カテゴリ:邦画・旧作( 59 )

用心棒

●「用心棒」
1961 日本 東宝・黒澤プロダクション 110分
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、仲代達也、山田五十鈴、加東大介、司葉子、河津清三郎、志村喬、
    東野英治郎、藤原釜足、沢村いき雄、渡辺篤、藤田進、夏木陽介他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
やはり時代劇の黒澤作品は面白いなあ。ユーモアも盛り込まれ、ストーリー、配役
演出、キャメラ、美術、音楽、エンターテインメントとしての映画のお手本のような
出来だ。どこか、何かが必ず動いている黒澤映画、本作も雨あり、風あり、望遠あり。
そしてシネマスコープのワイド画面をいっぱいに使い、並ぶやくざの対決構図も
迫力ある。またオープンセットの大迫力も、火災や穴の開く大きな酒樽などの
外連味もまた素晴らしい。カメラワークもダイナミックだ。

キャスティングでは、三船はもちろんだが、ニヒルな仲代、やり手のやくざの女房
山田五十鈴の怪演ぶりが素晴らしい。また、ドジなお笑い担当の加東大介、
この人だれ?と思わず乗り出した若き司葉子など、脇を固める黒澤オールスターズの
安定ぶりも、言うことない。相変わらずセリフが聞き取り辛いところはあるが・・。

音楽も、ちょっと大げさかな、とも思えるが、画面に合ったオリジナルはまた「映画
音楽」として素晴らしい。

黒澤自身、ダシール・ハメットの影響を強く受けた、と語っている通り、ハードボイルド
のセンスが光っている。殺陣も、市川昆「木枯らし紋次郎」に影響を与えただろう
様式美から離れた、リアルな斬り合いは、その効果音とともにダイナミックだ。

映画の素晴らしさを語るとき、外せない一作であろう。19本目の黒澤作品鑑賞と
なったが、時代劇では、これが一番かなあ。現代劇では「天国と地獄」か。
何回でも見られるエンターテインメントである。
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ストーリー、こぼれ話などはこちらのWikipediaをご参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-29 23:45 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

赤ひげ

●「赤ひげ」
1965 日本 東宝 185分
監督:黒澤明  原作:山本周五郎「赤ひげ診療譚」
出演:三船敏郎、加山雄三、山崎務、香川京子、団玲子、桑野みゆき、志村喬、二木てるみ
頭師佳孝、土屋嘉男、東野英治郎、笠智衆、田中絹代、根岸明美他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
これまで観た黒澤作品の中で一番長かった。インターミッション付の映画は久し振りだ。
長かったけど面白かった。迫力ありました。配役も綺羅星のごとく。
全体をいくつかのエピソードに分けて、赤ひげ(三船)が率いる小石川養生所の日々を
加山雄三目線で語っていく。
狂女~車大工佐八と女房おなか~蒔絵師六助と娘おくに~女郎屋の下働き、おとよと
4人の女中そして、長次。その間に、六助の臨終に関すること、メタボなお殿様、加山の
身の回りのこと、婚礼などのエピソードが挿入されていく。

各エピソードの中では車大工佐八(山崎務)と女房おなかのくだりと、女郎屋下働き
おとよと幼い長次の一家心中に至るくだりが良かった。役者たちは主役の三船を
筆頭に安定感のある配役ばかりで、安心してみていられた。特にやはり三船は
はまり役ともいうべき演技で、俗っぽさを持ちつつ清濁併せ飲む正義感あふれた
キャラクターを好演、初めて黒澤作品に抜擢された若大将加山雄三も、相変わらずの
滑舌の悪さではあるが、三船に反発しつつ、やがて三船の規格外れの人間性に
触れていくにつれ、医師としての意義に目覚めていく青年の成長を懸命に演じていた。
また、子役二木てるみと頭師佳孝(のちに「どですかでん」)の二人の天才的な演技に
は唸らせられた。

黒澤映画のダイナミズムともいうべき、巨大なオープンセット、カメラアングル
(フレーミング)、ドリーイン・ドリーバック、シルエットの効果的な使い方などなど
映像表現も満喫できる。
それにしても、黒澤作品というのは、画面の何かが常に動いているというイメージ
だなあと思う。人が動くのはもちろんだが、雨、雪、風、ほこり、光という物理的なもの、
カメラがトラックする、ドリーする、ズームする(これはあまりないか)、という風に
常に何かが動いているのだ。典型的なのは走る人や馬を追いかけてパーンする、
というものだろう。

wikipediaによれば本作は『黒澤映画における最後の「白黒映画作品」
「三船出演作品」「泥臭いヒューマニズム作品」』だという。
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この映画のストーリーやエピソードはこちらのwikipediaを参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-19 00:35 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

●「八月の狂詩曲(ラプソディー)」
1991 日本 黒澤プロダクション、フィーチャーフィルムエンタープライズ。(配給:松竹)98分
監督:黒澤明
出演:村瀬幸子、井川比佐志、茅島成美、吉岡秀隆、根岸季衣、リチャード・ギア他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
黒澤信者の方々からは怒られそうだが、個人的にはこれまで観た黒澤作品のなかで
一番納得がいかなかった作品だ。反核反戦はいいのだが、「生きものの記録」の
ようなパワーが感じられない。全体に古臭く、大時代的だ。学校の教育映画のようでも
ある。言いたいことは「家族」なんだそうだが、リチャード・ギアの出現も取ってつけた
感じ。 また、特撮に本田猪四郎を迎えたが、モクモクと湧く灰色の雲は、この時代の
特撮としては稚拙な感じだった。これでよく黒澤が納得したな、と。あれは雲じゃ
なかったのか??
全体として大仰ではあるのだが、村瀬幸子らキャストの演技は確かであった。
ラスト、暴風雨に傘をおちょこにして立ち向かい歩く村瀬の映像は、何かを言い表し
たかったのだろうけど、音楽と合わせて浮いた印象を受けた。
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<ストーリー>
「長崎から少し離れた山村に住む老婆・鉦のもとに一通のエアメールが届いた。
それは鉦の兄であるハワイの大富豪・錫二郎の息子・クラークからで、
不治の病にかかり余命短い錫二郎が、死ぬ前に鉦に会いたいというものだった。

ところが、兄弟が多い鉦には錫二郎という兄の記憶がなく、そんな鉦の気持ちとは
裏腹に、突然現れたアメリカの大金持ちの親せきに興奮した息子の忠雄、娘の
良江はハワイに飛んで行ってしまう。
それによって残された4人の孫・縦男、たみ、みな子、信次郎は夏休みを鉦の家で
過ごすことになった。

孫たちは鉦の家の生活に退屈しながらも、長崎の街にある戦争の傷跡や鉦が
いつも話す昔話を聞いて、原爆で祖父を亡くした鉦の気持ちを次第に理解する
ようになる。そして、鉦がついにハワイに行く気になり、縦男はその旨を手紙に
書いてハワイに送る。
それと入違いに忠雄と良江が帰って来た。手紙のことを知った二人は、その手紙に
原爆のことが書いてあることを知り、急に落胆する。アメリカ人には原爆の話を
してはいけないと言うのだ。
そんな時、突然クラークがハワイからやって来る。縁台で鉦と手を取り合って
対面を喜ぶクラークは「ワタシタチ、オジサンノコトシッテ、ミンナデナキマシタ」と
たどたどしい日本語で語った。
そして長崎で孫たちと楽しい日々を送っていたとき、錫二郎の死を告げる電報が
クラークのもとへ届き、クラークは急いで帰国するのだった。鉦も縁側で
その電報を握りしめていつまでも泣いていた。
そしてこの時から鉦の様子がおかしくなっていく。そして雷雨の夜、突然「ピカが
来た!」と叫びだし、翌朝、豪雨の中で鉦は風に揺られながら駆け出していく。
そして、そんな鉦を忠雄、良江、それと4人の孫たちはこみあげる熱い気持ちの
まま、泣き叫びながら追いかけていくのだった。 」(goo映画)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2013-01-16 22:50 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

わが青春に悔いなし

●「わが青春に悔なし」
1946 日本 東宝 110分
監督:黒澤明
出演:原節子、大河内傳次郎、藤田進、杉村春子、三好栄子、河野秋武、高堂国典、志村喬他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
終戦直後にGHQの存在がある中、作られた、という点を考慮すべきではあるが、
軍の関与から解放され、黒澤本来の反権力思想と、戦後の新しい風が
一体となったドラマとなっている。「女性」という視点、「思想」と「恋愛」と
いう視点、「都会」と「農村」という視点などなど、計算されたプロットが
落とし込まれている。
また走る人をパーンしてそれを連続するカット、(後「七人の侍」などで黒澤が
映画に動きを与える手法として多様。)カットバックでの驚愕表現、効果的な
ズームバックやトラックバック、計算されたフレーミングなど、既に映像
表現家の巨匠としての手法が存分に展開される。
また同フレームで人物を次々とデゾり、顔の変化を出す手法などは
当時としてはユニークではなかったか。

後に所謂黒澤組と呼ばれる配役陣になる前の、大河内傳次郎、原節子、
藤田進らが出演し、三船敏郎以下の布陣を見慣れたものとしては新鮮。
原節子はバタ臭い顔をしているが、艶かしく上目遣いをする演技は
当時の観客を酔わせたことだろう。彼女が農村で鍛えられて、所謂「女権
拡大運動家」として成長するさまは、なかなか良かったが、両家の娘という
「甘さ」がどうも吹っ切れなかった。描き方が短絡過ぎたか。
全編に旧制第三高校逍遥の歌「紅もゆる岡の花 早緑匂ふ岸の色
都の花に嘯けば 月こそかかれ吉田山 緑の夏の芝 ...」が様々なアレンジ
で印象的に使われる。冒頭のシーンは吉田山のハイキングだ。

投獄されるまでの幸枝(原)の行動の煮え切らなさが長かった。
また、八木原の両親。父親(高堂国典)が何も仕事をしないでいて、女ふたりが
やっとの思いで仕上げた田植えを村人に台無しにされるに及び、怒りつつ
田んぼに出てくるというのは、何を言いたかったのかよくわからなかった。
野毛(藤田)と糸川(河野)と幸枝の3様の生き方が、学生時代、戦中、戦後と
変化していく様子を反戦というニュアンスで描いた、と感じた次第。
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この映画のストーリー等の詳細はこちらのWikipediaをご参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-12 22:50 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

蜘蛛巣城

●「蜘蛛巣城」
1957 日本 東宝 110分
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、山田五十鈴、志村喬、千秋実、佐々木孝丸、浪花千栄子ほか。
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
後の「乱」に通ずる作品。黒澤の様式美へのこだわりが見られる。大変良くできた
映画だとは思うけれど、個人的に様式美に傾倒した黒澤作品はあまり好きでは
ないので、評価を下げた次第。故に「乱」も未見である。

シェークスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えて翻案したが、
大掛かりなセットや美術、エキストラの動きなどはやはり素晴しいと言えるだ
ろう。ファンタジーとしての出来も良いと思う。霧の中から現れる「蜘蛛巣城址」
という標柱。「つわ者どもが夢の跡」であろ。これがエンドシーンへと繋がって
いく。円谷英二が特技監督をしたという動く森も良かった。
相変わらず、古語調、絶叫調のセリフは聞き取りづらいが・・。

最大の見せ場としてつとに知られる、終盤の「矢ぶすま」のシーンは圧倒的だ。

お馴染みの黒澤組の配役は安定しているが、フィーチャーされた山田五十鈴の
鬼気迫る演技は圧倒的で、不気味な味、おどろおどろしさが誠によく出ていた。
ある意味、彼女がこの映画の主役の一人でもあるだろう。
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この映画のストーリーなど詳細やエピソードはこちらのWikipedeiaまで。
by jazzyoba0083 | 2013-01-08 22:55 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

生きものの記録

●「生きものの記録」
1955 日本 東宝 113分
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、志村喬、千秋実、清水将夫、三好栄子、千石規子、上田吉二郎、東野英治郎他。
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
音楽を担当した親友・早坂文雄の遺作として知られる本作、黒澤映画唯一の
反核作品である。フクイチを体験した私たちには、また同日性を持って迫る。
作られた当時はプリミティブな反・原水爆の作品(表現法は凝っているが)だが、
主人公中島翁の「死ぬのは止むを得ない。しかし殺されるのは嫌だ!」という
叫びと、ラストシークエンスでの精神科医(中村伸郎)の「今のこの世の中を
生きている私たちの方がおかしいのか・・・」というセリフは、まさに今の世の中に
突きつけられたセリフとして、残念ながら生きてしまっている。

大上段に振りかぶった(黒澤作品はその手が多いが)タイトルが皮肉を持って
迫るのだ。本作が作られた当時、「第五福竜丸事件」や「ビキニ水爆実験」など
東西冷戦構造から来る原水爆の恐怖というのが市民の間にも高まった時期で、
黒澤本来の反骨・反権力気質が作り上げたものであろう。当時の東宝首脳部が
良く製作を許したものだと思う。

35歳にして70歳の老人を演じた三船、頑張っていたがやはりどこか無理が漂う。
あえて若い三船に老人を演じさせた黒澤の魂胆、あるのだろうけど浮かび上がって
来なかった。脂ぎった移民への情熱の表現だろうか?(本作1番の売りだろうが
何故か私にはピンときませんでした・・・)
またブラジルからの客人、東野の色の黒さは何なのだろうか?
更に大きく残念だったのは、親子間の(妾の子も含め)葛藤相克を表現するパート
と、核に対する恐怖から常ならぬ行動に走る老人と家裁の調停員たちの苦悩とが
うまく両立しきれていないように感じたが、どうだろう。望み過ぎだろうか?
千石規子は、本当に目の演技、視線の演技ができる女優さんだなあ、とつくづく
感じた。
フクイチ前だったらまた別の感想もあっただろうが、それを体験してしまった後に
見た本作は、黒澤が意図しなかった別の命をもう一つ持つことになったのだ。
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本作のストーリーや詳細についてはこちらのWikipediaをご参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-05 17:30 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

虎の尾を踏む男達

●「虎の尾を踏む男達」
1945(1952公開) 日本 東宝 59分
監督:黒澤明
出演:大河内傳次郎、榎本健一、藤田進、志村喬、森雅之ほか。
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<評価:★★★★★★★☆☆>
<感想>
年明け黒澤映画連続鑑賞4作目は、終戦直後に完成していたものの検閲の
関係で公開が52年になった、歌舞伎「勧進帳」を元にした音楽仕立ての
掌編。ミュージカル、と書くものもあるが、ミュージカルというより、音楽に
ストーリーを補うセリフが入っていてそれを邦楽風の旋律で聴かせる所が
4つ位ある、という風に解したい。

桜井長一郎氏のモノマネでしか知らない大河内傳次郎を初めてちゃんと見た。
エノケンも然り。大河内傳次郎、何を喋っているか良くわからなかったけど、
映画スターとしてのオーラを感じる素晴らしい存在感と思った。またエノケンの
一見落語を聞いているかのようなやり取りは、この時代には秀逸なユーモアだ
ったと感じる。いささかオーバーアクションではあるが。
この映画は大河内傳次郎とエノケンの映画、と言い切れるだろう。

劇中歌われる唄は全部何を言っているかわからず、セリフも7割がた聞き取れな
いが、「勧進帳」を知っているのであまり苦にはならなかった。
冨樫とその配下の武士の魂もまた、感動するところであり、かつラストの、目覚めた
エノケンに掛けられてた高価な着物と、印籠は、義経一行の心使いを見た思いで
爽やかであった。あの朝焼けの空は、きっと黒澤がこだわりまくって決めた空に
違いない、と感じた。もう少し長いときっとくどくなるがいい時間配分で終わったと
思う。

さて、戦時中に企画された本作は、当然軍部の指導下にあったわけで、その中で
題材を選択し、もののない時代にあれだけの衣装とセットを組んで作り上げた
黒澤の慧眼には感服せざるを得ない。本作の題材にもまた「時代にそのまま阿ない」
という黒澤の魂胆があるに違いないのだ。
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本作の公開が遅れた曰くなどはこちらのWikipediaを参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-03 21:20 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

醜聞(スキャンダル)

●「醜聞(スキャンダル)」
1950 日本 松竹 104分
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、志村喬、山口淑子、桂木洋子、千石規子、小沢榮、日守新一ほか。
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
黒澤が松竹で撮った初作品。カストリ雑誌(時代が判るな)対新進画家&歌手の
スキャンダル報道を巡る争いに、ダメダメな弁護士とその一家が絡むという筋立て。
ロケとセットを上手く使い分け、新聞記事の撮りきりなども含めてこの手の
ストーリー展開には必要なテンポ感だそうとしたが、クリスマスイブの「きよしこの夜」の
歌声、喫茶店で志村と三船らが歌う「蛍の光」がいささか長すぎ、画竜点睛を欠いた。

裁判シーンでは、あえて誇張して弁護士蛭田(志村)のダメっぷりを誇張していたが、
あそこまで何もしないのは、いくら被告側から買収もどきをされていたとはいえ、ちょっと
オーバーすぎたと感じた。そんな弁護士をずっと使い続ける青江と西条の原告コンビが
いい人過ぎるだろうとも。それとラスト、画家青江(三船)が「星が生まれた瞬間を
目撃したんだ」と記者に話す下りは、これまで観てきた黒澤作品には無かった、
「オチ」の押し付けを感じたのだ。ゆえに全体のお話としてはそこそこ面白いのに
黒澤映画の中では、ちょっとグレードが低いか、と感じた次第。

志村の演技は、若き三船もバタ臭い山口も食ってしまっているが、あの肩を落として
しょぼくれる姿は、2年後の「生きる」での「渡辺市民課長」そのものであった。
街中に占領軍憲兵司令部のバス停があったのは時代だなあ。また黒澤映画の定番の
ようになっている街中のドブ、本作でも健在である。
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<ストーリー>
「新進画家青江一郎は、ある日愛用のオートバイを飛ばして伊豆の山々を写生に
出掛けた。三人の百姓が不思議そうな顔をして彼の絵を眺めている。
そこへ美しい歌声が聞こえてくる。やがて派手な格好をした一人の女が山を登って来た。
人気歌手西條美也子である。バスが故障で歩いて来たが宿屋までが大変だ、と嘆く。

よろしい、それなら荷物だけでも僕のオートバイに積んでってあげましょうと、青江が
申し出た。ついでの事に貴嬢も乗っけて行きましょうということになった。オートバイの
相乗りで二人は宿屋まで素ッ飛ばした。百姓は呆れてそれを見送っていた。

二人のカメラマンが突然宿屋に現れ、女中に西條美也子に逢わせてくれいう。
西條さんは写真は撮りませんと女中は断った。二人は残念そうに宿屋の廻りをうろつき
歩く。風呂に入った美也子の部屋に青江が挨拶に来る。二人は庭に面した手すりに
もたれて話を始めた。その時、先程のカメラマンがこれを見つけて、パチリとシャッターを
切って、シメシメと逃げてしまった。

このカメラマンはカストリ雑誌アムール社の写真部員だったのである。現像を見た
社長の堀は有頂天に喜んだ。こいつは特ダネだ!そこで彼は編集長に命じて、青江と
美也子のラブロマンスをでっち上げさせた。
新進画家青江一郎と人気歌手西條美也子の秘めたる恋。恋はオートバイに乗って!
煽情的見出しでこの雑誌は飛ぶように売れた。一万部刷り、堀は図に乗って大々的
宣伝をやり出した。青江一郎は仰天し、憤怒の形相物凄くアムール社に乗り込んだ。
堀は馬鹿丁寧に挨拶した。その顔に青江の拳固が一発飛んだ。この事は雑誌の売れ
行きを更に増した。青江は遂に訴訟問題にしようと定めた。

ちょうど、ひどくはやらない弁護士蛭田乙吉がわざわざ一肌ぬいでやろうと現れたので、
彼に弁護を頼んだ。彼の家はひどい暮らしをしていた。一人娘の正子は胸を病んで
長らく寝たままであった。青江はこの清純な少女がすっかり好きになった。この娘の
父親なら蛭田はキット正義に味方する人物だろうと思い込んだ。ところが堀は蛭田に
手を廻して自分の有利に裁判を導こうと札ビラを切って彼の丸め込みに成功した。

十万円の小切手が蛭田のフトコロに入った。彼は娘の正子を見る度に良心の呵責に
耐えかね酒ばかり飲んだ。一方西條美也子は訴訟は取り下げてくれと青江に言ったが、
彼は正義は必ず勝つんだと言い張って聞かなかった。
堀の方は弁護士として法曹界の重鎮片岡博士が出馬した。裁判は開かれた。蛭田の
弁護はシドロモドロで青江は反って不利になっていった。二回三回と公判は進んだ。
片岡博士の論陣は明快で鋭かった。蛭田は十万円の小切手の為、言わねばならない
証言さえ黙って答なかった。青江の立場はいよいよ妙な所に追い詰められていった。

美也子も遂に公判に現れた。この馬鹿々々しい醜聞は是非とも消してしまわなければ
ならなかった。そんな時、正子が遂に不帰の客となったのである。蛭田の悲嘆ぶりは
ひどいものであった。最終の公判に臨む蛭田の面上には今迄とまるで違う気魄が感じ
られた。彼は証人台に立ち十万円の小切手を取り出した。片岡博士は、自分の側の
敗訴をあっさりと認めた。青江と美也子は晴れて愛情を打ち明ける仲となった。」
(goo映画)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2013-01-03 17:50 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

生きる

●「生きる」
1952 日本 東宝 143分
監督:黒澤明
出演:志村喬、日守新一、田中春男、千秋実、小田切みき、左卜全、山田巳之助、
藤原釜足、小堀誠、金子信雄、中村伸郎、渡辺篤、木村功、清水将夫、伊藤雄之助ほか。
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
新年早々に選んだ映画は、重いテーマの「生きる」。今の私の時代年齢に相応しい。
自分が生まれた年にできた映画でもあるし。ということは今から60年前の作品である。
見たことのない人でも黒澤映画の代表作としてその名前と、雪のブランコで志村喬が
「ゴンドラの唄」を歌うシーンは知っている、という人は多いだろう。

「生きる」という大上段に構えたタイトルではあるが、描かれている風景は誠に俗であり
観る人に、難しく捉えるのも良いし、そうでなく感じてもらえてもいいよ、という黒澤映画の
懐の深さを十分に感じることが出来るのである。

昨年鑑賞を始めた黒澤作品、実は年明けて既に3本見ているのだが、個人的には、どち
らかというと時代劇エンターテインメントな作品が好みかな、と感じていたが、本作を鑑賞
するに及び、改めて黒澤明という人のオールラウンダーとしての力を見せつけられた気
がする。
彼の映画に一本通った筋はぶれず、それがエンターテインメントになったり、社会告発的
な味付けになったり、戦時中の国策映画になったりしているだけに過ぎないのだ。
それでも今の所「どですかでん」とか「デルス・ウザーラ」はまだ見る気にはならないのだ
が・・。

さて本作である。役所の市民課長の渡辺はガンに罹っている。前半3分の1は、それを
自覚していくまでの心境を渡辺篤らの表現も借りながら描く。いわゆる「ことなかれ主義」
が蔓延する「役所仕事」を表出しつつ。
その後、1週間ほど役所を休み、呆然としながら市中を徘徊する姿がある。三文文士の
伊藤雄之助と飲み歩く、キャバレーで怪訝な顔をされながら「ゴンドラの唄」を歌う・・。
そして辞表を出すために彼を探していた市役所の女事務員小田切みきと出会い、
数度デート?を重ねる。彼女に「あんな退屈なところでは死んでしまいそうで務まらない」
と言われるに及び、渡辺は、自分は「生きた」と言えるのかということに覚醒する。

その後の彼は、悪疫の巣窟となって市民から苦情が絶えなかった黒江町のドブ池を
歓楽街にしようと目論むヤクザも振り切って市民公園として生まれ変わらせることに
命の炎を燃やしたのだった。
そして完成した公園で、雪の朝、死んでいるのが発見された。

後半3分の1は、その葬式での、市役所の面々の自己保全やお追従、酒が入ると見境
もなく渡辺を持ち上げ、自分もあとに続くぞなどと気炎を上げる。しかしそこに見えるの
は所詮小役人の姿なのである。

私は渡辺とて市民のため、と思ってやったかどうかは判らないと感じた。それは結果論
であり、つまりは渡辺個人の「生きた」証を残したかったに違いなく、自分として手段が
残されているとしたら、公園を作ることしかない、と感じたのではないか、と。
自分が死んでも公園は残る、と。あの雪の夜の「ゴンドラの唄」は、葬式に来た警官が
言っているように、あんな説得力のある歌を聞いたことがない、というほど、渡辺に
とっては、人生に対する郷愁、でななく、「喜びの唄」だったのではないか。
ただ、それにしては犠牲にした年月はあまりにも長い。だから「命短し恋せよ乙女」
なのだ・・

あれだけ死にたいし恐怖していた人間が、公園の完成こそが、人生そのものであり、それ
までの30数年間は、時間の無駄遣いであったと悟った瞬間だったのだ。
小役人渡辺は「生きた」。だが、今の時代にしたところで、どのくらいの人間が渡辺の
感じた「生きた」感動を味わって死んでいけるのか、その突きつけられているものは大きい
のだ。
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本作の詳細なストーリーなどはこちらのWikipediaをご参照ください。
by jazzyoba0083 | 2013-01-02 23:00 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)

天国と地獄

●「天国と地獄」
1963 日本 東宝 黒澤プロダクション 143分
監督:黒澤明  原作:エド・マクベイン「キングの身代金」
出演:三船敏郎、香川京子、江木俊夫、佐田豊、仲代達矢、三橋達也、石山健二郎、
   木村功、武藤武、伊藤雄之助、中村信郎、田崎潤、志村喬、藤田進、土屋嘉男、
   千秋実、藤原釜足他。
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
実に面白かった。脚本もしっかりしていたし、黒澤オールスターズとは言えキャストも
素晴らしい。
長い映画だったが、前半の権藤邸のやり取りが限界、というところで、第二こだまの
車中となる展開、またその後の捜査では見ている人が一緒に事件解決にタッチして
いるかの如くの謎解き。どれも面白い。権堂の暮らしと犯人のインターンの暮らしの、
あるいは両者の人生のありようの捉え方で、教訓くさくなる一歩手前で
エンターテインメントにならしめている演出と脚本に脱帽である。
沢山の出演者が出てくるが、話が散ることなく、権藤と重役、運転手、妻、そして犯人と
人間像もきちんと描かれている。いまさら私などがあれこれいうことでもないだろうけど。

先日他界した大滝秀治さんが、ブン屋の中にいるのを発見した。
黒澤映画の中ではコミカルな面もある三船が、苦悩の人に終始するのも見ものだし、
警部の仲代、権藤の手下で彼を裏切る男、三橋、今や名脇役と言われる人たち
ばかりの刑事やブン屋、そして犯人であるインターンを演じた若き日の山崎努の狂気、
さらに黒沢映画には欠かせない志村喬、藤原釜足、千秋実、藤田進、重役連の
中村信郎、伊藤雄之助、田崎潤などの演者たちを楽しむのもいい。

東京五輪の前年、新幹線が開通する前年。まだ戦後の雰囲気が残る街の風俗、
国鉄の度量というか、ひと列車貸切の一発撮りの凄み、クラウンやらベンツやらの
出てくるクルマの面白さ、勿論ロングで見られる横浜の風景などなど映像のおもしろさも
格別だ。
パートカラーや陰影を効果的に使ったモノクロ映像も、カラーに慣れた目には新鮮だ。
ひとつ気になったのは、鎌倉あたりから見える真夏の富士山、雪がかぶっていたような気が
したが。

私と権藤の息子役、江木俊夫は同年齢なので、冒頭、運転手の息子と西部劇ゴッコを
している風景は、持っているおもちゃをみても、金持ちだなあとリアルに判る。(^^ゞ

超・お勧めです。
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<ストーリー>
「ナショナル・シューズの権藤専務は、大変な事件に巻込まれてしまった。
明日まで五千万円を大阪に送らないと、次期総会で立場が危くなるというのに、
息子の純と間違えて運転手の息子進一を連れていってしまった誘拐犯人から、三千万円を
よこさないと進一を殺すという電話があったからだ。
苦境に立った権藤は結局金を出すことになった。権藤邸に張りこんだ戸倉警部達は
権藤の立場を知って犯人に憎しみを持った。
金を渡す場所。それは、明日の第二こだまに乗れということだった。犯人は戸倉警部達を
嘲笑するかのごとく、巧みに金を奪って逃げた。進一は無事にもどった。

権藤は会社を追われ、債権者が殺到した。青木は進一の書いた絵から、監禁された
場所を江の島附近と知って、進一を車に乗せて江の島へ毎日でかけていった。
田口部長と荒井刑事は、犯人が乗り捨てた盗難車から、やはり江の島の魚市場附近と
いう鑑識の報告から江の島にとんだ。
そこで青木と合流した二人は、進一の言葉から、ついにその場所を探り出した。
その家には男と女が死んでいた。麻薬によるショック死だ。

一方、戸倉警部は、ある病院の焼却煙突から牡丹色の煙があがるのをみて現場に
急行した。金を入れた鞄には、水に沈めた場合と、燃やした場合の特殊装置がなされて
いたのだ。燃やすと牡丹色の煙が出る。その鞄を燃やした男はインターンの竹内銀次郎と
わかった。また共犯者男女ともかつてこの病院で診察をうけており、そのカルテは竹内が
書いていた。

今竹内をあげても、共犯者殺人の証拠はむずかしい。戸倉警部は、二人の男女が持っていた
二百五十万の札が、藤沢方面に現われたと新聞に発表する一方、竹内には、
二人が死んでいた部屋の便箋の一番上の一枚に、ボールペンで書きなぐった後を
復元した、「ヤクをくれヤクをくれなければ……」という手紙を巧妙に渡して、
腰越の家に罠を張って待った。
そして、竹内には十人からの刑事が尾行についた。竹内は横浜で麻薬を買った。
肺水腫に犯された二人が麻薬純度九〇%のヘロインをうって死なないはずがない。
竹内はそのヘロインを今度は、伊勢崎町の麻薬中毒者にあたえてためそうというので
ある。果して一グラム包〇・三%を常用している中毒者は忽ちにしてショック死した。
彼は薬の効果を確かめてから、二人の男女中毒者をおいておいた腰越の別荘に
走った。そこには、すでに戸倉警部の一行が、ずっとアミを張って待っているのだ。 」
(goo映画)

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by jazzyoba0083 | 2012-10-20 23:35 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)