱みを握り、高報酬と引き換えにアイコン社
への潜入とスパイ活動を指示するという信じ難いものだった。やむなくその条件を受け入れたアダムは、
有力情報を手に入れるためにアイコン社に潜入。だがそれは、恐るべき本性を露わにしたワイアットと
巨大な権力者ゴダードとの戦いに挑むことを意味していた……。(Movie Walker)

<IMDb=★5.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:7% Audience Score:35%>
<KINENOTE=62.1点>




by jazzyoba0083 | 2018-12-13 22:55 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ホテル・ファデットへようこそ Bonne Pomme」
2017 フランス Thelma Films and more. 101min.
監督:フロランス・カンタン  脚本:フロランス(母)&アレクシ(息子)・カンタン
出演:ジェラール・ドパルデュー、カトリーヌ・ドヌーヴ、シャルタン・ラデスー、ゴチエ・バトゥー他

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<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>
フランス人という人種はこういう映画が好きなんだろうなあ。ちょっとコミカルな中編映画。人の言うこと
なんか聞きゃしないゴーイングマイウエィも極まったホテルの女主人バルバラ(ドヌーヴ)と、人が良すぎる自動車
修理工のジェラール(ドパルデュー)この二人の掛け合いを楽しむのが基本。とりまく家族や村人らもまともな人が
少ないかといってハリウッド風の味付けではないキャラクターが欧州味を付け加えている。

ドヌーヴは最近こうした中編に出演することが多いようだが、映画の評価としては高くないものばかり。まあ
自分がやりたいことだけやっているんだろう。このホテルの女主人、いかに浮気相手から手切れ代わりに充てがわれた
ホテルとはいえ、全然やる気がない。そこに嫁との折り合いが悪く、出自の悪い金を(修理を担当したやつが麻薬の
密売人で、使うクルマのチューンナップをしてやり、大金を貰っていた)持って、片田舎の修理工場を買収に来た
腕は良い修理工のジェラールがやってきた。バルバラのまるでクモの網に引っかかったように、客なのに調理はさせ
られるわ、清掃やしまいには結婚式まで取り仕切らせれ、これがまた上手くいってしまうのだ。

片や、ラリーに出場するため金をため店をジェラールに売ろうとしている男は恋人を置いてジェラールにチューン
ナップしてもらいレースに出かける。

ジェラールの義母も娘(ジェラールの嫁)が気に入らず、彼のもとに従業員とやってくる。やがて麻薬密輸の男が
捕まり、クルマのことで協力し大金を貰っているジェラールに警察の手が及んでくる。もとよりホテルなんて
やる気のないバルバラは、ジェラールとともに大型四駆でイタリア方面に逃避行に出かけるのだった・・・。

何人かの登場人物の人間模様をユーモアとウィットに富んだいかにもフレンチ映画らしい笑いのテイスト。
劇場未公開(だろうなあ)。人と人の絡みを人間喜劇として描かせるとフランス人は上手いなあと思う。
脚本家出身の監督らしい味付けである。
しかも堅苦しくなく。あまりにワガママ&身勝手なバルバラにジェラールが「いいかげんにしろよ!俺は出ていく!」
と怒りをバクハツさせるシーンがある。人として当然の感情だろうけど、ジェラールの人の良さは、それだけで
収まっちゃうのだ。バルバラを放っておけなくなってしまうんだな。映像やセリフには無いけど二人は結局惹かれ
あうようになったのだ。それまた人生なり!C'est la vie! と聞こえてきそうである。フランスを代表する名優二人の
熟練した演技に乾杯!だ。 原題の「美味しいリンゴ」とは何を指しているのだろうか?

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<ストーリー>
いずれも本国フランスだけでなく世界的にも活躍している国際派スター、ドパルデューとドヌーヴが顔合わせし、
いずれも高齢者ながら現在や未来を前向きに考える男女に扮したコメディ。ドヌーヴが演じる型破りなホテル
経営者にドパルデューが演じる男性は振り回されるが、いつしか2人が性別を超えた友情を築いていくのもまた
前向きでユニーク。
ユーモラスな展開の中、日本でいう“ベタ”なギャグも多いが、それもまたフランス流コメディ風。監督・共同脚本は
脚本家出身のF・カンタン。WOWOWの放送が日本初公開。

フランスの町ドルーで暮らす老男性ジェラールは妻との仲が冷めた上、妻の母親が営む自動車修理工場の雇われ
社長をするのにも飽き、自分の修理工場を持ちたいと望み、ルヴェルジョンという村で売りに出された修理工場を
買うかどうか考えようと現地へ。そこで“ファデット”というホテルに泊まるが、何事にもいい加減な女性主人
バルバラに押し切られ、しばらくそこに滞在する。一方、ジェラールの家族は彼が家出したと心配し……。
(WOWOW)

<IMDb=★5.2>
<Rotten Tomatoes=評価なし>




by jazzyoba0083 | 2018-12-11 18:00 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ハード・ウェイ The Hard Way」
1991 アメリカ Universal Pictures. 111min.
監督:ジョン・バダム 
出演:マイケル・J・フォックス、ジェームズ・ウッズ、スティーヴン・ラング、アナベラ・シオラ、LL・クール・J他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
このころからマイケルには「パーキンソン病」の兆候があったという。今年57歳になったはずのマイケル、是非また
元気な顔を見せて欲しいものだ。「BTTF」ファンとしては心底そう願う。

この映画は、映画業界の内輪ものであり、かつ警察のバディものであり、スクリューボール・コメディとも言える
作品で、allcimemaの指摘にあるように、エンターテインメントとしては成功しているけど、後には何も残らない、
というタイプの娯楽作である。設定が設定だけに面白い映画ではある。特にジェームズ・ウッズのキャスティングが
成功している。マイケルはあんまりまともでないハリウッドスターを頭のネジの外れようも適度に、何やってるんだか、
と観客に思わせるいい雰囲気を出していたと感じた。
マイケルは終始だいこんに見えるのだが、ハリウッドの世界、映画の世界ではニック・ラング(作品中の彼の名前)は
大スターなのだな。その世間の認知と実際の彼のキャラクターや最後に出来上がる映画のクサさの落差が本作の
面白さの肝となる。またマイケルは身長が低いことなどを自虐的にパロディーにしていたり、「BTTF」のマーティの
寝相を真似してみたりと、なかなか吹っ切れた演技。これも笑いを誘う。「インディ・ジョーンズ」や忍者ものの
パロディもあり、「スピルバーグに赤ちゃんが生まれたそうよ」とかいうセリフも出てくる。内幕を笑いに
変えているのは常道ではあるが。

ハリウッドスターのニック・ラング(マイケル)は、会社が持ってくる映画の子供だましの台本にいい加減辟易と
していた。「シリアス」なものに憧れていたのだ。たまたまテレビで観たNYPDの刑事ジョン・モス(ウッズ)の
「パーティークラッシャー」との戦いのニュースを観ていて、実際に刑事に同行し、シリアスな演技を学ぼうと
考えた訳だ。

NYへ飛んだニックは、署長の根回しでモスを事件から外してもらい、自分の「バディ」担ってもらうことに成功
する。しかし、ハリウッドの大スターはしもじもの空気など全然読めず、モスのデートは邪魔するわ、手を出すな、
と云われいる事件に手を出して危機一髪になるわで、モスに迷惑ばかり掛けている。そこでモスは仲間の刑事と
ともにニックをハリウッドに返すための芝居を打つことにする。それに引っかかって実際人を殺してしまったと
思い込んだニックはモスに迷惑がかかると、LAに帰ることにするのだが・・・。
パーティークラッシャーの跋扈は止まず、ニックとモスは、事件に巻き込まれていく・・・。

まあ、「スクリューボール・コメディ」に文句を言っても始まらないので、肩の力を抜いて、気楽に見るのが正解な
作品。そうすればなかなかいい味のコメディだと思う。後に残らない、といったけど、映画を観ているときだけ
楽しければ、教訓を垂れる種類の映画でもないわけで、それはそれでいいと思う。

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<ストーリー>
最近スランプ気味の人気アクション・スター、ニック・ラング(マイケル・J・フォックス)は次回作で演じる
刑事の役作りに挑むため、偶然TVで目にしたニューヨーク市警の殺人課刑事、ジョン・モス(ジェームズ・
ウッズ)に弟子入りしようとエージェントのアンジー(ペニー・マーシャル)の止めるのも聞かずNYに飛んだ。

連続殺人鬼、通称、バーティ・クラッシャー(スティーブン・ラング)を追うモスは署長に言われてラングを
捜査に同行させることをしぶしぶ承知するが、ラングは行く先々で足手まといになるばかり、おまけに同居すると
まで言い出す。
恋人のスーザン(アナベラ・シオラ)とのデートにしゃあしゃあとして現われるに至ってはモスも半ばあきらめ
気味、ラングを手錠で繋ぐと1人で捜査に出かけてしまう。ところがその留守に勝手にスーザンに会いに行った
ラングはギャングに襲われ、危うい所をモスに救われた。
その夜、クラッシャーを追って駆けつけた現場でラングは誤って一般人を射ってしまう。顔面蒼白となるラングに
モスは罪は自分がかぶるからロサンゼルスに戻れと言うが…。

それはラングを厄介払いするべくモスが仕掛けた罠だったのだ。モスは単身クラッシャーが改造拳銃の売人と
接触する現場に乗り込み、壮絶なチェイスの末にクラッシャーをラングの最新作「スモーキング・ガンII」の
上映されている劇場に追い詰めた。
しかしそこにようやく自分がだまされていることに気づいたラングも駆けつけてきた。銃撃戦の大混乱の中、
ラングの放った弾が命中してクラッシャーは逮捕され、ラングはだましたモスに一発食らわせて車に乗り込む…。

で一件落着と思いきやそこには逮捕されたはずのクラッシャーがピストルを構えていた。ラングはクラッシャーを
降ろそうとするがうまくいかず、スピードの出しすぎで車ごと転倒。とり逃がしたクラッシャーはモスの家へ行き、
スーザンを人質にとり、街の「スモーキング・ガンII」の宣伝用ハリボテの中に立てこもる。あわてて後を追った
2人は街中の人々が見守る中、激しい戦いをくり広げ、ついにクラッシャーを地面にたたきつけるのだった。
(Movie Walker)

<IMDB=★6.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:74% Audience Score:53%>
<KINENOTE=64.2点>




by jazzyoba0083 | 2018-12-10 23:25 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「プライベート・ライアン Saving Private Ryan」(名画再見シリーズ)
1998 アメリカ DreamWorks Pictures,Paramount Pictures (a Viacom company), Amblin Entertainment Production.170min
監督・(共同)製作:スティーブン・スピルバーグ  撮影監督:ヤヌス・カミンスキー
出演:トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、アダム・ゴールドバーグ
   ヴィン・ディーゼル、ジョヴァンニ・リビシ、ジェレミー・デイヴィス、ポール・ジアマッティ、マット・デイモン他

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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
三度目か四度目の鑑賞。時々観たくなる作品だ。スピルバーグのシリアス作品群の中でも好きな一編だ。同時多発テロに
先立つ3年前に製作されたことに個人的にだが、何かすごく感慨を覚える。そして今回の鑑賞日が真珠湾攻撃から77年め。

戦記物が好きな私だが、本作ほど戦争の残虐さ、虚しさ、愚かしさ、多大な犠牲をスペクタキュラーな要素を入れて
作り上げた例をあまり知らない。映画界では、「プライベート・ライアンの冒頭20分」という、よく使われる言葉が
ある。それは戦争の苛烈さ、容赦の無さ、生命のやり取りの熾烈さを最大限に表現しているからだ。脚本を書き上げるに
際し、ロバート・ロダットとフランク・ダラボンは、本作がフィクションとしても、オマハビーチの惨劇は忠実に再現
しようと膨大な調査とインタビューを行ったに違いない。さらに使われた衣装、武器も史実に忠実に再現され、機関銃の
音は本物を使うなどこだわりを徹底している。スピルバーグとコンビを組むことが多いヤヌス・カミンスキーの手持ちの
カメラはレンズに血飛沫が飛んで着く様も、観客に臨場しているかのような錯覚を覚えさせる演出である。
なお、ストーリーは本作に近いモデルになったケースがあり、それがベースになっている。

ドイツ軍が敷設した上陸阻害の鉄の構造物以外遮蔽するもののないビーチに飛び込んだ米軍兵士は、トーチカのドイツ
軍の機関銃の餌食になる。飛び散る足や腕、はみ出す内蔵、弾丸がヘルメットに当たり助かった兵士、ヘルメットを
脱いでその痕跡を確認しようとしたところに頭に銃弾を食らう様、真っ赤に染まる海、など目を背けたくなる光景が
20分間続く。
だが、目を背けてはいけないのだ。これが戦争なのだ。なぜ上陸前に空軍がトーチカを叩いておかないのか、という
事を思うだろう。だが、史上最大の作戦にはこうした無茶な上陸命令もあったのだ。空軍はラストのラストに登場し、
皮肉を振りまくのだが。

そう、皮肉なのだ。四人兄弟のうち三人までが戦死、陸軍参謀総長マーシャルの直々の命令(ソール・サバイバル・
ポリシー)により、どこにいるとも分からない一人の二等兵を本国に還すために、中隊が命を賭して捜索にいく。
探し出す相手がライアン二等兵(プライベート・ライアン=マット・デイモン)である。戦争の皮肉な(不条理な)
一面の象徴である。

ドイツ軍も自分の命が懸かっているから必死だ。ライアンを探す途中での戦闘で一人のドイツ人が捕虜となった。
殺そう、という部下を制し捕虜に目隠しをしてその場を去らせる隊長ミラー大尉(トム・ハンクス)、捕虜も生きたい、
生き残りたいので必死。墓穴を掘りながら、「クソヒトラー」「アメリカ大好き」などとおべっかをつかう。
しかし、後の戦闘で、ミラー大尉に致命傷の銃撃を食らわすのは、その兵士だったのだ。

これには続きがあり、フランス領内でドイツ軍との戦いにおいてライアンを探すため独仏語が出来る兵士が通訳と
して同行する。彼は銃を本番で撃ったことすらない「通訳」。
しかし、最後の戦闘に巻き込まれ、何も出来ずに頭を抱えて泣いていたのだが、逃してやったあのドイツ兵が仲間や
ミラー大尉に発砲したところを見るに及び、戦闘が終わって捕虜となって両手を上げるそのドイツ兵が、
「やあ、アプム」と、またごますり顔で声を掛けると彼は有無を言わさず、そのトイツ兵を射殺する。観ている方は
溜飲を下げる構図だが、銃も撃てなかった男が人殺しが出来るようになってしまうのが戦争なのだとみるべきなのだ。

ライアンを見つけ、橋を爆破する最後の戦闘においても、冒頭と同様な戦闘が展開される。教会の鐘楼からスナイ
パーとしてドイツ兵を殺し続ける男は、一発一発、神に願いを込めて撃つ。兵たちはお互いに銃が使えなくなると
ナイフで、ヘルメットで殴り合い、取っ組み合って噛み付いて相手の指を食いちぎっても生きたい。人間の生への
執着は米軍が勝ちたい、ドイツ軍が勝ちたいという範疇を超え、「生きるか死ぬか」の戦いだ。戦争とはそうした
ものだ(ろう)。

ミラー大尉は田舎の高校の作文の先生。英雄でも何でも無い。アメリカのため、とかの威勢のいいことも口にしない。
おそらく、生き残って家族のもとに早く帰りたい、それだけのため目の前の敵を殺す、もう無私の世界、解脱の
世界にいたように感じた。多くの兵士がそうであったろう。 ミラー大尉が最期にライアンに「生きろ」と言い残す。
普通に生きたくても生きられなかった時代。冒頭とラストの年老いたライアンは、「私は正しく生きただろうか」
「皆さんの犠牲に値する人生を生きただろうか」と自問する。それは、どの戦争にせよ、犠牲になり平和の礎となった
かたがたに対し、国の差無く絶えず自問し続けなければならない問題だろう。
スピルバーグとしては、第二次世界大戦の大きな問題としての提示はこれで尽きた。彼はその後HBOのTVシリーズ
「バンド・オブ・ブラザーズ」「ザ・パシフィック」へと、より細かいテーマに挑んでいく。
素晴らしい戦記ものだと思うが、冒頭とエンディングの星条旗は不要に感じた。トム・ハンクスも油が乗り切った
一番いい時期の作品だったといえよう。
本作はオスカーを5部門で獲っているが、作品賞は「恋に落ちたシェイクスピア」に渡った。主演男優賞は
同じ第二次世界大戦を扱った「ライフ・イズ・ビューティフル」のロベルト・ベニーニに。
オスカーの好みを表した状況だったといえよう。

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<ストーリー:最後まで書かれています>
時は1944年。第2次世界大戦の真っ只中、米英連合軍はフランス・ノルマンディのオマハビーチでドイツ軍の
未曾有の銃撃を受け、多くの歩兵が命を落としていった。戦禍を切り抜けたミラー大尉(トム・ハンクス)に、
軍の最高首脳から「3人の兄を戦争で失った末っ子のジェームズ・ライアン2等兵を探し出し、故郷の母親の
元へ帰国させよ」という命令が下った。

ミラーは古参軍曹のホーヴァス(トム・サイズモア)、2等兵のレイベン(エドワード・バーンズ)、カパーゾ
(ヴィン・ディーゼル)、メリッシュ(アダム・ゴールドバーグ)、名狙撃手ジャクソン(バリー・ペッパー)、
衛生兵のウェード(ジョヴァンニ・リビジ)、ドイツ語が話せる実践経験ゼロのアパム(ジェレミー・デイヴィス)を
選び、落下傘の誤降下で行方の知れないライアンを敵地の前線へと探しに向かう。

彼らは廃墟の町で攻撃を受け、ひとり、ふたりと銃弾に倒れていく。なぜライアン1人のために8人が命を
かけなければならないのか? とレイベンが怒りを爆発させた時、ミラーはライアンを探し出し妻の元へ
帰ることが自分の任務だと淡々と語り、離れかけていた皆の心をまとめあげる。前線へ進むうちミラーたちは
空挺部隊に救われるが、その中にライアン2等兵がいたのだ。兄たちの死亡と帰国命令を知ったライアンは、
戦友を残して自分だけ帰国することはできないときっぱりと言い放つ。
ライアンの意思がミラーたちの心を捉え、共に踏みとどまりドイツ軍と一戦を交えることに。乏しい兵力、
装備という悪条件の中、仲間たちは次々と銃弾に倒れ、ミラーも爆撃を受け死んでしまう。ライアンに
「しっかり生きろ」と言い残して…。

時を経て年老いたライアンは、ミラーの墓地の前で彼の言い残した言葉を、再びかみしめるのだった。
(Movie Walker)

<IMDB=★8.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:93%  Audience Score:95%>
<KINENOTE=79.7点>




by jazzyoba0083 | 2018-12-08 23:50 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)