●「ゲティ家の身代金 All the Money in the World」
2017 アメリカ Scott Free Productions,TriStar Pictures and more.133min.
監督:リドリー・スコット
出演:ミシェル・ウィリアムズ、クリストファー・プラマー、マーク・ウォルバーグ、
   チャーリ・プラマー、ロマン・デュリス、ティモシー・ハットン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
この事件は、私が大学生の時に発生し、リアルタイムの報道に接していたので細部は
ともかく大意はだいたい把握していて、記憶によく残っている。ロスのマリブにある
ゲティ美術館にも行ったことがあり、個人の収集物としてはエジプトやギリシア時代の
ものから近代のものまでものすごい所蔵品なのと、庭などの造作が素晴らしかったのを
覚えている。ここが映画にそのアイデアが出てくる「マリブの別荘」だったのだろう。

閑話休題。リドリーの作品は大体映画館で観るようにしている。私にとっては当たり
ハズレの大きな監督で、今回も、大丈夫かなあ、といささかの不安はあったが、実話もの
だったので、大外れはしまいと予想はしていた。
本作、大向うを唸らせるようなケレン味があるわけではないが、しっかりと纏まって
できの良い作品だと思う。やはりクリストファー・プラマーの存在が圧倒的だった。
聞けば、ゲティの役はケヴィン・スペイシーで、既に撮影は終了していたのだが、例の
セクハラ問題で公開が出来なくなり、急遽プラマーで最初から撮り直した、しかも9ヶ月で
完成させたというから驚きだ。これでプラマーはオスカーの助演男優賞候補になったのだから
大したものだと言わざるを得ない。結果論だがプラマーで良かった。

原作モノを脚色してあるので、石油の大富豪ゲティ家の孫がイタリアで誘拐され、多額の
身代金を要求されたが、老ゲティは身代金の支払いを拒否。そのため犯人から誘拐された
孫の切り取られた右耳が送りつけられた、などの大きなイベントは事実に即していると
思うけど、ウォルバーグやロマン・デュリスのチンクアンタの存在は創作なのではないかと
感じた。

主人公と位置づけられるのは老ゲティの三男の嫁(老ゲティにしてみれば義理の娘)
アビゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)。夫(三男)はイタリアに住みドラッグまみれの
怠惰な生活をしていて、子どもの3世が誘拐される時点では既にアビゲイルとは離婚していた。
こうした状況下で、アビゲイルには犯人から要求された1700万ドルなど到底払えるわけも
なく、老ゲティに頼んだのだが、他の孫にも同じようなことが起きると拒否される。
老ゲティは父親の石油業を継ぎ世界一の石油王、大富豪となった人物であるが、ケチで有名
で、身代金は払えないという片方で高価な美術品を買い漁っていた。

そこで元CIAで老ゲティの会社に雇われているチェイス(ウォルバーグ)という男が
アビゲイルの手助けをすることになる。次々と電話がかかってくるが、支払いが出来ない。
最初に誘拐した犯人らは、犯罪を投資と考える男に3世を売った。チェイスは身代金の
値切りを要求、すると犯人側も次第に値段を下げてきた。
アビゲイルはかつて老ゲティから買えば20万ドルはするだろうという古代の彫刻を
貰っていたことを思い出し、身代金の一部にでもとサザビーズへ持ち込むが、鑑定員から
これは美術館で15ドルで売っているお土産ですよ、と言われ愕然。老ゲティが真からの
守銭奴であることを再認識する。

そうこうしているうちに業を煮やした犯人らは3世の耳を切り取り新聞社に送りつけ、
もうこれ以上は待てない。次は足を切るぞ、と脅してきた。ここに及び老ゲティは
身代金の支払いを承諾。しかし、それを節税対策に使おうとし、吝嗇も極まれりという
状況に。値切りに根切り倒したドルはリラに換算され犯人に手渡り、3世は開放される。
そうしたなかで老ゲティは寿命を終える。

莫大な老ゲティの遺産は、結局アビゲイルしか手を付けられないことが判明し、彼女は
ゲティの石油会社の責任者に就任することになったのだった。そして何くれと無く
協力してくれたチェイスはアビゲイルの、残って、という誘いを断り、ゲティ家を
出ていったのだった。

物語の中で目立ったことは、老ゲティの金に対する考え方、富豪はケチと言われるが
実にそうであったし、彼の興味は美術品の収集にしか向かなかったのだ。美術品は
裏切らないからであろうか。人間は信じられないからであろうか。その結果が現在
ロスのマリブにあるゲティ財団が運営する「ゲティ美術館」となるわけだが。
そしてもう一つは、母として圧倒的な強さを示すアビゲイルの行動力。心配もするが
現実を直視、出来ることを直ちに行動に映し、結果的に息子を救い出すことが出来た。
母は強し、である。
そして映画にアクセントを与えている役回りとしてウォルバーグと、最初の誘拐犯の
メンバーで、3世に同情的なチンクアンタの存在。彼ら二人がギスギスしがちな物語の
なかで潤滑油のような役割を上手く果たしていた。それは演出側の作戦勝ちということも
出来る。

調べればゲティは結婚離婚歴も多く子どもも孫も多い。愛人もたくさんいただろう。
遺産相続の際には相当もめたようだ。そしてその一族は呪われたように悲惨な亡くなり方を
している。耳を切られた3世ももうこの世にはいない。因果は巡る、である。
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<ストーリー>
1973年にローマで起きた石油王ジャン・ポール・ゲティの孫の誘拐事件を、巨匠リドリー・
スコット監督が映画化した人間ドラマ。孫が誘拐されるも、身代金の支払いを拒否する
ゲティと誘拐犯に戦いを挑む母親の姿が描かれる。
息子を助けようと奮闘する母親をミシェル・ウィリアムズ、大富豪ゲティをクリストファー・
プラマーが演じる。

“世界中のすべての金を手にした”と言われた世界一の大富豪、石油王のジャン・ポール・
ゲティ(クリストファー・プラマー)の17歳の孫ポールが誘拐され、1700万ドルという
破格の身代金を要求される。
しかし、大富豪であり稀代の守銭奴でもあるゲティは、その支払いを拒否する。ポールの
母ゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)は離婚によりゲティ家を離れ、一般家庭の人間に
なっていた。彼女は息子のために誘拐犯だけでなく、ゲティとも戦うことになる。
警察から狂言誘拐を疑われ、マスコミに追い回され、ゲイルは疲弊していく。

一方、身代金が払われる様子がないことに犯人は痺れを切らし、ポールの身が危なくなって
いた。ゲティはそれでも頑なに身代金を支払おうとしない。ゲイルは愛する息子のため、
一か八かの賭けに出る。(Movie Walker)

<IMDb=★6.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:78% Audience Score:67% >




by jazzyoba0083 | 2018-05-29 12:00 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「たかが世界の終わり Juste la fin du monde 」
2017 カナダ・フランス  Sons of Manual 99min.
監督・製作・脚本・編集:グザヴィエ・ドラン 
原作:ジャン=リュック・ラガルス『まさに世界の終わり』
出演:ギャスパー・ウリエル、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール、ナタリー・バイ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに次ぐグランプリを獲得した作品だが、いかにもカンヌ好みの作風で
フレンチの香りプンプン。本作を殆ど全てに渡って手がけたグザヴィエ・ドランという監督、欧州映画に
疎い私として初めての接触だった。

被写界深度の浅いクロースアップ多用やフォーカス移動を多用した画作りに監督の趣味性というか演出の好みを
感じる。また久々に観ていて息の詰まるような方向性の見えないストーリー。怒涛のセリフ劇。
邦題は原作のママ「まさに世界の終わり」の方がニュアンスが見えて私は良かったのじゃないかと思った。

ある若き作家(であるとは映画中で判ったのだろうか。私は妹が壁に兄の新聞切り抜きを貼ってあったり、
一家での食事中に父親が「業界のゴシップを教えろよ」とかいうセリフで著名人であることは分かったが
人気作家であるとは分からなかった)が、死期の迫った病に冒され、長年疎遠だった家族に会いに行く
飛行機の中から始まる。

ともかくヴァンサン・カッセル演じる長兄アントワーヌの、ここまでやるか、という皮肉と中傷に満ちた
弟に投げかけるセリフが圧倒的。どうしてこうも弟に辛く当たるの?という。作家はゲイなのだが、それが
嫌なのか。
対して妹シュザンヌは、家を出て自分の好きな道を歩んでいる次兄が羨ましくて仕方がない。自分もいつか
家を出たいと思っているので、長兄や母と半目しあっている。
一方初対面だったアントワーヌの嫁カトリーヌ(コティヤール)は、夫と義弟の言い争いに驚きながらも
物静かな義弟に対し客観的な目線を投げかける。母親はゲイであった次男に対し心に澱を持ってはいるが
そして、いろいろと言うがやはり母親だ。
こうした父親のいない4人と一人の嫁が、作家が帰ってきたことで積年、心に溜まっていたものが噴出、
99分間ひたすら言い争う。

カンヌ的に見れば、家族のそれぞれに対する屈折したり素直だったり、愛だったり皮肉だったりする感情の
交換を圧倒的なセリフ劇の中で描いて魅せる、というようなことなのだろう。自分の死期が近いことを家族に
伝え、暇乞いをしに来た作家が、自分の不在の時間に生まれた様々な家族の感情の中で、結局大事なことを
言い出せないまま、再び帰っていくことになる。ラストカット、鳩時計から飛び出して家の中を暫く飛び回って
いた小鳥が死んでひっくり返っているカットと作家が家を出るカットが重なって映画が終わるのだが、
これは何のメタファーか。鳩時計の小屋は作家の家で、家の中を飛び回り最後には死んでしまった小鳥は
作家の姿の投影か。「まさに世界の終わり」ということなんだろう。作家は家族に絶望して帰っていったのだ
ろうか?自分を責めて家を後にしたのだろうか。それは観た人の感想に任されているのだろう。

暖かい家族を描いたものではないので、観終わって心に重いものが残る。マリオン・コティヤールが一服の
清涼剤的存在。
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<ストーリー>
愛しているのに傷つけあう家族の姿を描き、第69回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた、グザビエ・ドラン
監督による人間ドラマ。愛と葛藤を描き続けてきた監督が、ギャスパー・ウリエル、ヴァンサン・カッセル、
マリオン・コティヤールといったフランスを代表する俳優たちを集め、家族の物語を描き出す。

12年ぶりに故郷に帰ってきた34歳の作家ルイ(ギャスパー・ウリエル)。それは、死期が迫っていることを
家族に伝えるためだった。母(ナタリー・バイ)はルイの好きな料理を用意し、妹のシュザンヌ(レア・セドゥ)は
いつもより着飾り、そわそわしながら彼の帰りを待っていた。そんな二人とは対照的に、兄のアントワーヌ
(ヴァンサン・カッセル)は彼をそっけなく迎える。
アントワーヌの妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)は、ルイとは初対面だった。ぎこちない会話が続く中、
ルイはデザートの頃には打ち明けようと決意。しかしアントワーヌの激しい言葉を皮切りに、それぞれの胸の
内にあった感情が噴出する。(Movie Walker)

<IMDb=★6.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:44% Audience Score:53% >







by jazzyoba0083 | 2018-05-28 23:00 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)

●「ザ・ボディ・ガード (2017)  The Hunter's Prayer」
2017 アメリカ・スペイン・ドイツ Film Engine and more. 91min.
監督:ジョナサン・モストウ
出演:サム・ワーシントン、オデイア・ラッシュ、アレン・リーチ、エイミー・ランデッカー他
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<評価:★★★★★☆☆☆☆☆>
<感想>
B級サスペンス&アクション映画であります。後妻を迎え、一人娘はスイスの寄宿学校に留学中の
悪い組織のマネーロンダリングなどを手がけている弁護士。冒頭、この夫妻がお手伝いさんもろとも
何者かに射殺されるところから始まる。昔聞いた話では、サスペンスでは映画が始まったら数分以内に
殺人が行われないと、最初のつかみが弱い、と聞いたことがあるので、そのことから言えば、なかなか
テンポの良い開巻。

主人公のルーカス(ワーシントン)は、かつてアフガンやイラクの特殊部隊にもいた凄腕の殺し屋と
いう設定。彼は、組織を裏切り大金をくすねた弁護士の娘エラの殺害を依頼されるのだが、自分にも娘が
いて殺すことが出来ず、共に逃亡する運命になる。ルーカスは賞金首となり、バウンティハンターらの目標に
なってしまう。ルーカスは何がキッカケなのか薬物中毒で、そのヤクの入手が彼の弱みでもあったりする。

ルーカスの手でエラを抹殺できないと踏んだ組織は、ふたりとも殺しにかかる・・・。

よくある物語なので、特に印象に残るようなところの薄い作品だったが、組織のボスの子どもが
アーチェリーを習っていて、自分の親がルーカスとやり合う時、助けようとして矢を放つも、
上手くないので、親父さんの腕を射抜いてしまうところは、なにかそこだけテイストが違っていて
笑えた。

結末はルーカスと組織のボスや彼を守ろうとする殺し屋どもとの対決なのだが、エラが殺された両親の
復讐とばかりにグロッグを何発もぶっ放し、ボスを射殺し本懐を遂げるわけだが、少女にあんなに短銃が
連射できるだろうかなあ。全て終わりエラはおばさんの家に預けられることになり、ルーカスは何年も
あっていなかった妻と娘のところへ足を洗って帰るのだった・・・。

短い映画なので、暇つぶしに観飛ばすにはいいかも。
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<ストーリー>
凄腕の殺し屋ルーカス(サム・ワーシントン)は、海外留学中に両親を殺された女子高生エラ(オデイア・
ラッシュ)の殺害をマフィアのリチャード(アレン・リーチ)から依頼される。殺し屋家業から足を洗い、
妻と娘と静かな生活を望むルーカスだったが、依頼を断れば家族の命はない。
エラを見つけ銃口を向けるが、娘の姿が重なり引き金を引くことができない。ルーカスはエラを守り、
ヨーロッパを逃亡しながらリチャードへの復讐を始めるが、リチャードによって懸賞金をかけられ、
世界中の殺し屋たちから命を狙われる……。(Movie Walker)

<IMDb=★5.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:33% Audience Score:23% >






by jazzyoba0083 | 2018-05-27 22:50 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「トランスフォーマー/最後の騎士王 Transformers:The Last Knight」
2017 アメリカ Paramount Pictures,Huahua Media. 149min.
監督:マイケル・ベイ
出演:マイケル・ウォルバーグ、ローラ・ハドック、ジョシュ・デュアメル、イザベラ・モナー、スタンリー・
   トゥッチ、ジョン・タートゥーロ、アンソニー・ホプキンス他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
★は6.5。複雑すぎ。長すぎ。前作の「ロストエイジ」の方がナンボか良かった。歴史のスパンを長く取り過ぎ、
物語が複雑に(ただでさえ、ロボットの世界がややこしくなっているのに)なって、結果上映時間も150分と
なってしまった。マイケル・ベイ、この後2作どうするよ。最初の頃の単純なトランスフォーマーが懐かしい。
VFXの出来は確かに良いが、これでもかこれでもか、と繰り出される同じ様なシーンには観ていて飽きが来る。
この年のラジー賞にたくさんノミネートされたのも頷けてしまうのが悲しい。

少女イザベラや過去の秘密を守るバートン教授のアンソニー・ホプキンスなど個性の強いキャラクターが登場し
余計に物語が複雑かつ散漫になる。我慢して何かを切らないと、こういうことになるんだな。私の好きな
バンブルビーやオプティマスプライムといったオートボットたちの本来の活躍の影が薄くなりつつあるという
危惧さえ浮かんできてしまう。
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<ストーリー>
マイケル・ベイ監督が「トランスフォーマー」シリーズの最終章3部作の第1弾として贈るアクション超大作。
ダークサイドに堕ちたオプティマスによって危機を迎えた地球を救うべく、再び立ち上がった発明家ケイドが、
バンブルビーたちとともに繰り広げる過酷な戦いの行方を描く。
主演は引き続きマーク・ウォールバーグ、共演にローラ・ハドック、ジョシュ・デュアメル、アンソニー・
ホプキンス、イザベラ・モナー。

 地球に秘められたエネルギーを求めて、トランスフォーマーの故郷サイバトロン星が地球に急接近し、衝突まで
あと12時間と迫っていた。しかも人類の守護神オプティマス・プライムまでもが敵側に堕ち、人類は絶体絶命の
危機を迎える。そんな中、オートボットの新たなリーダー、バンブルビー、遥かな昔から秘かに地球で活動して
いたトランスフォーマーの秘密を守り続けていた謎の英国紳士エドマンド・バートン卿、オックスフォード大学の
教授ヴィヴィアンらとともに、地球の運命をかけた戦いに身を投じていくケイドだったが…。(allcinema)

<IMDb=★5.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:16% Audience Score:45% >




by jazzyoba0083 | 2018-05-26 23:15 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)

●「バリー・リンドン Barry Lyndon」
1975 イギリス Peregrine,Hawk Films,Warner Bros..186min.
監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック
原作:ウィリアム・メイピークス・サッカレー
出演:ライアン・オニール、マリサ・ベレンソン、パトリック・マギー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
キューブリックの作品は監督生涯でわずか13本。ごく初期の作品を除いて、これで
全部観たことになる。長い長い本作を観ても彼の映像作家としての非凡さが今更
ながらよく分かる。もともと写真に興味を持ちそこからモーションピクチャーに
入っていった作家らしい耽美的映像美も堪能することが出来る。最もこれは
本作で撮影賞を獲った盟友ジョン・オルコットの見事なキャメラの功績も大きい
わけだが。それとこの時代を実に上手く表現したプロダクションデザインの功績も
称賛しておかなくてはなるまい。(オスカー受賞)衣装、化粧、大道具、小道具など
も時代をリアルに反映し、作り物臭さの排除に成功していた。

一方、音楽についても言及しておかなくてはなるまい。インターミッション前までは
バリーが頂点になりあがるまでの経緯から、ベースは2拍子のマーチであり、
没落へと転落していく後半は終始、ヘンデルの弦楽曲が繰り返されていく。ヘンデルは
物語の時代に生きた作曲家であるから、映画の悲劇性、不安という雰囲気の表出にとても
マッチしていたと思えたのだった。

さて、時代は18世紀(1700年代)ジョージ3世治世のイングランドが舞台。
原作があり私は未読であるのだが、本作を文芸大作と呼ぶにはいささかの抵抗を感じる。
そう呼ぶには映像もストーリーも多分に映画的アプローチとみえたからだ。
(失礼な話、シュバリエ・ド・バリバリの登場などもあり、いささか漫画を見ている
ような気分にすらなった)キューブリックは原作の長さをナレーションという形で
短縮したのだが、それが物語のテンポを出し、3時間を超えてもダレない効果を産んだと
思う。

インターミッションを挟んで3時間を超える本作の大意は、取り立てて長所もないし、
自分の将来の行動を読みきれない平民の男が、貴族に成り上がり、更に没落していく
までの大河ドラマであるが、テンポが早く、もたつかないので時間はあまり気にならない。

冒頭で説明される、バリーの父親が些細な揉め事から決闘となり死亡、母の手ひとつで
育てられたが、従姉に惚れ込み(従姉も色じかけをしてくるのだが)、彼女の家は財産を
目当てに位の高い軍人と結婚をさせる。これに我慢が出来ないバリーは、軍人を侮辱した
ことで決闘となり、彼を殺したと信じ、ダブリンに逐電する。その当たりの立ち上がりから
なにやらまともではないバリーの人生の流転の「面白さ」を予見させて見事である。

後半ややもたつくころもあるが、エピソードの起伏が適度にやってきて、(つまり
バリーの身の上にいろんなことが起きて)飽きさせないし、映像がいちいち綺麗だし、
18世紀の戦争の様子や決闘のルールなどにも興味は付きなかった。結局は「小者」の
バリーの、壮大なる失敗の人生の物語。普通の人よりは波乱に富んではいたけれど。

これまで個人的にキューブリックという人はシュールな感性を持っていて前衛的な表現が
強みなのか、と勝手に思っていたのだが、本作を観ると、決してそうではなく、
オーソドキシーな構図の中に、観客に予想させない演出をするから、シュールだと思える
のだな、と得心した。本作のような文芸モノを扱ってもその表現や人間性の描写にあっては
キューブリックの語法でいうシュールな面は現れていたと思う。

バリー・リンドンを演じたライアン・オニールは、よくぞキャスティングしたな、と
感心するフィットぶりである。(名演という意味ではない)
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<ストーリー>
長いストーリーですので、下記Movie Walker あるいはwikipediaに詳細なものが
掲載されていますので、そちらをご一読ください。

<IMDb=★8.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:94% Audience Score:92% >




by jazzyoba0083 | 2018-05-23 22:30 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

僕と世界の方程式 X+Y

●「僕と世界の方程式 X+Y」
2014 イギリス BBC Films. 111min.
監督:モーガン・マシューズ
出演:エイサ・バターフィールド、レイフ・スポール、サリー・ホーキンス、エディ・
  マーサン、ジョー・ヤン他。
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
★は6.5。最近、この手の「他人とは違うこと」をどう受け入れるのかを感がせさせる
作品が目につく。それは冒険ものから恋愛もの、実話ものまで、幅広い。ということは
この世の中が、いかに不寛容になっているかの証左であろう。確かに「同調圧力」は
強く、マイノリティを阻害することで自分の存在を確認することしか出来ない幼稚な
思想しか持ちえない人間が多くなっていることは確かだ。
この春のオスカー主要作品を見ても、この度のカンヌ映画祭パルム・ドールに輝いた
是枝裕和監督作品「万引き家族」にせよ、底辺に流れているのは、多様性を認めていく
ことの肝要さを訴えている。

そうした流れの中で、本作は極めて分かりやすいストーリーを通して、主役本人が
「他人とは違うこと」を認めて、それを乗り越えていく姿を観ることが出来る。
主人公ネイサン・エリスは自閉症の男子高校生であり、人と接することが苦手。
親ですら。そのかわりに数学に秀でている。数学と対話しているほうが気が楽なのだ。
父親は「お前は他と違っている。だがそれは悪いことではない。数学が強い。
むしろ人とは違って優れているともいえる。人を愛することだけは忘れるな」と
彼を理解し、励ます。だがその父を交通事故で失い、更に自らの殻に閉じこもる。

彼を理解するALS患者の先生、そして世界数学オリンピックの選手に選ばれ、台湾で
合宿中に中国チームのチャン・メイという少女と出会う。彼女と接しているうちに
数学の世界に生きる自分と違う自分がいることに気がついていくネイサンであった。

彼の心を自然と開いて行かせたのは、彼を理解し赦し、愛する人々であった。それは
母でありチャン・メイであり、教師であり、亡き父の教えであった。つまり彼を
あるがまま受け入れて、理解し愛する人。特にチャン・メイの存在。
一見易しそうでいて実は難しい自分とは違うことを受け入れる心。でも誰でも
「人とは違って当たり前」という普遍的なことなのだけれど。
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<ストーリー>
「ヒューゴの不思議な発明」のエイサ・バターフィールド主演による実話を基にした
ドラマ。数学の理解力に突出した才能を持ちながらも、心を閉ざし続ける少年ネイサン。
だがある数学教師の尽力により、彼は国際数学オリンピックのイギリス代表の一人に
選ばれる。

イングランド中部シェフィールド。大好きだった父マイケル(マーティン・マッキャン)を
事故で亡くし、母ジュリー(サリー・ホーキンス)や周囲に心を閉ざしてしまった少年
ネイサンは、他人とのコミュニケーションが苦手な反面、数学の理解力に関しては
飛びぬけた才能を持っていた。

ジュリーは、普通の学校に適応できない息子の才能を伸ばそうと、数学教師マーティン
(レイフ・スポール)に個人指導を依頼。数年後、マーティンの献身的な教育の成果もあり、
ネイサン(エイサ・バターフィールド)は国際数学オリンピックのイギリス代表チームの
選抜候補に選ばれる。代表チーム監督リチャード(エディ・マーサン)の指導のもと、
台北でのトレーニング合宿に参加することになったネイサン。

その合宿は、イギリス最大のライバルである中国チームと合同で行われ、ネイサンは
そこで中国チームの美しく聡明な少女チャン・メイ(ジョー・ヤン)とパートナーを組む
ことになる。彼女と共に学ぶ日々は、数学一色だったネイサンの人生をカラフルに変え、
彼を大きく成長させていく。そしてネイサンの心にはこれまで経験したことのない感情が
芽生え始めていた。
やがて台北合宿は終了、イギリスチーム、中国チームともに国際数学オリンピック本番の
ためにイギリスのケンブリッジ大学トリニティ・カレッジへと向かう。
だがオリンピック当日、ネイサンは人生最大の選択を迫られることになるのだった……。
(Movie Walker)

<IMDb=★7.2>
<Rotten Tomatoes=No Data>






by jazzyoba0083 | 2018-05-21 23:10 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「ランナー・ランナー Runner Runner」
2013 アメリカ Regency Enterprises. 91min.
監督:ブラッド・ファーマン
出演:ジャスティン・ティンバーレイク、ジェマ・アタートン、アンソニー・マッキー、
   ベン・アフレック他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
長尺のテレビドラマを観ている感じで、大した意外性もなければ、大立ち回りもない
ベン・アフレックが勿体無い感じの作品。★6つであろうと5つであろうとあまり
意味がない。欧州の帰国便で観るものが無くなり、気軽な感じで観てみた。

プリンストン大学の確率論の天才リッチー(ジャスティン)はオンライン博打で
独自の理論を展開、ぼちぼち学費を稼いでいたし無理もしなかったが、大学にばれて
止めなければ退学、と言われ一か八か最後の賭けとして有り金を叩いて勝負に出るが、
負けてしまう。
解析してみると、不正を見つけた。そこでコスタリカの胴元アイヴァン(アフレック)に
会いにアポなしで会いに行き、彼に不正を突きつけてみることにする。簡単に会える
相手ではないが、そこは映画、パーティー会場でアイヴァンに会えて、不正を耳打ちすると
それを見破ったリッチーをアイヴァンは気に入り、一方でリッチーもアイヴァンの
カリスマ性に惚れ込み、ギャンブルの世界に入り込んでしまう。
しかし、それはアイヴァンがリッチーを嵌め、彼に罪をなすりつけて逃げる計画の一環で
あったのだ・・・。

例によって、女が絡む。頭のいいリッチーはキャプテンという裏社会の危ない仕事を
引き受ける男を買収しておく。(彼は飛行機も操縦できるんだよねえ)一方、アイヴァンの
動きを内定していたFBIにリッチーは目を付けられ、帰国すれば逮捕だぞ、いやなら
アイヴァンの情報を寄越せと脅される。しかしリッチーはその事をアイヴァンに正直に
言ってしまう。結果、リッチーはアイヴァンに利用されつつFBIに追われるという身に
なってしまう。

最後にはリッチーは自分が利用されていたことに気が付き、女を連れてアイヴァンと
共にコスタリカを脱出するのだが、ついたのはFBIが待ち構える別の空港。アイヴァンは
逮捕され、警察はリッチーを追うが、キャプテンの操縦するアイヴァンのプライベート
ジェットで飛び去っていった。悔しがるFBIだったが、捜査官の手元にUSBが届けられる。
それはリッチーがアイヴァンの不正を暴いたデータがしこたま詰まった証拠であった。
ニヤリとするFBI捜査官。「あいつは無罪放免だ」。

というようなストーリー。ラストはカタルシスらしきものも用意されてはいるが、既視感が
ありあり。プリンストン大学の天才はオンラインギャンブルなんかに手を染めなくても
幾らでもいい道を選べるのに。リッチーのオヤジがギャンブラーで、やっぱり血は争えない
ということか?
90分のテレビサスペンスドラマとして気軽に見れば暇は潰せるでしょう。まあその程度の
娯楽映画です。
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<ストーリー>
ジャスティン・ティンバーレイクとベン・アフレックの共演で贈るクライム・サスペンス。
オンライン・カジノで大損した大学生が、ひょんなことからその経営者の手伝いをする
ことになり、やがてFBIにも目を付けられて窮地に陥るさまをスリリングに描く。
共演はジェマ・アータートン、アンソニー・マッキー。
監督は「リンカーン弁護士」のブラッド・ファーマン。

 プリンストン大学の天才学生リッチーは、オンライン・ポーカーで大負けし、学費を
全額失ってしまう。しかしサイトに疑念を抱いた彼は、みごとシステムの不正を見抜くと、
大胆にもカジノ王として知られるサイト・オーナーのブロックのもとへと直談判に出向く

意外にもブロックはリッチーの抗議を受け入れ、お詫びとして賭けた金の返済と残りの
学費の肩代わりを申し出る。さらに、リッチーの才能を高く評価したブロックは、彼を
カジノ経営へと誘う。こうしてある日突然、札束が飛び交う別世界へと足を踏み入れ、
すっかり有頂天のリッチーだったが…。(allcinema)

<IMDb=★5.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:8% Audience Score:33% >



by jazzyoba0083 | 2018-05-20 02:30 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)

●「ローマン・J・イスラエル、エスク. Roman J. Israel, Esq.」
2017 アメリカ Cross Creek Pictures and more. 122min.(日本未公開・未発売)
監督・脚本:ダン・ギルロイ
出演:デンゼル・ワシントン、コリン・ファレル、カルメン・イジョゴ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
「落下の王国」「ボーン・レガシー」最近では「キングコング:髑髏島の巨神」の
脚本を書き、私も大いに楽しませてもらった「ナイトクローラー」で初監督を務めた
ダン・ギルロイが、特殊な才能を持つ特異な弁護士にデンゼル・ワシントンを起用し
制作した最新作。日本では公開されていないし、DVDやBlu-rayでも未発売の作品である。
欧州旅行の帰りの飛行機の中で鑑賞。

70年代で時間が止まったようなアフロヘアに大きなフレームのメガネを掛け、よれよれの
ブレザー姿の弁護士、ローマン・J・イスラエル。(デンゼル)エスクワイヤーとは
アメリカでは法曹界の人物に付けられる敬称であり、Mr.とかMrs.などと同じ感じ。
日本人にはあまり馴染みがないが。
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映画はイスラエルが自分で自分を訴える書面を作成するところから始まる。彼は弁護士法に
違反し、法を破ったことから弁護士資格を剥奪し、永久追放する緊急決定を望むとして
あった。なぜそんな訴状を書くことになったのか・・・。

彼はある種のサバンであろう。(映画の中でも仲間がそう指摘している)大学時代の
指導教官であった弁護士と共同事務所を持っているが、法廷には出ず、もっぱら訴状の
作成や準備書面の用意などバックヤードの仕事をしている。一方で、アメリカの司法制度の
改革を目指して勉強し、準備もしていた。いつの日かその歪みを提訴する訴状を司法省に
持ち込むのが夢であった。部屋の中は汚く、もちろん独身であった。
だが、カリフォルニア州の刑法を全部諳んじているなど、サバン独特の特殊な能力を
持っていた。一方で他人のことを考慮しない発言をしてしまい、対面での仕事は苦手だった。
かれは社会の底辺で苦労する人たちの裁判に精を出し、金儲けには興味がない。

そんな中、共同経営者である老弁護士が倒れ、重態となってしまう。そのため、彼が
抱えていた裁判をイスラエルが引き受けざるを得なくなってしまう。法廷では裁判長と
言い争いになり法廷侮辱罪に問われてしまったり、嘘がつけず思ったことをそのまま
口にするイスラエルにとって法廷弁護人という仕事は辛かった。
そんな折、行き倒れを助けた縁で彼は福祉事務所でボランティアで働くマヤ(イジョゴ)と
出会う。マヤはイスラエルの自分を犠牲にしてまで社会正義のために働く姿に感動を受ける。

他方、同じ指導教官の元で弁護士になったジョージ・ピアース(ファレル)は、依頼人の
ために全力で弁護はするが、金儲けに軸足があり、既に多くの弁護士を雇い4つの事務所を
持つ経営者でもあった。
イスラエルは、自分の共同経営者が不正経理をしていて破産しそうな実態を掴み、なんとか
他の事務所に雇ってもらおうとするが、なかなか上手くいかない。友人のジョージは
いいやつだが、金儲けのための弁護には興味がない。しかしジョージの方は、イスラエルの
才能を自分のために欲しがり、彼を雇うことにした。

イスラエルは、二人の若者が商店に強盗に入り、一人の男の発砲で商店主が死亡するという
事件の発砲していないほうの若者の親から弁護を担当する。商店主がアルメニア人であった
ため、アメリカのアルメニア協会から、銃を撃って逃げている男に賞金10万ドルが掛けられ
た。そうした中で、イスラエルはジョージとの会話により、大きな変化が起きた。
自己犠牲をして社会に貢献する弁護士より、現実と折り合いをつけ金銭的なメリットも
十分に享受するというジョージの生き方に感化されたのか。

イスラエルは獄中の依頼者の息子から真犯人の男の隠れ家を聞き出し、これを司法取引に
使い、息子の減刑を試みて担当判事と交渉するが判事はニベもない。このままでは15年は
くらってしまう。だが、変化してしまったイスラエルは何故かアルメニア人協会に逃亡犯の
居場所をタレこみ、10万ドルを自分で手に入れてしまう。そして逃亡犯の若者は逮捕され
たのだった。この金で彼はメキシコだかアカプルコだかに行き、海であそび、一流の
テーラーでスーツをあつらえ、イタリア製の靴を買い、ヘアスタイルも変えた。

そうして再びLAに姿を表したイスラエルに一同は驚くも、ジョージは彼が自分が希望する
スタイルの弁護士になったことを喜んだ。そして彼を人権担当の弁護士として売り出すことを
発表した。俗っぽくなるイスラエルに対し、彼をみていたジョージは社会に役立つことも
していかなくてはならないと覚醒させられてきたようだ。
マヤを一流レストランに食事に誘う。今までと違うイスラエルに面食らうマヤ。そうした中、
恩師で共同経営者でもある弁護士が亡くなる。

イスラエルがタレこんだ真犯人の弁護もジョージの事務所で受けることになり、イスラエルが
それを担当することになった。面会に行くと、「俺の隠れ場所をしっていたのは、仲間の
あいつだけだ。ということはタレこんだのはあんただな。どうせ俺は死刑だ。だが娑婆の俺の
仲間が黙っちゃいないぜ」と言われてしまう。

再びイスラエルの頭で何かが変わった。自分が一瞬でもこれまでの考えと違ったことを
しようとしたことを反省したのか、怖くなったのか。アルメニア人協会から貰った10万ドルの
うち使った5000ドルちょっとはまるまる宅急便にして返し、映画の冒頭にもあるように
自分で自分を訴え、裁判で自分を弁護しようという戦法に出たのだ。そのうち事務所にも
ジョージにも懸賞金をイスラエルが貰ったということが知れ渡った。依頼人の秘密を
他人に売り渡したことは弁護士としてやってはいけないことだ。

再び元の姿に戻ったイスラエルは司法制度改革の訴訟準備を再開、そんなある夜、ジョージと
街なかで話、帰っていくイスラエルの後を、怪しげな男が近づいていく。

映画はイスラエルの死を暗示し、マヤが再び施設で奮闘する姿を映し、またジョージが
イスラエルの夢だった司法制度改革の訴状を持ってワシントンへ行き、書類を提出する
ところで終わっていく。
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アフロヘアにメガネで太ったイスラエルを演じたデンゼル・ワシントンは一見彼と
分からないほど。ハードで渋い役回りが多かったデンゼルの新境地、なかなか魅せる
演技だった。が、ストーリー展開としては面白いものの、結局何が言いたいのかさっぱり
分からなかったし、イスラエルの心境の2回の劇的変化は何がもたらしたのか、も、
よく理解出来なかった。実話のようなスムーズな流れで面白かっただけにキーになる
二点に引っかかってしまい、残念な印象。
世俗に寄ってしまったコリン・ファレルがデンゼルと接しているうちに社会正義に
目覚め、一方、社会正義一辺倒だったデンゼルがファレルと接しているうちに世俗に
目覚めてしまい、もとに戻るものの時既に遅し、ということなのかなあ。

<IMDb=★6.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:52% Audience Score:54% >







by jazzyoba0083 | 2018-05-19 15:30 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)

●「ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密 Dr.Marston and the Wonder Woman」
2017 アメリカ Boxspring Entertainment,Stage 6 Films,Topple Productions.108min.
監督・脚本:アンジェラ・ロビンソン
出演:ルーク・エヴァンス、レベッカ・ホール、ベラ・ヒースコート、JJ・フィールド他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
MARVEL映画好きとして不覚ながら本作を知らなかった。MARVEL作品じゃないけど。
欧州からの帰国便で観たのだが、タイトルからして、一連のワンダー・ウーマンものか、
と思っていたら、さにあらず。これは飛行機の中で観るのもいささか憚れるほど、過激な
性描写がある実話モノだった。日本では劇場未公開。

個人的にはワンダー・ウーマンが誕生する裏にこうした興味深い物語があったのか、と
面白く見ることが出来た。マーストン教授と妻のエリザベスは、ハーバード大学の心理学で
教鞭を取る学者であった。そして教授の教え子で助手を務めることになったオリーブとの
3者の不思議な恋愛関係がメインに描かれ、その結果として教授が創造したワンダー・
ウーマンの話へと展開していく。

夫妻は自由恋愛主義であったが、やはり嫉妬は生まれるわけで、妻エリザベスが疑った夫と
オリーブとの関係、実はオリーブは妻エリザベスに強く惹かれていて、同時に教授にも
恋愛感情を抱く。そのことが事態をややこしくしたが、結局3人は教授↔オリーブ↔エリザ
ベス、教授↔エリザベスという恋愛関係を維持した生活を始める。(ポリアモリーという)
オリーブは助手として教授の世界初の「嘘発見器」製作やDISC理論の成功に貢献したが
大学当局に三人の関係がばれて、夫妻は教授職をクビになってしまう。

やがて、オリーブは教授の子どもを産み、更に子どもを作らなかったエリザベスにも子どもが
出来る。父親は同じだが母親は違うという不思議な家庭が出来上がり、そうした関係を維持し
たまま時間が経過するのだが、やがて教授夫妻とオリーブの倒錯した性的指向(教授の理論を
実践する目的ではあったのだが1930年代なので、とんでもないことだった)が近隣にばれる
に及び、一家にヒビが入って行く。

教授はそもそも女権拡大の観点からワンダー・ウーマンというコミックの原作を書き苦労して
出版にこぎ着けた。女性ヒーローという当時としては大変珍しいコミックは大ヒット。
しかし、作品中にSMもどきの行為や性的に倒錯した表現が多数登場したため、母親連盟や
保守的な宗教団体などから指弾され、ついには焚書に晒される事態になってしまった・・。

映画はコミックのワンダー・ウーマンが子どもにとってよろしくない書物であるという
観点でコミック誌を監視する児童学習協会の女性会長から教授が諮問を受けるところから
スタートし、いかに教授がワンダー・ウーマンを創作するに至ったのか、がカットフォワード
されつつ説明されていく。

ワンダー・ウーマンという存在が、教授の女性研究と女性解放という研究の観点から
生まれ、これにオリーブやエリザベスと自分の関係性が主観的に加味されたものである、
単なるコミックではない点に理解が及ぶ。その背景にポリアモリーという常ならぬ状況が
あったのは、意外な発見だった。

教授は不治の病に冒されていくのだが、残されるオリーブとエリザベスにお互いを愛し
続けてくれと頼むのだった。実際彼女らは教授の死後38年間も共に生活を続けたのだ。
4人の子供らは自分らが置かれた状況を理解しつつ、きちんと育っていった。

1930年代における心理学とコミックという一見結びつきそうでないものが、特殊な
恋愛関係を通って結実するという物語、セリフも映像も良く出来ていたし、事実は
小説より奇なり、という言葉がそのまま使える佳作である。
今度、ガル・ガドットのワンダー・ウーマンを観るとこの映画のことが思い浮かぶのだろう。
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<ストーリー>
1928年、ハーバード大学で心理学の研究をしていたマーストン夫妻(ウィリアムとエリザ
ベス)は、オリーヴ・バーンを助手に採用した。オリーヴはフェミニストの活動家として
有名なエセル・バーンの娘であった。オリーヴは嘘発見器の開発やDISC理論の研究を大いに
助けた。一緒に仕事をしているうちに、3人はどんどん親密な関係になっていった。その関係
はやがてポリアモリーに至った。

3人の特殊な関係が大学内で噂になったため、マーストン夫妻は教授職をクビになってしま
った。その直後、オリーヴの妊娠が判明したため、彼女はマーストン夫妻と同居することに
なった。3人はポリアモリーの続行を決めたが、周囲にそれがバレないような振る舞いを
心がけた。
3人はニューヨーク郊外で幸せに暮らしていた。エリザベスとオリーヴが同時に妊娠する
というハプニングも起きたが、「オリーヴは未亡人なのです」と近所の人たちに釈明して
難を逃れた。
やがて、ウィリアムは作家としてのキャリアを歩み始めたが、一家の生計を支えたのは
秘書として働くエリザベスであった。オリーヴは子供たちの面倒を見る傍ら、小説を執筆
してそれを出版社に送付していた。3人は4人の子供を育てることになり、エリザベスは
娘の一人にオリーヴにちなんだ名前を付けた。

ウィリアムは偶然立ち寄った画廊に展示されていた作品に衝撃を受けた。店主のチャールズ・
ギエットが集めたフェティッシュ・アートがウィリアムのDISC理論を実証するようなもの
だったからである。当初、エリザベスはそうした作品を拒絶していたが、作品にインス
パイアされた衣装を身につけたオリーヴの美しさに心を打たれ、徐々に態度が軟化して
いった。この衣装は後にダイアナのコスチュームに反映されることになった。

作家としての仕事の依頼が来るようになったウィリアムは、アマゾーンをモデルにした
ヒロインを主人公にした漫画を執筆し始めた。漫画の執筆に当たっては、ウィリアムの
心理学者としての知見と3人のポリアモリー生活が大いに役立った。また、ウィリアムには
男女同権を目指すフェミニスト運動を支援したいという思いもあった。
彼はナショナル・ペリオディカル出版のマックス・ゲインズに企画を持ち込んだ。ゲインズは
漫画の出来映えに驚嘆し、同社から出版する決断を下した。その際、ゲインズはウィリアムに
「主人公の名前をもっと単純にしてはどうでしょう。例えば、ワンダーウーマンとか。」と
提案し、ウィリアムはそれに同意した。それが功を奏したのか、『ワンダーウーマン』は
大ベストセラーとなった。その印税収入でマーストン一家の家計は一気に潤った。
しかし、予期せぬ事態が発生したために、マーストン一家の人間関係は急激に悪化していく
こととなった。(wikipedia)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:87% Audience Score:78%>









by jazzyoba0083 | 2018-05-18 13:30 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)

ジオストーム Geostorm

●「ジオストーム Geostorm」
2017 アメリカ Warner Bros. 109min.
監督・(共同)脚本:ディーン・デヴリン
出演:ジェラルド・バトラー、ジム・スタージェス、アビー・コーニッシュ、エド・ハリス
   アンディ・ガルシア他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
地球規模的大災害を描くと似ちゃうものなのだろうな。「2012」とか、その他多数。
本作は「インディペンデンス・デイ」でローランド・エメリッヒと共に脚本を担当した
ディーン・デヴリンが監督と共同脚本を務めた、地球規模的自然災害をテーマとした
デザスター&サスペンス&スペースムービー。IMAX 3Dで観ようと一瞬思ったものの
嫌な予感がしてやめておいた作品を、欧州旅行の行きの飛行機の中の小さい画面で鑑賞。
日本語吹き替一択だったので仕方ないのだが、アビー・コーニッシュの声、どこかで
聞いたことがあるなあ、と思ったら、ブルゾンちえみだったww。意外にフィットして
いたが、どうも、彼女の顔がちらちらして、画面上は超かっこいい大統領SSサラが損をしていた
ようなww。

世界に異常気象が多発、それを科学で抑え込む宇宙ステーション「ダッヂボーイ」を
作り上げた。そもそも異常気象って人間が原因なのに、根本を押さえず、対処療法で
とてつもないものを作り、それが暴走するとは、誠に天に唾する人間の不遜さよ。
その「ダッヂボーイ」が暴走し、世界各地で超が3つも4つも付くような異常気象が
出来!日本でも超でかい雹が降り、街中がボコボコにされちゃいます。

そしてそれらが同時に起きる「ジオストーム」の発生までのカウントダウン。これを
止められるのは、そもそもこの装置を作り上げた責任者ジェイク(バトラー)だけ
だった。しかし、「ダッヂボーイ」の暴走には、今の大統領(ガルシア)をなき者とし、
大統領の座を奪いたいジェイクの上司デッコム(ハリス)の存在があった。

大画面で観たら相当良さげな宇宙シーンではあったしデザスターシーンもリアリティも
ありイイ感じだったし、大統領SSのアビーのアクションやらカーチェイスもかっこ
よかった。だがしかし、ラスボス、デッコムのやりたいことは結局地球を破壊してしまう
わけで、それで大統領になって何をしようとしたのか?釈然としなかった。
例によって母親のいない幼い女の子の父であるジェイクとの親子愛、政府内にいる弟との
兄弟愛、自己犠牲を覚悟した主人公の行動、などは既視感ありありだし、最後は
ハッピーエンドなのだが、大きく膨らんだ風船が小さく萎んだ感じをうけてしまった。

一番目立っていたのはアビー・コーニッシュ(弟の婚約者でもあった)のカッコよさ
かな。
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<ストーリー>
衛星の暴走による地球滅亡の危機に立ち向かう人々の戦いを描く、ジェラルド・バトラー
主演のスペクタクル・アクション。
『インデペンデンス・デイ』で製作・脚本を担当するなど、ローランド・エメリッヒとの
タッグで活躍してきたディーン・デヴリンが初監督に挑戦。
最新データに基づいた、地球規模の同時多発災害の恐ろしさをリアルに映像化する。

未曾有の自然災害に襲われ続ける地球と人類を守るため、世界各国が団結し、最新テクノ
ロジーを搭載して天候を制御できる気象宇宙ステーションを開発し、災害は過去のもの
となる。
しかし、運用開始から2年後、宇宙ステーションがウィルス感染により大暴走を始め、
地球に猛威を振るい始める。銀座のど真ん中に直径5m級の巨大な雹が降り注ぎ、
インドではすべてを飲み込む巨大な竜巻が同時多発、リオデジャネイロの常夏の海が
瞬時に凍り、香港では地底マグマによりビルのドミノ倒しに……。
これらの災害が同時に起き、地球を壊滅させる災害“ジオストーム”の発生も時間の問題と
なった。

地球と人類の滅亡の危機が迫るなか、宇宙ステーションの暴走を止めるべく、その生みの
親である天才科学者ジェイク(ジェラルド・バトラー)と、ジェイクの弟で天才政治家
マックス(ジム・スタージェス)が立ち上がる。ジェイクをリーダーとした世界中の
科学者が集まる宇宙チームと、マックスを中心とする地上チームが、地球の危機に立ち
向かう……。(Movie Walker)

<IMDb=★5.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:12% Audience Score:37%>





by jazzyoba0083 | 2018-05-12 19:15 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)