DISTANCE/ディスタンス 

●「DISTANCE/ディスタンス」
2001 日本 テレビマンユニオン、エンジンフィルム、シネロケット、IMAGICA、製作委員会 132分
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:ARATA、伊勢谷友介、寺島進、夏川結衣、浅野忠信、りょう、遠藤憲一、中村梅雀、津田寛治、
   山下容莉枝他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
是枝作品10作目。たびたび本ブログでも書いているが、これまで食わず嫌いだった是枝作品。昨年の
「万引き家族」を鑑賞したことで衝撃を受け、片っ端から製作年代の時制を無視して観始めた。
本作はその中で一番古い作品で、今からほぼ20年前の作品となる。

ドキュメンタリスト出身の是枝監督は、「万引き家族」「誰も知らない」などでその手腕が上手く
発揮されているが、本作はそのテイストが十二分に生かされた構成を持つ。知らなかったけど、
wikiによれば、

「キャストに手渡された脚本はそれぞれの出演部分だけで、相手の台詞は書き込まれておらず、
俳優たちは物語の全貌を映画が完成するまで知らなかった。
物語の空白の部分は、それぞれの役者の感性によって作られていった」

**********************************(以下、CINRA NETからの引用)
是枝:黒字ではない(笑)。『ワンダフルライフ』のリメイク権が売れて黒字になって……そこで
残ったお金を、『DISTANCE』に投入しているんだよね。
だから自分としては、貯金があるから実験的なことにお金をかけられると思ってたところがあって。
ここはもうとにかく、やりたい形を試してみようって。まあホント、実験映画だもんな。

井浦:実験映画ですよね。だって、役者それぞれが自分のところの物語しか脚本をもらってない
ですから。たとえば、こうやって目の前に友介と結衣さん(『DISTANCE』に出演した夏川結衣)が
いたとして、その人たちが何をこっちに投げてくるのか全然わからない。

 ***********************************(引用以上)

ということだ。なるほど、そういう環境に置かれたからあのような台詞回しになったのだな。
半分はアドリブみたいな。
こうした手法を取られた作品は欧米でも何作か観た記憶がある。が、自国語で展開されるこのような
半ドキュメントみたいな作りは、洋画にはないインパクトを個人的には受ける。是枝監督の指示を演者
たちは上手くこなしていたと思う。特に寺島進が良かった。遠藤憲一にしても20年前は今ほど注目されて
いなかっただろうし、後の井浦新の存在感もキャスティングとしては良かった。

さらに、ラストでわかりにくいけど、サスペンスの要素を残したものも是枝脚本の見せ所であったろう。
しかし、敦が誰であったのか分かりづらいとか、冒頭の人物紹介が湖の桟橋で坂田に会うまで良くその
相関関係が分からない(筆者はラストまで見て、もう一回冒頭から湖畔の慰霊シーンまで見直しようやく
得心した。)とかの難点はある。
アドリブが加わってやりとりするセリフも内容(言っているセリフ)が聞きづらく、字幕を出して観た。

本作の作り方と「家族」というテーマを思う時、本作では登場人物はそれぞれに家族を抱えつつ、加害者遺
族という共通の土俵の中で、「距離感」を感じ、調整しながら生きている。しかし、わかり会えたような
会話や行動には、絶対に消え去らない「距離」が強く感じられた。人間が生きていく上で、家族であろうが、
何かの縁で結ばれた人たちであろうが、そこには他人が踏み込めない心理的「距離」は悲しいかな、存在
する。故にラストで敦が父(教祖)に別れを告げて桟橋を燃やすのは、敦なりのケジメであり、「距離」
のシャットダウンに他ならない。

主要登場人物の個々の背景を描くことにより是枝監督はそれを強調すること詳細に印象付けることに成功
していたのではないか。
でも、それは個々の姿勢で何とかなるものではないのか、つまり「距離」の解消や近づけること、は個々の
思いと姿勢で何とかなるのではないか、というのがワタシ的な本作の捉え方であった。正解であるかどう
かは分からない。

ご存知のように本作は是枝監督がオーム真理教事件にインスパイアされて作った長編3作目で、彼の作品の中
でもひときわ社会性の強い映画であろう。だが、彼の映画のどの作品にも通底する「家族」がメインテーマに
なっている点は不変(普遍)である。音楽が一切使われない、まさに「実験的」な作品ではあるが、強烈な
印象を受けた。

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<ストーリー:ネタバレしています>
カルト教団真理の箱舟が無差別殺人を起こし、その5人の実行犯が教団の手で殺害され、教祖も自殺した事件
から3年後の夏。故人の命日に集まった4人の加害者遺族は、遺灰を撒いたとされる山間の湖に手を合わせた。

ところが、林道に停めておいた車が盗まれ、彼らはその場に居合わせた元信者である坂田の案内で、実行犯
たちが潜伏していたロッジで一夜を明かすことになる。そこで、否応なく過去と向き合う5人。

予備校の教師をしているきよかは、理想の教育を追求しようとして向こう側へ行ってしまった夫・環との
ことを。気ままな学生生活を送っている勝は、兄が出家前日に訪ねて来た時のことを。建設会社に勤める
実は、妻が高校時代の後輩・宮村と教団へ行くと告白された日のことを。花屋で働く敦は、夜と昼の間の
サイレント・ブルーという時間について語った姉・夕子とのことを。
そして、事件直前に脱走した坂田は、4人の遺族に故人たちの最後の様子を、教祖のことを尋ねる敦に
彼のことを語って聞かせた。

一夜明けて、無事、東京へ戻った5人は、1年後の再会を約束して別れる。だが帰りの電車の中で、坂田は
敦に気になる言葉を残していた。「あなた、ほんとは誰なんですか?」 
実は、夕子の弟が自殺していたことを、坂田は夕子から聞いて知っていたのだ。数日後、再び湖に敦の
姿があった。彼は、湖面に向かって小さく呟く。「父さん」と。(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Metacritic=58>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:80% Audience Score:76% >
<KINENOTE=71.7点>




by jazzyoba0083 | 2019-06-25 23:30 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)

●「X-MEN:ダーク・フェニックス Darik Phoenix」
2019 アメリカ Twentieth Century Fox and more.114min.
監督・(共同)製作・脚本:サイモン・キンバーグ
出演:ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルト
   ソフィー・ターナー、タイ・シェリダン、アレクサンドラ・シップ、ジェシカ・チャスティン他

X-MEN:ダーク・フェニックス  Dark Phoenix_e0040938_17340785.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想:ネタバレ注意>
★は6.5強といったところか。どうしても「アベンジャーズ・エンドゲーム」と比較してしまうので、いささか
損な部分はあったが、それにしてもこれで最後と言う割に地味な感じで、最近のX-MENシリーズの中では最も
インパクトに欠けた。同じMARVELでも、キャラがそれぞれに派手なアベンジャーズに比べると、こちらの
こちらのミュータントは姿形にケレンがあるわけでもなく、使える武器も限定的なので、地味さは出てしまうが、
ウルヴァリンが居た頃はもう少し面白かったような気がしたが。まあ、「アベンジャーズ」とは性格が違うヒーロー
たち(ヒーローでもないか)なので、多少陰気な感じがするのは全シリーズ共通の事だけど。描かれる世界が
「アベンジャーズ」に比べるとより人間ぽいという感じかな。

今回で「X-MEN」シリーズは終わりということで、シリーズ最初から脚本などに関わってきたサイモン・
キンバーグが集大成として初監督を努めたのだそうだけど、本国の評価も含めいささか残念だった。話は分かり
やすいのだが。今回は「ダーク・フェニックス・サーガ」から脚本を起こし、ジーンの物語といっても過言では
ないだろう。

ジーンは「アポカリプス」で登場したのだが(ワタシ的には印象にないなあ)今回は主役として、自分でも制御で
きない闇のパワーを身に着けてしまい、苦しむなかで事件を起こし、自ら始末を付けるという流れ。
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開巻、幼いジーンが両親とドライブしている時に、ラジオから流れる曲に刺激を受けたジーンのダークサイドの
パワーが開放され、クルマは大破、母親が死亡するという事故を起こしていた。これが心のそこでジーンの
トラウマになっていた。しかしそれはプロフェッサーXによって学園で封印された。父は生きていて、ジーンを
プロフェッサーXに預けたのだ。しかし、宇宙でのミッションである衝撃を受けたことから闇のパワーの覚醒が起き、
自ら制御できない事態となった。更に父が生きていて自分を学園に預けたことが怒りに火を付け、彼女の膨大な
パワーは宇宙をも滅ぼし兼ねない事態となった。

まずミスティークがジーンの手によって殺される。この事態をなんとか収集しようとするプロフェッサーXと
マグニートーらミュータントたち。そこに、ジーンのパワーで自らの星が滅んだ宇宙人が地球を乗っ取ろうと
ジーンに近づき、彼女を味方にしようと企む。

自らの意思に反してダークパワーを暴走させているジーンは自ら苦しみながらも、プロフェッサーXから友情と
家族の大切さを再び思い返すことに成功する。そしてマーガレットと名乗るダバリ星人と対決。彼女を宇宙に
帰すのだった。それは自らの存在も皆の前から消し去ることを意味していた。
学園はビーストやストームらの手で再び生徒たちを集め授業が始まっていた。学園の名前にはジーンの
名前が付けられていた。
ラストはパリのカフェでプロフェッサーックスとマグニートーがチェスを打つシーン。空にはフェニックスが
遠くで輝いていた。
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だいたいこんなストーリーだったと思う。アベンジャーズ以上に時制のこともあり混乱したシリーズだったが、
事前に一応の流れだけは復習していったのが多少は良かったかな。

MARVELは2020年に新しいミュータントものを発表することが決まっている。ご破産で願いまして、こんがら
がらないようなシリーズを作ってもらいたいなあ。

X-MEN:ダーク・フェニックス  Dark Phoenix_e0040938_17341728.jpg
<ストーリー>
「X-MEN:ファイナル ディシジョン」以降、製作や脚本として「X-MEN」シリーズに関わってきた
サイモン・キンバーグが、自ら初監督に挑み、シリーズの集大成として撮り上げたSFアクション・アドベンチャー。

ある事故が原因で内なる闇の人格“ダーク・フェニックス”を覚醒してしまったジーン・グレイが、人類最大の敵と
してX-MENの前に立ちはだかるさまを圧倒的スケールで描き出す。
出演は本作で主役を務めるソフィー・ターナーをはじめジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、
ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルト、タイ・シェリダンのレギュラー組に加え、
「ゼロ・ダーク・サーティ」「モリーズ・ゲーム」のジェシカ・チャステインが初参戦。

 人類との共存を願い、平和を守るために戦い続けるX-MEN。ところがある日、X-MEN最強メンバーの
ジーン・グレイが、宇宙ミッション中の事故によって、自らのダークサイドを増幅させてしまい、内に秘めた
もう一つの人格“ダーク・フェニックス”を覚醒してしまう。
元々持っていたテレパシーとサイコキネシスのパワーが暴走し、ジーン自身にも制御できなくなっていく。
親代わりのプロフェッサーXや恋人のサイクロップスが懸命に手を差しのべるが、ついに思いがけない悲劇を
引き起こしてしまう。
世界を滅ぼしかねない強大なパワーが暴走を続ける中、その力を利用しようと企む謎の女がジーンに近づいて
くるのだったが…。

<IMDb=★6.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:23% Audience Score:64%>
<Metacritic=43>
<KINENOTE=73.1点>





by jazzyoba0083 | 2019-06-21 15:20 | Trackback | Comments(0)

アラジン aladdin

●「アラジン Aladdin」
2019 アメリカ Walt Disney Pictures and more.128min.
監督・(共同)脚本:ガイ・リッチー
出演:ウィル・スミス、メナ・マスード、ナオミ・スコット、マーワン・ケンザリ、ナヴィド・ネガーバン、
   マシム・ペドラド他
アラジン aladdin_e0040938_17360746.jpg
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
1992年にディズニーがアニメとして製作し、主題歌「Whole New World」(オスカー主題歌賞受賞)を初めとして
大ヒットした古典を、CGたっぷりに実写化した娯楽作。こういうのは理屈を抜きにして楽しむタイプの映画なので、
あれこれいいたくない。Rotten Tomatoesの批評家が57%に対して一般支持は94%となっているのを見ても分かる
通り、専門家からみて映画としては別にどうってことは無いと思う。でも大衆は好きなんだよね、こういうの。
いいんじゃないでしょうか。日本での興行成績も良いようだ。

まあ、ジーニー(魔人)を演じたウィル・スミスの現代的ユーモアを使った存在が目新しく、どっちかというと
ウィル・スミス・ショー的な面が無いではないが、アニメから少しストーリーも変化させ、全体としては家族揃って
楽しく見られるいかにもディズニー的な映画に仕上がっていた。ディズニー作品のオスカー常連アラン・メンケンの
歌も使われて、アニメを楽しんだ親が子供を連れて来るという点でも受けるのではないか。しかし、ハリウッドも
こういう古典をリメイクしないとネタがないのかな。「ライオンキング」も間もなく公開だし。

「不思議な世界」「魔法」「超パワー」「友情」「恋愛」「人生訓」など、ディズニーの古典的が主張をたっぷりと
味わえるが、古臭さを現代風にアレンジすることで削いだ努力は認めたい。冒頭がエンディングとくっついている
演出も良かったと思う。ジーニーのキャラクターのタッチといいガイ・リッチーが手堅く纏めたな、という印象だ。
実際私のような高齢者が観ても楽しかった。3Dで観たらもっと楽しかったかも知れないが、コスパを考えたら2Dでも
いいかな。

ウィル・スミス以外は知らない俳優さんばかり。アラジンもジャスミン姫もそう美男美女とはいえないので、勢い
ウィル・スミスに注目が行きがち。というかそれが狙いなのだろう。そこでウィルが口にするセリフが重要なわけだ。
そのあたりの脚本(セリフの選び方)は上手かった。個人的には王子に化けたアラジンがジャスミンに自己紹介する
場面で、ジーニーから「1000年で一番恥ずかしかったぞ」と云われちゃうところがウケた。

ラストの全員ダンスは「ムトゥ・踊るマハラジャ」を彷彿とさせるインド映画みたいだった。楽しい映画です。
アラジン aladdin_e0040938_17361652.jpg
<ストーリー>
第65回アカデミー賞で最優秀オリジナル作曲賞、最優秀主題歌賞の2冠に輝いたアニメーション作品でも有名な
『アラジン』を実写映画化。貧しい青年と王女、ランプの魔人が繰り広げる壮大な冒険が描かれる。
ランプの魔人ジーニーをウィル・スミスがユニークに演じるほか、アニメーション版の名曲の数々も登場する。
(Movie Walker)

アグラバーの町で猿のアブーとともに暮らす貧しい青年アラジン。市場へ繰り出しては盗みを働いていた彼は、
ある日、変装した王女ジャスミンと出会う。アラジンは侍女のふりをしたジャスミンと心を通わせるが、
アブーが彼女の腕輪を盗んだことで幻滅されてしまう。アラジンは腕輪を返すために城に忍び込み、ジャスミン
との再会を果たすが、衛兵に捕らえられる。国務大臣のジャファーは、ジャスミンが王女であることをアラジンに
教え、チャンスを与えると言って、魔法の洞窟に入って魔法のランプを取ってくるよう命じる。

アブーとともに洞窟に入ったアラジンは、岩に挟まれていた魔法の絨毯を助け、ランプを取ることに成功するが、
洞窟に閉じ込められてしまう。途方に暮れたアラジンだったが、絨毯の指示でランプをこすったところ、ランプの
中から魔人ジーニーが出現。ジーニーはランプをこすりながら願い事を言えば3つかなえると言う。アラジンは
ジーニーの目をごまかして願い事を言ったふりをして魔法を使わせて洞窟から脱出すると、1つめの願いで架空の
国アバブワーの王子となり、ジャスミンのもとへと向かう。(wikipedia)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:57% Audience Score:94%>
<Metacritic=53>
<KINONOTE=82.1 点>






by jazzyoba0083 | 2019-06-19 14:00 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

●「アメリカの友人 Der amerikanische Freund」
1977 西ドイツ・フランス Wim Wenders Productions and more. 126min.
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース
出演:デニス・ホッパー、ブルーノ・ガンツ、ジェラール・ブラン、ダニエル・シュミット、ニコラス・レイ他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ヴィム・ヴェンダース3作目の鑑賞。この人の作品は、具体的現象の中に観念性を埋め込むタイプの作家
なので、回りくどいというか、何を言いたいのか良くわからないという側面が、私にはある。よって好んで
見に行くタイプの監督ではない。が、どこか気になる作品を作る人ではある。ましてや、本作は彼の名前を
映画好きの間に知らしめた有名な作品で、評価も高いので、古い映画だけど、NHKBSで放映があったので
観てみた。31歳の時の作品で、この前観た「誰のせいでもない」(2015)よりも、荒削りな面もあるし、
特に前半の1時間は物語が見えてこず、何だかなあ、と思うような自己満足的な作りもある。まあ作家性の高い
監督の作品というのはそういうものだから仕方がないのかもしれないけど。

二人の男の「未来を見失った同志」の偏向した友情みたいなものが見えてくる1時間後くらいからは面白くなる
というか普通の映画っぽくなる。とにかく個の感情を1つ描くのにえらく回り道をするので、イライラもするし
分かりづらい。一方で、走行する列車の中のタイトな画と空撮のロングを一気に切り替えるとかの作画感覚は
若さなのかヴェンダースの嗜好なのか、いい感じだった。パリの地下鉄の駅には今から40年以上前に多数の
監視カメラがあったのには驚いた。

ハイスミスの原作に基づいて、この脚本を書いたのが本人だから、この人はこういう映画で私が感じたような
主張を言いたかったのかな。
原題も「アメリカの友人」だから、デニス・ホッパーとブルーノ・ガンツという二人の男の偏った友情みたいな
ものでいいのだろう。デニス・ホッパーがマフィアの抗争に絡んでいると分かるとか結構なサスペンス性は
持った娯楽的な側面もちゃんとあるんで嫌になっちゃうんだなあ。お、と思わせるところがあるから目が離せ
ないし。ラストのどんでん返し風もなかなか味わい深いし。じゃあ、一体前半1時間のもたつきは何だったのだ
よ、とも言いたくなるわけだ。説明臭くなく説明するから回りくどいと感じてしまうのかな。
デニス・ホッパーの弱さを内包したカウボーイ(アメリカ人)がいい感じだった。ブルーノ・ガンツは終始
神経質で職人肌。だけど知らない男から暗殺を引き受けてしまうような側面もある。この二人の男の魅力に
引きずられた二時間ということだったようだ。

好きな人はもの凄く好きな、駄目な人は恐らく1時間で離脱するようなタイプの映画なことは確かだ。

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<ストーリー:結末まで書いてあります>
カウボーイ・ハットのトム・リプレー(デニス・ホッパー)が、ニューヨークの画家(ニコラス・レイ)を
訪ねる。その画家ダーワットは、贋作画家で、リプレーはそれをヨーロッパで売り歩いていた。
ハンブルグの美術商の画廊で、トムは額縁職人のヨナタン(ブルーノ・ガンツ)を知る。彼は、トムが売り
つけた絵を偽物と気づいた様子だった。トムは、そこの画廊の主人からヨナタンが白血病でそう長くはない
ことを聞く。

夜、トムのもとをミノ(ジェラール・ブラン)と名乗る一匹狼の男が訪ねた。彼はマフィアの男をひとり
殺す為、素人の男を見付け出し、殺し屋に仕立てたいといった。ヨナタンに狙いを定めたトムは、ヨナタンの
仕事場を訪ね、彼と知り合いになった。
自分の病状を不安がっていたヨナタンは、ミノから殺しを頼まれると、25万マルクという報奨金ほしさに、
ついに引き受けることにした。ドゴール空港に着いたヨナタンはミノと医学生の出迎えを受け、病院へ行く。
ミノは、白紙の診断書を病院から盗みだす。ヨナタンは、殺し屋イグラハム(ダニエル・シュミット)を
撃ち殺す。
一方、ニューヨークでは、マフィアのボス(サミュエル・フラー)が敵対するマフィアがパリで殺されたと
電話できいた。

ヨナタンの最近の行動を不審に感じていた妻のマリアンネ(リザ・クロイツァー)は、ヨナタンを問い詰めるが、
彼は何も言わない。ミノは再度ヨナタンを呼び出し、殺しを依頼する。そのことを知ったトムは、ヨナタンに
それは危険すぎると忠告する。

ミュンヘンからの特急でヨナタンは第二の殺人を果たそうとするが、失敗し、トムに助けられる。死体を列車
から蹴り落とすトム。アパートに戻って発作で倒れるヨナタン。そこへミノが訪れ、列車の殺人でトムと一緒
だったことをついヨナタンは告白してしまう。
トムの家で襲撃に備えるヨナタンとトム。夜、忍び込んできた男をヨナタンは殺す。一方、ミノも相手の
マフィアに捕らえられていた。トムは疲れ切ったヨナタンを励まし、死体の始末にとり掛かる。
ヨナタンは、赤いワーゲンでやって来たマリアンネととも海に向かう。その車の中でヨナタンは息を引き取る。
遠くワーゲンを見送るトムの姿があった。(Movie Walker)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:91% Audience Score:81% >
<Metacritic=No Data>
<KINEMANOTE=71.7点>





by jazzyoba0083 | 2019-06-17 23:15 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

未来のミライ

●「未来のミライ」
2017 日本 スタジオ地図、日テレ、製作委員会 98分
監督・原作・脚本:細田守 
声の出演:上白石萌音、黒木華、星野源、麻生久美子、役所広司、福山雅治、宮崎美子他

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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
昨年度(2019年発表)のオスカー長編アニメ賞ノミニー。ということで観てみた。前半、全然ダメ。
4歳児の男の子が下に女の赤ちゃん(ミライ)が生まれたことで、両親の愛情を奪われた、とダダを
こねまくり、嫌なガキになりまくるくだりがダラダラと。物語性の深みに欠ける。
何キッカケ?という塩梅の不思議世界へのトリップの安易さ。異次元から女子高生になったミライが
現れ、くんちゃん(このアニメの主人公)を曽祖父、祖父、お父さんらの過去の子供の頃や青年時代を
見せる。それによって、くんちゃんは自我に目覚めていく、というお話。笑えるのは高校生になった
くんちゃんが結構斜に構えた蓮っ葉な高校生に仕上がっていた事。この映画のような体験をしたなら
もう少し違ったキャラになっていたのではないか?

ミライは主人公なのか?くんちゃんは狂言回しなのか?
誰目線の映画なのか?誰に向かって作った映画か?子育て世代か?いや、普通に映画を観て感動を
感じられる小学校高学年から年配者まで等しく感動出来る世界を築いたのか?それにしては前半が
上手くない。自転車に乗れるようになるエピソードは、ひいじいじのエピソードへの単なる導線か?
それにしては長ったらしい。「雛人形」をしまう話もどうでもいい。どうも個々のエピソードの有機的
な結びつきがよろしく無いのだろうなあ。結局あのミライの手の赤いアザは何だったの?
個人的には★5つくらいが妥当な感じを受けたのだが、未来の東京駅あたりからの作画とアイデアが良く、
★を1つ追加した次第。

「君の名は。」という名作と比較されてしまうが、同じタイムトラベルというか、時制をいじり
過去や未来をいったり来たりするアイデアは共通ではあるが、プロットや作画も含め、前者の方が
圧倒的な感動があるし、物語の持って生き方が上手い。脚本の出来だと思うが。両者とも川村元気が
入っているが、本作での役割は小さかったのだろうな。

エンドロールで驚いた声優の豪華さ。全然分からなかった。内容の薄さを声優でカバーしようとした
製作サイドの押しか。おそらく日テレあたりの。「君の名は。」は何度も観たいと思ったが、本作は
二度目は無いな、と感じた次第。アメリカでの評価が高いのは「異国情緒好み」だろう。

未来のミライ_e0040938_13220525.jpg
<ストーリー>
甘えん坊の4歳の男の子、くんちゃんと未来からやってきた妹のミライちゃんが繰り広げる奇想天外な
冒険を描く、細田守監督によるSFファンタジー・アニメーション。
くんちゃん役の上白石萌歌、ミライちゃん役の黒木華ら、実力派俳優たちが声優を務める。福山雅治が
主題歌だけでなく、くんちゃんに大きな影響を与える青年役で声優にも挑戦する。

とある都会の片隅にある、小さな庭に小さな木が生えた小さな家。ある日、4歳の甘えん坊、くんちゃん
(声:上白石萌歌)の前に、生まれたばかりの妹がやって来る。両親の愛情を奪われ、初めての経験の
連続に戸惑うくんちゃん。
そんな時、くんちゃんは庭で自分のことを“お兄ちゃん”と呼ぶセーラー服の少女と出会う。それは、未来
からやってきた妹のミライちゃん(声:黒木華)だった。ミライちゃんに導かれ、時を越えた家族の物語へ
と旅立つくんちゃん。

それは、小さなお兄ちゃんの大きな冒険の始まりだった。行く手に待ち受けていたのは、見たこともない
世界。昔、王子だったと名乗る謎の男や幼い頃の母、そして青年時代の曽祖父との不思議な出会い。そこで
初めて知る様々な“家族の愛”の形。果たして、くんちゃんが最後に辿り着いた場所とは?ミライちゃんが
やってきた本当の理由とは……?(Movie Walker)

<IMDb=★7.1>
<Rotten Tomatoes:Tomatometer:91% Audience Score:81% >
<Metacritic=81>
<KINENOTE=65.8点>



by jazzyoba0083 | 2019-06-09 12:39 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「ギャラクシー・クエスト Galaxy Quest」
1999 アメリカ DreamWorks Pictures,Gran Via Productions.102min.
監督:ディーン・パリソット
出演:ティム・アレン、シガーニー・ウィーヴァー、アラン・リックマン、トニー・シャルーブ、サム・ロックウェル他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
この手の映画はハリウッドならでは。そして評論家の評価も高い。お金が掛かっているとかいないとか、大スターが
たくさん出ているとかいないとかの問題ではなく、あくまでもその出来、仕上がりの工夫に高得点が付いている。
クセのある映画なので、評価の分かれるところだ。この手のおバカ系(でもないか)パロディ、しかも人気絶大の
「スター・トレック」ファンには涙モノだろうし、一定の距離を感じる人、置いていかれる感を感じる人は恐らく
途中で止めるだろう。

かくいう私は「スター・トレック」はリアルタイムで見てきた「取り敢えず」ファンであるが、途中までは、とんでも
ない「B級」を見始めちゃったかな、と内心「失敗感」がムラムラと湧き上がっていた。ところだ、である。この映画の
不思議なのは、「安っぽーい」「B級」「パロディ」でありながら、その表す内容が、本物の「スター・トレック」並か
それ以上に心に染みているのだ。これが不思議。人間の心に訴えるところがキチンと(狙ったのだろう)描かれている
ところがいいのだと感じた。

ストーリーは簡単に言うと、かつてヒットした宇宙モノ(「スター・トレック」そっくり)の、今はサイン会で口に
糊しているような俳優たち。今でも熱狂的なファンを持つがチームの中は悪い。一方、宇宙でずっとその番組を見て
いた本物の宇宙人から、自分たちが滅亡させられそうになっているので助けてくれ、と云われる。

最初のうちは、何をトボケたことを、と思っていたが、これがマジだと分かると、俄然本心から彼らを助けようと
奮闘する、というもの。もちろんその過程には、ズッコケドタバタ、おバカなどこの手の王道を外さずかつ、本家を
上手くリスペクトした作りにはなっている。当時としてはCGや宇宙人もキチンとしている。
うがった見方をすれば「B級」の姿を借りた「本物」なのかもしれない。

何と言っても鳴かず飛ばずの俳優たちが、本物の宇宙戦争を戦い、怪獣みたいな宇宙人と対決して、見事リアルな英雄
になってしまうのだ。その過程がどこかしみじみしちゃうんだよなあ。前半半分バカにして掛かってみていた私も
最後にはすっかり心奪われていた。なんとも不思議な感じだった。「映画秘宝」系の町山さんなどが好みそうな作品だ。
心奪われた日本人ファンでも、何回見ても飽きない、と本作の大ファンになった映画好きは多い。allcinemaにコメント
が70も付いているのがその証拠だろう。
私も取り敢えずBlue-rayに焼いて保存しておこうかな。

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<ストーリー>
放映から20年経った今も人気は衰えないTVシリーズ、『ギャラクシー・クエスト』。しかし、5人のレギュラー陣と
いえば、ファンの思い入れとは裏腹にチームワークはいまいちだった。そんなあるイベントの日、タガート艦長役
ジェイソン(ティム・アレン)の前に、奇妙な格好をした4人組が近づき、自分たちの星を助けて欲しいと懇願する。
彼らは本物の宇宙人“サーミアン”であり、番組の中のヒーローたちに感銘を受け、ネピュラ星雲からはるばる地球に
やって来たのだ。

最初は信じなかったジェイソンだが、彼らに本物の宇宙空間を見せられ納得。いったん地球に戻るものの、また
サーミアンたちが交渉に来たので、ついに他の4人、ドクター・ラザラス役のアレックス(アラン・リックマン)、
紅一点マディソン少佐役のグエン(シガーニー・ウィーヴァー)、名砲手ラレド役のトミー(ダリル・ミッチェル)、
技術主任チェン役のフレッド(トニー・シャローブ)と共に宇宙に旅立つ。
こうして単なるTV俳優にすぎない5人組が、宇宙の平和を守るため、エイリアンと戦うという過酷な仕事に
挑むことに……。(Movie Walker)
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『スタートレック』へのオマージュ満載のパロディ映画。

宇宙の英雄である『エンタープライズ号』ならぬ『プロテクター号』乗組員を演じる売れない俳優が、実際の
宇宙戦争に巻き込まれる二重構造に、現実の『スタートレック』を絡ませた三重構造の形を取っている。
前半ではSFシリーズと熱狂的なファンのパスティーシュで、冷静にファンダムの在り様を描いている。
批判的にも見えるシーンは中盤からスペース・オペラ活劇になだれ込む。

実際の『スタートレック』の俳優や役に重なる部分は多々あり、ウィリアム・シャトナー演じるカーク船長の
ブリッジでの座り方から、お馴染みのセリフを言うなどのテレビシリーズの場面に始まり、舞台で高い評価を
受けている俳優をキャスティングするなど多岐に渡る。

トレッキー(ファンの総称。または軽率な行動もとるファン)/トレッカー(ファン同士の交流を含めた積極的で
節度ある行動をとるファン)に対するクエスティー/クエスタリアンの区別がしっかりとされている。
実際の『スタートレック』ではエンタープライズ号の設計図や機構図が販売されており、本映画の中でクエス
タリアンの助けで船内の構造を知る場面などがあり、上手く事象を取りこんでいる。(Wikipedia)

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:90% Audience Score:78%>
<Metacritic=70>
<KINENOTE=78.3点>




by jazzyoba0083 | 2019-06-08 22:30 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「ビューティフル・デイ You Were Never Really Here」
2017 アメリカ Why Not Productions,Film4 and more.90min.
監督・脚本:リン・ラムジー  原作:ジョナサン・エイムズ『ビューティフル・デイ』(ハヤカワ文庫刊)
出演:ホアキン・フェニックス、ジュディス・ロバーツ、エカテリーナ・サムソノフ、ジョン・ドーマン、アレックス・マネット他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
1回目でよく分からず、二回見たけど、監督が言いたいことは分からじまい。コーエン兄弟の不条理作品から
具体性を更に引き算したような、観念的作品といえるのだろう。こうした映画を観る時、アメリカの批評サイト
Rotten Tomatoesの批評家と一般の評価の差を見ると面白い。本作は批評家は88%が満足に対して、一般の方は
64%に留まっている。つまり映画鑑賞感性に優れ、芸術的側面を理解出来るプロから見たらよく出来た映画だが、
普通に映画館に足を運ぶ客にとっては、あまりピンとくる映画ではなかった、ということを示している。
大体「カンヌ」で賞を獲る映画というのはアメリカでの評価はこうしたものだ。

90分という短い時間に出ずっぱるのはホアキン・フェニックス演じるジョーという雇われ殺し屋。彼は子供の
頃にハンマーを持った父親に追い回されるというトラウマを持つ。「背筋を伸ばせ。猫背は女の子みたいだぞ」
という父親のセリフが繰り返し使われ、ジョーのトラウマの深さを語る。

一方ジョーは中東かアフガンかの戦争でもPTSDになっているらしく、とにかく感情のコントロールが上手く
行かず、激情に走りやすい。その分、ハンマーを使った殺しは徹底していて残忍だ。そのジョーが頼まれて
上院議員の娘を助けに行く。成功するが、上院議員は自殺、後ろにいる知事を殺そうと出かけるも、知事は
既に何者かにクビを掻かれて死んでいた。見えざる権力の影がチラつく。
父を亡くした娘とジョー。喫茶店で寝込むジョーに娘は「ジョー、起きてよ。外はいい天気よ」と呼びかけて
映画は終わる。

まともでない主人公は自分のアイデンティティを父親に復讐するかのようにハンマーで依頼された人物を
撲殺することでかろうじて生のバランスを得ているという、極めて歪んだ人生を歩んでいる。ラストで少女に
掛けられた言葉は恐らく彼の人生で初めて掛けて貰えた、豊かな感情がこもった言葉だったのだろう。
映画はそこに一筋の希望を見せて終わる。(事件が終わっているわけではない)

監督リン・ラムジーはインタビューの中で、「ジョーが少女を救ったのではなく、少女がジョーに人生を
取り戻してやった物語」と語っている。そのように見ると、全体の細かいことはさておいても大意として
映画の全体像は掴めそうな気がする。後述のようにラストシーンもそうだが、母を殺され、遺体を湖に
沈めようとし、自らも喪服のポケットに石を入れて自殺を目論むも、少女の幻影を見ることで自殺を
思い留まる。

映像は凝っている。全編フィルムで撮影したそうだが、殺しの瞬間は見せず、流れる血や倒れる男らの姿で
表現しているほか、(撮影時間がなかったという点もあるそうだが)娼館に少女を救いに行くシーンは
防犯カメラのモノクロ映像をそのまま使っている。
先に書いたラストカットでは、喫茶店で少女がトイレに立つシーンの連続した画面の中でジョーが自分の頭を
撃って自殺するカットが入る。観客は、あっと思うだろう。ジョーの強さの反対側にあった弱さが出たな、と。
しかし次のカットでトイレから戻って来た少女の目線は、テーブルに突っ伏して寝ているジョーの姿だったり
する。そのあたりの映像の「綾」とでもいうべき使い方(演出)は上手いなあ、と思った。

自殺したジョーの「イメージ」とそれに続く少女のラストのセリフ。この数秒こそ、本作の本筋ではなかったか、
とさえ思えたのだった。「生きる意味」を見失った男が「再生」のきっかけを掴む話。
映画に具体的カタルシスとか具象的エンタメを望む人には向かないタイプに映画だろう。

またアップの映像が多いとか、とにかく全編、映像と編集だけを見ていても飽きない映画ではある。
ラジオヘッドの音楽も効果的だ。

それにしても、本作、ホアキン・フェニックスの怪演(快演)が映画のインパクトのほとんどだと言い切れるの
ではないか。

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<ストーリー>
第70回カンヌ国際映画祭脚本賞と男優賞を受賞したスリラー。行方不明者捜索のプロのジョーは、州上院議員
ヴォットの十代の娘ニーナを売春組織から取り戻してほしいと依頼を受ける。ジョーは無事にニーナを救出するが、
思いがけない事件に巻き込まれていく。監督は、「少年は残酷な弓を射る」のリン・ラムジー。

行方不明者の捜索を請け負うスペシャリストのジョー(ホアキン・フェニックス)は、人身売買や性犯罪の闇に
囚われた少女たちを何人も救ってきた。彼はその報酬で、年老いた母親(ジュディス・ロバーツ)と静かに暮ら
している。ジョーは海兵隊員として派遣された砂漠の戦場や、FBI潜入捜査官時代に目の当たりにした凄惨な
犯罪現場の残像、そして父親の理不尽な虐待にさらされた少年時代のトラウマに苦しんでいた。

ある日、新たな仕事の依頼が舞い込む。選挙キャンペーン中で警察沙汰を避けたい州上院議員のアルバート・
ヴォット(アレックス・マネット)が、裏社会の売春組織から十代の娘ニーナ(エカテリーナ・サムソノフ)を
取り戻してほしいという。ジョーは売春が行われているビルに潜入し、用心棒を叩きのめしてニーナを救出するが、
彼女は虚ろな目で表情一つ変えない。深夜3時、ニーナを連れて行った場末のホテルのテレビで、ここで落ち
合う予定だったヴォット議員が高層ビルから飛び降り自殺したことを知る。

その直後、二人組の制服警官がホテルの受付係の男を射殺し、無理やりニーナを連れ去っていく。窮地を脱した
ジョーは、ヴォット議員からの依頼を仲介したマクリアリー(ジョン・ドーマン)のオフィスを訪ねるが、
彼は何者かに切り刻まれて死んでいた。嫌な予感に駆られて自宅に戻
ると、2階で母親が銃殺されていた。
ジョーは1階にとどまっていた二人の殺し屋に銃弾を浴びせると、ニーナがウィリアムズ州知事のもとにいる
ことを突き止める。ニーナはウィリアムズのお気に入りで、ヴォットは日頃から娘を政界の権力者に貢いでいた
のだった。

ジョーは喪服に着替え、母親を葬るために森の奥の美しい湖に向かう。生きる気力を失った彼は母の亡骸を抱え
て入水するが、ニーナの幻影に引き戻される。ジョーは一連の事件の黒幕であるウィリアムズを尾行し、ニーナが
監禁されている郊外の豪邸へハンマー片手に踏み込んでいく。(Movie Walker)

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:88% Audience Score:64% >
<Metacritic=84>
<KINENOTE=72.6点>



by jazzyoba0083 | 2019-06-06 22:35 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

誰も知らない

●「誰も知らない」
2004  日本 シネカノン 141分
監督・プロデュース・脚本・編集:是枝裕和
出演:柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子、韓英恵、YOU、平泉成、木村祐一、加瀬亮、寺島進、遠藤憲一他

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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
是枝監督作品鑑賞9本目。カンヌ映画祭で柳楽優弥が史上最年少の主演男優賞を獲得し、是枝監督の名前も一躍
国際的になった記念すべき作品。これから観る本作の3年前の作品「DISTANCE/ディスタンス」はオウム事件に
ヒントを得、本作も実際にあった事件をベースにしている。最近作「万引き家族」に通ずるドキュメンタリスト
是枝裕和の側面が強く出た社会性の強い作品だ。

彼の作品はどれでもそうだが子供の演技の上手さとそれを通しての存在が大きい。本作はまさにそのものズバリの
物語で、親に捨てられた全員父親違いの子供4人が主人公だ。配給会社のタグラインにあるように「生きているのは
大人だけですか?」との問いかけが、本作の主軸。少々長い映画だが、4人の子供の(後半物語に入ってくる一人の
女子高生紗希がいるが)「生きる」話である。彼らはひたすら「生きる」のみ。恐らく出生届けなどはしていない
のだろうから、戸籍もないのだろう。故に学校へは行っていない。特に長男明の、弟や妹の世話を焼きながら
家計を切り盛りし、それぞれの父親に金の無心にいく。やがて電気が止まり、水道も止まり、たまたま夏だった
から公園の水道を使い、得体の知れない種を拾ってきてベランダで育てて観たりする。コンビニの廃棄食料を
仲良くなった店員から貰ったり。

冒頭は引っ越しのシーンから始まる。子供は一人、と大家に説明するものの、本当は他に3人子供がいることが
バレて、その度にアパートを引っ越す生活。最初は母(YOU)も、何の商売をしているのか分からないが、金を
持ってきたし、一ヶ月も大阪に行ったままになってもとりあえずは帰ってきたり、現金書留を送ってきていたり
していた。しかし、クリスマスには帰る、と行ったきり、放置状態となった。
コンビニの女定員に「警察とか福祉事務所に助けを求めたら」というような事を言われるが、これまでそうやって
兄妹がバラバラになったことがあったらしく、明はそうしようとは思わない。あくまでも自分らで暮らしていこう
とする。

明を中心に極貧の生活を送る生活に大人が介在してくるたびに大人の無責任さがあからさまにされる。特に親が。
観ている人は、明を通して、子供を放置する無責任で頭の悪い大人に怒りを覚える。明だって当然怒りを覚えて
いるに違いないし、学校へ行きたい。妹の京子も学校へ行ってピアノを習いたかった。しかし、明は一切反発や
怒りの言葉を口にしない。それが尚辛い。12歳の明は、もはや大人に対する、或いは社会に対する信頼を失って
諦めの境地なのだろう。自分たちで出来るだけのことをやって、ダメならそれまで、と。そんなことを子供に
思わせる大人とは一体なんなんだと、と見ている人は猛烈な怒りを覚えるだろう。

案の定、一番したの妹ゆきが、椅子から落ちて死んでしまう。子供らはゆきが羽田に飛行機を見に行きたいと
行っていたことから、トランクに遺体を詰めて、モノレールで運び、飛行場が見えるところに穴を掘って埋めた。
引っ越してきた当時にゆきが隠れて入っていたバッグに入らないシーンがある。母に捨てられてからそれなりに
大きくなって、来た時のバッグには入らなくなっていたのだ。そんな細かいシーンが泣かせるし、何ものかを
訴えてくる。途中からいつも公園にいる不登校の女子高生紗希が加わる。彼女の背後に何があるのかは一切説明
されないが、やはり親から遺棄されているか、それに近い状態なのだろう。明ら兄妹の仲間のようになっていく。
自分の事はしゃべらないから身の上は一切わからないが、明ら兄妹とは自ずと同じ境遇の者同士、心が通じるの
だろう。

ラストは明ら子供らになんらかの解決の兆しもないまま、こうした生活がまだ続くのか、と思わせて終わる。
「親の愛情の欠如・無理解」「貧困」は犯罪の温床と言われる。明は学校へは行っていないが勉強もするし、
なんとか一家を支えようとする頭の良さもある。途中で悪の仲間に入りそうにもなるが、結局あまりの
貧乏に悪い仲間のほうが逃げ出す。明や兄妹や紗希がその後どうなるのかはオープンエンドである。

親に捨てられた子供の生活を精緻に描くことにより、大人への警鐘というか、大きなパンチを是枝監督は
社会に対して繰り出したに違いないと私には思えた。これまで観てきた是枝作品の上位に位置する作品だと思う。
(まあ、彼の映画は甲乙つけ難い、というのが本音だけど)

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<ストーリー>
秋。2DKのアパートに、母親のけい子と、12歳の明を筆頭に京子、茂、ゆきの4人の兄妹が引っ越して来た。
子供たちは、それぞれに父親が違い、学校にも通ったことがなかった。ある日、けい子が20万円の現金と明に
「妹弟たちを頼む」とのメモを残して姿を消した。
それから1カ月、4人での生活を続けていた子供たちの前に、ふいにけい子が戻って来る。「どこへ行っていた
のか」と尋ねる明に、「仕事で大阪へ行っていた」と嘯くけい子。そして再び、彼女は「クリスマスに戻る」と
言って部屋を出て行った。
しかしそれ以後、約束のクリスマスやお正月が過ぎても、けい子は帰って来なかった。

母親に捨てられた。そう気づいた明は、妹たちにそれを悟られないよう生活を続けていこうとするが、やがて
金も底を尽き、電気や水道も止められてしまった。明は、やりきれなさから妹弟たちに辛くあたることもあった。
そんな中、ゆきが椅子から転落して死んだ。公園で知り合った不登校の少女・紗希の力を借りて、ゆきといつか
飛行機を見に行こうと約束していた羽田へ向かった明は、そこに彼女の遺体を埋葬すると、アパートへと戻り、
遺された妹弟たちとの生活を再開する。(Movie Walker)

<IMDb=★8.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:93% Audience Score:93%>
<Metacritic=88=Must See>
<KINENOTE=79.1点>



by jazzyoba0083 | 2019-06-01 23:40 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)