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⚫「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 Darkest Hour」
2017 イギリス Perfect World Pictures,Working Title Films. 125min.
監督:ジョー・ライト
出演:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、
   ロナルド・ピックアップ、スティーブン・ディレイン、ベン・メンデルソーン他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
議会制民主主義の発祥の地、イギリスらしさが横溢した作品。重い内容だが、チャーチルの妻役の
クリスティン・スコット・トーマスや、専属タイピスト役のリリー・ジェームズという二人の女性の存在が
アクセントになり(飾りという意味ではなく)単調になりがちなセリフ劇を重層的に見せていた。

個人的にノーランの「ダンケルク」を観て、原作本も読み、タイミングよく、NHKBSで「鷹とライオン」と
いうチャーチルとヒトラーを対比したドキュメンタリーを放映してくれていたので、当時の構図も含めよく理解
できたし、それゆえに映画のできの良さもひしひしと伝わってきた。最後の地下鉄のシーンでは不覚にも
目頭が熱くなった。

そしてこの映画を観ながら、同じ時期の天皇と東條らと日本国民との相違についても考えていた。チャーチルを
首相に指名したのは、「英国王のスピーチ」で知られ、現エリザベス女王の父君であるジョージ6世だ。
彼は、ヒトラー率いるナチスドイツが、猛烈な勢いで勢力を拡大する中、イギリスに講和を持ちかけるのだが、
当初は時の首相チェンバレンらと共にドイツ宥和政策を支持していた。

しかし議員や国民の意思は、別の所にあると確信し、1940年に67歳という高齢で、第一次世界大戦ではガリポリで
大敗北の原因を作ったチャーチルを首相に指名、その後、この二人は英国近代史の中で最も個人的な友情と信頼で
結ばれた国王と首相と評されるほどの中となった。国王が自らの後ろ盾を与えたジョージ6世は、チャーチルに対し、
国民の声を聴け、と忠告する。
そこでチャーチルは初めて地下鉄に乗り、市民にナチスと講和条約をやめようと思うがどうか、と聞いて回る。
辛いこともある、覚悟も決め無くてはならない、それでも私はドイツを戦おうと思う。バッキンガム宮殿や
ウィンザー城、国会議事堂にナチスの鉤十字がはためくのは嫌だ。ファシズムの傀儡政権が出来るのは見たくない、
こう思うがどうか?と。
乗客の誰からも一斉に「NO!」という返事が返ってきた。国民は自分が心配するより覚悟を決めていることに
自信を持ったチャーチルは、まず閣外大臣らを呼んで、講和条約交渉(仲介役はムッソリーニ!)は止める。
ドイツと戦う、と宣言。次に下院で同様の演説をぶつ。ここに、英国の覚悟は固まったのだ。

映画はそこで終わる。同時に進行していたダンケルクの大撤退は成功に終わったが、チャーチルの5年間、
英国はロンドンの空襲、V1ミサイル攻撃、など苦労を味わうことになる。しかし、映画には描かれないが
ジョージ6世が娘エリザベス(現女王)を連れて訪米した折に結んだルーズベルト大統領との友情がその後の
ノルマンディー作戦に象徴されるように欧州におけるアメリカ軍の(連合軍の)大支援を得ることが出来たの
のも、英国にとって幸せだった。もしも、イギリスがナチスとの講和条約を結び、イギリスにナチスの傀儡政権が
出来たとしたら、あの世界大戦はまた別の様相を示していたのだろう。ここでのチャーチルの決断は歴史的な
ものだったのだ。

史実を知っているとこの映画の面白さの広がり方は大きいので、是非このあたりの時期の英国史を事前におさらい
してから観ることをお勧めしたい。Wikipediaでジョージ6世とチャーチルを読んでいくだけでもいい。

さて、映画の本論に戻ろう。作品はチェンバレン首相時代の失敗続きで自信を失っているもう歳も歳である
チャーチルを描くところから始める。作品中、チャーチルは常に怒鳴っている。その大声を受け止めつつ
心ひそかにチャーチルを応援するタイピスト、エリザベス。そして愚痴を優しく聞いてくれる妻クレメンティーン。
登場人物が少なく、セリフが多く、戦闘シーンの無い、まるで舞台劇のような進行だが、こうしたメリハリを
つけつつ、オールドマンが演じるチャーチルの苦悩が分かりやすく提示されていく。特にジョージ6世に首相に
指名されてから、ラストまではセリフ劇なのに、空襲があるわけでも戦闘シーンがあるわけでもないが一気呵成に
見せていく。そのあたりに監督の力量を見る思いだ。
最後になってしまったが、オスカーを受賞した我が辻一弘氏の特殊メイクは、メイクと感じさせない見事な仕上
がりであった。そしてゲイリー・オールドマンの主演男優賞受賞納得の演技である。

日本人としては同じ大戦で、国民に対し焦土作戦を呼びかけた軍部がなぜ国民の理解を得られなかったか、また
天皇の理解を得られなかったか、ということを考えた。メンタリティとしては似ているところがあるからだ。
だが、英国との決定的な違いは、民主主義が根付いた長い歴史を持つ国と、国王と政治家の距離感と立ち位置が
当時同じ植民地を持つ国として日本と英国は決定的に違っていたのではないか、と感じた。そして政治家は
国民に対して嘘をつかないことだ。中東情勢を思えば20世紀初頭からイギリスがやってきたことは褒められない
ことは多いのだが、チャーチルという人物がいた英国、ヒトラーの出現を許したドイツ、軍部の独走を許した
日本、やがてド・ゴールの登場となるフランス、先の大戦にはたくさん学ぶべき点は多い。こうした映画が
今さかんに作られるのは、それだけ世の中が「非寛容」「差別」的に回帰しているからで、映画界からの警告と
受け止めるのが正解。スピルバーグが「ペンタゴンペーパー」を前倒しして作った覚悟からも見えるのだ。
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<ストーリー>
ゲイリー・オールドマンが第二次世界大戦時に英国首相に就任し、ヒトラーの脅威に敢然と立ち向かった
ウィンストン・チェーチルを演じてアカデミー賞主演男優賞に輝いた感動の伝記ドラマ。
また、そのゲイリー・オールドマンを驚異の技術でチャーチルへと変身させた特殊メーキャップ・アーティスト
辻一弘も、みごとアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞し話題に。

英国がヒトラーに屈する寸前での首相就任からダンケルクの戦いまでの知られざる27日間に焦点を当て、
ヨーロッパのみならず世界の命運を左右する決断が下されるまでの葛藤とその型破りな人物像を描き出す。
共演はクリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、ベン・メンデルソーン。
監督は「プライドと偏見」「つぐない」のジョー・ライト。

 1940年5月、第二次世界大戦初期。独裁者ヒトラー率いるナチス・ドイツの前にフランスは陥落寸前で、
英国にも侵略の脅威が迫る中、新首相に就任した前海軍大臣のウィンストン・チャーチル。国民には人気が
あったものの、度重なる失策で党内はもちろん国王からも信頼を得られず、弱音を吐く彼を妻のクレメンティーン
は優しく叱咤する。
就任直後の演説では勝利を目指して徹底抗戦を誓うも、戦況は悪化の一途を辿っていく。そしてドイツ軍に
追い込まれた英国軍が、ついにフランス・ダンケルクの海岸で絶体絶命の状況を迎える。英国への上陸も
いよいよ現実の脅威となる中、犠牲を回避すべくドイツとの和平交渉を主張する外相ハリファックスの必死の
説得を受けるチャーチルだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:85% Audience Score:82% >






by jazzyoba0083 | 2018-03-31 13:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

⚫「アメリカン・バーニング American Pastral」
2016 アメリカ Lakeshore Entertainment. 108min.
監督:ユアン・マクレガー 原作:フィリップ・ロス
出演:ユアン・マクレガー、ジェニファー・コネリー、ダコタ・ファニング、モリー・パーカー
   デヴィッド・ストラザーン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
現代アメリカを代表する作家フィリップ・ロスの原作を初監督作品に持ってくるとはユアンもなかなか
やるな、と思って見始めたら、ちょっと荷が重い作品を手がけちゃったんじゃないか、と思い始めた。
1960年代から70年代にかけて、アメリカン・ドリームの世界は終わり、アメリカを覆ったベトナム戦争、
黒人解放、女性解放、政治家の暗殺と陰謀、嘘というムーブメント。
こうした時代が裕福な一家を引っ掻き回し、瓦解させていくさまが、「アメリカ田園詩」というなんとも皮肉な
タイトルで描かれていく。
小説で読むほうが良いタイプの話かもしれない。本作を見てカタルシスを感じる人がどのくらいいるだろうか。
ラスト、ダコタがユアンの棺に近づいていくシーンはカタルシスなのか。私にはひょっとしたらこの娘、お棺に
ツバでも掛けかねない、とさえ思った。(そうじゃないだろうけど)
それほど、完膚なきまでに一家はめちゃくちゃになっていったのだ。そのあたりの一家の心がバラバラな
価値観に放散していくさまはこの時代における、どこにでもある話として原作者が言いたかったこのなのでは
ないか。そういう意味では、本国の酷い評価はちょっと酷ではないか、とも思えてくる。アメリカでは、辛すぎる
のかもしれないし、傷に塩を塗られる痛みを感じるのかも知れない。繰り返すが、映像表現をする作品だったのか
どうか。それは疑問だ。ロスのピュリッツァー賞まで受賞した作品をこれまで誰も映像化しようとしなかったのは
なぜか、考えなかったのだろうか。

役者はみんないい。特に何を考えているのかさっぱり分からないダコタ・ファニングは、裕福な家庭でお嬢様と
して育てられた反動なのか、反戦運動から怪しげな宗教への没入と、自分の人生を親の期待とは真逆の方に
進む。愛する人の、家族の、そうなってほしいと願う人物になるのがいいのか、家族である前にそれぞれがひとりの
人間なのではないのか、人の人生は他人には歩めない。期待と現実、なかなか難しいテーマである。幸せのありかは
人それぞれだからだ。誰も他人の価値観を押し付けることは出来ないはずだ。しかし、である。難しいのは。

結局この映画が低空飛行してしまった原因は、何をいいたいのかハッキリと迫ってこないままカタルシスもなく
重い空気を残して映画が終わってしまうからだろう。難しいことを扱っているし、それは社会的に意義の
あるテーマであるとも思う。だが父親の偏愛、母親の分裂気味の愛情、子供の吃音と親からの過剰な期待、
私達は誰も責められない。時代が壊した、としか言えないのだ。そこが苦しいのだ。まさしくそこがフィリップ・
ロスの言いたい点だったのかもしれない。
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<ストーリー>
ユアン・マクレガーが長編監督デビュー作として、ピューリッツァー賞受賞作を映画化。1960年代、父の事業を
継ぎ、順風満帆な人生を歩むスウィード。だが、一人娘が爆弾テロ事件の直後に姿を消したことをきっかけに、
彼の幸せな人生が崩壊してゆく……。
共演は「ノア 約束の舟」のジェニファー・コネリー、「17歳のエンディングノート」のダコタ・ファニング。

平和と繁栄に満ちた良き時代が終わりを告げ、ベトナム戦争が暗い影を落とし始めた1960年代。高校の人気者
だったスウィード(ユアン・マクレガー)は、父の事業を継ぎ、ミス・コンテストの女王ドーン(ジェニファー・
コネリー)を妻に迎えて順風満帆な人生を築き上げた。しかし、反戦運動に感化された一人娘のメリー(ダコタ・
ファニング)が、近隣で起きた爆弾テロ事件の直後に姿を消してしまう。容疑者として警察から追われる娘の
無実を信じ、必死に行方を探すスウィード。
ところが、娘の仲間だと名乗る謎の女に追い詰められ、一家の人生は崩壊していく。家族の幸せを取り戻そうと、
長く苦しい戦いに立ち向かうスウィードだったが、その先に待ち受けていたのは、衝撃の真実だった……。
(Movie Walker)

<IMDb=★6.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:22% Audience Score:29% >




by jazzyoba0083 | 2018-03-29 23:30 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「ハート・ロッカー The Hurt Locker」(名画再見シリーズ)
2008 アメリカ Voltage Pictures,Broad Media Studio,131min.
監督:キャスリン・ビグロー  脚本:マーク・ボール
出演:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、レイフ・ファインズ、
   ガイ・ピアース、デヴィッド・モース他。
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
初見からもう8年も経ってしまったんだなあ。この映画に描かれた世界はなんら変わっていない。残念なことに。
WOWOWでオスカーの時期になると、過去の受賞作品をまとめて放映してくれるのだが、個人的にその年の
ナンバー・ワンに推したこともあり、もう一度観てみてみた。

流石に良く出来ていることを改めて実感した。「ハート・ロッカー」とは初見の時にはそのタイトルの意味も
深く考えなかったのだが、今回調べてみれば、米軍の言葉で「極限まで追い詰められた状態」あるいは「棺桶」を
意味するという。本作に当てはめてみれば、どちらでも嵌まるという感じだ。主人公が着る「防爆服」の
あだ名かもしれない。

初見の時の感想は下にリンクを貼っておくが、今回観た感じよりもう少し深い部分を覗けたのではないか、と
感じている。作品の冒頭に、「戦争は麻薬である」と表記されるが、主人公ジェームズ(ジェレミー・レナー)の
ありようは、まさに「戦争という麻薬」に心身ともにどっぷりと使ってしまい、それが麻痺し、日常化した
人間だ。そうした人間を作り出す戦争というものを、爆弾処理という極めて緊張した空気の中に「ありうるもの」
として描かれている点が優れているのだと思う。

また、部隊の活動や戦闘を見ていると、所詮戦争とは局地的には個人の生命のやりとりであり、その瞬間には
国家も主義主張や宗教もなにもない、個人が生きるか死ぬか、主義に沿うか沿わないか、だけのことなのだな、と
いうこと。最後の方で、体に爆弾を巻かれ時限装置を付けられた男をジェームズがなんとか救おうとするシーンが
ある。これも冷めた目でみれば、ジェームズが家族持ちのこの男を芯から救いたいと思っているのではなく、
爆弾に負けたくない、ただそれだけのことなのではないか。ただ時間切れで、助けることは出来なかったのだが。

ビグローの描く本作の世界には、戦争に置ける「個」のありようというものをつくづく考えさせられた。





by jazzyoba0083 | 2018-03-28 23:15 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

LOGAN/ローガン Logan

⚫「LOGAN/ローガン  Logan」
2017 アメリカ 20th Century Fox. 138min.
監督・原案・(共同)製作・脚本:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、リチャード・E・グラント、ボイド・ホルブルック他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
アメコミの快活なヒーロー感とは趣を異にした、影の部分を描くもの。しばらくは、日本の戦隊モノに
影響を受けたアヴェンジャーズのような全員集合、役者だけでみせちゃいます、的な時代が続いていたが、
このところ、それはそれとして、アメコミの分かりやすい原点回帰のような作品が続いているのでファンとしては
嬉しい。本作も私としてはヒース・レジャーが一躍その名を売った「ダークナイト」以来の、アメコミの別の
側面を切り開くものとして興味深く観ることが出来た。

「X-MEN」ウルヴァリンのスピンアウトであるが、ウルヴァリンとエクゼビアの最後の戦いとなる。ヒーローは
死なないという少年的アメコミのアプローチではなく、極めて人間的な(ミュータントだけど)、内省的とは
ちょっと違うが、うん、やはり人間的な物語として観ることが出来、その面でいわゆるアメコミ・ヒーローモノと
は一線を画した作品ということが出来よう。こうした作品を待っていたファンも多いと見えて本国の評価は極めて
高い。こんなんだったらシネコンで観れば良かったと反省した次第。

物語としても分かりやすく、ローガンとエクゼビアの「老い」と、ローガンのDNAからクローンとして誕生した
娘と息子らとの世代交代も描いていく。
時代は2029年。ミュータントはほぼ絶滅し、ローガンとエグゼビアも歳をとり、今やローガンは車椅子の
エグゼビアを匿いつつ、リムジンの運転手をして口に糊している。そこにローガンに助けを求める女性が
現れるのが物語の始まり。彼女はある組織がミュータントのDNAからクローンの子供を兵器として「製造」
していて、母体となったメキシコ人は殺されているという事実を知る。彼女が連れてきた少女はローガンの
DNAからクローン化されたミュータントで、ローガンと同じくアダマンチウムの爪を武器としていた。

逃亡した彼女らを追いかけて来た追っ手は、エグゼビアの抹殺も目論む。助けを求めに来た女性は追っ手に
惨殺されてしまう。ノースダコタに「エデン」と名付けられた、組織から逃亡した子供らがいるところがある
からそこへ行き、子供らを更に逃してほしいと頼まれていたのだった。

追っ手との壮絶な戦いを経て、自らもアダマンチウムの毒と老いでかつての力も回復力もなくなったローガンは
「エデン」へと向かう。追っ手の追跡も苛烈を極める。若い頃のウルヴァリンそっくりなクローンも襲いかかって
来る。
超能力を持った子供らの力もあり、追っ手を排除できるのだが、ローガンは回復機能がほぼなくなってしまって
いる中で深手を負い、「娘」ローラの腕の中で息絶える。子供らは国境を目指して進んでいった。

ローガンの老いたなりの戦い、そして「娘」ローラの足からも出る爪も武器にした戦い、さらに「息子」と
思しきミュータントとの戦い、そこから見えてくるのは「情」の世界。全然口をきかなかったローラがローガンの
死に際しては涙を流して悲しむ。そこにはクローンとはいえ、「親子」の「情」が通っている。それに対応
するように、同じDNAから作られたローガンそっくりな男性版の「非情さ」を際立たせている。そうした若い
チカラの誕生を見届けるように、ローガンとエグゼビアは舞台を降りるのだ。ウルヴァリンの痛快なアクションの
時代は終わり、ローラたち若い世代が、新しいX-MENを形成するようになるのだろう。
追ってから逃げる途中である家族に助けられる場面がある。なんで巻き込むのか?と怪訝に感じたが、結局家族は
殺されてしまうのだが、彼らとの交流もミュータントとしての「情」の表現に他ならない。

アラン・ラッド「シェーン」のラストシークエスをテレビでローラが観るシーンが有り、ラストもそのオマージュと
して終わっていくあたり、こりゃ、大人の映画だな、と思った次第。アダマンチウム弾の最後の活躍ぶりも
お見事である。

アメコミ映画だが、なかなか見ごたえがある。
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<ストーリー>
 「X-MEN」シリーズの中でヒュー・ジャックマンが17年にわたって演じてきた人気キャラクター
“ウルヴァリン”の最後の戦いを描くヒーロー・アクション。治癒能力を失い、老いから逃れられなくなった
ウルヴァリンことローガンが、絶滅寸前のミュータント唯一の希望となる少女を守るために繰り広げる壮絶な
死闘の行方を、迫力のアクションとエモーショナルな人間ドラマで描き出していく。
共演はパトリック・スチュワート、ダフネ・キーン。監督は「ウルヴァリン:SAMURAI」に引き続き、
「ニューヨークの恋人」「3時10分、決断のとき」のジェームズ・マンゴールド。

 すでにミュータントの大半が死滅した2029年。超人的な治癒能力を失いつつあったローガンももはや不死身の
存在ではなく、長年酷使してきた肉体の衰えは火を見るよりも明らかだった。彼はリムジンの運転手で日銭を稼ぎ、
メキシコ国境近くの寂れた荒野で年老いたチャールズ・エグゼビアの面倒を見ながらひっそりと暮らしていた。

ある日、ガブリエラという女性が現われ、謎の少女ローラをノースダコタまで送り届けてほしいと依頼する。
そんなローラを追って冷酷非情な男ピアースが武装集団を率いて迫り来る。ローガンは渋々ながらもローラ、
チャールズとともに、過酷なアメリカ大陸縦断の旅に出るのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★8.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:93% Audience Score:90% >





by jazzyoba0083 | 2018-03-27 23:20 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)

潜入者 The Infiltrator

●「潜入者 The Infiltrator」
2015 イギリス George Films,Good Films. 127min.
監督:ブラッド・ファーマン  原作:ロバート・メイザー
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・クルーガー、ジョン・レグイザモ、
   エイミー・ライアン、オリンピア・デュカキス、ベンジャミン・ブラット他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆+α>
<感想>
コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルとノリエガ将軍、「イラン・コントラ」事件に
まつわる映画はたくさん作られてきた。先日観たトム・クルーズの「バリー・シールズ」も
そうで、バリーはこの映画の中にも出てくる。

1980年代レーガン政権下で、アメリカ国税庁特別捜査官であったロバート・メイザー氏の
回顧録をベースに描かれた麻薬カルテルへの潜入捜査官の孤独な戦い。
邦題は原題の直訳だ。長い映画で、登場人物もいろいろ出てくるので整理するのに難が
あるのだが、(この麻薬戦争を描く映画はいつもそう)、それらはラストに向かっての
長い助走に過ぎないのだ。

カルテルが麻薬を売った資金の洗浄を引き受ける富豪企業家として潜入捜査を始めるのだが、
相棒はあぶなっかしいラテン系の男。メイザーはボブ・ムセラという名前で組織の重要
人物たちに次々と接近し、信頼させ、事件の中枢、つまりエスコバルとパリに本店を置く
銀行の摘発に迫った。途中で、彼が婚約中、と言ってしまったことから、役所は若い
婚約者としてキャシー(ダイアン・クルーガー)をメイザーに付けた。怪我の功名で
これがカルテルの仲間らの信頼を勝ち得て、捜査は順調に進む。メイザーの武器は
常時携行するアタッシュケースに仕込まれたテープレコーダーで、これで逃げられない
証拠を集めていたのだった。

この映画で主人公やクルーガー以上に存在感が光るのがカルテルの面々の人間臭さだ。
所詮は世の中に悪を散らして金儲けをし、殺しも平然と行う奴らなのだが、彼らは
闇社会に生きているので、普通の社会人よりよほど「信頼」という点に気を使う。
それが無ければ組織が瓦解してしまうからだ。悪の世界には日本の任侠のように義理人情も
あり、悪は悪なりの結束を固めているのだ。だから裏切ればその復讐は苛烈だ。

そうしたなかでメイザーは深い信頼を勝ち得ていく。そしてメイザーとキャシーの偽の
結婚式をタンパで挙げることを計画し、そこに集まったカルテルや銀行家を一網打尽に
する最終計画が練られた。メイザーとキャシーを祝福しようとあつまる「悪人」たち。
会場は捜査機関の手になる何台ものカメラで記録され監視されていた。

バージンロードを歩く二人に祝福の笑顔を向けるカルテルの仲間ら。完全にメイザーを
信頼しきっている。メイザーの心に呵責が生まれる。キャシーとて同じだ。二人を
心から信頼して集まってきた「仲間」。これから彼らを裏切らなければならない。
が、これも正義の為だ。歩く新郎新婦に笑顔がないのはそれを十分に物語っている。

そして新婦の前で宣誓する時になって、会場の四方八方から捜査官が雪崩を打って
乗り込む。銃撃戦が始まる。捕まらないメイザーらを観て、「仲間」の目の色が
変わる。「裏切られた」。メイザーは職務とは言え、「信頼」というものを踏みに
じったことで、事件の解決を心から喜べなかった。彼はその場から愛する家族の元へと
向かっていった。メイザーの心を癒やすのは最愛の妻からの「信頼」でしか無かった。
ここで疑問だったのは開巻のシーンで本筋とは別の小ネタでメイザーが逮捕される
時は彼も一緒に逮捕されたようになる。そうしないと後で仕事ができないからだ。
結婚式のシーンではメイザーは逮捕されない。一緒に捕まるように仕込めば良かったのに
と思うのは私ばかりではないだろう。メイザーのその後の安全を考える点でも。

この映画はラストの結婚式に全てが凝縮されている。もちろんそこに至る物語での潜入
捜査官としてのハラハラ・ドキドキはあるし、美形の婚約者が相棒となったことに対する
メイザーの妻の思いも描かれる。当然、カルテルや悪徳銀行家の信頼を得るための苦労も
描かれる。それがあってのラストである。
エンディングで実在の人物と対比し、その刑期とその後が語られるが、禁錮12年くらいで
出てきたら、裏切られたカルテルの仲間らはメイザーを決して許さないはずだが、メイザー
は今でも妻と元気で暮らしているという。保護下にあるのだろうか。

長い映画ではあったが、エピソードも興味深く、飽きることは無かった。そして潜入
捜査官モノというと、ドンパチでカタルシスを得ておしまいという形が多い中、本作は
どこか苦々しいものを残して終わっていく。そこがこの映画の魅力であろう。
ノワールものだが印象深い映画だった。
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<ストーリー>
麻薬王パブロ・エスコバルの組織に約5年間潜入捜査をしたロバート・メイザーの回顧録を
ベースにした犯罪サスペンス。
1980 年代、エスコバルの巨大麻薬カルテルを内部から崩壊させるために、ベテラン捜査官
ロバート・メイザーは架空の大富豪を装い近づく。
監督は「リンカーン弁護士」のブラッド・ファーマン。「トランボ ハリウッドに最も嫌われ
た男」のブライアン・クランストンが、大胆不敵な計画を実行するベテラン捜査官を演じる。

1980 年代、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルは史上最大級の犯罪帝国を築き、
アメリカに流入するドラッグの大半が彼の組織を経由したものと言われていた。
アメリカ政府はこの事態を憂慮し、大規模な潜入捜査作戦を計画。ベテラン捜査官ロバート・
メイザーを架空の大富豪に仕立てあげ、財力で組織に取り入り、内部から組織を崩壊させよう
とする。(Movie Walker)

<IMDb=★7.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:70% Audience Score:71% >



by jazzyoba0083 | 2018-03-26 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

⚫「はじまりへの旅 Captain Fantastic」
2016 アメリカ Electric City Entertainment,ShivHans Pictures. 119min.
監督・脚本:マット・ロス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、キャスリン・ハーン、スティーヴ・ザーン、ジョージ・
   マッケイ、サマンサ・イズラー、アナリース・バッソ、ニコラス・ハミルトン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆+α>
<感想>
誰かが作りそうでいて、これまで観たことがなかったタイプの作品。故に捉え方によっていろんな
思いが湧き上がるだろう。私見では、最初のうちはオヤジ、なかなかいいことを教えているじゃないか、と
見ていたが、次第に、子どもたちが幼くして狩りが出来、哲学や政治学、宇宙量子学を語れたとしても、それは
決して子どもたちの幸せではないんじゃないか、と思えてきた。それは社会性を獲得できないからだ。
子供らは家族という単位では素晴らしい愛情と結束で結ばれているが、成長するに従い、人間は社会的な
存在にならざるを得ない。そうしてみると、学校へ行ってない、友だちがいない、知識が偏在する、という状態は
親のエゴでしかないじゃないか、と思えてくるのだ。作品中でも、お父さん(ヴィゴ・モーテンセン)は、やがて
自分の過ちに気づくのだ。子供らは子供らでちゃんと自分たちがどちらへ進んでかなくてはならないか、という
ことは分かってくるのだ。

山の中での自然に任せた暮らしは、弁護士だった母も賛成して始まったことではあるが、(子供らが何歳に
なるまで山にいようとかは話し合ってなさそう)母が、双極性障害(躁うつ病)に罹ってしまってから、
父は、母の重い病気の回復のために山の生活を続けていた。母が自殺し、その葬儀を仏教徒だった母の遺志に
反して教会で執り行われたのだが、それを止めさせに行って、兄弟や母の両親と口論となるのだが、その過程で
母の回復のためだけに、子供を山にやっていたのではいか、と気がついたのだ。父とて、決して子供らに良かれと
思ってのことだっただろう。しかしやはりそれは彼自身の価値観の押しつけ以外の何物でもなかったのだ。
何も知らない子供らは喜々として父のやり方に従うが(面白いから)、流石に長男は、外の世界に目を向けて
いた。大学へ行きたいと、親に黙って図書館で勉強し、大学に願書を出し受験したのだった。後から分かるが
これは母親が後押しをしていたのだった。だから母は、山の暮らしとの決別のタイミングを測っていたのでは
ないか。優秀な長男はハーバード、ブラウン、プリンストン、イェール、MITなど、全米の最優秀の大学に
全部合格していた。大学に行きたい、と父に話すと、嘘をついて、と嫌味を言われる、しかし長男は
「自分は本で読んだこと以外は知らない、他のことをたくさん知りたいんだよ」と叫ぶのだった。そこだろう。

仲間や女性と付き合い、社会の中での自分を見つめ、家族以外の人々のこと、世界のことを広く知らなくては
今の時代、余計に内側にこもる人間になってしまう。幸い子供らは素直に育っている。

物語は母の葬式を一つの大きなエピソードとして、家族の進路の変更を描いてく。母の両親の存在も大きかった
だろう。やがて子供らはスクールバスで学校へ通うようになり、テレビゲームやスマホをいじる子供らと付き合う
ようになっていく。あの子らなら変にならず立派な人間になるだろう。その基礎を作り上げた父の功績は確かに
存在するのだ。彼のやったこと全てがダメだったとは言えない。
ラストシーンでも、家にテレビは無く、ゲーム機もない。スマホもない。本を読み鉛筆でノートを書く。彼らの
未来はきっと明るいだろう。 不思議なカタルシスを感じながら映画は終わっていったのだった。
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<ストーリー>
本作が2本目の長編監督作となるマット・ロスが第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞した、
とある家族の姿を描くヒューマンドラマ。アメリカ北西部の山奥でひっそりと暮らしていた一家が、母親の死を
弔うため、2400キロ離れたニューメキシコを目指す旅がつづられる。
一家の長であるベンをヴィゴ・モーテンセンが演じる。

現代社会に触れることなく、アメリカ北西部の森深くに暮らすキャッシュ一家。父親ベン(ヴィゴ・モーテンセン)は、
自分の全てを6人の子供たちの教育に注ぎ、厳格に育てている。そんな父仕込みの訓練と教育で子供たちの体力は
アスリート並み。みな6ヶ国語を自在に操ることができる。女子と話すのが苦手な18歳の長男ボゥドヴァンは、
名立たる大学すべてに合格。キーラーとヴェスパーは双子姉妹で、キーラーはスペラント語、ヴェスパーは狩りが
得意だ。
レリアは他の兄弟と違い森での生活に疑問を持ち、ベンに反発。好奇心旺盛なサージは、自分で動物の剥製を作る
のが趣味。そして末っ子のナイは、いつも裸でいるのが好きだった。

ある日、入院していた母レスリーが亡くなり、一家は葬儀のため、そして母の最後のある“願い”を叶えるため旅に
出る。葬儀の行われるニューメキシコまでは2400キロ。チョムスキーは知っていても、コーラもホットドッグも
知らない世間知らずの彼らは果たして母の願いを叶えることが出来るのか……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:83% Audience Score:85% >





by jazzyoba0083 | 2018-03-24 23:10 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

⚫「エディ・レッドメイン アンダーテイカー 葬る男と4つの事件  Powder Blue」
2009 アメリカ Blue Snow Productions,Eleven Eleven Films and more. 106min.
監督・脚本:ティモシー・リン・ブイ
出演:ジェシカ・ビール、レイ・リオッタ、エディ・レッドメイン、フォレスト・ウィテカー、
   クリス・クリストファーソン、パトリック・スウェイジ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆+α>
<感想>
邦題のことは後に述べるとして、このところ群像劇をよく観る。たまたまなのだが、その出来や主張の
ありようが良く出来ているものやそうでないものが比べ易くて丁度よい。本作、最初に登場するのは
海に全裸で入っていくレイ・リオッタ演じる25年の刑期を終えて娑婆に出てきたジャック。そうした背景が
分かるのはもう少し後のこと。そして不治の病に冒され寝たきりの幼子を抱えるシングルマザーで医療費を
稼ぐためストリッパーをしているローズ(ジェシカ・ビール)彼女はモーテル住まいで、いつの日にかパリで
暮らすことを夢見ている。そこから愛犬が逃げ出す。これを霊柩車を運転中に撥ねて怪我をさせてしまい、
家に持ち帰るのが葬儀社の若き経営者クワーティ(レッドメイン)。
更に、5万ドルを抱え、街娼(オカマ)に、自分を殺してくれ、と銃を手渡そうとする黒人チャーリー
(ウィテカー)。彼も最愛の妻を交通事故で死なせてしまい、自暴自棄となっていた。チャーリーはその後、
お棺を買いにクワーティの店に行き、ここでも彼に殺してくれと頼む。当然断られる。それは中々遂げられる
ものではなく、寂しくダイナーでお茶を飲んでいると話しかけてくれるバツイチ・ウェイトレスのサリー。

ジャックは刑期を終えて出てきたら最愛の妻は亡くなっていて激しい喪失感に襲われている。しかも余命幾ばくも
ない病気に冒されているらしい。ジャックは実はローズの実の父で(ローズは母から父は死んだと聞かされている
から彼が父とは分からない)ある。ジャックはローズのため、孫のためになにかしてやりたいが、ローズは
ジャックを受け入れない。

このようにしてジャックとローズ、ローズとクワーティ、チャーリーとオカマ、チャーリーとサリーの
組み合わせがそれぞれの人生を綾なしていく。

この映画を観ていて、古い話で恐縮だが、千賀かおるの「真夜中のギター」という曲を思い出していた。
「街のどこかに、淋しがり屋がひとり、今にも泣きそうに ギターを弾いている
 愛を失くして 何かを求めて 彷徨う 似たもの同士なのね
 此処へおいでよ 夜は冷たく長い 黙って夜明けまで ギターを弾こうよ」
という一番の歌詞だ。

そう、みんな愛を失くしてさまよっている人々なのだ。そして愛を求めているのだ。その哀切は映画から
伝わってくる。オチとして、自殺志願者チャーリーは元神父。彼は神様がなぜ自分にこんな辛い目に遭わせるのか、
分からなくなっているのだった。しかしサリーの登場で愛を得ることが出来る。
そしてローズ。子供は亡くなってしまうが、犬が縁で知り合ったクワーティとの間の愛情を育てることができそうだ。可愛そうなのは、ローズの子供(自分の孫)の病院代を全部払った後、彼女を探してストリップ小屋に
行き着いたものの、深夜に降る積もる雪の中で死んでいくジャックだ。

それぞれの話の交差としての脚本はまずまずだが、全員ハッピーというわけには参らないが、ジャックの凍死と
ローズとクワーティのパリ行きのチケットを手にした(このチケットもジャックがプレゼントしたもの)幸福な
エンディングの落差は、人生はそういうもの、ということでは済まない後味の悪さを残した。さらに元神父
チャーリーとサリーの好転も、イージー過ぎたのではないか。「クラッシュ」などはやはり出来が良い。

さて、邦題である。当時人気が出てきたエディ・レッドメインをウリ文句に使いたかったのだろうけど、
レッドメインは居並ぶ名優たちのうちのひとりに過ぎない。更にタイトルが匂わすようなサスペンスでは
なくヒューマンドラマだ。ポスターも含めて、結果的に損をした日本の興行サイドの決定だった。
パトリック・スウェイジはこれが遺作となった。日本劇場未公開。
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<ストーリー>
「博士と彼女のセオリー」で第87回アカデミー主演男優賞に輝き、大きくブレイクする以前のレッドメインが、
葬儀業者のシャイな青年に扮して初々しい魅力を発揮。シングルマザーのストリッパー役で「スマイル、アゲイン」のビールが美しい裸身をさらしながら体当たりの熱演を見せるほか、「グッドフェローズ」のR・リオッタ、
「サウスポー」のF・ウィテカーら、豪華多彩なキャスト陣が息詰まる競演を披露し、見応えのある群像ドラマに
仕上がった。監督は、ベトナム生まれで「グリーン・ドラゴン」のT・L・ブイ。

クリスマスを目前に控えたLAの街。葬儀店を営むシャイな青年のクワーティは、ある日、霊柩車で犬をはねて
しまい、自宅に連れ帰ってけがの手当てをし、以後も犬の面倒を見ることに。犬の本来の飼い主はシングルマザーの
ローズで、彼女は、植物状態の息子の治療代と入院費を稼ぐため、ストリップクラブで必死に働いていた。
そんな彼女を、がんで余命宣告を受けた男性客のジャックが、守護天使のように優しく見守るようになる。
(WOWOWより)

<IMDb=★6.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:25% Audience Score:41%>





by jazzyoba0083 | 2018-03-24 22:50 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男 Free State of Jones」
2016 アメリカ Bluegrass Films and more. 140 min.
監督・脚本:ゲイリー・ロス
出演:マシュー・マコノヒー、ググ・ンバータ=ロー、マハーシャラ・アリ、ケリー・ラッセル

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
日本でいうと、ペリーが浦賀に現れた10年ほど後、アメリカでは1861から65年まで
アメリカ唯一の国内戦争である「南北戦争」が起きた。これはリンカーンの登場により
南部7州が権益を守るために「アメリカ連合国」として独立を宣言し、これに対し北部
13州からなる軍隊と全面戦争となった事件だ。歴史の教科書でも名高い。

だが、この背景に、南部に北軍とも南軍とも距離をおいた「自由州」を作ろうとした
男がいたとは初めて知った。実話の史劇が好きな私としては、本国では制作費すら
回収できなかった不作となった本作ではあるが、面白く観させて貰った。

主人公は南軍の脱走兵ニュートン・ナイト(マシュー・マコノヒー)である。彼は
「金持ちの戦争を貧乏人がさせられる」ことに戦いの意義を見いだせず、また幼い
甥が戦死したりしていくなかで、軍を脱走。同様に逃走していた黒人奴隷たちと
ある種のコンミューンを形成し、原始共産制のような共同体を作っていった。その
彼の半生を描くものだ。

「南北戦争」が北軍の優勢に進む中、南軍からも逃亡者も増え、農民から食料や
物資を強制的に調達していく南軍から離反していく白人も多くなり、ナイトの
コンミューンは大きく膨れ上がっていく。ついにはミシシッピ州の三分の一を
支配するまでの勢力となる・・・。そして戦争は終わり、黒人にも参政権が
与えられるようになるのだが。

こうした歴史の流れの中で、クレオールのレイチェルという女性、本妻セリーナ、
集団の最初から仲間だった黒人奴隷モーゼズ(マハーシャラ・アリ)とその家族の
逸話などが語られ、また集団を率いるナイトの立場などが綴られて行く。

歴史家によれば、実在のニュートン・ナイトは毀誉褒貶のある人物らしく、最後は
州の連邦保安官代理を務めていたらしい。この映画はナイトの大枠の事実はベースに
してあるものの、相当な脚色が入っていそうだ。

その1つがナイトが活躍していた頃から85年ほど後のミシシッピ州のある裁判の
話がパラで進む構成。(裁判自体は実在と思う)それは、ナイトの孫が白人女性と
結婚したのだが、州の法律で有色人種と白人の結婚は禁じられていて、孫は逮捕され
裁判となったのだ。
その血の割合は八分の一に過ぎないが、それでもミシシッピでは有色人種となって
しまうのだ。彼が罪を逃れるためには離婚して州を離れ無くてはならない。
決定的だったのはナイトがクレオールの娘レイチェルの子どもだと自分の家の
聖書に宣誓したものが見つかったことだ。これにより、離婚を選ばなかった孫は
投獄され5年の懲役を受けた。映画は85年たってもナイトらが血と汗で掴みとった
はずだった「神の子としての自由」は、実現していないということ。作品はナイト
自身の晩年に触れずむしろ、孫の裁判の行方を押し出して終わっていく。たんなる
人物譚で終わらせなかった監督の演出は好きだった。

その裁判がラストに向かって同時進行する。つまり、奴隷解放され黒人参政権が
認められても、南部諸州ではKKKなどの妨害を始め、法律が朝令暮改であったり、
連邦法が無視されたり、これは現代にも繋がることなのだが、根本的な黒人差別は
解消されていない、真の自由はアメリカにはあるのか、という問いを提示するための
演出であるのだ。
夢の国アメリカ、その背後には暗黒の歴史が脈々と続いているのだ。
そしてそれらを告発するような映画もたくさん作られるところがまたアメリカの良さ
でもある。

オスカー男優二人、マコノヒーとアリの演技は安定的であり、安心して観ていられる。
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<ストーリー>
19世紀のアメリカで、リンカーン大統領よりも早く奴隷解放を実現するなど、真の自由を求めて戦った実在の人物、ニュートン・ナイトをマシュー・マコノヒーが演じる歴史ドラマ。南北戦争に疑問を抱き、500人の奴隷と農民たちを率いて100万人の南部軍に反旗を翻す姿が描かれる。監督は『シービスケット』のゲイリー・ロス。

1862年、南北戦争の最中、南軍の衛生兵ニュートン・ナイト(マシュー・マコノヒー)は、奴隷を20人以上所有する農園の長男は兵役を免除されるという新法に憤る。甥ダニエル目の前で戦死すると、ニュートンは遺体を家族に渡すため軍を脱走する故郷ミシシッピ州ジョーンズ郡では、物資を徴収する南軍が女たちを苦しめていた。幼い娘を抱えた母親を脅す騎兵隊追い払ったニュートンは将校に目をつけられ、妻セリーナ(ケリー・ラッセル)と赤ん坊を置いて逃げることに。
ニュートンは、酒場の女主人サリーの手引きで“沼”に向かう。イーキンズ家の使用人レイチェ
ル(ググ・ンバーター=ロー)の案内で沼の奥の湿原に入ると、そこは逃亡奴隷たちの
隠れ場所だった。モーゼス(マハーシャラ・アリ)が傷を治療してくれ、ニュートンは
逃亡奴隷たちと心を通わせる。
反撃を決意したニュートンは銃を手配し、脱走を繰り返したためにつけられたという
モーゼスの鉄の首輪を外す。その大きな音を聞いて駆け付けた捜索隊を迎え撃ちにすると、
黒人を助けるために白人を撃ったニュートンに逃亡奴隷たちは驚く。

1863年、沼の自由反乱軍には逃亡奴隷や脱走兵、元南軍のウィルやジャスパーも加わって
いた。南軍に資産を奪われた村人たちも集まり、黒人と白人が平等な村が生まれた。
ジョーンズ郡の自由民と名乗り、騎兵隊から物資を奪い返す反乱軍に、南軍は農場を焼き
払うという手で降伏を求める。ニュートンは拒否するが、農場を守ろうと降伏した父親ら
4人が見せしめに吊るされる。怒りで一つになった反乱軍は南軍を攻撃し、1864 年に
エリスビルの司令部を占拠、さらに隣接する3つの郡を奪う。
北軍に援助を断られたニュートンは、北部にも南部にも属さないジョーンズ自由州の設立を
宣言する。1865年、南北戦争は終結するが、新たな戦いが始まった……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:46% Audience Score:63% >



by jazzyoba0083 | 2018-03-21 23:15 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)

湯を沸かすほどの熱い愛

●「湯を沸かすほどの熱い愛」
2016 日本 パイプライン・クロックワークス、制作委員会(テレビ東京他)125分
監督・脚本:中野量太
出演:宮沢りえ、杉咲花、篠原ゆき子、駿河太郎、伊東蒼、松坂桃李、オダギリジョー
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
2016年キネ旬の邦画7位。宮沢りえ主演女優賞、杉咲花助演女優賞を獲得した作品。
当時、私の周りで、割と良い評判を聞いていたものの、シネコンまでは、と思っていた
ところ、このたびWOWOWで放映してくれたので、録画して鑑賞。

中野量太監督はこれが商業映画の初作品と聞く。なかなかの演出であるが、これはもう
宮沢と杉咲の演技に支えられるところが大きいのは誰が観ても分かるだろう。

宮沢りえは先回「紙の月」を観て、その演技のシュアな点は評価している。本作でも
それは圧倒的な存在感であるが、個人的にはどうも今ひとつ好きになれないというか
シンパシーを共有出来ない。一方、このところ期待の新人、杉咲花も「悪上手」と
言えるくらいのナチュラルな演技をする女優である。一歩誤ると、「鼻につく」演技と
なるのだが、これは彼女の天性であるのかもせいれないが、一歩手前で止めるテクニックを
持ち合わせている。ドラマはこの二人でグイグイと引っ張っていく。

基本、泣かせにかかる映画はあまり好きではないし、ラストを除けばストーリーにそう
感心する点があるわけでもないし、むしろあざとさが目につく部分もある。
映画のタイトルがエンディングで回収される、という邦画には割と珍しい形をとるが、
あのラストは賛否あるだろう。私としても「そう来たか」と感じたが、どこか釈然と
しないところもあった。みんなで風呂に使って「温かいねえ」というのは、つまり
宮沢りえの性格を言い表しているのだが、どこか「身も蓋も無さ」を感じてしまうのだ。

一点だけ、ウルッと来たところがある。これはWOWOW「W座」で小山薫堂も指摘して
いたのだが、杉咲花の実の母は聾唖である。それを知っている宮沢りえは、その事を
教えないまま、杉咲に手話で会話が出来るように教育しておく。いつかきっと役にたつ
ときがくるから、と言って。
そして、ドライブに出かけ(まあ実母に合わせに行ったのだが)宮沢は旦那オダギリと
杉咲を捨てた実母(食堂で働いている)に会い、いきなりビンタを浴びせる。
その後、宮沢は倒れるのだが、実母と杉咲の対面の時、実母は「なぜあなたは手話が出来る
の?」といぶかるのに対し、杉咲が応えるのが、いつか役に立つ、という育ての母(宮沢)の
育て方だったのだ。
いつも人のことばかりで自分の事は構わない、育ての母はそういう人だったのだ。
日本の昔の母の姿だな。(結局宮沢が天涯孤独の身であったことに気がつけば、余計に)
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<ストーリー>
がんで余命2か月を宣告されたヒロインが、残された時間で家族を成長させようと奮闘し、
より強い絆で結ばれていくさまを描く家族ドラマ。
宮沢りえが家族を大きな愛で包み込む母親を、オダギリジョーがその夫を、杉咲花が娘を
演じる。
監督は自主製作で撮った『チチを撮りに』で国内外の映画祭で注目を浴びた中野量太。

銭湯・幸の湯を営む幸野家だったが、1年前、父・一浩(オダギリ ジョー)がふらっと出奔
してから休業していた。母・双葉(宮沢りえ)は持ち前の明るさと強さで、パートをしながら
娘・安澄(杉咲花)を育てている。ある日、双葉は余命わずかという宣告を受ける。

それから双葉は、“絶対にやっておくべきこと”を決め、実行していく。それは、家出した夫
を連れ帰り家業の銭湯を再開させる、気が優しすぎる娘を独り立ちさせる、娘をある人に
会わせる、というものだった。双葉の行動によって、家族の秘密はなくなり、彼らはぶつかり
合いながらもより強い絆で結びついていく。そして家族は、究極の愛を込めて母・双葉を送る
ことを決意する。(Movie Walker)




by jazzyoba0083 | 2018-03-20 23:15 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

●「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス Guardians of the Galaxy Vol.2」
2017 アメリカ Marvel Studios,Walt Disney Pictures.136min.
監督・脚本:ジェームズ・ガン
出演:クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ、マイケル・ルーカー
   カレン・ギラン、ポム・クレメンティエフ、エリザベス・デビッキ、カート・ラッセル
   シルベスター・スタローン、(ロケットの声)ブラッドリークーパー
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
面白かった!前作も、MARVEL作品としては異色の範疇にはいる「ノリ」のテイストで
大いに楽しませて貰ったし、だいたい、アライグマとか木の妖精?が喋って出てくると
いう設定が面白い。コミックなんで何でもありといえばそれまでだが、語弊を恐れずに
言えば、良く出来た「男の子」映画だ。初作を超えた面白さだった。MARVELの中の
大人のヒーロー物とも言えるだろう。喋っている言葉も汚いし、アライグマ、「ロケット」
のやること言うことは、大人受けを狙っているとしか思えない。

親子、姉妹、仲間、などの、ほとんど浪花節かよ!といいたくなるような「愛情」や
「友情」「絆」「自己犠牲」が大きなテーマとなっていて、加えて「勇気」と「冒険」と
いうMARVELに欠かせない要素が入れば、盤石だ。本作のラストシーン、まさか
MARVELの映画で目頭が熱くなるとは想像しなかった。このメンバー、今度は
「アヴェンジャーズ」の新作に登場するとか。どうなるだろう。メンバー多すぎになって
話がとっちらからないといいけど。

さて本作は前作からの続きの流れで、宇宙人と地球人母のハーフであるピーター・クイル
(クリス・プラット)と、エゴの支配者で全宇宙を制覇しようとする不死身の父との
対決が最大の見どころとなる。これに銀河の守護者(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)
の仲間、ガモーラ、ドラックス、ロケット、グルートが加わり、今回はガモーラと妹の
ネビュラとの姉妹の愛憎も描かれていく。加えて、クイルの育ての親とも云うべきヨンドゥ
(マイケル・ルーカー)との関係も色濃く描かれる。ヨンドゥの属する一族(親分が
シルベスター・スタローン)が任侠深くて面白い。故にヨンドゥが最後に取る行動も
義理人情の世界における自己犠牲と思えてしまうのだ。(泣かされるんだけどねえ)

日本でのタグラインが「銀河の運命は、彼らのノリに託された」というものだが、まさに
「ノリ」。80年代の音楽が大きくフィーチャーされ、だいたいクイルは初代のウォークマンを
まだ大事に?持っているし、宇宙船の中には80年代リミックスのカセットデッキがある。
普通は考えられない宇宙におけるアナログの存在が、80年代の音楽に乗ってどこか郷愁も
感じさせつつ、ジョン・ウィリアムズやハンス・ジマーなどの音楽とは違った「ノリ」を
演出する大事なガジェットとなっている。かの世界にはiPodがなかったんだねえ。

宇宙船や星の建物などはバロックを感じさせ、従来のMARVELとは一線を画す。本作での
ラスボスたるクイルの父親も含め心底憎い、という存在がいない上に、「友情」「絆」を
強調する作劇がなされているので、観終わっても誠に気分がいい。仲間の大男ドラッグスが
結構いいことを何げに喋っている。これぞMARVEL!
(Disneyも入っているけど)CGとモーションキャプチャーだろうけど、ロケットの
表情が好きだなあ。
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<ストーリー>
マーベル・スタジオのキャラクターの中でも最もユニークなヒーロー・チーム、ガーディ
アンズ・オブ・ギャラクシーの活躍を描く、人気シリーズの第2弾。
チームのリーダー、ピーターにドラックス、ガモーラ、ロケットといったおなじみの
キャラクターに加え、グルートの体から生まれたベビー・グルートら新たなキャラクターも
登場する。

“スター・ロード”ことピーター・クイル(クリス・プラット)をリーダーに、凶暴なアライグマの
ロケット、マッチョな巨漢ドラックス(デイヴ・バウティスタ)、ツンデレ暗殺者ガモーラ
(ゾーイ・サルダナ)など、偶然出会って勢いで結成された宇宙のはみ出し者チーム“ガーディアン
ズ・オブ・ギャラクシー”。

小遣い稼ぎに仕事を引き受けた彼らは、なぜか“黄金の惑星”の艦隊から総攻撃を受け、宇宙船
ミラノ号は壊滅寸前に。間一髪、ガーディアンズを救ったのは、“ピーターの父親”を名乗る謎の
男エゴ(カート・ラッセル)と、触れただけで感情を読み取れるマンティス(ポム・クレメン
ティエフ)だった。
仲間からの忠告にも関わらず、次第にエゴに魅了されていくピーター。その姿を目にしたチームの
間には、亀裂が生じてゆく。そこへ、ピーターの育ての親ヨンドゥ(マイケル・ルーカー)率いる
宇宙海賊の襲撃が。さらに、銀河全体を脅かす恐るべき陰謀が交錯してゆく。

果たして、ピーターの出生に隠された衝撃の真実とは?ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは、
失われた絆を取り戻し、銀河を救うことが出来るのか? その運命の鍵を握るのは、チーム一
小さくてキュートな、ガーディアンズの最終兵“木”グルートだった……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:83% Audience Score:88% >




by jazzyoba0083 | 2018-03-19 23:15 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)